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井伊いい氏し

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア（Wikipedia）』
（井伊いい家かから転送てんそう）
井伊いい氏し
家紋
彦根ひこね橘たちばな（ひこねたちばな）
本姓ほんせい 称しょう・藤原ふじわら北きた家か良りょう門流もんりゅう?または藤原ふじわら南みなみ家か為ため憲けん流りゅう工藤くどう氏し流りゅう?
家いえ祖そ 井伊いい共保きょうほ
種別しゅべつ 武家ぶけ
華族かぞく（伯爵はくしゃく）
出身しゅっしん地ち 遠江とおとうみ国こく引佐いなさ郡ぐん渭伊郷きょう井伊谷いいのや
主おもな根拠地こんきょち 遠江とおとうみ国こく井伊谷いいのや
近江おうみ国こく彦根ひこね
滋賀しが県けん彦根ひこね市し など
著名ちょめいな人物じんぶつ 井伊いい直ただし虎とら
井伊いい直政なおまさ
井伊いい直孝なおたか
井伊いい直弼なおすけ
井伊いい直愛なおみ
支流しりゅう、分家ぶんけ 兵部ひょうぶ少しょう輔家（武家ぶけ・華族かぞく（子爵ししゃく））
赤あか佐たすく氏し（武家ぶけ）
渋川しぶかわ氏し（武家ぶけ）
奥山おくやま氏し（武家ぶけ）
久ひさ頭あたま郷きょう奥山おくやま氏し（武家ぶけ）
貫ぬき名めい氏し（武家ぶけ）
田中たなか氏し（武家ぶけ）
井手いで氏し（武家ぶけ）
谷津たにつ氏し（武家ぶけ）
上野うえの氏し（武家ぶけ）
井い平たいら氏し（武家ぶけ）
田沢たざわ氏し（武家ぶけ）
松田まつだ氏し（武家ぶけ）
岡おか氏し（武家ぶけ）
中野なかの氏し（武家ぶけ）
晝間ひるま氏し（武家ぶけ）
中井なかい氏し（社家しゃけ）
凡例はんれい / Category:日本にっぽんの氏族しぞく

井伊いい氏し（いいし）は、武家ぶけ・華族かぞくだった日本にっぽんの氏族しぞく。近世きんせい大名だいみょうとしての祖そ・井伊いい直政なおまさは徳川とくがわ家康いえやすに仕つかえ、新参しんざんながら若わかくして徳川とくがわ家中かちゅう最大さいだいの所領しょりょうを与あたえられるまでになり徳川とくがわ四天王してんのうに数かぞえられた。子孫しそんも近江おうみ国こく彦根ひこね藩はんの主家しゅかとして譜代ふだい大名だいみょう中ちゅう最大さいだいの石高こくだかを有ゆうし、幕府ばくふ大老たいろうを輩出はいしゅつした。維新いしん後こう華族かぞくに列れっし伯爵はくしゃく家いえとなる[1]。

出自しゅつじ[編集へんしゅう]

井伊いい氏しは藤原ふじわら北きた家かの後裔こうえい（系譜けいふ上じょうでは藤原ふじわら良りょう門もんの息子むすこである藤原ふじわら利とし世よの子孫しそんとされる）として、江戸えど時代じだいの『寛永かんえい諸家しょか系図けいず伝でん』で、公式こうしきに称しょうしているが、『尊卑そんぴ分脈ぶんみゃく』など優良ゆうりょうな系図けいず史料しりょうにおいて藤原ふじわら利とし世せいという人物じんぶつがどこにも見みえないため、藤原ふじわら北きた家かの後裔こうえいとすることを否定ひていする説せつも存在そんざいする[2]。おなじく藤原ふじわら南みなみ家か（為ため憲けん流りゅう工藤くどう氏し）の後裔こうえいとする説せつもあり[要よう出典しゅってん]、室町むろまち時代ときよ後期こうき以来いらい「藤原ふじわら」を称しょうしている史料しりょうは現地げんちに残のこっている[注釈ちゅうしゃく 1]。

