トレマ

¨
トレマ
ダイアクリティカルマーク アキュート ´ ダブルアキュート ˝ グレイヴ ` ダブルグレイヴ  ̏ ブレーヴェ ˘ 倒置とうちブレーヴェ  ̑ ハーチェク ˇ セディーユ ¸ サーカムフレックス ˆ トレマ / ウムラウト ¨ チルダ ˜ ドット符号ふごう ˙ フック  ̡ フック符号ふごう  ̉ ホーン符号ふごう  ̛ マクロン ¯ オゴネク ˛ リング符号ふごう ˚ ストローク符号ふごう ̸ コンマアバブ ʻ コンマビロー , 無む気き記号きごう ᾿ 非ひラテン文字もじ シャクル   シャッダ  ّ‎ ハムザ ء‎ キリル文字もじ   ティトロ  ҃ ヘブライ文字もじ   ニクダー  ִ‎ ブラーフミー系けい文字もじ   アヌスヴァーラ  ं‎ ヴィラーマ  ्‎ 日本語にほんご   濁点だくてん ゛ 半はん濁点だくてん ゜
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トレマ（仏ふつ: tréma）（¨、◌̈）は、ダイアクリティカルマーク（発音はつおん区別くべつ符号ふごう）の一種いっしゅ。母音ぼいんを表あらわす文字もじの上うえに付ふされる2点てん「¨」からなり、ドイツ語ごなどで用もちいられるウムラウトと同型どうけいの符号ふごうである。

フランス語ふらんすごでは「tréma（トレマ）」、英語えいごでは「diaeresis（ダイエリシス）」、スペイン語ごでは「diéresis（ディエレシス）」または「crema（クレマ）」という。日本語にほんごでは「分ぶん音おと記号きごう（ぶんおんきごう）」や「分ぶん音符おんぷ号ごう（ぶんおんふごう）」、「分ぶん音符おんぷ（ぶんおんふ）」と呼よばれることもあるが、これらはダイアクリティカルマーク全般ぜんぱんを指さすこともある。

概要がいよう

「トレマ」という語かたりは、古代こだいギリシア語ごで「穴あな・開ひらき口こう」を意味いみする τたうρろーῆμみゅーαあるふぁ トレーマ に由来ゆらいする。

「ダイエリシス」、「ディエレシス」も、古代こだいギリシア語ごで「分割ぶんかつ」を意味いみする διαίρεσις ディアイレシス に由来ゆらいする。

ラテン文字もじやギリシャ文字もじなどのアルファベットを用もちいる言語げんごのある綴つづりにおいて母音ぼいんが連続れんぞくして表記ひょうきされているとき、二に重じゅう音字おんじではなくそれぞれの母音ぼいんを単音たんおんとして発音はつおんする場合ばあい、もしくは黙だま字じではなく発音はつおんする場合ばあいに付ふされる。フランス語ふらんすご、ギリシャ語ごや、フランス語ふらんすごから英語えいごに借用しゃくようされた単語たんごなどで用もちいられる。

言語げんごによっては、同一どういつの記号きごうがトレマとは無関係むかんけいな目的もくてきで使用しようされる。

各かく言語げんごにおける用法ようほう

ラテン・アルファベット

英語えいご

主おもにフランス語ふらんすごからの借用しゃくよう語ごに使つかわれるほか、zoölogy や coöperate, reëlect のように複数ふくすうの母はは音字おんじの並ならびがダイグラフでないことを表あらわすために使つかうことがある。ただし、この用法ようほうは現在げんざいではほとんど廃すたれている。

固有名詞こゆうめいしでは、語末ごまつの e を発音はつおんすることを表あらわすために使つかわれることがある。

• 例れい：Chloë（クローイー）、Zoë（ゾーイー）、Brontë（ブロンティー）。

フランス語ふらんすご

複数ふくすうの文字もじでひとつの音おとを表あらわすダイグラフを多用たようするため例外れいがい的てきな「ダイグラフにしない文字もじ」をトレマのついた ë, ï, ü, ÿ によって明示めいじする。

• ë: canoë（カノエ）、noël（ノエル）、Citroën（シトロエン）。トレマを使つかわずに書かくと oe 部分ぶぶんは [wa] という異ことなる発音はつおんになる。
• ï: naïf（[na.if] ナイフ）。トレマを使つかわずに naif と書かくと [nɛf]（ネフ）と発音はつおんすることになる。
• ü: capharnaüm（カファルナオム：カペナウム、雑多ざったな物もので埋うまった場所ばしょ）。
• ÿ: L'Haÿ-les-Roses（ライ＝レ＝ローズ）。ÿ は一部いちぶの固有名詞こゆうめいしにのみあらわれ、頻度ひんどがきわめて低ひくい。

