白河しらかわ藩はん

白河しらかわ藩はん（しらかわはん）は、江戸えど時代じだいに陸奥みちのく国こく白河しらかわ郡ぐん白河しらかわ（現在げんざいの福島ふくしま県けん白河しらかわ市し）周辺しゅうへんを知行ちぎょうした藩はん。藩はん庁ちょうは白河しらかわ城じょう。支ささえ藩はんとして、一時期いちじき存在そんざいした白河しらかわ新田しんでん藩はんがある。

藩はん史ふみ

白河しらかわの地ちは、古代こだいにおいては白河しらかわの関せきが設もうけられ、奥羽おうう地方ちほうへの出入でいり口ぐちとして要衝ようしょうの地ちとなっていた。江戸えど時代じだいになっても白河しらかわ藩はんの締しめる地位ちいは奥羽おうう地方ちほうの外様とざま大名だいみょうの抑おさえであり、初代しょだいの丹羽にわ氏しを除のぞいては有力ゆうりょくな親藩しんぱん・譜代ふだい大名だいみょうが頻繁ひんぱんに入いれ替かわった。三方みかた領りょう知ち替がえが3度ども行おこなわれた藩はんでもある。

戦国せんごく時代じだい後期こうきからは一時いちじ会津あいづ藩はん領りょうとなった。

江戸えど時代じだい初頭しょとうの寛永かんえい4年ねん（1627年ねん）、陸奥みちのく国こく棚倉たなぐら藩はん（福島ふくしま県けん東白川ひがししらかわ郡ぐん棚倉たなぐら町まち）より丹羽にわ長重ながしげが10万まん石せき余あまりで入はいり、白河しらかわ藩はんが成立せいりつする。長重ながしげは白河しらかわ城じょうとその城下町じょうかまちを建設けんせつした。寛永かんえい20年ねん（1643年ねん）、第だい2代だい藩主はんしゅ・光重みつしげのとき、丹羽にわ氏しは陸奥みちのく国こく二本松にほんまつ藩はんに転てん封ふうとなった。

同年どうねん、上野うえの国こく館林たてばやし藩はんより榊原さかきばら忠次ただつぐが14万まん石せきで入部にゅうぶした。忠次ただつぐは母ははが徳川とくがわ家康いえやすの姪めいにあたることから一いち代だいに限かぎって松平まつだいら姓せいを許ゆるされていた。慶安けいあん2年ねん（1649年ねん）、播磨はりま国こく姫路ひめじ藩はんに転てん封ふうとなる。

替かわって越後えちご国こく村上むらかみ藩はんより本多ほんだ忠義ただよしが12万まん石せきで入部にゅうぶする。忠義ちゅうぎは新田にった開発かいはつに力ちからを注そそいで実み高だか1万まん5千せん石せきを加くわえ、慶安けいあん3年ねんから4年ねん（1650年ねん – 1651年ねん）には検地けんちを行おこなってさらに実み高だか3万まん7千せん石せきを加くわえた。さらに付加ふか税ぜいの別べつ俵たわらを徴しるして増収ぞうしゅうに努つとめたが、年貢ねんぐ増ぞうに喘あえぐ領民りょうみんが反発はんぱつ、減免げんめんを求もとめて幕府ばくふへの直訴じきそを招まねいた。第だい2代だい藩主はんしゅの忠平ちゅうへいのとき、天和てんわ元年がんねん（1681年ねん）に下野げや国こく宇都宮うつのみや藩はんへ転てん封ふうとなった。