中世ちゅうせい[編集へんしゅう]

井伊いい氏しは中世ちゅうせいに約やく500年間ねんかん、遠江とおとうみ国こく井伊谷いいのや[注釈ちゅうしゃく 2] の庄しょうを本ほん貫ぬきとして治おさめたとされる。

井伊いい氏しの初はつ見みは『保ほ元もと物語ものがたり』に源義朝みなもとのよしともに従したがう兵へいとして見みえる「遠江とおのえ国こくには、横地よこち・勝田かつた・井い八郎はちろう」である。また、『吾妻あづま鏡きょう』建たて久ひさ6年ねん（1195年ねん）3月がつ10日とおか条じょうに載のる東大寺とうだいじ供養くようの行列ぎょうれつに「伊井いい介かい」、寛ひろし元もと3年ねん（1245年ねん）正月しょうがつ9日にち条じょうに載のる弓ゆみ始はじめの儀ぎに「三さん番ばん 井伊いい介かい」とみえ、有力ゆうりょくな鎌倉かまくら御家人ごけにんであったことがわかる[4]。

建治けんじ元年がんねん（1275年ねん）京都きょうと若宮わかみや八幡宮はちまんぐう社しゃの再建さいけんに当あたり、御家人ごけにんに費用ひようの捻出ねんしゅつが求もとめられた際さい、遠江とおとうみ国こく在住ざいじゅうの井伊いい氏しは3貫かん文ぶんの費用ひようを提供ていきょうした[5]。

南北なんぼく朝あさ時代じだい、井伊いい行こう直ただしは遠江とおとうみ介かいに任にんぜられ井伊いい介かい〈いいのすけ〉と称しょうした。行くだり直じきは後醍醐天皇ごだいごてんのうの皇子おうじ・宗良親王むねながしんのうの元もとに参さんじて南朝なんちょう方かたとして挙兵きょへい、井伊谷いいのや城じょう（井伊いい城しろ）に招まねいて保護ほごした。しかし、北きた朝方あさがたの高師泰こうのもろやす・仁木にき義長よしながらに攻せめられて落城らくじょうした[注釈ちゅうしゃく 3]。 浜松はままつ市し浜名はまな区く三ヶ日さんがにち町まちの大福寺だいふくじ所有しょゆうの『瑠璃るり山やま年ねん録ろく残ざん篇へん裏書うらがき』によれば、建たて武たけし3年ねん/延のべ元もと元年がんねん（1336年ねん）9月がつ、「美び差さ太郎たろう」という武士ぶしが井伊いい氏し本城ほんじょうの三岳みたけ城しろを攻撃こうげきし、「中条ちゅうじょう氏し」という者ものを討うち取とったとされる。建たて武たけし4年ねん/延のべ元もと2年ねん（1337年ねん）7月がつには、北きた朝方あさがたの駿河するが守護しゅご今川いまがわ氏しと対立たいりつしていたが三方原みかたはらでの戦たたかいに敗やぶれた。暦こよみ応おう元年がんねん（1338年ねん）には、宗良親王むねながしんのうが三さん岳たけ城じょうに入はいった。暦こよみ応おう2年ねん（1339年ねん）7・8月がつの戦たたかいでは、高師泰こうのもろやす・泰たい兼けんの攻撃こうげきを受うけ、支ささえ城じょうの鴨江かもえ城じょうが落おとされた。同年どうねん10月がつには三岳みたけ城じょうの西方せいほうを守まもる千せん頭とうヶ峯みね城じょう、さらに井伊いい氏しの庶流である上野うえの直ただし助すけの居城きょじょう、上野うえの砦とりでも落城らくじょうした。暦こよみ応おう3年ねん（1340年ねん）1月がつには、本城ほんじょうの三岳みたけ城じょうが落城らくじょうした。応おう安やす4年ねん/建徳けんとく2年ねん（1371年ねん）に今川いまがわ了俊りょうしゅんが懐なつけ良よ親王しんのう討伐とうばつのために九州きゅうしゅうへ下向げこうした際さいに従軍じゅうぐんした氏族しぞくとして、横地よこち・勝間田かつまた・奥山おくやま・井伊いい・笹ささ瀬せ・早田そうだ・河井かわいの名前なまえが見みえるため、井伊いい氏しは今川いまがわ氏しの軍門ぐんもんに降ふったとされる。九州きゅうしゅう下向げこうの際さいに従軍じゅうぐんした井伊いい氏しの個人こじん名めいは不明ふめいであり、井伊いい氏し庶流の奥山おくやま氏しの奥山おくやま直ただし朝あさの名前なまえが見みえる。直ちょく朝あさは、天授てんじゅ元年がんねん/建徳けんとく2年ねん（1375年ねん）3月がつ3日にちの背振せふり山やまの戦たたかいで討死うちじにした。また、至徳しとく元年がんねん/元もと中なか元年がんねん（1384年ねん）5月がつには、直ちょく朝あさの子こ・奥山おくやま朝ちょう藤ふじが、宗良むねなが親ちかし主ぬしの弟おとうとにあたる無文むもん元もと選せんを招まねき、寺地てらちを寄進きしんして方広寺ほうこうじを建立こんりゅうしている[7][8][9][10]。