1990年ねんの新しん正書法せいしょほうでは、gu の後うしろに母音ぼいんが置おかれたとき、u を発音はつおんする場合ばあいは必かならず ü と書かく。これに従したがえば、従来じゅうらい aiguë（エギュ、aigu「鋭するどい」の女性じょせい形がた）と書かかれていた語かたりは aigüe と書かくことになった。

固有名詞こゆうめいしにおいては、Saint-Saëns（サン＝サーンス）、Staël（スタール）のような例外れいがい的てき用法ようほうがある（実質じっしつ的てきに ë の黙だま字じ化か）。

ドイツ語ご

同形どうけいのウムラウトとは別べつで、複数ふくすうの文字もじを切きり離はなして別々べつべつに読よむことを意味いみするトレマが存在そんざいする。ë が Piëch（ピエヒ）のように固有名詞こゆうめいしにおいて使つかわれることがある。ドイツ語ごでは ie がダイグラフなので、トレマを使つかわずに Piech と書かくと「ピーヒ」と発音はつおんすることになる。

スペイン語ご

もっぱらüが güe, güi においてのみ用もちいられ、それぞれ /gwe/, /gwi/ という発音はつおんを表あらわす。トレマを用もちいずに gue, gui と書かくと、uが発音はつおんされず /ge/, /gi/ という発音はつおんを表あらわすことになる。

ポルトガル語ご

基本きほん的てきにポルトガル語ごではトレマを用もちいないが、過去かこにブラジルでは gue, gui, que, qui の4つの綴つづりにおいて u を発音はつおんする場合ばあいに、üを用もちいる表記ひょうき法ほうが2012年ねんまで使用しようされていた。

オランダ語ご

フランス語ふらんすごと同おなじく複数ふくすうの母はは音字おんじが続つづく際さい、それがダイグラフでないことを表あらわすために、後うしろの母はは音字おんじの上うえにトレマを加くわえた ä, ë, ï, ö, ü を用もちいる。また ä, ö, ü はウムラウトとしてドイツ語ごからの借用しゃくよう語ごに使つかわれることがある。

ほかには、正書法せいしょほうとしては認みとめられていないが、しばしば ij のかわりに ÿ が用もちいられることがある（筆記ひっきした際さいの字形じけいが似にているため）。

カタルーニャ語ご・オクシタン語ご

母はは音字おんじのあとの i、u が二に重母音じゅうぼいんの一部いちぶでないことを示しめすために ï, ü を用もちいる。

ウェールズ語ご

複数ふくすうの母はは音字おんじが続つづくときに、切きって読よむことを示しめすために用もちいる。母はは音字おんじの前まえの i が /j/ ではなく母音ぼいんの /i/ であることを示しめすのに ï を用もちいる例れいが最もっとも多おおい。

• 例れい：mwncïod （mwnci 「猿さる」の複数ふくすう形がた）

マダガスカル語ご

軟口蓋なんこうがい鼻音びおん /ŋ/ の音おとを表記ひょうきするために、n の上うえにトレマを付ふすことがある（n̈）。硬かた口蓋こうがい鼻音びおん /ɲ/ を表あらわす ñ と混同こんどうしやすい上うえ、"ng" と表記ひょうきすることで代用だいようできるため、次第しだいに用もちいられなくなっている。

ギリシャ・アルファベット

現代げんだいギリシャ語ごでは、ϊ, ϋ およびそれにアクセントのついた ΐ, ΰ を使用しようする。現代げんだいギリシャ語ごでは複数ふくすう字じでひとつの母音ぼいんを表あらわすことがあり（例れい: αあるふぁιいおた は /e/、εいぷしろんιいおた, οおみくろんιいおた, υうぷしろんιいおた は /i/, οおみくろんυうぷしろん は /u/）、また υうぷしろん は子音しいん（/f/, /v/）として読よまれることもあるが、トレマ（διαλυτικά ズィアリティカ）はこれらを本来ほんらいの音おとで発音はつおんさせるために用もちいる。

