渥美あつみ東洋とうよう

渥美あつみ 東洋とうよう（あつみ とうよう、1935年ねん〈昭和しょうわ10年ねん〉1月がつ20日はつか - 2014年ねん〈平成へいせい26年ねん〉1月がつ30日にち）は、日本にっぽんの法学ほうがく者しゃ（刑事けいじ訴訟そしょう法ほう）。法学ほうがく博士はかせ（中央大学ちゅうおうだいがく・1978年ねん）。中央大学ちゅうおうだいがく名誉めいよ教授きょうじゅ、警察けいさつ大だい学校がっこう名誉めいよ教授きょうじゅ。元もと京都産業大学きょうとさんぎょうだいがく客員きゃくいん教授きょうじゅ。元もと学校がっこう法人ほうじん常磐大学ときわだいがく理事りじ。元もと司法しほう試験しけん考査こうさ委員いいん。

経歴けいれき・人物じんぶつ

満まん洲しゅう国こく新しん京きょう市し（現げん：長春ちょうしゅん市し）で高官こうかんの家庭かていに生うまれ、敗戦はいせん後ご、浜松はままつ市しに戻もどる。静岡しずおか県立けんりつ浜松はままつ北きた高等こうとう学校がっこうを経へて、中央大学ちゅうおうだいがく法学部ほうがくぶ3年生ねんせいの時とき、司法しほう試験しけんに首席しゅせきで合格ごうかく。翌年よくねん、国家こっか公務員こうむいん六ろく級きゅう職しょく試験しけん(後ごの上級じょうきゅう甲種こうしゅ試験しけん、Ⅰ種しゅ試験しけん)に8位いで合格ごうかく。中央大学ちゅうおうだいがく法学部ほうがくぶ助手じょしゅ兼務けんむで司法しほう修習しゅうしゅう修了しゅうりょう。

「学士がくし助手じょしゅ#主おもな学士がくし助手じょしゅ出身しゅっしん工こう/法学ほうがく者しゃ・政治せいじ学者がくしゃ．経けい数すう学者がくしゃ」を参照さんしょう

刑事けいじ訴訟そしょう法ほう学がくにおいて、英えい米べい法ほうの影響えいきょうを大おおきく受うけた学説がくせつを主張しゅちょうし、その独自どくじの展開てんかいゆえ「渥美あつみ刑訴けいそ」と呼よばれた。母校ぼこうである中央大学ちゅうおうだいがく法学部ほうがくぶの他ほか、慶應義塾大学けいおうぎじゅくだいがく法学部ほうがくぶ・大学院だいがくいん法学ほうがく研究けんきゅう科か、日本にっぽん大学だいがく法学部ほうがくぶなどで教鞭きょうべんをとり、数すう多おおくの法曹ほうそうを世よに送おくり出だしたほか、最高裁判所さいこうさいばんしょ規則きそく制定せいてい諮問しもん委員いいん、司法しほう試験しけん第だい二に次じ試験しけん考査こうさ委員いいん、法制ほうせい審議しんぎ会かい委員いいん、中央大学ちゅうおうだいがく総合そうごう政策せいさく学がく部長ぶちょう、警察けいさつ大だい学校がっこう特別とくべつ捜査そうさ幹部かんぶ研修けんしゅう所しょ講師こうし、財団ざいだん法人ほうじん警察けいさつ協会きょうかい評議ひょうぎ員いん、日本にっぽん刑法けいほう学会がっかい理事りじ・監事かんじ、警察けいさつ政策せいさく学会がっかい会長かいちょう、日本にっぽん被害ひがい者しゃ学会がっかい理事りじ長ちょう、財団ざいだん法人ほうじん犯罪はんざい被害ひがい救援きゅうえん基金ききん常務じょうむ理事りじ、社団しゃだん法人ほうじん被害ひがい者しゃ支援しえん都民とみんセンター理事りじ長ちょうなどを歴任れきにん。