戦国せんごく時代じだいの花倉はなぐらの乱らんや河東かわとうの乱らんでは今川いまがわ義元よしもとと対立たいりつする側がわに付つき、駿しゅん遠とおを領りょうする義元よしもととは微妙びみょうな関係かんけいであった。桶おけ狭間はざまの戦たたかいで井伊いい直盛なおもりは義元よしもとに従したがって討うち死じにしたが、養子ようしの直ちょく親おやは謀反むほんを企くわだてたとして戦後せんごまもなく今川いまがわ氏真うじざねに討うたれている。一族いちぞくを多おおく失うしなったこの遠とお州しゅう錯乱さくらんの時期じきに、直盛なおもりの子この井伊いい直ただし虎とらが家督かとくを継ついだが、結果けっかとして支配しはい力りょくは低下ていか、勢力せいりょくは大おおきく衰退すいたいし、井伊谷いいのや城じょうと累代るいだいの所領しょりょうは家臣かしんの横領おうりょうや武田たけだ信玄しんげんの侵攻しんこうにより数すう度ど失うしなわれている[11]。

近世きんせい以降いこう[編集へんしゅう]

井伊いい氏しの軍旗ぐんき

宗家そうけ（彦根ひこね藩主はんしゅ家か・伯爵はくしゃく家か）[編集へんしゅう]

1575年ねん（天正てんしょう3年ねん）、直ちょく親おやの遺児いじの井伊いい直政なおまさ（後のちに徳川とくがわ四天王してんのうの1人ひとりとなる）は今川いまがわ氏しを滅ほろぼした徳川とくがわ家康いえやすを頼たより、多おおくの武功ぶこうをたて、1590年ねん（天正てんしょう18年ねん）には家康いえやすの関東かんとう入府にゅうふに伴ともない上野うえの国こく箕輪みのわ12万まん石せき、関ヶ原せきがはらの戦たたかいの後のちには近江おうみ国こく佐和山さわやまに18万まん石せきを与あたえられる。

直政なおまさの死後しご、子この直ちょく勝かちは1604年ねん（慶長けいちょう9年ねん）に同国どうこく彦根ひこねに築城ちくじょうした。この築城ちくじょうは幕府ばくふが諸しょ大名だいみょうに御ご手伝てつだえ普請ふしんを命めいじたものであった。直ちょく勝かちは1615年ねん（元和がんわ元年がんねん）幕命ばくめいにより弟おとうとの直孝なおたかに藩主はんしゅの座ざを譲ゆずった。直孝なおたかの代だいに30万まん石せきの譜代ふだい大名だいみょうとなる。直ちょく勝かちは安中あんなか藩はん3万まん石せきの藩主はんしゅとなった。

