出典 しゅってん : フリー百科 ひゃっか 事典 じてん 『ウィキペディア(Wikipedia)』
Ἀ
ἀ
Ἐ
ἐ
Ἠ
ἠ
Ἰ
ἰ
Ὀ
ὀ
ῤ
ὐ
Ὠ
ὠ
無 む 気 き 記号 きごう (むききごう、古代 こだい ギリシア語 ご : ψ ぷさい ι いおた λ らむだ ὸν にゅー π ぱい ν にゅー ε いぷしろん ῦμ みゅー α あるふぁ 、ラテン語 らてんご : spiritus lenis )は、古代 こだい ギリシア語 ご の表記 ひょうき に用 もち いられるギリシア文字 もじ のダイアクリティカルマーク で、主 おも に語頭 ごとう の母音 ぼいん の前 まえ に「h」がないことを表 あらわ す。逆 ぎゃく に「h」があることを表 あらわ す記号 きごう を有 ゆう 気 き 記号 きごう と呼 よ ぶ。無 む 気 き 記号 きごう と有 ゆう 気 き 記号 きごう をまとめて気息 きそく 記号 きごう と呼 よ ぶ。
ギリシア語 ご イオニア方言 ほうげん には/h/ 音 おと がなかったため、本来 ほんらい この音 おと を表 あらわ していた「Η いーた 」字 じ が母音 ぼいん /ɛː/ を表 あらわ すために流用 りゅうよう されていた。紀元前 きげんぜん 5世紀 せいき ごろからギリシアではイオニア式 しき アルファベットが標準 ひょうじゅん として普及 ふきゅう した。アッティカ 方言 ほうげん を含 ふく めて多 おお くの方言 ほうげん には/h/ 音 おと が残 のこ っていたが、文字 もじ がないために表記 ひょうき することができなかった。
後 のち にアレクサンドリア の文法 ぶんぽう 家 か は「Η いーた 」の左 ひだり 半分 はんぶん を取 と った記号 きごう 「 」を文字 もじ の上 うえ に書 か くことで/h/ があることを、この記号 きごう を左右 さゆう 逆 ぎゃく にした「 」を書 か くことで/h/ がないことを示 しめ すようになった。前者 ぜんしゃ が変化 へんか して有 ゆう 気 き 記号 きごう (῾ )、後者 こうしゃ が無 む 気 き 記号 きごう (᾿ )に発達 はったつ した[1] 。
当初 とうしょ は/h/ の有無 うむ によって意味 いみ の変 か わる場合 ばあい にのみ区別 くべつ するために使 つか われた[1] 。ギリシア語 ご のダイアクリティカルマークの使用 しよう は時代 じだい とともに使 つか われる頻度 ひんど が高 たか くなり、ビザンチン 時代 じだい の800年 ねん 以降 いこう になって常 つね に記 しる されるようになった[2] 。
語頭 ごとう の母音 ぼいん のほかに、ρ ろー (r)を重 かさ ねたρ ろー ρ ろー は、ビザンチン時代 じだい にῤῥ (rrh)のように書 か かれることがあった[3] 。
現代 げんだい のギリシア語 ご には/h/ 音 おと は存在 そんざい しないにもかかわらず、1970年代 ねんだい までは時代 じだい 錯誤 さくご 的 てき に気息 きそく 記号 きごう が書 か かれていたが、トノス 以外 いがい を書 か かない書 か き方 かた が1976年 ねん から普及 ふきゅう し、1982年 ねん には公式 こうしき に認 みと められた[4] 。
連続 れんぞく する2語 ご が縮 ちぢみ 約 やく によって融合 ゆうごう して1語 ご になるとき、融合 ゆうごう によって生 しょう じた母音 ぼいん に無 む 気 き 記号 きごう と同 おな じ形 がた の記号 きごう が加 くわ えられる。これをコローニス (κορωνίς 、coronis)と呼 よ ぶ。コローニスは語 かたり 中 ちゅう に出現 しゅつげん するため、原則 げんそく として語頭 ごとう に置 お かれる無 む 気 き 記号 きごう とは区別 くべつ できる[5] 。
例 れい : アッティカ方言 ほうげん : ἐγ がんま ὼ ο おみくろん ἶμ みゅー α あるふぁ ι いおた → ἐγ がんま ᾦμ みゅー α あるふぁ ι いおた (私 わたし は……と思 おも う)
^ a b Allen (1987) p.52
^ Threatte (1996) p.276
^ Allen (1987) p.41
^ Threatte (1996) p.277
^ ギロー(1970) p.27 注 ちゅう 2
シャルル・ギロー 著 ちょ 、有田 ありた 潤 じゅん 訳 わけ 『ギリシア文法 ぶんぽう 』白水 しろみず 社 しゃ 〈文庫 ぶんこ クセジュ〉、1970年 ねん 。ISBN 4560054657 。
W. Sidney Allen (1987) [1968]. Vox Graeca (3rd ed.). Cambridge University Press. ISBN 0521335558
Leslie Threatte (1996). “The Greek Alphabet”. In Peter T. Daniels; William Bright. The World's Writing Systems . Oxford University Press. pp. 271-280. ISBN 0195079930