臼杵きゅうしょ藩はん

臼杵きゅうしょ藩はん（うすきはん）は、豊後ぶんご国こくに存在そんざいした藩はん。藩主はんしゅは稲葉いなば家か。藩はん庁ちょうは海部かいふ郡ぐん臼杵きゅうしょ城じょう（現在げんざいの大分おおいた県けん臼杵きゅうしょ市し）に置おかれた。

概要がいよう

鎌倉かまくら時代ときよから戦国せんごく時代じだいまでの豊後ぶんご国こくは、大友おおとも氏しの支配しはい下かにあった。キリシタン大名だいみょうとして知しられる大友おおとも宗麟そうりんの治世ちせいの末期まっき、薩摩さつま国こくの島津しまつ氏しの侵攻しんこうにより大友おおとも氏しは存亡そんぼうの機きに立たたされたが（豊ゆたか薩合戦かっせん）、丹生にゅう島とう城じょう（臼杵きゅうしょ城じょうの前身ぜんしん）に籠城ろうじょうした宗麟そうりんの奮戦ふんせんなどによりこれを凌しのぎきり、豊臣とよとみ秀吉ひでよしの九州きゅうしゅう征伐せいばつにより島津しまつ氏しが討伐とうばつされたため滅亡めつぼうの危機ききを脱だっした。豊臣とよとみ政権せいけん下したでも大友おおとも氏しは豊後ぶんご一いち国こくの領有りょうゆうを許ゆるされたが、文ぶん禄ろくの役やくで大友おおとも義統よしむね（宗麟そうりんの子こ）が卑怯ひきょうなる振ふる舞まいをしたという理由りゆうで秀吉ひでよしの怒いかりを買かって改易かいえきされ、豊後ぶんごにおける大友おおとも氏しの支配しはいは終焉しゅうえんを迎むかえた。

その後ご、豊後ぶんご国こくには豊臣とよとみ家臣かしん団だんが分散ぶんさん配置はいちされることとなり、臼杵きゅうしょには太田おおた一吉かずよしが6万まん5000石せきで入はいった。6万まん5000石せきは、豊後ぶんごに分散ぶんさん配置はいちされた諸しょ大名だいみょうの中なかでは大だい封ふうである。慶長けいちょう5年ねん（1600年ねん）の関ヶ原せきがはらの戦たたかいで、一吉かずよしは石田いしだ三成みつなりとの誼よしみの経緯けいいから西にし軍ぐんに与くみしたため、戦後せんごに改易かいえきされた。その後ご、稲葉いなば貞通さだみちが西にし軍ぐんから東ひがし軍ぐんに寝返ねがえり関ヶ原せきがはら本戦ほんせんに参加さんかして武功ぶこうを挙あげたことにより、美濃みの国こく郡上ぐじょう八幡はちまん4万まん石せきから臼杵きゅうしょ5万まん石せきに加増かぞう移うつり封ふうされ、臼杵きゅうしょ藩はんの藩はん祖そとなった。貞通さだみちは斎藤さいとう道三どうさんや織田おだ信長のぶながに仕つかえ、西にし美濃みの三さん人にん衆しゅの一人ひとり稲葉いなば良りょう通どおりの子こである。

江戸えど時代じだいには、稲葉いなば姓せいを持もって幕まく閣かく・譜代ふだい大名だいみょうにまで至いたったもうひとつの稲葉いなば家かがあるが、これは林はやし正成まさしげ（稲葉いなば正成まさしげ）が良りょう通どおりの孫娘まごむすめ（稲葉いなば重通しげみちの娘むすめ）を娶めとったことから、正成まさしげが稲葉いなば氏しを称しょうし、そしてその子孫しそんが代々だいだい仕つかえたのが始はじまりである（良りょう通どおりの孫娘まごむすめの没後ぼつご、良りょう通どおりの外孫そとまごにあたる女性じょせいと再婚さいこんしたがその女性じょせいが後こうの春日局かすがのつぼねである）。貞通さだみち系けいの稲葉いなば家かは、関ヶ原せきがはらの戦たたかい後ごに徳川とくがわ家かの家臣かしんとなったため、外様とざま大名だいみょうとして扱あつかわれている。

延のべ宝たから元年がんねん（1673年ねん）、5代だい藩主はんしゅとなった景けい通どおりにより、城下町じょうかまちが整備せいびされ藩政はんせいが整ととのえられた。