譜代ふだい大名だいみょう筆頭ひっとうとして、江戸えど時代じだいを通つうじて直ちょく澄きよし・直ちょく該・直幸なおゆき・直ちょく亮あきら・直弼なおすけと5代だい6度ど（直ちょく該が2度ど。なお直孝なおたか・直ちょく澄きよしが大老たいろうになったかどうかは議論ぎろんがある）の大老たいろう職しょくを出だした。また、堀田ほった家か、雅楽ががく頭あたま酒井さかい家か、本多ほんだ家かなどの有力ゆうりょく譜代ふだい大名だいみょうが転うたて封ふうを繰くり返かえす中なか、1度どの転てん封ふうもなかった。

江戸えど時代じだい末期まっきの藩主はんしゅ直弼なおすけは老中ろうじゅう阿部あべ正弘まさひろの死後しごに大老たいろうとなり、将軍しょうぐん後継こうけい問題もんだいでは南紀なんき派はを後援こうえんし、一いち橋きょう派はへの弾圧だんあつである安政あんせいの大獄たいごくを行おこなうが、桜田さくらだ門外もんがいの変へんで暗殺あんさつされた。その後ご、幕政ばくせいの混乱こんらんの責任せきにんを直弼なおすけに押おし付つけられる形かたちで10万まん石せきを削減さくげんされたことから、大政奉還たいせいほうかん後ご、最後さいごの藩主はんしゅ直ちょく憲けんは譜代ふだい筆頭ひっとうでありながらも藩はん論ろんを転向てんこうし、鳥羽とば・伏見ふしみの戦たたかい以降いこう戊辰戦争ぼしんせんそうでは徳川とくがわ討滅の急先鋒きゅうせんぽうとして新しん政府せいふ側がわに属ぞくして戦たたかった。その功績こうせきにより維新いしん後ごの明治めいじ2年ねん（1869年ねん）には2万まん石せきの賞しょう典てん禄ろくが下賜かしされた[12]。

同年どうねんに華族かぞく制度せいどが成立せいりつすると華族かぞくに列れっするとともに版籍はんせき奉還ほうかんで彦根ひこね藩はん知ち藩はん事ごとに転てんじ、1871年ねん（明治めいじ4年ねん）の廃藩置県はいはんちけんまで 務つとめた[12]。華族かぞく令れい施行しこう後ごで華族かぞくが五ご爵制になると、明治めいじ17年ねん（1884年ねん）7月がつ7日にちに旧きゅう中ちゅう藩はん知事ちじ[注釈ちゅうしゃく 4]として伯爵はくしゃくに列れつした[1]。井伊いい伯爵はくしゃく家かの邸宅ていたくは東京とうきょう市し淀橋よどばし区く角かく筈はずにあった[14]。

井伊いい直ただし憲けん伯爵はくしゃくの死後しご、その次男じなんの井伊いい直ただし忠ただしが爵位しゃくいを継承けいしょうした[15]。井伊いい直ただし忠ちゅう伯爵はくしゃくの子こ井伊いい直愛なおみは、井伊いい家かの旧領きゅうりょうである彦根ひこね市しの市長しちょうを1953年ねんから9期きにわたって務つとめた。現げん当主とうしゅ（18代だい）井伊いい岳夫たけおは彦根ひこね市役所しやくしょ勤務きんむ、彦根城ひこねじょう博物館はくぶつかん長ちょう。17代だい直ちょく豪ごうの長女ちょうじょ裕子ゆうこと結婚けっこんして直ちょく豪ごうの養子ようしとなり井伊いい家かを継承けいしょうした。

分家ぶんけ（与板よいた藩主はんしゅ家か・子爵ししゃく家か）[編集へんしゅう]

