芝しば村むら藩はん

芝しば村むら藩はん（しばむらはん）は、大和やまと国こく式しき上郡かみごおり芝しば村むら（現在げんざいの奈良なら県けん桜井さくらい市し芝しば）に存在そんざいした藩はん。もとは戒重かいじゅう村むら（現在げんざいの奈良なら県けん桜井さくらい市し戒重かいじゅう）に陣屋じんやを構かまえていたため、戒重かいじゅう藩はん（かいじゅうはん）とも呼よばれるが、第だい7代だい藩主はんしゅ・織田おだ輔宜の代だいに移転いてんした。

藩はん史ふみ

織田おだ信長のぶながの弟おとうとで茶人ちゃじんとして有名ゆうめいな織田おだ有ゆう楽らく（長ちょう益えき）は、関ヶ原せきがはらの戦たたかいでは東ひがし軍ぐんに与くみして戦功せんこうを挙あげたが、その後ごは豊臣とよとみ秀頼ひでよりの大叔父おおおじに当あたるということから豊臣とよとみ氏しの家臣かしんとなっていた。ただし、これには徳川とくがわ氏しの間諜かんちょうとして豊臣とよとみ氏しに潜もぐり込こんでいたという説せつもある。しかし大坂おおさか冬ふゆの陣じんでは豊臣とよとみ氏しに与くみしていたため、豊臣とよとみ氏し滅亡めつぼう後ごに徳川とくがわ氏しに釈明しゃくめいする意思いしを表あらわすために、有楽うらくは3万まん石せきの所領しょりょうのうち、1万まん石せきを自分じぶんの隠居いんきょ料りょう（味あじ舌した藩はん）に、残のこりの1万まん石せきずつをそれぞれ四よん男なんの長政ながまさと五ご男なんの尚なお長ながに分与ぶんよして相続そうぞくさせた。この四よん男なん・長政ながまさの系統けいとうが芝しば村むら藩はん、五男いつお・尚なお長ちょうの系統けいとうが柳本やなぎもと藩はんとしてそれぞれ存続そんぞくすることとなる。

藩政はんせいの基礎きそは初代しょだい藩主はんしゅ・長政ながまさの頃ころに固かためられた。同族どうぞくの宇陀うだ松山まつやま藩はんから養子ようし入いりした第だい4代だい藩主はんしゅ・織田おだ長ちょう清きよしは、信長のぶながの曾孫そうそんにあたる。長ちょう清きよしの頃ころには長ちょう清きよし自身じしんが優すぐれた文化ぶんか人じんであったことも影響えいきょうして藩校はんこう・遷喬館かんが設立せつりつされ、藩士はんしに文武ぶんぶが奨励しょうれいされ、さらに長ちょう清きよしによって織田おだ氏しや信長のぶながの記録きろくである『織田おだ真しん記き』15巻かんが編纂へんさんされるなど、芝しば村むら藩はんは全盛期ぜんせいきを迎むかえた。長ちょう清きよしは陣屋じんやを戒重かいじゅうから岩田いわたに移うつそうと願ねがい出でて宝永ほうえい元年がんねん（1704年ねん）4月がつ11日にちに認みとめられたが、しかし長ちょう清きよしの治世ちせい末期まっき頃ごろから財政ざいせい悪化あっかが表面ひょうめん化かし、実現じつげんしなかった。正徳まさのり3年ねん（1713年ねん）9月がつ27日にちに岩田いわた村むらを芝しば村むらに改あらためたのち、芝しば村むら陣屋じんや（桜井さくらい市し織田おだ・現在げんざいの市立しりつ織田おだ小学校しょうがっこう）に移転いてんしたのは、第だい7代だい藩主はんしゅ・織田おだ輔宜の代だいである延のべ享とおる2年ねん（1745年ねん）閏うるう12月がつ12日にちのことである。ちなみに長ちょう清きよし以来いらいの歴代れきだい藩主はんしゅが陣屋じんやの移転いてんにこだわったのは、戒重かいじゅうが年貢ねんぐ収納しゅうのうに不便ふべんな土地とちだったのに対たいし、芝しば村むら（岩田いわた村むら）が藩はん領りょうの中心ちゅうしん地ちで何なにかと便利べんりだったためである。

