理り蕃しげる政策せいさく

理り蕃しげる政策せいさく（りばんせいさく）においては、清朝せいちょう統治とうち下か及および日本にっぽん統治とうち下かの台湾たいわんにおいて行おこなわれた先住せんじゅう系けい諸しょ民族みんぞく（現在げんざいの呼称こしょう；台湾たいわん原住民げんじゅうみん）に対たいする対応たいおう策さくの歴史れきしについて説明せつめいする。

前史ぜんし―清朝せいちょうによる理り蕃しげる政策せいさく

漢かん族ぞく系けいの移民いみんによる開拓かいたくが、山岳さんがく部ぶを中心ちゅうしんとする辺境へんきょうの地ちに及およぶに伴ともない、先住民せんじゅうみん族ぞくの生活せいかつ圏けんを狭せばめ、彼かれらの伝統でんとう的てきな生活せいかつ様式ようしきを壊こわしていった。行政ぎょうせい当局とうきょくはこれらへの対応たいおう策さくを策定さくていせざるを得えなくなり、いわゆる「理り蕃しげる政策せいさく」の必要ひつように迫せまられた。開拓かいたく者しゃ達たちは先住せんじゅう系けい諸しょ民族みんぞくに対たいして、酒肉しゅにく、布ぬの、ガラス玉だま等とうを与あたえ慰撫いぶしながら開拓かいたくをした。ときには集団しゅうだんを組くんで暴力ぼうりょく的てきに闖入ちんにゅうしたので、「民みん（漢かん）蕃しげる紛争ふんそう」を呼よび起おこした。清国きよくにによる併合へいごう直後ちょくごは、平地ひらちに住すむ「熟蕃じゅくばん」（のちに平ひら埔族と呼よばれる）への漸進ぜんしん的てきな同化どうか政策せいさくが主おもであった。1715年ねんには帰属きぞくした「蕃社ばんしゃ」（蕃人ばんじんの部落ぶらく）は53社しゃにおよんだ。しかし平地ひらちから離はなれた僻地へきちに住すむ「生蕃せいばん」（のちに高砂たかさご族ぞくと呼よばれる）に対たいしては、同化どうか政策せいさくは容易よういではなかった。漢かん民族みんぞくが山地さんちに入はいりこむことによって、先住民せんじゅうみん族ぞくと衝突しょうとつを起おこすことを防ふせぐために、漢かん民族みんぞくと先住民せんじゅうみん族ぞくとの間あいだに境界きょうかい石せきを立たて、両者りょうしゃの相互そうご侵犯しんぱんを禁止きんししようとしたが、効果こうかは薄うすかった。

台湾たいわん総督そうとく府ふによる初期しょき理り蕃しげる政策せいさく

討伐とうばつ隊たい

1894年ねん（明治めいじ27年ねん）の日にち清しん戦争せんそうの結果けっか1895年ねん（明治めいじ28年ねん）下関しものせき条約じょうやくの締結ていけつを経へて台湾たいわんは日本にっぽんに清朝せいちょうより割譲かつじょうされたが、台湾たいわんに居住きょじゅうしていた住民じゅうみんは台湾たいわん民主みんしゅ国こくを樹立じゅりつして頑強がんきょうにこれに抵抗ていこうした。明治めいじ国家こっかにしてみれば、予想よそう外がいに激烈げきれつであったため、初代しょだい台湾たいわん総督そうとく樺山かばやま資し紀きから第だい4代だいの児玉こだま源太郎げんたろうまでの期間きかんは、台湾たいわん北部ほくぶと西部せいぶを中心ちゅうしんとする漢かん民族みんぞくが居住きょじゅうする「平地ひらち」の軍事ぐんじ的てき制圧せいあつと治安ちあん維持いじに専念せんねんせざるを得えなかった。漢かん民族みんぞくが集中しゅうちゅうする「平地ひらち」で、支配しはい領域りょういきを拡大かくだいするための戦闘せんとう行為こういを続つづける一方いっぽうで、先住民せんじゅうみん族ぞくを敵てきに回まわす愚ぐを避さけたのである。