井伊いい直政なおまさの長男ちょうなん直ちょく勝かちは表向おもてむきは病弱びょうじゃくだったとされ、幕命ばくめいにより本家ほんけを弟おとうとに明あけ渡わたす形かたちとなった。直ちょく勝かちは亡父ぼうふ直政なおまさの官かん名めい「兵部ひょうぶ少しょう輔」を襲おそったが、この系統けいとうの家臣かしんはまた小野おの氏し等ひとしの戦国せんごく期き以来いらいの井伊いい氏し譜代ふだいが多おおかったと伝つたわる。安中あんなか藩はんから西尾にしお藩はん、掛川かけがわ藩はんと転うたて封ふうされたが、直ちょく勝かちの曾孫そうそんである掛川かけがわ藩主はんしゅ直ちょく朝あさの時ときに発狂はっきょうを理由りゆうに改易かいえきとなった。

しかし、宗家そうけ（掃部頭あたま家か）から直ちょく興きょう（直ちょく該）の四よん男なん直ちょく矩のり（直ちょく朝あさの妻つまの兄弟きょうだい）を迎むかえて家名かめい再興さいこう存続そんぞくが許ゆるされ、無む城主じょうしゅ格かく2万まん石せきの越後えちご与板よいた藩はん主おもとなった。その後ご、10代直ちょく朗ろうが若年寄わかどしよりとなって城主じょうしゅ格かくに昇格しょうかくした。

14代だい直ちょく安やすは明治めいじ17年ねん（1884年ねん）7月がつ8日にち、華族かぞく令れい施行しこうで華族かぞくが五ご爵制になったことにより旧きゅう小しょう藩はん知事ちじ[注釈ちゅうしゃく 5]として子爵ししゃく位いを与あたえられた[17]。明治めいじ29年ねん（1896年ねん）1月がつには貴族きぞく院いん議員ぎいんに選出せんしゅつされ、大正たいしょう9年ねん（1920年ねん）12月がつまで在任ざいにんした。15代だい直方ちょくほうも貴族きぞく院いん議員ぎいんを務つとめる。17代だい井伊いい脩おさむは大学だいがくで文学ぶんがくを専攻せんこうし作詞さくし家か・作曲さっきょく家かとなり[18]、作品さくひん集しゅう『鉛なまりのドラマ–井伊いい脩おさむ歌集かしゅう』などを出版しゅっぱんしている。

現げん当主とうしゅ（18代だい）井伊いい達夫たつお（旧姓きゅうせい：中村なかむら）は、甲冑かっちゅう・刀剣とうけん史学しがく研究けんきゅう家かとして知しられる。平成へいせい19年ねん（2007年ねん）に17代だい脩おさむと養子ようし縁組えんぐみして名跡みょうせきを継つぎ、2018年ねん現在げんざい、京都きょうと府ふ京都きょうと市し東山ひがしやま区く花見はなみ小路こうじにある京都きょうと井伊いい博物館はくぶつかんの館長かんちょうとなっている。NHK大河たいがドラマ『おんな城主じょうしゅ 直ちょく虎とら』の放送ほうそう開始かいしを受うけ、甲冑かっちゅう「紺こん糸いと威たけし本ほん小しょう札さつ胴丸どうまる」、脇差わきざし「直江なおえ志津しづ兼けん友作ともさくの脇差わきざし」などを展示てんじしている[19]。

家臣かしん団だん[編集へんしゅう]

井伊いい家かは直政なおまさの頃ころに領地りょうち・家臣かしんを与あたえられて家臣かしん団だんが成立せいりつし、三さん度どに渡わたる加増かぞうを受うけた近江おうみや上野うえのの出身しゅっしん家臣かしんが特とくに多おおい。また、武田たけだ氏し滅亡めつぼう後ごの武田たけだ遺のこ領りょうを巡めぐる天正てんしょう壬みずのえ午うまの乱らんにおける働はたらきで知行ちぎょう安堵あんどが行おこなわれた武田たけだ遺臣いしんや駿河するがの今川いまがわ氏し、相模さがみの後こう北条ほうじょう氏しなど旧きゅう戦国せんごく大名だいみょう家かの遺臣いしんも召めし抱かかえており、「井伊いい年譜ねんぷ」によれば武田たけだ遺臣いしんらを附属ふぞくされた初期しょきの家臣かしん団だんは「～衆しゅ」といった組くみにより編成へんせいされている[20]。