入いれ替かわりに同地どうちより奥平おくだいら松平まつへい家かの松平まつだいら忠弘ただひろが15万まん石せきで入部にゅうぶする。病やまいに伏ふした松平まつだいら忠弘ただひろは、家老がろう・奥平おくだいら金弥きんやと黒屋くろや数馬かずまの対立たいりつを治おさめきれず、元禄げんろく5年ねん（1692年ねん）、お家いえ騒動そうどうのため藩主はんしゅ閉門へいもんの上うえ、出羽でわ国こく山形やまがた藩はんに転てん封ふうとなった。忠弘ただひろは隠居いんきょしたが、後ごを継ついだ孫まごの忠ちゅう雅みやびは減げん封ふうのみならず程ほどなく備後びんご国こく福山ふくやま藩はん・伊勢いせ国こく桑名くわな藩はんへと次々つぎつぎに転てん封ふうを命めいじられるなど厳きびしい処分しょぶんとなった。

入いれ替かわりに同地どうちより結城ゆうき松平まつへい家かの松平まつだいら直ただし矩のりが15万まん石せきで入部にゅうぶした。苦くるしい藩はん財政ざいせいの中なか、家臣かしんの禄ろく高だかを減げんじるなど財政ざいせい改革かいかくを断行だんこうしたが、これに反対はんたいする土岐とき派はにより中断ちゅうだんを余儀よぎなくされた。享とおる保ほ5年ねん（1720年ねん）には土岐とき派はが進すすめた強引ごういんな増税ぞうぜいが大だい規模きぼな農民のうみん一揆いっきを引ひき起おこした。第だい3代だい藩主はんしゅ・義知よしともは目安めやす箱ばこを設置せっちして藩政はんせい改革かいかくに努つとめたが、寛ひろし保ほ元年がんねん（1741年ねん）に姫路ひめじ藩はんへ転てん封ふうとなった。

替かわって越後えちご国こく高田たかだ藩はんより久松ひさまつ松平まつへい家かの松平まつだいら定じょう賢けんが、高田たかだ藩はん領りょうだった越後えちご国こく柏崎かしわざきの所領しょりょうと共ともに都合つごう11万まん石せきで入部にゅうぶする。この久松ひさまつ松平まつへい家かは徳川とくがわ家康いえやすの異父いふ弟おとうと久松ひさまつ定勝さだかつの三男さんなん・定綱さだつなの系統けいとうであるが、第だい2代だい藩主はんしゅの定てい邦くにの跡あとに御ご三さん卿きょう田安たやす徳川とくがわ家か初代しょだい当主とうしゅ・徳川とくがわ宗武むねたけの七なな男なんが入はいった。これが後のちに老中ろうじゅう首座しゅざに進すすみ寛政かんせいの改革かいかくを行おこなった第だい3代だい藩主はんしゅ・定信さだのぶである。文政ぶんせい6年ねん（1823年ねん）、次つぎの定永さだながのときに久松ひさまつ松平まつへい家かは旧領きゅうりょうの伊勢いせ国こく桑名くわな藩はんに転てん封ふうとなった。

替かわって武蔵むさし国こく忍にん藩はんより阿部あべ正ただし権けんが10万まん石せきで入部にゅうぶする。以後いごは幕末ばくまつまで阿部あべ家かが8代だい44年ねん間あいだ在ざい封ふうした。幕末ばくまつに分家ぶんけの旗本はたもとから本家ほんけを相続そうぞくして第だい7代だい藩主はんしゅとなった正せい外そとは間まもなく老中ろうじゅうとなり、攘夷じょうい派はの反対はんたいを押おし切きって兵庫ひょうご開港かいこうを決定けっていしたが、結果けっか的てきにこれが仇かたきとなって老中ろうじゅうを罷免ひめんされ、4万まん石せきを減げん封ふうされた。慶応けいおう2年ねん（1866年ねん）、第だい8代だい藩主はんしゅの正せい静せいのとき棚倉たなぐら藩はんに転うたて封ふうじ、白河しらかわ藩はん領りょうは二本松にほんまつ藩はんの預あずかり地ちとなったため、戊辰戦争ぼしんせんそう時ときは藩主はんしゅ不在ふざいで係争けいそうの地ちとなり、白河しらかわ城じょうは戦火せんかによって大半たいはんを焼失しょうしつした。慶応けいおう4年ねん（1868年ねん）2月がつ、正せい静せいは白河しらかわ藩はんに復帰ふっきしたが、同おなじ年ねんの明治めいじ元年がんねん12月がつ、再ふたたび棚倉たなぐら藩はんに転てん封ふうとなり白河しらかわ藩はんは廃はい藩はんとなった。以後いご天領てんりょう（天皇てんのう御料地ごりょうち）となり、明治めいじ2年ねん（1869年ねん）8月がつに白河しらかわ県けんが設置せっちされた。明治めいじ4年ねん（1871年ねん）7月がつの廃藩置県はいはんちけんをはさんで同年どうねん11月がつに二本松にほんまつ県けんとなり、その後ごに福島ふくしま県けんへ編入へんにゅうされた。