五ご箇年かねん理り蕃しげる計画けいかく

そもそも山地さんち先住民せんじゅうみん族ぞくは、オランダ人じん支配しはい、鄭てい氏し政権せいけん、清国きよくに統治とうちの各かく時代じだいを通つうじて服従ふくじゅうしたことはなく、支配しはい権力けんりょくも徹底的てっていてきに鎮圧ちんあつしてまで服従ふくじゅうさせることはなかった。この点てんで平地ひらち先住民せんじゅうみん族ぞくが、支配しはい権力けんりょくによる教化きょうかが進すすんでおり、異い民族みんぞくとの交流こうりゅうや通つう婚こんを通つうじて漢かん民族みんぞく化かが進すすんでいたのとは対照たいしょう的てきである。山地さんち先住民せんじゅうみん族ぞくには、支配しはい権力けんりょくの交代こうたいも関係かんけいなく、ましては服従ふくじゅうなどは無縁むえんの存在そんざいであった。そして新あらたな支配しはい者しゃにたいしては、自みずからの生活せいかつ空間くうかんを侵犯しんぱんする者ものとして反感はんかんを強つよめていた。 総督そうとく府ふは、「平地ひらち」の抗日こうにちゲリラを鎮圧ちんあつすると、台湾たいわん総督そうとく府ふは先住民せんじゅうみん族ぞくの住すむ山岳さんがく部ぶへの浸透しんとうをはかるため、「蕃地ばんち」に住すむ「蕃人ばんじん」に対たいする政策せいさく、すなわち「理り蕃しげる」政策せいさくを模索もさくすることになる。新しん領土りょうどとしての台湾たいわんの経営けいえい確立かくりつを急いそぎたい児玉こだまは、『野生やせい禽獣きんじゅうニ斉ひとしシ』い「蕃人ばんじん」は、誘導ゆうどうなどの緩慢かんまんな手段しゅだんでなく、いきおい絶滅ぜつめつさせるという政策せいさくを構想こうそうした。しかし、総督そうとく府ふ参事官さんじかん持地もちじ六三郎ろくさぶろうは、「蕃地ばんち」は利り源げんの宝庫ほうこであることに着目ちゃくもくし、「蕃人ばんじん」に対たいしての研究けんきゅうと「蕃地ばんちの状況じょうきょう」を知悉ちしつした後のち、「威嚇いかくして後ご撫なでする」方針ほうしんを採用さいようするように提案ていあんした。第だい5代だい総督そうとくの佐久間さくま左ひだり馬うま太ふとしは、持地もちじのこの提案ていあんを踏襲とうしゅうした。1909年ねん（明治めいじ42年ねん）に「五ご箇年かねん理り蕃しげる計画けいかく」として5か年ねんにわたる「北きた蕃しげる」の「討伐とうばつ」を開始かいしした。佐久間さくまの「討伐とうばつ」は、以下いかの手順てじゅんで行おこなわれた。

1. 官庁かんちょうの命令めいれいに対たいする絶対ぜったい遵守じゅんしゅと「隘勇線せん」と呼よばれる防御ぼうぎょライン内ないへの侵入しんにゅう禁止きんしなどを内容ないようとする帰順きじゅん勧告かんこくを出だす。
2. 帰順きじゅん勧告かんこくに従したがわない場合ばあいには「隘勇線せん」で塩しおや銃じゅうの流入りゅうにゅうを防ふせぎながら、「隘勇線せん」を徐々じょじょに前進ぜんしんさせる。これにより、先住民せんじゅうみん族ぞくを標高ひょうこう3000メートル級きゅうの高山こうざんが連つらなる台湾たいわん中央ちゅうおう山系さんけいに追おいあげ、追おいつめ、餓死がしか降伏ごうぶくかの択一たくいつを迫せまる。
3. 「隘勇線せん」を前進ぜんしんさせた後のちは、再ふたたび山嶺さんれいを開ひらいて道路どうろを設もうけ、要所ようしょには火砲かほうを配置はいちした堡類を構築こうちくした。
4. 先住民せんじゅうみん族ぞくがそれに抗こうしきれず帰順きじゅんすると、抵抗ていこう手段しゅだんだった銃器じゅうきが押収おうしゅうされた。
5. 銃器じゅうきを押収おうしゅうした地域ちいきからは軍隊ぐんたいが撤収てっしゅうし、帰順きじゅん条件じょうけんを維持いじさせる作業さぎょうが警察けいさつに課かされた。警察けいさつは、「蕃地ばんち道路どうろ」とか「警察けいさつ道路どうろ」と呼よぶ道路どうろを開ひらき、その道路どうろ沿ぞいに警察けいさつ官吏かんり駐在ちゅうざい所しょ、警戒けいかい所しょ、分遣ぶんけん所しょを次々つぎつぎ設置せっちした。