史料しりょう[編集へんしゅう]

  • 『井伊いい家か譜ふ』
  • 『井伊いい年譜ねんぷ』
  • 「井伊いい家か系譜けいふ」（『新あたらし修おさむ彦根ひこね市し史し 第だい六ろく巻かん 史料しりょう編へん 近世きんせい1』）

系図けいず[編集へんしゅう]

井伊いい氏し系図けいず
凡例はんれい
1) 実線じっせんは実子じっし、点線てんせんは養子ようし
2) 数字すうじは家督かとく継承けいしょう順じゅん。
3) 太字ふとじは掃部頭あたま家か（宗家そうけ）当主とうしゅ。斜体しゃたいは兵部ひょうぶ少しょう輔家当主とうしゅ。
藤原ふじわら良りょう門もん
 
 
 
 
利り世よ
 
 
 
 
共きょう良りょう
 
 
 
 
良春よしはる
 
 
 
 
良りょう宗むね
 
 
 
 
共きょう資し
 
 
 
 
井伊いい共保きょうほ1
 
 
 
 
共きょう宗むね2
 
 
 
 
宗そう綱つな3
 
 
 
 
共きょう章あきら4
 
 
 
 
共とも家か5
 
 
 
 
共きょう直じき6
 
 
 
 
惟直これなお7
 
 
 
 
盛もり直ただし8
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
良りょう直ただし9赤あか佐さ俊直としなお貫ぬき名めい政直まさなお
 
 
 
 
彌わたる直ただし10
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
泰たい直じき11田中たなか直家なおいえ出で手しゅ直じき時じ谷津たにつ直ただし村むら
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
行くだり直じき12上野うえの直ただし助すけ
 
 
 
 
景けい直じき13
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
忠直ただなお14岡おか直ただし藤ふじ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
直ただし氏し15中野なかの直ただし房ぼう
 
 
 
 
直ちょく平たいら16
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
直ちょく宗むね17直ちょく満まん直義ただよし直ちょく元もと
 
 
 
 
 
 
直盛なおもり18直ちょく親おや19
 
 
 
 
 
 
直ちょく虎とら直政なおまさ20
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
［兵部ひょうぶ少しょう輔家］
直ちょく勝かち 1		［掃部頭あたま家か］
直孝なおたか21
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
直好なおよし 2直ちょく滋しげる直ちょく寛ひろし直ちょく縄なわ直ちょく澄きよし22
 
 
 
 
 
 
直武なおたけ 3直ちょく興きょう 23
（直ちょく該26）
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
直ちょく朝あさ 4直ちょく堅けん直通ちょくつう24直ちょく恒つね直ちょく矩のり直ちょく惟おもんみ27直定なおさだ木俣きまた守まもる吉きち室しつ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
直ちょく矩のり 5直ちょく恒つね25直定なおさだ28/30直ちょく禔直幸なおゆき
 
 
 
直じき員いん
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
直ちょく陽ひ 6直ちょく禔29直幸なおゆき31直ちょく賢けん直ちょく峯みね
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
直じき員いん 7直ちょく尚なお直ちょく寧やすし直ちょく富とみ直中ただなか32直ちょく広ひろ真田さなだ幸みゆき専せん土井どい利とし義よし直明なおあき直ちょく容よう直ちょく致
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
直ちょく存そん 8[注釈ちゅうしゃく 6]直ちょく清きよし直ちょく亮あきら33中ちゅう顕あらわ中川なかがわ久ひさ教きょう内藤ないとう政成まさなり松平まつだいら勝まさる権けん新野しんの親ちかし良りょう直ちょく元もと横地よこち義之よしゆき内藤ないとう政まさし優ゆう直弼なおすけ内藤ないとう政義まさよし
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
直ちょく郡ぐん 9直ちょく朗ろう直ちょく頼よりゆき直ちょく元もと直弼なおすけ34内藤ないとう政文まさふみ亮あきら寿ことぶき
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
直ちょく朗ろう 10直ちょく憲けん35直ちょく咸直ちょく安やす直じき達たち
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
直ちょく広ひろ松平まつだいら忠ただし翼つばさ直ちょく経けい直ちょく忠ちゅう36
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
直ちょく暉あきら 11直愛なおみ37直弘なおひろ
 