歴代れきだい藩主はんしゅ

丹羽たんば家か

大広間おおひろま 外様とざま 10万まん石せき （1627年ねん - 1643年ねん）

1. 長重ながしげ
2. 光重みつしげ

榊原さかきばら家か

帝みかど鑑かん間あいだ 譜代ふだい 14万まん石せき （1643年ねん - 1649年ねん）

1. 忠次ただつぐ

本多ほんだ家か

帝みかど鑑かん間あいだ 譜代ふだい 12万まん石せき （1649年ねん - 1681年ねん）

1. 忠義ちゅうぎ
2. 忠平ちゅうへい

奥平おくだいら松平まつへい家か

親藩しんぱん 15万まん石せき （1681年ねん - 1692年ねん）

1. 忠弘ただひろ

結城ゆうき松平まつへい家か

親藩しんぱん 15万まん石せき （1692年ねん - 1741年ねん）

1. 直ちょく矩のり
2. 基もと知ち
3. 義知よしとも

久松ひさまつ松平まつへい家か

帝みかど鑑かん間あいだ→溜ため間あいだ 親藩しんぱん 11万まん石せき （1741年ねん - 1823年ねん）

1. 定てい賢けん
2. 定てい邦くに
3. 定信さだのぶ
4. 定永さだなが

阿部あべ家か

雁かり間あいだ 譜代ふだい 10万まん石せき （1823年ねん - 1866年ねん、1868年ねん）

1. 正せい権けん
2. 正篤まさあつ
3. 正せい瞭あきら
4. 正せい備
5. 正せい定じょう
6. 正せい耆
7. 正せい外そと
8. 正せい静せい

天領てんりょう

（1866年ねん - 1868年ねん、1868 - 1871年ねん）

• 1869年ねん - 1871年ねんは白河しらかわ県けん

白河しらかわ新田しんでん藩はん

白河しらかわ新田しんでん藩はん（しらかわしんでんはん）は、江戸えど時代じだいの一時期いちじき、白河しらかわ藩はん領内りょうないの新田にったを知行ちぎょうした藩はん。奥平おくだいら松平まつへい家かの時代じだいと越前えちぜん松平まつへい家かの時代じだいにあった。

奥平おくだいら松平まつへい家か時代じだい

元禄げんろく元年がんねん（1688年ねん）、松平まつだいら忠ただし尚なおが白河しらかわ藩主はんしゅで養父ようふの忠弘ただひろより2万まん石せきの新田しんでんを分ぶん知ちされたことに始はじまる。忠弘ただひろの嫡子ちゃくし・清照きよてるの病弱びょうじゃくを理由りゆうに、天和てんわ元年がんねん（1681年ねん）に次期じき白河しらかわ藩主はんしゅとして迎むかえられた忠ちゅう尚ひさしだったが、清照きよてるの嫡子ちゃくし・忠ちゅう雅みやびの成長せいちょうにより廃嫡はいちゃくとなった。これにより別家べっけとして新田しんでん2万まん石せきを与あたえられたのである。元禄げんろく13年ねん（1700年ねん）、忠ちゅう雅みやびが出羽でわ山形やまがた藩はんより備後びんご福山ふくやま藩はんに転てん封ふうとなったのと同時どうじに、忠ちゅう尚なおも陸奥みちのく桑折くわおり藩はんに移うつり封ふうとなり、廃はい藩はんとなった。

