安中あんなか藩はん

安中あんなか藩はん（あんなかはん）は、上野うえの国こくに存在そんざいした藩はん。藩はん庁ちょうは安中あんなか城しろ（現在げんざいの群馬ぐんま県けん安中あんなか市し安中あんなか3丁目ちょうめ）。

藩はん史ふみ

徳川とくがわ四天王してんのうの一人ひとり・井伊いい直政なおまさが慶長けいちょう7年ねん（1602年ねん）に死去しきょした後のち、家督かとくは長男ちょうなんの直ちょく継つぎが継ついでいた。ところが直ちょく継つぎは生来せいらいから病弱びょうじゃくなため将器しょうきに欠かける人物じんぶつで、どちらかというと弟おとうとの直孝なおたかのほうが父ちちの才能さいのうを濃こく受うけ継ついでいた良りょう将しょうであった。大坂おおさかの陣じんにおいても直ちょく継つぎは病弱びょうじゃくで出陣しゅつじんできず、直孝なおたかが井伊いい軍ぐんを率ひきいて出陣しゅつじんし武功ぶこうを挙あげたため、元和がんわ元年がんねん（1615年ねん）2月がつ、直ちょく継つぎは直ちょく勝かちと名なを改あらため、幕命ばくめいにより彦根ひこね藩はん主おもの座ざを廃はいされて分ぶん知ちされた安中あんなか藩はん3万まん石せきの藩主はんしゅに任にんじられた。そして代かわりに直孝なおたかが彦根ひこね藩はんの家督かとくを継つぐこととなった。これが安中あんなか藩はんの立たて藩はんである。なお、直ちょく勝かちは彦根ひこね藩はん2代だい藩主はんしゅであった履歴りれきも抹消まっしょうされた。

直ちょく勝かちは城下町じょうかまち建設けんせつに尽力じんりょくした。寛永かんえい9年ねん（1632年ねん）12月15日にち、直ちょく勝かちは家督かとくを子この直好なおよしに譲ゆずって隠居いんきょした。直好なおよしは正保まさやす2年ねん（1645年ねん）6月がつ、三河みかわ西尾にしお藩はんに移うつされ、代かわって三河みかわ新城しんじょう藩はんから水野みずの元もと綱つなが2万まん石せきで入はいった。元もと綱つなは寛文ひろふみ3年ねん（1663年ねん）3月がつ、領内りょうないに検地けんちを実施じっしして藩政はんせいの基礎きそを固かためた。翌年よくねん10月がつ26日にち、元もと綱つなは家督かとくを子この元もと知ちに譲ゆずって隠居いんきょした。しかし元もと知ちはその妻つま（岡崎おかざき藩はん主あるじ水野みずの忠ただし善ぜんの娘むすめ）への傷害しょうがい事件じけんを起おこしたため、寛文ひろふみ7年ねん（1667年ねん）5月がつ28日にちに領地りょうちを没収ぼっしゅうされて信濃しなの松本まつもと藩はん預あずかりの身みとなった。

同年どうねん6月がつ8日にち、相模さがみ国こく内うちから堀田ほった正俊まさとしが2万まん石せきで入はいる。正俊まさとしは延のべ宝たから7年ねん（1679年ねん）7月がつ、老中ろうじゅうに昇進しょうしんしたため2万まん石せきの加増かぞうを受うけて4万まん石せきの大名だいみょうとなる。その後ご、徳川とくがわ綱吉つなよしの将軍しょうぐん擁立ようりつに貢献こうけんした功績こうせきから、天和てんわ元年がんねん（1681年ねん）2月がつ、正俊まさとしは下総しもうさ古河ふるかわ藩はん13万まん石せきに加増かぞう移うつり封ふうとなった。

同年どうねん5月がつ21日にち、下野げや内うちから板倉いたくら重しげる形がたが1万まん5000石せきで入はいった。重じゅう形かたちは貞享ていきょう3年ねん（1686年ねん）7月がつ26日にちに死去しきょし、跡あとを重じゅう同どうが同年どうねん9月がつ25日にちに継ついだ。重じゅう同どうは元禄げんろく15年ねん（1702年ねん）7月がつに陸奥みちのく泉いずみ藩はんに移うつされ、入いれ替かわりで内藤ないとう政まさし森もりが2万まん石せきで入はいった。この政せい森もりの代だいである享とおる保ほ12年ねん（1727年ねん）4月がつ、潮うしお藤左衛門とうざえもんによる年貢ねんぐ減免げんめん運動うんどうが起おこった。第だい3代だい藩主はんしゅ・政せい苗なえの代だいである寛延かんえい2年ねん（1749年ねん）2月がつ、三河みかわ挙母ころも藩はんに移うつされ、代かわって遠江とおとうみ相良さがら藩はんから板倉いたくら重しげる同どうの子この勝かつ清きよしが2万まん石せきで入はいった。