ちなみに第だい7代だい藩主はんしゅ・輔宜の頃ころから幕命ばくめいによって幕府ばくふ領りょうの預あずかりを任まかされるようになった。延のべ享とおる3年ねん（1746年ねん）には預あずかり地ちが9万まん石せき近ちかくに達たっし、第だい8代だい藩主はんしゅ・織田おだ長ちょう教きょうの代だいになると9万まん3430石せきを任まかされるようになった。つまり、大半たいはんは預あずかり地ちであるが芝しば村むら藩はん領りょうは10万まん石せき以上いじょうになったのである。さらに預あずかり地ちの統治とうちを任まかされていた杉浦すぎうら弥左衛門やざえもんや吉田よしだ千せん左衛門さえもんらの預あずかり地ちにおける統治とうちもある程度ていど成功せいこうを収おさめたため、幕府ばくふから厚あつく賞賛しょうさんされるに至いたった。しかし宝たから暦れき3年ねん（1753年ねん）末まつ、杉浦すぎうらや吉田よしだらが行おこなった年貢ねんぐ増徴ぞうちょう政策せいさくに対たいして預あずかり地ちにおける百姓ひゃくしょう一揆いっきが頻発ひんぱつし、遂ついには百姓ひゃくしょうたちが芝しば村むら藩はんを批判ひはんして預あずかり地ちの所ところ替かえを要求ようきゅうするに至いたった。これを芝しば村むら騒動そうどうという。幕府ばくふはこの騒動そうどうを鎮圧ちんあつしたが、寛政かんせい6年ねん（1794年ねん）に預あずかり地ちにおける芝しば村むら藩はんの役人やくにんによる不正ふせいが発覚はっかくし、幕命ばくめいにより藩主はんしゅ・長ちょう教きょうをはじめとする要人ようじんが処罰しょばつされ、預あずかり地ちも全すべて召めし上あげられるに至いたった。

藩はん内ないにおいても長ちょう教きょうの時代じだいから藩はん財政ざいせいの窮乏きゅうぼう化かが深刻しんこく化かし、明和めいわ5年ねん（1768年ねん）末まつには年貢ねんぐ減免げんめんを求もとめる強訴ごうそが発生はっせいする。これに対たいして藩はんでは藩札はんさつの発行はっこうや家臣かしんの知行ちぎょう借かり上あげ、御ご用金ようきんの調達ちょうたつなどによる藩政はんせい改革かいかくが試こころみられたが、あまり効果こうかはなく、安政あんせい6年ねん（1859年ねん）には藩はんの借金しゃっきんは銀ぎん2693貫かんという莫大ばくだいなものになったと言いわれている。

幕末ばくまつ期き、最後さいごの藩主はんしゅである織田おだ長ちょう易えきは天誅てんちゅう組ぐみ追つい捕との功績こうせきを挙あげている。しかし明治維新めいじいしん頃ころから幕府ばくふより離はなれて新しん政府せいふ側がわに与くみし、維新いしん後ごは高取たかとり藩はんと共ともに大和やまと国内こくないにおける御料ごりょうの取締とりしまりを命めいじられた。明治めいじ2年ねん（1869年ねん）の版籍はんせき奉還ほうかんで長ちょう易えきは藩はん知事ちじとなり、同どう4年ねん（1871年ねん）の廃藩置県はいはんちけんで芝しば村むら藩はんは廃はい藩はんとなった。藩はん領りょうのうち、摂津せっつ国こく島しま下郡しもごおりにおける領地りょうちは大阪おおさか府ふ、大和やまと山辺やまべ郡ぐんと式しき上郡かみごおりは奈良なら県けんにそれぞれ編入へんにゅうされた。

代々だいだいの墓所はかしょは桜井さくらい市内しないにある慶田よしだ寺てらであり、有楽うらくの分骨ぶんこつの墓標ぼひょうもある。なお、織田おだ氏しの諸しょ藩はんでは他たに、織田おだ信雄のぶおの系統けいとうで天童てんどう藩はん、柏原かしわばら藩はんが、有楽うらくの系統けいとうでは上述じょうじゅつの柳本やなぎもと藩はんが、明治維新めいじいしんまで存続そんぞくした。有楽うらくの系統けいとうは他たに野村のむら藩はんが存在そんざいしたが、江戸えど時代じだい初期しょきに除じょ封ふうじ、無む嗣断絶だんぜつしている。