2014年ねん1月がつ30日にち、虚きょ血ち性せい心こころ疾患しっかんのため東京とうきょう都と新宿しんじゅく区くの病院びょういんで死去しきょ。79歳さい没ぼつ。

学説がくせつ

出世しゅっせ作さくは学位がくい論文ろんぶんである「捜査そうさの原理げんり」であるが、渥美あつみの学説がくせつを理解りかいするにあたり注意ちゅういしなければならないのは、その用語ようご法ほう自体じたいが通説つうせつとほぼ正せい反対はんたいといえるほど異ことなっている点てんである。同書どうしょの内容ないようは以下いかのとおりである。同書どうしょに先駆さきがけて田宮たみや裕ひろしは、捜査そうさおよび公判こうはんを通つうじて刑事けいじ訴訟そしょう法ほうを当事とうじ者しゃ主義しゅぎの見地けんちから解釈かいしゃくし、弾劾だんがい的てき捜査そうさ観かんを提唱ていしょうした平野ひらの龍一りゅういちの学説がくせつを継承けいしょう、発展はってんさせた論文ろんぶん「捜査そうさの構造こうぞう」（有斐閣ゆうひかく、1971年ねん）を発表はっぴょうしていたが、渥美あつみは、平野へいや・田宮たみやの学説がくせつを批判ひはんし、英えい米べい法ほうに基礎きそをおく独自どくじの学説がくせつを展開てんかいした。渥美あつみは、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく憲法けんぽうは社会しゃかい契約けいやく 説せつにたつとの理解りかいの下した、同どう法ほうを継受けいじゅした日本国にっぽんこく憲法けんぽうも同どう説せつに立たつとした上うえで、英えい米べい法ほうの判例はんれい法ほうによって認みとめられた原則げんそくを基礎きそとして日本にっぽんの刑事けいじ訴訟そしょう法ほうを解釈かいしゃくすべきとする。渥美あつみによれば、ドイツ法ほうは、公判こうはんにおける職権しょっけん主義しゅぎを基礎きそとし、捜査そうさを公判こうはんの準備じゅんびとして連続れんぞく的てきにとらえて裁判官さいばんかんが発はっする令状れいじょうによって規律きりつする糾問きゅうもん主義しゅぎをとるとされ、かかる「糾問きゅうもん主義しゅぎ、職権しょっけん主義しゅぎ」と英えい米べい法ほうに由来ゆらいする「弾劾だんがい主義しゅぎ、当事とうじ者しゃ・論争ろんそう主義しゅぎ」との対立たいりつという図式ずしきが日本にっぽんの刑事けいじ訴訟そしょう法ほうを解釈かいしゃくする指針ししんとなると主張しゅちょうする。その上うえで、「弾劾だんがい主義しゅぎ」をとる英えい米べい法ほうではドイツ法ほうと異ことなり、捜査そうさは公判こうはんと全まったく異ことなる独自どくじの手続てつづきとされており、連続れんぞく性せいは認みとめられないとする。かかる見地けんちからは、平野へいや・田宮たみやは、従来じゅうらいの用語ようご法ほうと正せい反対はんたいにむしろ糾問きゅうもん主義しゅぎと評価ひょうかされることになる。

エピソード

• 形式けいしき的てきな論理ろんりで物事ものごとを捉とらえるのではなく、「コンクリートに物事ものごとを考かんがえる」ことを重視じゅうししていた。
• 近代きんだい法ほうにおける法ほうの支配しはいの概念がいねんは、近代きんだいヨーロッパにおける経験けいけん知ちの集積しゅうせきの上うえに成なり立たっており、だからこそ、歴史れきしを知しることは必要ひつようであり重要じゅうようであると考かんがえていた。
• 渥美あつみが訴訟そしょう法ほう学者がくしゃになった理由りゆうは、実体じったい法ほうで定さだめられた人権じんけん保障ほしょうは、手続てつづき法ほうが整備せいびされ実施じっしされなければ実現じつげんしないという信念しんねんに基もとづいていた。
• 文学ぶんがくは一般いっぱん的てきには非ひ論理ろんり的てきなものと思おもわれているが、渥美あつみは良質りょうしつな文学ぶんがくはまさしく論理ろんり的てきであり、人間にんげんの姿すがたや社会しゃかいの実態じったいを論理ろんり的てきに解とき明あかしていると考かんがえていた。
• 子供こどもの頃ころに住すんでいた満まん洲しゅう国こく新しん京きょう市し（現げん・長春ちょうしゅん市し）には長ながい商店しょうてん街がいがあり、渥美あつみは左右さゆうそれぞれの100以上いじょうの商店しょうてんの順番じゅんばんを記憶きおくしており、それに暗記あんきする事項じこうを当あてはめて覚おぼえていた。

