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ねつ暴走ぼうそう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

ねつ暴走ぼうそうねつぼうそうえい: thermal runaway)とは、化学かがく回路かいろ設計せっけい分野ぶんやもちいられる用語ようごで、発熱はつねつさらなる発熱はつねつまねくというせいフィードバックにより、温度おんど制御せいぎょができなくなる現象げんしょう、あるいはそのような状態じょうたいのことをす。

解説かいせつ

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この現象げんしょうしょうじると温度おんど際限さいげんなく上昇じょうしょうし、最終さいしゅうてきには機器きき破壊はかい爆発ばくはついたる。

たとえば、バイポーラトランジスタ温度おんど上昇じょうしょうしたがって電気でんき伝導でんどうせい性質せいしつっている(まけ温度おんど係数けいすうつ)。このため、適切てきせつ処理しょりおこなわずに利用りようした場合ばあい一旦いったん温度おんど上昇じょうしょうしょうじることで、よりおおきな電流でんりゅうながれ、さらなる温度おんど上昇じょうしょうまねいて、最終さいしゅうてきには素子そし破壊はかいおちいる。

ねつ破壊はかい(による故障こしょう)も、ねつによる回路かいろ部品ぶひん故障こしょうのためねつ暴走ぼうそうばれることがあるが、ねつによる素子そし自体じたい破壊はかいではないため、べつ現象げんしょうである。これは集積しゅうせき回路かいろ製造せいぞう技術ぎじゅつ未熟みじゅくであった1980ねんごろまで、比較的ひかくてきよくられた故障こしょうひとつである。

なんらかの外因がいいん急激きゅうげき温度おんど上昇じょうしょうするなど)で集積しゅうせき回路かいろダイうえクラックゆがによる構造こうぞう破壊はかい発生はっせいし、低温ていおんでは導通どうつう状態じょうたいにあるものの一定いってい温度おんどえると破壊はかいされた部分ぶぶん導通どうつううしなわれ、装置そうち異常いじょう動作どうさこす。異常いじょう動作どうさしたのち集積しゅうせき回路かいろ搭載とうさいした装置そうちたとえばコンピュータ)を一定いってい時間じかんやすと機能きのう回復かいふくするため、まったちが現象げんしょうであるもののねつ暴走ぼうそう呼称こしょう使つかわれた。

現在げんざい集積しゅうせき回路かいろ温度おんどエージングによってこれらの欠陥けっかんふくまれている製品せいひんこう行程こうていのぞいているため、現在げんざいきわめてまれ故障こしょうとなった。またこのような故障こしょうゆるされない装置そうちでは回路かいろ恒温こうおんそうかれたり、あるいは動作どうさ関係かんけいなく発熱はつねつ冷却れいきゃく一定いってい温度おんど拮抗きっこう状態じょうたいとなるように設計せっけいされている(N-MOSプロセス技術ぎじゅつとう)。砂漠さばく地帯ちたいでの運用うんよう想定そうていされる軍事ぐんじようコンピュータ[1]ちょう低温ていおんからちょう高温こうおんまではげしい温度おんど変化へんかさらされるECU航空こうくう宇宙うちゅうけや人工じんこう衛星えいせい採用さいようされている。

そのだい規模きぼ集積しゅうせき回路かいろ採用さいようされているゆがみシリコン技術ぎじゅつは、結晶けっしょう格子こうしおおきさがことなるシリコンゲルマニウム合金ごうきんによって電子でんし移動いどう速度そくど加速かそくし、応答おうとう速度そくど改善かいぜんする技術ぎじゅつである。しかし、温度おんど変化へんか非常ひじょう鈍感どんかんである(100以上いじょうになっても問題もんだいはない)シリコンにくらべて、ゲルマニウムは温度おんど敏感びんかんで、温度おんど上昇じょうしょうすると固定こていされていなければならない回路かいろ定数ていすう変化へんかしてしまい正常せいじょう機能きのう喪失そうしつするおそれがある。このためゆがみシリコン技術ぎじゅつ使用しようした集積しゅうせき回路かいろ動作どうさ温度おんど比較的ひかくてき低温ていおん(35 - 65℃)で稼働かどうさせるよう回路かいろじょう温度おんどセンサーを多数たすう配置はいちしてダイ全域ぜんいき温度おんど監視かんしして通電つうでん状態じょうたい制御せいぎょしたり、非常ひじょう強力きょうりょく冷却れいきゃく装置そうち(ヒートシンクなど)を併用へいようすることおおい。

最近さいきん事例じれい

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最近さいきんねつ暴走ぼうそう化学かがく反応はんのう電子でんし回路かいろふくあいによるケースがよくられる。そのひとつとしてリチウムイオン電池でんち異常いじょう発熱はつねつ問題もんだいなど、設計せっけいじょう不具合ふぐあいによるねつループによる事故じこ多発たはつしている。

ボーイング787のバッテリー問題もんだい」の場合ばあいボーイングしゃCEOのジェームズ・マックナーニは、ねつ暴走ぼうそうであるという指摘してきけて「ねつ暴走ぼうそうというものには色々いろいろ解釈かいしゃくがある」[2]としている。

不具合ふぐあいなどとうほどに大袈裟おおげさでなくとも、ねつ暴走ぼうそう発生はっせい要因よういんはいくつもある。いちれいとしては、起電きでんりょくまけ温度おんど係数けいすうをもっている電池でんち(たとえば密閉みっぺいがたニッケル・カドミウム蓄電池ちくでんち)をてい電圧でんあつ充電じゅうでんすると、温度おんど上昇じょうしょうにより起電きでんりょく低下ていかし、充電じゅうでん電流でんりゅう増加ぞうかしてさらなる温度おんど上昇じょうしょうまねく、というせい帰還きかん危険きけんがある。

コンピュータにおけるねつ暴走ぼうそう

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パソコンとうのコンピュータにおいて、こう負荷ふかあたつづけた結果けっか内部ないぶ温度おんどたかまり、ソフトウェアの異常いじょう動作どうさ異常いじょう終了しゅうりょう最悪さいあく場合ばあいOSのハングアップ(フリーズ)やさい起動きどうこすことを場合ばあいにも使つかわれる。

脚注きゃくちゅう

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