 
 
 
 
 
直ちょく経けい 12直ちょく豪ごう38
 
 
 
 
 
 
直ちょく充たかし 13直ちょく岳たけ39
 
 
 
 
直ちょく安やす 14
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
直方のうがた 15雅まさ二郎じろう
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
直ちょく重じゅう英彰ひであき 16
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
脩おさむ 17稔みのる
 
 
 
 
達夫たつお 18
 
 
 
 
達也たつや

歴代れきだいの数かぞえ方かたには諸説しょせつある。江戸えど時代じだいには、『寛永かんえい諸家しょか系図けいず伝でん』に記しるされるとおり、江戸えど幕府ばくふや井伊いい家かで公式こうしきなものとした系図けいずは、初代しょだい共保きょうほ、2代だい共ども家か、3代だい共ども直じき、4代だい惟直これなお、5代だい盛もり直ただし、6代だい良りょう直じき、7代だい弥わたる直じき、8代だい泰たい直じき、9代行だいこう直じき、10代景けい直じき、11代だい忠直ただなお、12代だい氏直うじなお、13代だい直じき平ひらめ、14代だい直ちょく宗むね、15代だい直盛なおもり、16代だい直ちょく親おや、17直政なおまさとかぞえる。 また、幕末ばくまつに国学こくがく者しゃ長野ながの義よし言げんが作成さくせいした「訂正ていせい井い家か御ご系図けいず案あん」では、『保ほ元もと物語ものがたり』に登場とうじょうする「井い八はち郎ろう」を「5代だい道どう直じき」、南北なんぼく朝あさ期きの人物じんぶつ道みち政せい・高こう顕あらわら計けい7名めいを追加ついかして、直政なおまさを24代だいとした[21]。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 大だい永なが6年ねん「井伊いい保たもつ八幡宮はちまんぐう鐘がね銘めい写うつし」[3] に「大だい檀那だんな藤原ふじわら朝臣あそん直隆なおたか」とあり、直隆なおたかは井伊いい氏しと比定ひていされている。
  2. ^ 引佐いなさ郡ぐん井伊谷いいのや村むら井伊谷いいのや、現げん・静岡しずおか県けん浜松はままつ市し浜名はまな区く引佐いなさ町まち井伊谷いいのや及および同区どうく神宮寺じんぐうじ町まちのうち、井伊谷川いいのやかわ西岸せいがん。井伊谷いいのや宮みや、龍りゅう潭寺、井伊谷いいのや駅えきなどの所在地しょざいち。なお井伊谷いいのや城じょうは東岸とうがん。
  3. ^ 延のべ元もと元年がんねん（1334年ねん）8月がつ（または9月がつ）、宗良親王むねながしんのうは井伊いい行こう直じきの招まねきに応おうじて遠江とおのえ国こくの井伊谷いいのや城じょうに入はいる[6]。
  4. ^ 旧きゅう彦根ひこね藩はんは現げん米こめ9万まん4030石せき（表高おもてだか20万まん石せき）で現げん米こめ5万まん石せき以上いじょう15万まん石せき未満みまんの旧きゅう中ちゅう藩はんに該当がいとう[13]
  5. ^ 旧きゅう与板よいた藩はんは現げん米こめ7190石せき（表高おもてだか2万まん石せき）で現げん米こめ5万まん石せき未満みまんの旧きゅう小しょう藩はんに該当がいとう[16]
  6. ^ 桑名くわな藩主はんしゅ・松平まつだいら忠ただし雅みやび四よん男なん。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b 小田部おたべ雄次ゆうじ 2006, p. 323.
  2. ^ 宝たから賀が寿男としお「遠江とおとうみ井伊いい氏しの系譜けいふ」『古いにしえ樹じゅ紀之のりゆき房間ふさま』、2017年ねん。