略歴りゃくれき

学歴がくれき

• 1955年ねん 中央大学ちゅうおうだいがく法学部ほうがくぶ法律ほうりつ学科がっか3年ねん次つぎに司法しほう試験しけん合格ごうかく
• 1957年ねん 同どう卒業そつぎょう

職歴しょくれき

• 1957年ねん 中央大学ちゅうおうだいがく法学部ほうがくぶ助手じょしゅ(途中とちゅう、司法しほう修習しゅうしゅう修了しゅうりょう)
• 1962年ねん 中央大学ちゅうおうだいがく法学部ほうがくぶ助教授じょきょうじゅ
• 1969年ねん 中央大学ちゅうおうだいがく法学部ほうがくぶ教授きょうじゅ
• 1982年ねん 中央大学ちゅうおうだいがく日本にっぽん比較ひかく法ほう研究所けんきゅうじょ所長しょちょう
• 1989年ねん 中央大学ちゅうおうだいがく大学院だいがくいん法学ほうがく研究けんきゅう科か委員いいん長ちょう
• 1993年ねん 中央大学ちゅうおうだいがく総合そうごう政策せいさく学部がくぶ教授きょうじゅ、総合そうごう政策せいさく学がく部長ぶちょう
• 2004年ねん 中央大学ちゅうおうだいがく大学院だいがくいん法務ほうむ研究けんきゅう科か教授きょうじゅ
• 2005年ねん 中央大学ちゅうおうだいがく定年ていねん退職たいしょく。中央大学ちゅうおうだいがく名誉めいよ教授きょうじゅ
• 2005年ねん 京都産業大学きょうとさんぎょうだいがく大学院だいがくいん法務ほうむ研究けんきゅう科か教授きょうじゅ
• 2013年ねん 京都産業大学きょうとさんぎょうだいがく社会しゃかい安全あんぜん・警察けいさつ学がく研究所けんきゅうじょ所長しょちょう
• 2014年ねん 在職ざいしょく中ちゅうに逝去せいきょ。79歳さい没ぼつ。

業績ぎょうせき

著作ちょさく

• 『刑事けいじ訴訟そしょう法ほう（全ぜん訂てい版ばん）第だい2版はん』（有斐閣ゆうひかく、2009年ねん）
• 『捜査そうさの原理げんり』（有斐閣ゆうひかく、1979年ねん）
• 『レッスン刑事けいじ訴訟そしょう法ほう』（上うえ）（中なか）（下した）（中央大学ちゅうおうだいがく出版しゅっぱん部ぶ、1985年ねん、1986年ねん、1987年ねん）
• 『法ほうの原理げんり』（I）、（II）、（III）（中央大学ちゅうおうだいがく生協せいきょう出版しゅっぱん部ぶ、1993年ねん、1993年ねん、1995年ねん）
• 『罪つみと罰ばちを考かんがえる』（有斐閣ゆうひかく 1993年ねん）
• 『刑事けいじ訴訟そしょう法ほうにおける自由じゆうと正義まさよし』（有斐閣ゆうひかく、1994年ねん）
• 『複雑ふくざつ社会しゃかいで法ほうをどう活いかすか』（立花たちばな書房しょぼう、1998年ねん）
• 『組織そしき企業きぎょう犯罪はんざいを考かんがえる』（中央大学ちゅうおうだいがく出版しゅっぱん部ぶ、1998年ねん）
• 『日にち韓かん刑事けいじ法ほうの探求たんきゅう』（中央大学ちゅうおうだいがく出版しゅっぱん部ぶ、1998年ねん）

