玄げん宮園みやその

玄げん宮園みやその（げんきゅうえん）は、滋賀しが県けん彦根ひこね市しにある旧きゅう大名だいみょう庭園ていえん。国くにの特別とくべつ史跡しせき「彦根ひこね城跡じょうせき」の区域くいき、および隣接りんせつする楽々園らくらくえんとともに「玄げん宮みや楽々園らくらくえん」として国くにの名勝めいしょうに指定していされている。2015年ねん（平成へいせい27年ねん）4月がつ24日にち、「琵琶湖びわことその水辺みずべ景観けいかん－祈いのりと暮くらしの水みず遺産いさん」の構成こうせい文化財ぶんかざいとして日本にっぽん遺産いさんに認定にんていされた^[1]。

概要がいよう

玄げん宮園みやそのの原形げんけいとなる庭園ていえんが造営ぞうえいされた時期じきや規模きぼは明確めいかくではないが、江戸えど時代じだい初期しょきの延のべ宝たから6年ねん（1678年ねん）に彦根ひこね藩はん4代だい藩主はんしゅ井伊いい直ただし興きょうが整備せいびしたといわれる。江戸えど時代じだい後期こうきの文化ぶんか10年ねん（1813年ねん）には第だい11代だい藩主はんしゅ井伊いい直中ただなかの隠居いんきょ屋敷やしきとして再さい整備せいびされ、今日きょうに近ちかい形かたちに整ととのえられたといわれる。玄げん宮園みやそのは御殿ごてん部分ぶぶんの「楽々園らくらくえん」に対たいして名付なづけられたものであるが、この呼称こしょうがいつ頃ごろから用もちいられるようになったかははっきりしない。

玄げん宮園みやそのの位置いちは城内じょうないの北東ほくとう部ぶで内うち濠ほりと琵琶湖びわこの入江いりえ（松原まつばら内ない湖みずうみ）に挟はさまれた第だい二に郭くるわと呼よばれる曲輪くるわ内ないにあり、築城ちくじょう当初とうしょは重臣じゅうしん川手かわて主ぬし水すいの屋敷やしきが建たてられていたが、主しゅ水みずが大坂おおさか夏なつの陣じんで死亡しぼうしてからは空家あきやとなり、寛永かんえい元年がんねん（1624年ねん）ごろに下屋敷しもやしきが建設けんせつされたといわれる。入江いりえ側がわは1940年代ねんだいに第だい二に郭くるわの間近まぢかまで干拓かんたくが進すすみ現在げんざいは堀ほり状じょうの溝みぞで囲かこまれる形かたちとなっているが、往時おうじは庭園ていえん北側きたがわの水門すいもんから舟ふねで琵琶湖びわこまで出でられるようになっていた。

園内えんないは中国ちゅうごく湖南こなみ省しょうの洞ほら庭にわ湖みずうみにある玄げん宗むね皇帝こうてい（唐とう時代じだい）の離宮りきゅう庭園ていえんを参考さんこうに、「瀟湘八景はっけい」を「近江おうみ八景はっけい」に置おき換かえて作さく庭にわされたといわれる。天守てんしゅを借景しゃっけいとして、中心ちゅうしんの入いり組くんだ池いけには4つの島しまと9つの橋はしが架かかり、畔ほとりには臨池りんち閣かく、鳳おおとり翔しょう台だい、八景はっけい亭ていなどの建物たてものが配はいされている。

西側にしがわにある旧藩きゅうはん時代じだい藩主はんしゅの下屋敷しもやしきが楽々園らくらくえんで、東側ひがしがわにある回遊かいゆう式しきの庭園ていえんを玄げん宮園みやそのと呼よぶ。玄げん宮園みやそのは近江おうみ八景はっけいになぞらえられており、中なかの亭ちん屋やを「八景はっけい亭てい」と呼よぶ^[2]。　楽々園らくらくえんは四よん代だい藩主はんしゅ直ちょく興きょうが延のべ宝たから五ご年ねん（1677年ねん）に竣工しゅんこうし、同どう七なな年ねんに竣成しゅんせいしたもので、藩士はんし松本まつもと行ゆき右みぎ衛門えもんの造園ぞうえんと伝つたえられている。その後ご七なな代だい藩主はんしゅ直ちょく惟おもんみの代だいになって、享とおる保ほ三さん年ねん（1718年ねん）倹約けんやくの趣旨しゅしにより、園えん中ちゅう玄関げんかんと台所だいどころなどを取とり払はらい縮小しゅくしょうしたが、文化ぶんか十じゅう年ねん（1813年ねん）十じゅう一いち代だい藩主はんしゅ直中ただなかが隠居いんきょするに際さいし、新館しんかんを増築ぞうちくして移うつり住すみ、槻けやき御殿ごてんと称しょうした。十じゅう二に代だい直じき亮あきら、十じゅう三さん代だい直弼なおすけも数寄屋すきやを増設ぞうせつし、二に階かい建だてを築きずいた^[2]。

これらの殿舎でんしゃの東ひがしにみられる数寄屋すきやを囲かこむ広ひろい庭にわが「槻つきのお庭にわ」と呼よばれる今いまの玄げん宮園みやそので、数寄屋造すきやづくりの亭ちん屋やが八景はっけい亭ていである^[2]。

　八景はっけい亭ていは明治めいじ初年しょねん（1868年ねん）、彦根ひこねの紙質かみしつ商しょう、富商ふしょうの安居あんご喜八きはちが幕府ばくふより払はらい下さげを受うけたが、同どう十じゅう九きゅう年ねん（1896年ねん）、再ふたたび井伊いい家かが買かい戻もどし、井伊いい家かの所有しょゆうのもとで料理りょうり旅館りょかん業ぎょうに使用しようさせた。明治めいじ三さん十じゅう年ねん（1897年ねん）、楽々園らくらくえん八景はっけい亭ていの営業えいぎょうをまかされていた、楽々園らくらくえん八景亭取締役阿知波勘次郎（湖東ことう地方ちほうの富豪ふごう）らの申もうし入いれにより、町まちが引ひき受うけることになり、同どう三さん十じゅう二に年ねん（1899年ねん）から町まちが一括いっかつして管理かんりすることになった。昭和しょうわ九きゅう年ねん（1934年ねん）から料理りょうり旅館りょかんとして、今いまの営業えいぎょう者しゃが営業えいぎょうを行おこなっている^[2]。