  3. ^ 『静岡しずおか県けん史し　資料しりょう編へん７　中世ちゅうせい３』942
  4. ^ ジャパンナレッジ「井伊谷いいのや村むら[1]
  5. ^ 国立こくりつ歴史れきし民俗みんぞく博物館はくぶつかん所蔵しょぞう「造みやつこ六ろく条じょう八幡やはた新宮しんぐう用途ようと支配しはい事ごと」、『寒河江さがえ市し史し　大江おおえ氏しならびに関係かんけい史料しりょう』p.390-397。遠江とおのえ国こく住じゅう　井伊いい介かい跡あと
  6. ^ 池上いけがみ大だい一いち『与板よいた藩はん史し（上巻じょうかん）』1982年ねん、与板よいた藩はん史し刊行かんこう会かい、85-86頁ぺーじ。
  7. ^ 『今川いまがわ家か譜ふ』
  8. ^ 『太平たいへい記き』
  9. ^ Hello navi Shizuoka「千せん頭とうヶ峯みね城跡じょうせき[2]」
  10. ^ 戦国せんごくヒストリー「【直ちょく虎とら連載れんさい：第だい3回かい】平安へいあん・鎌倉かまくら・南北なんぼく朝あさ期き -直ちょく虎とら前史ぜんし-[3]」
  11. ^ 『井伊いい家か伝記でんき』
  12. ^ a b 新田にった完かん三さん 1984, p. 679.
  13. ^ 浅見あさみ雅男まさお 1994, p. 123.
  14. ^ 華族かぞく大鑑たいかん刊行かんこう会かい 1990, p. 83.
  15. ^ 華族かぞく大鑑たいかん刊行かんこう会かい 1990, p. 84.
  16. ^ 浅見あさみ雅男まさお 1994, p. 152.
  17. ^ 小田部おたべ雄次ゆうじ 2006, p. 328.
  18. ^ 『日本にっぽんの名家めいか・与板よいた藩はん』（週刊しゅうかん読売よみうり編集へんしゅう部ぶ、1987年ねん改訂かいてい版ばん）
  19. ^ 「井伊いい美術館びじゅつかん（旧きゅう中村甲なかむらこう刀がたな修史しゅうし館かん）」（京都きょうと府ふ観光かんこう連盟れんめい・公式こうしきwebおよびパンフレット、2017年ねん）
  20. ^ 小宮山こみやま敏和としかず「井伊いい直政なおまさ家臣かしん団だんの形成けいせいと徳川とくがわ家中かちゅうでの位置いち」『学習がくしゅう院いん史学しがく』40号ごう、2002年ねん。 
  21. ^ 野田のだ浩子ひろこ「彦根ひこね藩はんによる井伊いい家か系譜けいふの編纂へんさん」『彦根城ひこねじょう博物館はくぶつかん研究けんきゅう紀要きよう』8号ごう、1997年ねん。 

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 浅見あさみ雅男まさお『華族かぞく誕生たんじょう 名誉めいよと体面たいめんの明治めいじ』リブロポート、1994年ねん（平成へいせい6年ねん）。 
  • 小田部おたべ雄次ゆうじ『華族かぞく 近代きんだい日本にっぽん貴族きぞくの虚像きょぞうと実像じつぞう』中央公論ちゅうおうこうろん新しん社しゃ〈中公新書ちゅうこうしんしょ1836〉、2006年ねん（平成へいせい18年ねん）。ISBN 978-4121018366。 
  • 新田にった完かん三さん『内閣ないかく文庫ぶんこ蔵ぞう諸侯しょこう年表ねんぴょう』東京とうきょう堂どう出版しゅっぱん、1984年ねん（昭和しょうわ59年ねん）。 
  • 華族かぞく大鑑たいかん刊行かんこう会かい『華族かぞく大鑑たいかん』日本にっぽん図書としょセンター〈日本人にっぽんじん物ぶつ誌し叢書そうしょ7〉、1990年ねん（平成へいせい2年ねん）。ISBN 978-4820540342。 

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