論文ろんぶん

• 「アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくにおける少年しょうねん裁判所さいばんしょ制度せいどの動向どうこう」（『警察けいさつ学がく論集ろんしゅう』第だい47巻かん6号ごう、1994年ねん）
• 「『コミュニティー・ポリースィング』について」（『警察けいさつ学がく論集ろんしゅう』第だい42巻かん9号ごう、1994年ねん）
• 「刑事けいじ手続てつづきにおける被害ひがい者しゃの法的ほうてき地位ちい」（『被害ひがい者しゃ学がく研究けんきゅう』10号ごう、2000年ねん）
• 「被害ひがい者しゃの刑事けいじ法ほう運用うんよう全ぜんシステムに関かんする理論りろんの発展はってんに与あたえた影響えいきょうの大おおきさ」（『宮沢みやざわ浩一こういち古稀こき記念きねん論ろん文集ぶんしゅう』成文せいぶん堂どう、2001年ねん）
• 「公判こうはんとは別べつの途とをとる手続てつづきの性格せいかくと理解りかい」（『白しろ門もん』2巻かん10号ごう、2001年ねん）
• 「オーストリアとニュージーランドにおける少年しょうねん法ほう制度せいどの研究けんきゅう Family group conference を中心ちゅうしんとして」『警察けいさつ学がく論集ろんしゅう』53巻かん10号ごう、2000年ねん）
• 「欧米おうべい諸国しょこくの少年しょうねん非行ひこう対策たいさくの傾向けいこう」（『（財）ざいだんほうじん社会しゃかい安全あんぜん研究けんきゅう財団ざいだん女性じょせい事業じぎょう研究けんきゅう報告ほうこく書しょ』、2001年ねん）

恩師おんし

• 学内がくない指導しどう教授きょうじゅとして吉田よしだ常次郎つねじろう（元もと中央ちゅうおう大学だいがく教授きょうじゅ、刑法けいほう学者がくしゃ）、学外がくがい指導しどう教授きょうじゅとして団だん藤ふじ重光しげみつの薫陶くんとうを受うけた。また、留学りゅうがく中ちゅうはエイブラハム・ゴールドシュティン（イェール大学だいがくロースクール教授きょうじゅ）に薫陶くんとうを受うけた。

門下生もんかせい

• 椎橋しいはし隆幸たかゆき　中央大学ちゅうおうだいがく名誉めいよ教授きょうじゅ
• 荒木あらき伸しん怡　立教大学りっきょうだいがく名誉めいよ教授きょうじゅ
• 柳川やながわ重しげる規ぶんまわし　中央大学ちゅうおうだいがく法学部ほうがくぶ教授きょうじゅ
• 洲しゅう見み光男みつお　同志社大学どうししゃだいがく教授きょうじゅ
• 清水しみず真しん　　明治大学めいじだいがく法科ほうか大学院だいがくいん教授きょうじゅ
• 綿引わたひき万里子まりこ　元もと名古屋なごや高裁こうさい長官ちょうかん(ゼミ出身しゅっしん)

関連かんれん項目こうもく

• ミランダ警告けいこく - 渥美あつみは、被疑ひぎ者しゃの防御ぼうぎょ権けん保障ほしょうの為ためには、日本にっぽんでもミランダ警告けいこくは必要ひつようであるとする。

外部がいぶリンク

• 研究けんきゅう生活せいかつ50年ねんの終おわりに（『Hakumonちゅうおう』 2005年ねん 早春そうしゅん号ごう）

先代せんだい 横井よこい芳弘よしひろ

中央大学ちゅうおうだいがく日本にっぽん比較ひかく法ほう研究所けんきゅうじょ所長しょちょう 1981年ねん - 1984年ねん

次代じだい 外間ほかま寛ひろし

先代せんだい 八木やぎ國之くにゆき

中央大学ちゅうおうだいがく大学院だいがくいん法学ほうがく研究けんきゅう科か委員いいん長ちょう 1989年ねん - 1991年ねん

次代じだい 高こう窪くぼ利一としかず

先代せんだい 新設しんせつ

中央大学ちゅうおうだいがく総合そうごう政策せいさく学部がくぶ長なが 1993年ねん - 1999年ねん

次代じだい 河野こうの光雄みつお