勝かつ清きよしは明和めいわ4年ねん（1767年ねん）7月がつ、西にしの丸まる老中ろうじゅうとなったため、1万まん石せきを加増かぞうされた（明和めいわ6年ねん（1769年ねん）には老中ろうじゅう）。板倉いたくら家かの歴代れきだい藩主はんしゅには学問がくもんに秀ひいでた人物じんぶつが多おおく、第だい4代だい藩主はんしゅ・勝かつ尚しょうの代だいである文化ぶんか5年ねん（1808年ねん）3月がつ、藩校はんこう・造みやつこ士し館かんが創設そうせつされた。第だい5代だい藩主はんしゅ・勝明かつあきは学者がくしゃ藩主はんしゅと称しょうされ、「西にし征せい起行きぎょう」や「東ひがし還かえ紀行きこう」など多おおくの著作ちょさくを残のこし、藩はん内ないの学問がくもん奨励しょうれいにも尽力じんりょくした。しかし安中あんなか藩はんでは天明てんめいの大だい飢饉ききんなどから次第しだいに財政難ざいせいなんと領内りょうない荒廃こうはいが深刻しんこく化かした。幕末ばくまつ期きには和宮かずのみや降嫁こうかのために中山道なかせんどうの守備しゅびを務つとめた。「偽にせ官軍かんぐん事件じけん」として有名ゆうめいな赤あか報ほう隊たい事件じけんはこの安やす中なかで起おこっている。

明治めいじ4年ねん（1871年ねん）の廃藩置県はいはんちけんで、安中あんなか藩はんは廃はい藩はんとなって安中あんなか県けん、同年どうねん10月がつに群馬ぐんま県けんに編入へんにゅうされ、藩主はんしゅ板倉いたくら家かは子爵ししゃくを授さずかった。ただし廃はい藩はん後ごの板倉いたくら家かでは、最後さいごの藩主はんしゅであった板倉いたくら勝まさる殷いんが明治めいじ5年ねん（1872年ねん）に一旦いったん隠居いんきょするも翌よく明治めいじ6年ねん（1873年ねん）に当主とうしゅを再さい襲かさね、しかしわずか2週間しゅうかん足たらずで死去しきょし、その後ごも10年ねん以上いじょうにわたって当主とうしゅの交代こうたいが相次あいついだ（詳細しょうさいは板倉いたくら勝まさる殷いん#晩年ばんねんから死後しごの家督かとく相続そうぞくを参照さんしょう）。華族かぞく令れいが施行しこうされた明治めいじ17年ねん（1884年ねん）当時とうじの板倉いたくら家かは女おんな戸主こしゅ（勝かつ殷いんの娘むすめ・花子はなこ）であったため叙爵じょしゃくを受うけず、最後さいごの川越かわごえ藩はん主おもであった松平まつだいら康やすし載の（先代せんだいの実子じっしに家督かとくを譲ゆずって旧きゅう川越かわごえ藩主はんしゅ家かを離はなれていた）が花はな子この婿むことなって板倉いたくら勝まさる観かんと名乗なのり板倉いたくら家かを継つぐことで明治めいじ19年ねん（1886年ねん）に叙爵じょしゃくを受うけた。

専門せんもん家かの検証けんしょうがなされていないが、遺構いこうとして城しろの東ひがしに位置いちする熊野くまの神社じんじゃ1箇所かしょ、および市内しない某ぼう家かに都合つごう2箇所かしょに城門じょうもんが移築いちくされ、また市内しない某ぼう家かに武器ぶき庫こが払はらい下さげられている。

安中あんなか藩はん出身しゅっしんの有名人ゆうめいじんとしては、京都きょうと市しに同志社どうししゃ英えい学校がっこう（現在げんざいの同志社大学どうししゃだいがく）を創設そうせつした新島にいじま襄じょうがいる。

歴代れきだい藩主はんしゅ

井伊いい家か

3万まん石せき。譜代ふだい。

1. 直ちょく勝かち
2. 直好なおよし

水野みずの家か

2万まん石せき。譜代ふだい。

1. 元もと綱つな
2. 元もと知ち

堀田ほった家か

2万まん石せき→4万まん石せき。譜代ふだい。

1. 正俊まさとし

板倉いたくら家か

1万まん5000石せき。譜代ふだい。

1. 重じゅう形かたち
2. 重じゅう同どう

内藤ないとう家か

2万まん石せき。譜代ふだい。

1. 政せい森もり
2. 政せい里さと
3. 政せい苗なえ

板倉いたくら家か

2万まん石せき→3万まん石せき。譜代ふだい。

1. 勝かつ清きよし
2. 勝かつ暁あきら
3. 勝かち意い
4. 勝かつ尚しょう
5. 勝明かつあき
6. 勝かつ殷いん

幕末ばくまつの領地りょうち

• 上野うえの
  • 群馬ぐんま郡ぐんのうち - 6村むら
  • 碓氷うすい郡ぐんのうち - 34村むら
• 下総しもうさ
  • 香取かとり郡ぐんのうち - 9村むら
  • 匝瑳そうさ郡ぐんのうち - 10村むら
  • 海上かいじょう郡ぐんのうち - 4村むら

記念きねん

安政あんせい2年ねん（1855年ねん）に安中あんなか藩はんで行おこなわれた安政あんせい遠足えんそくを元もとにしたマラソン大会たいかい「安政あんせい遠足えんそく 侍さむらいマラソン」が昭和しょうわ50年ねん（1975年ねん）から毎年まいとし行おこなわれている。

関連かんれん項目こうもく

• 安政あんせい遠足えんそく

外部がいぶリンク

• 安中あんなか（板倉いたくら肥前ひぜん守もり勝かつ暁あきら） | 大名だいみょう家か情報じょうほう - 武鑑ぶかん全集ぜんしゅう

先代せんだい （上野うえの国こく）

行政ぎょうせい区くの変遷へんせん 1615年ねん - 1871年ねん （安中あんなか藩はん→安中あんなか県けん）

次代じだい 群馬ぐんま県けん（第だい1次じ）