音声おんせい記号きごう

国際こくさい音声おんせい記号きごうでは、補助ほじょ記号きごうとして使つかわれる。

• 文字もじの上うえに付ふして、中ちゅう舌した化かを表あらわす。
• 文字もじの下したに付ふして、かすれ音おんを表あらわす。

符号ふごう位置いち

記号きごう	Unicode	JIS X 0213	文字もじ参照さんしょう	名称めいしょう
¨	U+00A8	1-1-15	¨ ¨ ¨	ウムラウト, ダイエレシス DIAERESIS
̈	U+0308	1-11-77	̈ ̈	ダイエレシス(合成ごうせい可能かのう), 中ちゅう舌した母音ぼいん化か COMBINING DIAERESIS
̤	U+0324	1-1-82	̤ ̤	下しもダイエレシス(合成ごうせい可能かのう), かすれ音おん COMBINING DIAERESIS BELOW
΅	U+0385	-	΅ ΅	Ελληνικά διαλυτικά κかっぱαあるふぁιいおた τόνος GREEK DIALYTIKA TONOS

大文字おおもじ	Unicode	JIS X 0213	文字もじ参照さんしょう	小文字こもんじ	Unicode	JIS X 0213	文字もじ参照さんしょう	備考びこう
Ä	U+00C4	1-9-27	Ä Ä Ä	ä	U+00E4	1-9-58	ä ä ä
Ǟ	U+01DE	-	Ǟ Ǟ	ǟ	U+01DF	-	ǟ ǟ	リヴォニア語ご
Ë	U+00CB	1-9-34	Ë Ë Ë	ë	U+00EB	1-9-65	ë ë ë	フランス語ふらんすご、オランダ語ご
Ḧ	U+1E26	-	Ḧ Ḧ	ḧ	U+1E27	-	ḧ ḧ	クルド語ごハワル式しき（アラビア文字もじح用よう）
Ï	U+00CF	1-9-38	Ï Ï Ï	ï	U+00EF	1-9-69	ï ï ï	フランス語ふらんすご
Ḯ	U+1E2E	-	Ḯ Ḯ	ḯ	U+1E2F	-	ḯ ḯ
Ö	U+00D6	1-9-45	Ö Ö Ö	ö	U+00F6	1-9-76	ö ö ö
Ȫ	U+022A	-	Ȫ Ȫ	ȫ	U+022B	-	ȫ ȫ	リヴォニア語ご
Ü	U+00DC	1-9-50	Ü Ü Ü	ü	U+00FC	1-9-81	ü ü ü	フランス語ふらんすご、スペイン語ご、ポルトガル語ご、中国ちゅうごく語ご（拼音）
Ǖ	U+01D5	-	Ǖ Ǖ	ǖ	U+01D6	1-8-89	ǖ ǖ	中国ちゅうごく語ご（拼音）
Ǘ	U+01D7	-	Ǘ Ǘ	ǘ	U+01D8	1-8-90	ǘ ǘ	中国ちゅうごく語ご（拼音）
Ǚ	U+01D9	-	Ǚ Ǚ	ǚ	U+01DA	1-8-91	ǚ ǚ	中国ちゅうごく語ご（拼音）
Ǜ	U+01DB	-	Ǜ Ǜ	ǜ	U+01DC	1-8-92	ǜ ǜ	中国ちゅうごく語ご（拼音）
Ṳ	U+1E72	-	Ṳ Ṳ	ṳ	U+1E73	-	ṳ ṳ	閩東語ご（平話へいわ字じ）
Ṻ	U+1E7A	-	Ṻ Ṻ	ṻ	U+1E7B	-	ṻ ṻ
Ẅ	U+1E84	-	Ẅ Ẅ	ẅ	U+1E85	-	ẅ ẅ	ウェールズ語ご
Ẍ	U+1E8C	-	Ẍ Ẍ	ẍ	U+1E8D	-	ẍ ẍ	クルド語ごハワル式しき（アラビア文字もじغ用よう）
Ÿ	U+0178	-	Ÿ Ÿ Ÿ	ÿ	U+00FF	1-9-84	ÿ ÿ ÿ	フランス語ふらんすご、イボ語ご、（オランダ語ご）

記号きごう	Unicode	JIS X 0213	文字もじ参照さんしょう	備考びこう
ẗ	U+1E97	-	ẗ ẗ	アラビア文字もじ翻こぼし字じ（ター・マルブータ ة）、小文字こもじのみ

HTML実体じったい参照さんしょうでは、Ë のように、& と uml; でトレマの付つかない文字もじを囲かこむ。