江戸えど時代じだい中期ちゅうき以降いこう、藩はん財政ざいせいは逼迫ひっぱくし、12代だい幾いく通つうの天保てんぽう元年がんねん（1830年ねん）には借財しゃくざい30万まん両りょうに達たっした。このため、隠居いんきょし幾いく通つうを後見こうけんしていた10代雍通は、天保てんぽう2年ねん（1831年ねん）、家老がろうの村瀬むらせ通とおる吉きちを「御ご勝手かって方かた総そう元締もとじめ」に任にんじ、天保てんぽうの藩政はんせい改革かいかくを断行だんこうした。徹底てっていした緊縮きんしゅく財政ざいせいと新田にった開発かいはつ、さらには「御ご手段しゅだん」と称しょうする古こ借財しゃくざい棄捐（借財しゃくざいの踏ふみ倒たおし）や返済へんさい期間きかん猶予ゆうよの交渉こうしょうを行おこなうなどの、いささか乱暴らんぼうな改革かいかくを行おこなった。このため藩はん財政ざいせいはかなり好転こうてんした。

また、11代だい尊みこと通どおり以降いこうの藩主はんしゅは、いずれも早はや逝したり嗣子ししに恵めぐまれなかったため、時ときには死後しごに養子ようし縁組えんぐみ届とどけを幕府ばくふに出だす（末期まっき養子ようし）といった、綱渡つなわたり的てきな藩主はんしゅ交代こうたいを続つづけている。

弘ひろし化か元年がんねん（1844年ねん）、農民のうみんによる狩猟しゅりょうを中心ちゅうしんとした鉄砲てっぽう組ぐみを編成へんせいし、農兵のうへい隊たい「川登かわのぼり鉄炮てっぽう卒そつ」が組織そしきされた。

幕末ばくまつは佐幕さばく・倒幕とうばくどちらにも与くみせず中央ちゅうおうを傍観ぼうかんする立場たちばをとったが、明治めいじ2年ねん（1869年ねん）6月がつ、豊後ぶんご諸しょ藩はんの中なかで最もっとも早はやく版籍はんせき奉還ほうかんを行おこない、最後さいごの藩主はんしゅ久通ひさみちは明治めいじ政府せいふより藩はん知事ちじに任命にんめいされた。明治めいじ4年ねん（1871年ねん）、廃藩置県はいはんちけんにより臼杵きゅうしょ県けんとなり、その後ご、大分おおいた県けんに編入へんにゅうされた。藩主はんしゅ家かは、明治めいじ2年ねんに華族かぞくに列れっし明治めいじ17年ねん（1884年ねん）に子爵ししゃくとなった。

歴代れきだい藩主はんしゅ

稲葉いなば家か

5万まん石せき（外様とざま）

領地りょうち

豊後ぶんご国こく
- 海部かいふ郡ぐんのうち - 97か村そん（1町まち114村むら）
- 大分おおいた郡ぐんのうち - 39か村そん（46村むら^[1]）
- 大野おおの郡ぐんのうち - 143か村そん（158村むら）

※括弧かっこ内ないは『旧きゅう高こう旧領きゅうりょう取調とりしらべ帳ちょう』の数字すうじ

脚注きゃくちゅう

^ 旧きゅう高こう旧領きゅうりょう取調とりしらべ帳ちょうデータベースでは、誤あやまって熊本くまもと藩はん領りょうの野津原のつはる村むら以下いか19村むらが臼杵うすき藩はん領りょうに分類ぶんるいされている。

参考さんこう文献ぶんけん

『大分おおいた県けん史し近世きんせい篇へんⅠ』（大分おおいた県けん、1983年ねん）
児玉こだま幸みゆき多た・北島きたじま正ただし元もと監修かんしゅう『藩はん史し総覧そうらん』（新人物往来社しんじんぶつおうらいしゃ、1977年ねん）

外部がいぶリンク

臼杵うすき（稲葉いなば能登のと守弘もりひろ通どおり） | 大名だいみょう家か情報じょうほう - 武鑑ぶかん全集ぜんしゅう

先代せんだい（豊後ぶんご国こく）	行政ぎょうせい区くの変遷へんせん 1600年ねん - 1871年ねん（臼杵きゅうしょ藩はん→臼杵きゅうしょ県けん）	次代じだい大分おおいた県けん

[1] 旧きゅう高こう旧領きゅうりょう取調とりしらべ帳ちょうデータベースでは、誤あやまって熊本くまもと藩はん領りょうの野津原のつはる村むら以下いか19村むらが臼杵うすき藩はん領りょうに分類ぶんるいされている。

[1]

