深海ふかうみサウンドチャネル

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チャネルじく付近ふきん音源おんげん設定せっていした場合ばあいのDSCのおとせん

深海ふかうみサウンドチャネル英語えいご: deep sound channel, DSC)は、サウンドチャネル[ちゅう 1]のうち、音速おんそく極小きょくしょうとなる深度しんど水温すいおんおどそう深海しんかい等温とうおんそう境界きょうかいによって形成けいせいされているもの。SOFARチャネルえい: SOFAR channel)ともしょうされる[1][2]

音速おんそくプロファイル[編集へんしゅう]

ハワイ諸島しょとう北方ほっぽう太平洋たいへいよう音速おんそくプロファイル。DSCは深度しんど750メートルに出現しゅつげんしている。

海中かいちゅうでの音速おんそく影響えいきょうあたえる物理ぶつり特性とくせいは、あわ微生物びせいぶつといった混入こんにゅうぶつのぞけば、海水温かいすいおんしお濃度のうど水圧すいあつという3つの基本きほんりょうのみとされている。これを利用りようして、海中かいちゅうでの音速おんそくは、深度しんど変数へんすうとする関数かんすうとして定義ていぎでき、この音速おんそく-深度しんど関数かんすう音速おんそくプロファイルしょうする。音速おんそくプロファイルは、下記かきのように、それぞれことなる特性とくせい成因せいいんをもついくつかのそうけられる[3]

表面ひょうめんそうsurface layer
海面かいめん直下ちょっか位置いちしているため、ねつ交換こうかんふう作用さようけやすく、音速おんそく不安定ふあんていである。くもおおわれたり風浪ふうろうのある海域かいいきでは、ふうなみにより撹拌かくはんされて等温とうおんそうしょうじることがあり、これを混合こんごうそう (mixed layerしょうする。
水温すいおんおどそうthermal layer
音速おんそくまけ勾配こうばい水温すいおんおよび音速おんそく深度しんどとともに減少げんしょう)に特徴とくちょうがある。ぶしによる影響えいきょうけやすい(場合ばあいによっては表層ひょうそう一体化いったいかして消滅しょうめつする)ぶし水温すいおんおどそうと、わずかしか影響えいきょうけないしゅ水温すいおんおどそうけられる。
深海ふかうみ等温とうおんそうdeep isothermal layer
海水温かいすいおんは39 °F (4 °C)で一定いっていであり、音速おんそく圧力あつりょく影響えいきょうけて、深度しんどとともに増加ぞうかする。

深海ふかうみサウンドチャネル[編集へんしゅう]

上記じょうきのように、音速おんそく勾配こうばいsound speed gradient)はおも水温すいおんおどそうではまけ勾配こうばい深海ふかうみ等温とうおんそうではせい勾配こうばいをとることから、この境界きょうかいで、音速おんそく最小さいしょうとなる深度しんど存在そんざいする[3]ちゅう緯度いど海域かいいきでは深度しんど4,000フィート (1,200 m)、北極ほっきょくかいでは海面かいめん付近ふきんみとめられる。この音速おんそく極小きょくしょうてんは、おとせんおと伝播でんぱ経路けいろ)にたいして一種いっしゅのレンズのようにはたらくため、このそうのなかで放射ほうしゃされたエネルギーはチャネルないまり、海面かいめん海底かいていへの反射はんしゃによる音響おんきょうてき損失そんしつしょうじにくい。これを深海しんかいサウンドチャネルとしょうする。ちゅう程度ていど音響おんきょう出力しゅつりょくであっても、非常ひじょう長距離ちょうきょりまで伝搬でんぱんすることができるという特性とくせいがある[1]

アメリカ海軍かいぐんでは、1940年代ねんだいより海洋かいようにおける音波おんぱ伝搬でんぱん研究けんきゅう着手ちゃくしゅし、音源おんげん探知たんち位置いち極限きょくげんかんする実験じっけんおこなわれた。深海しんかいサウンドチャネルは、このさいモーリス・ユーイング博士はかせたちによって発見はっけんされた。これを活用かつようして、まず配備はいびされたのがSOFAR(Sound Fixing and Ranging)システムであった。これは洋上ようじょう墜落ついらくした飛行ひこう捜索そうさく救難きゅうなんのためのシステムであり、着水ちゃくすいした飛行ひこう爆発ばくはつさせたちいさなばくだん (Sofar bombおとをハイドロフォンでとらえて、三角さんかく測量そくりょうによって飛行ひこう発見はっけんするというものであった[1]。そしてまもなく、このシステムはたいせんせん応用おうようされるようになり、最終さいしゅうてきSOSUSとして結実けつじつすることになる[4]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ うみなかふかさとともに音速おんそくわってゆくとき、途中とちゅう音速おんそく極小きょくしょうをもつような海洋かいようちゅう領域りょういき。このなかはっせられたおとはチャネルのなかまる傾向けいこうがあり、伝搬でんぱん損失そんしつすくないため、とおくまでとどきやすいという特性とくせいがある[1][2]

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c d Urick 2013, pp. 97–101.
  2. ^ a b 防衛庁ぼうえいちょう 1978, p. 14.
  3. ^ a b Urick 2013, pp. 71–76.
  4. ^ 小林こばやし 2018.

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • Urick, Robert J. ちょ新家にいのみ富雄とみお へん水中すいちゅう音響おんきょうがく 改訂かいてい三好みよし章夫あきお京都きょうと通信つうしんしゃ、2013ねんISBN 978-4903473918 
  • 小林こばやし, 正男まさお現代げんだい潜水せんすいかん だい23かい」『世界せかい艦船かんせんだい880ごう海人あましゃ、2018ねん6がつ、141-147ぺーじ 
  • 防衛庁ぼうえいちょう (1978ねん). “防衛庁ぼうえいちょう規格きかく 水中すいちゅう音響おんきょう用語ようご現象げんしょう” (PDF). 2018ねん5がつ4にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]