奥平おくだいら松平まつへい家か

親藩しんぱん 2万まん石せき （1688年ねん - 1700年ねん）

1. 忠ちゅう尚ひさし

太田おおた松平まつへい家か時代じだい

正徳まさのり元年がんねん（1712年ねん）、松平まつだいら知清ちせいが白河しらかわ藩主はんしゅで兄あにの基もと知ちより1万まん石せきを分与ぶんよされたことに始はじまる。家格かかくは本来ほんらいなら親藩しんぱんであるが、陪臣ばいしんということで譜代ふだい大名だいみょうに列れつした。知清ちせいの子こで第だい2代だい藩主はんしゅ・義知よしともは、享とおる保ほ13年ねん（1728年ねん）、基もと知ちの養子ようしとなり白河しらかわ藩はんの次期じき藩主はんしゅに決定けっていしたため、藩はん領りょうは白河しらかわ藩はんに返還へんかんされ廃はい藩はんとなった。

太田おおた松平まつへい家か

譜代ふだい 1万まん石せき （1712年ねん - 1728年ねん）

1. 知清ちせい
2. 義知よしとも 本ほん藩はんを相続そうぞく

幕末ばくまつの領地りょうち

• 陸奥みちのく国こく（岩代いわしろ国こく）
  • 白河しらかわ郡ぐんのうち - 63村むら（「旧きゅう高こう旧領きゅうりょう取調とりしらべ帳ちょう」では、うち11村むらが磐いわ前ぜん県けんに編入へんにゅうとなっているが詳細しょうさい不明ふめい）
  • 岩瀬いわせ郡ぐんのうち - 2村むら（2村むらとも同上どうじょう）
• 遠江とおとうみ国こく
  • 山名やまな郡ぐんのうち - 15村むら（静岡しずおか藩はんに編入へんにゅう）
  • 豊田とよだ郡ぐんのうち - 18村むら（同上どうじょう）
  • 麁玉郡ぐんのうち - 3村むら（同上どうじょう）
  • 引佐いなさ郡ぐんのうち - 4村むら（同上どうじょう）
• 信濃しなの国こく
  • 伊那いな郡ぐんのうち - 36村むら（伊那いな県けんに編入へんにゅう）

参考さんこう文献ぶんけん

• 児玉こだま幸みゆき多た・北島きたじま正ただし元もと監修かんしゅう『藩はん史し総覧そうらん』新人物往来社しんじんぶつおうらいしゃ、1977年ねん
• 『別冊べっさつ歴史れきし読本とくほん24 江戸えど三さん百ひゃく藩はん 藩主はんしゅ総覧そうらん 歴代れきだい藩主はんしゅでたどる藩政はんせい史し』新人物往来社しんじんぶつおうらいしゃ、1997年ねん ISBN 978-4404025241
• 中嶋なかじま繁雄しげお『大名だいみょうの日本にっぽん地図ちず』文春ぶんしゅん新書しんしょ、2003年ねん ISBN 978-4166603527

関連かんれん項目こうもく

• 会津あいづ武家ぶけ屋敷やしき：白河しらかわ藩はんが使つかっていた藩はん米べい精米せいまい所しょの移築いちく先さき

外部がいぶリンク

• 『白河しらかわ藩はん』 - コトバンク
• 国立こくりつ公文書こうぶんしょ館かんデジタル・ギャラリー「天保てんぽう国こく絵図えず　陸奥みちのく国こく（白川しらかわ三春みはる二本松にほんまつ領りょう）」
• 白河しらかわ（松平まつだいら越えつ中ちゅう守もり定信さだのぶ） | 大名だいみょう家か情報じょうほう - 武鑑ぶかん全集ぜんしゅう

先代せんだい （陸奥みちのく国こく）

行政ぎょうせい区くの変遷へんせん 1627年ねん - 1869年ねん

次代じだい 白河しらかわ県けん