表ひょう話はなし編へん歴れき大政奉還たいせいほうかんから廃藩置県はいはんちけんまでの間あいだに存在そんざいした藩はん慶応けいおう3年ねん（1867年ねん）旧暦きゅうれき10月がつ - 明治めいじ4年ねん（1871年ねん）旧暦きゅうれき7月がつ
北海道ほっかいどう地方ちほう	松前まさき藩はん（館かん藩はん）
東北とうほく地方ちほう	黒石くろいし藩はん弘前ひろさき藩はん八戸はちのへ藩はん ●○盛岡もりおか藩はん（白石しらいし藩はん → 盛岡もりおか藩はん）盛岡もりおか新田にった藩はん（七なな戸こ藩はん）一関いちのせき藩はん久保田くぼた藩はん（秋田あきた藩はん）秋田あきた新田にった藩はん（岩崎いわさき藩はん）亀田かめだ藩はん本荘ほんじょう藩はん ★矢島やじま藩はん出羽でわ松山まつやま藩はん（松嶺まつみね藩はん）仙台せんだい藩はん鶴岡つるおか藩はん（大泉おおいずみ藩はん）新庄しんじょう藩はん ○長瀞ながとろ藩はん（大網おおあみ藩はん → 龍ヶ崎りゅうがさき藩はん）天童てんどう藩はん ○山形やまがた藩はん（朝日山あさひやま藩はん）上山うえやま藩はん米沢よねざわ藩はん ▲米沢よねざわ新田しんでん藩はん（米沢よねざわ藩はん） ○福島ふくしま藩はん（重原しげはら藩はん）下手渡しもてど藩はん二本松にほんまつ藩はん ○会津あいづ藩はん（斗と南みなみ藩はん）中村なかむら藩はん三春みはる藩はん ○守山もりやま藩はん（松川まつかわ藩はん）磐城いわき平ひら藩はん湯ゆ長谷ながたに藩はん泉いずみ藩はん ○白河しらかわ藩はん（棚倉たなぐら藩はん）
関東かんとう地方ちほう	沼田ぬまた藩はん館林たてばやし藩はん伊勢崎いせざき藩はん前橋まえばし藩はん高崎たかさき藩はん安中あんなか藩はん ●吉井よしい藩はん七なな日にち市し藩はん小幡おばた藩はん大田原おおたわら藩はん黒羽くろは藩はん ○高徳こうとく藩はん（曾我そが野の藩はん） ●喜連川きつれがわ藩はん烏山からすやま藩はん宇都宮うつのみや藩はん壬生みぶ藩はん吹上ふきあげ藩はん佐野さの藩はん足利あしかが藩はん水戸みと藩はん宍戸ししど藩はん笠間かさま藩はん ★松岡まつおか藩はん下館しもだて藩はん下妻しもづま藩はん常陸ひたち府中ふちゅう藩はん（石岡いしおか藩はん） ★志筑しづき藩はん土浦つちうら藩はん ○谷田部やたべ藩はん（茂木もき藩はん）牛久うしく藩はん麻生あそう藩はん結城ゆうき藩はん古河ふるかわ藩はん関宿せきやど藩はん高岡たかおか藩はん小見川おみがわ藩はん多古たこ藩はん佐倉さくら藩はん生実いくみ藩はん鶴牧つるまき藩はん ●請西じょうざい藩はん一宮いちのみや藩はん大多喜おおたき藩はん久留里くるり藩はん飯野いいの藩はん佐貫さぬき藩はん安房あわ勝山かちやま藩はん（加知かち山やま藩はん）館山たてやま藩はん ●船形ふながた藩はん ○岡部おかべ藩はん（半原はばら藩はん）忍にん藩はん岩槻いわつき藩はん川越かわごえ藩はん金沢かなざわ藩はん（六浦むつうら藩はん）荻野おぎの山中さんちゅう藩はん小田原おだわら藩はん
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藩はん庁ちょうの置おかれた地域ちいきを基準きじゅんに分類ぶんるいしているが、他たの地方ちほうに移転いてんしている藩はんもある。順番じゅんばんは『三さん百ひゃく藩はん戊辰戦争ぼしんせんそう事典じてん』による。明治めいじ期きの変更へんこう: ★＝新設しんせつ、●＝廃止はいし、○＝移転いてん・改称かいしょう、▲＝任にん知ち藩はん事前じぜんに本ほん藩はんに併合へいごう。（）内ないは移転いてん・改称かいしょう・併合へいごう後ごの藩はん名めい。（）のないものは県けんに編入へんにゅう。