歴代れきだい藩主はんしゅ

織田おだ家か

1万まん石せき 外様とざま

1. 織田おだ長政ながまさ（ながまさ）【元和がんわ元年がんねん（1615年ねん）8月がつ12日にち藩主はんしゅ就任しゅうにん－万治まんじ2年ねん（1659年ねん）12月23日にち隠居いんきょ】
2. 織田おだ長ちょう定じょう（ながさだ）【万まん治ち2年ねん12月23日にち藩主はんしゅ就任しゅうにん－寛文ひろふみ12年ねん（1672年ねん）閏うるう6月がつ4日にち死去しきょ】
3. 織田おだ長明ちょうめい（ながあきら）【寛文ひろふみ12年ねん8月がつ6日にち藩主はんしゅ就任しゅうにん－天和てんわ3年ねん（1683年ねん）5月がつ2日にち隠居いんきょ】
4. 織田おだ長ちょう清きよし（ながずみ）【天和てんわ3年ねん5月がつ2日にち藩主はんしゅ就任しゅうにん－正徳まさのり4年ねん（1714年ねん）2月がつ13日にち隠居いんきょ】
5. 織田おだ長ちょう弘ひろし（ながひろ）【正徳しょうとく4年ねん2月がつ13日にち藩主はんしゅ就任しゅうにん－正徳しょうとく4年ねん7月がつ19日にち死去しきょ】
6. 織田おだ長ちょう亮あきら（ながあき）【正徳しょうとく4年ねん9月がつ23日にち藩主はんしゅ就任しゅうにん－享とおる保ほ18年ねん（1733年ねん）6月がつ7日にち死去しきょ】
7. 織田おだ輔宜（すけよし）【享とおる保ほ18年ねん8月がつ2日にち藩主はんしゅ就任しゅうにん－安永やすなが7年ねん（1778年ねん）2月がつ25日にち隠居いんきょ】
8. 織田おだ長ちょう教きょう（ながのり）【安永やすなが7年ねん2月がつ25日にち藩主はんしゅ就任しゅうにん－寛政かんせい7年ねん（1795年ねん）4月がつ26日にち隠居いんきょ】
9. 織田おだ長ちょう宇（ながのき）【寛政かんせい7年ねん4月がつ26日にち藩主はんしゅ就任しゅうにん－文政ぶんせい9年ねん（1826年ねん）3月がつ27日にち隠居いんきょ】
10. 織田おだ長ちょう恭きょう（ながやす）【文政ぶんせい9年ねん3月がつ27日にち藩主はんしゅ就任しゅうにん－嘉よしみ永ひさし5年ねん（1852年ねん）3月がつ13日にち隠居いんきょ】
11. 織田おだ長ちょう易えき（ながやす）【嘉よしみ永なが5年ねん3月がつ13日にち藩主はんしゅ就任しゅうにん－明治めいじ4年ねん（1871年ねん）7月がつ14日にち免官めんかん】

藩邸はんていおよび江戸えどでの菩提寺ぼだいじ

江戸えど藩邸はんていは飯倉いいくら片町かたまちに上屋敷かみやしき、芝しば白金台しろかねだいに下屋敷しもやしきがあった。後のちに飯倉いいくら片町かたまちの方ほうが上屋敷かみやしき、白金台しろかねだいの方ほうが下屋敷しもやしきに変更へんこうされた。また、江戸えどにおける菩提寺ぼだいじは芝しば高輪たかなわの泉岳寺せんがくじを使用しようしていた。

主要しゅよう家臣かしん家か

• 杉浦すぎうら氏し
• 山下やました氏し
• 牧野まきの氏し
• 平手ひらて氏し

幕末ばくまつの領地りょうち

• 大和やまと国こく
  • 式しき上郡かみごおりのうち - 13村むら
  • 山辺やまべ郡ぐんのうち - 10村むら
• 摂津せっつ国こく
  • 島しま下郡しもごおりのうち - 4村むら

関連かんれん項目こうもく

• 有楽うらく流りゅう

先代せんだい （大和やまと国こく）

行政ぎょうせい区くの変遷へんせん 1615年ねん - 1871年ねん （芝しば村むら藩はん→芝しば村むら県けん）

次代じだい 奈良なら県けん（第だい1次じ）