理り蕃しげる警察けいさつ機構きこうの形成けいせい

境界きょうかい線せんに設もうけられた交易こうえき所しょ

先住民せんじゅうみん族ぞくより銃器じゅうきを取とり上あげた後のちに警察官けいさつかんが管轄かんかつすることになった「蕃地ばんち」は、もともと樟脳しょうのうの原料げんりょうの確保かくほのために、総督そうとく府ふ殖産しょくさん部ぶが管轄かんかつしていた。1899年ねん（明治めいじ32年ねん）に樟脳しょうのう専売せんばい制せいを開始かいしし、製せい脳のう事業じぎょうを台湾たいわん経営けいえいの主要しゅよう財源ざいげんに充あてるべく、「蕃地ばんち」を国有こくゆう化かもしている。しかし「蕃地ばんち」へ入はいっていくには、「蕃しげる害がい」と呼よばれた抵抗ていこうに遭あうため、「理り蕃しげる警察けいさつ」と呼よばれる独自どくじの警察けいさつに「蕃地ばんち」の管轄かんかつが移行いこうした。総督そうとく府ふ中央ちゅうおうには、警務けいむ局きょく理り蕃しげる課かに監察かんさつ、整備せいび、受産、教育きょういく、衛生えいせい、交易こうえき、蕃地ばんち開発かいはつの6つの係かかりがおかれた。地方ちほうには警務けいむ局きょくから直接ちょくせつ指示しじを受うけていた州しゅう庁ちょう理り蕃しげる課かや理り蕃しげる係がかりがおかれ、終始しゅうし一貫いっかんして「蕃地ばんち」行政ぎょうせいの全すべてを一元いちげん的てきに管轄かんかつした。 「蕃地ばんち」は、行政ぎょうせい的てきにも「平地ひらち」と切きり離はなされ、普通ふつうの行政ぎょうせい法令ほうれいが行おこなわれない蕃人ばんじん居住きょじゅうの地ちとされ、特有とくゆうの法令ほうれいしかも主しゅとして特有とくゆうの警察けいさつ法令ほうれいが行おこなわれているだけの「特別とくべつ行政ぎょうせい区く」となったのである。そもそも「平地ひらち」においても、台湾たいわん警察けいさつは、「匪徒ひと刑罰けいばつ令れい」、「罰金ばっきん及笞刑けい処分しょぶん例れい」、「犯罪はんざい即決そっけつ例れい」（警察けいさつ署長しょちょうなどが軽けい罪つみの一部いちぶを即決そっけつできた）などの本国ほんごくに見みられないような苛酷かこくな弾圧だんあつ法規ほうきを有ゆうしていた。「蕃地ばんち」では、「平地ひらち」の弾圧だんあつ法ほうすらも敷しかれていないほど理り蕃しげる警察けいさつに大おおきな権限けんげんが与あたえられていた。理り蕃しげる警察けいさつはすべての行政ぎょうせいを兼かねた。個々ここの警察官けいさつかんは、学校がっこうの教師きょうしにもなり、病院びょういんの医者いしゃにもなり、受産機関きかんの技師ぎしにもなり、交易こうえき所しょの取引とりひき担当たんとう者しゃにもなった。理り蕃しげる警察けいさつは、先住民せんじゅうみん族ぞくの良よくも悪わるくも生殺与奪せいさつよだつの権利けんりを握にぎっていたのである。

土地とち収奪しゅうだつと集団しゅうだん移住いじゅう

1930年ねん（昭和しょうわ5年ねん）から8年ねんに及およぶ「蕃地ばんち開発かいはつ調査ちょうさ」が行おこなわれ、現地げんち警察官けいさつかんの立会たちあいのもとに「蕃社ばんしゃ」単位たんいで水田すいでん用ようあるいは畑作はたさく地ち用ようの適地てきちを選定せんていし、先住民せんじゅうみん族ぞくの安定あんていした生活せいかつに必要ひつような面積めんせきを、一人ひとりあたり2.883平方へいほうメートル、総そう面積めんせきにして24万まん3665平方へいほうメートルと査定さていした。総督そうとく府ふは先さきに、先住民せんじゅうみん族ぞくの専有せんゆうする蕃地ばんちの総そう面積めんせきを44.5万まん平方へいほうメートルと算定さんていしていたので、差引さしひき20万まん平方へいほうメートルを収奪しゅうだつできると見込みこんだことになる。先住民せんじゅうみん族ぞくは、先祖せんぞ伝来でんらいの土地とちから駆逐くちくされ、総督そうとく府ふがあらかじめ「平地ひらち」へ用意よういしていた「保留ほりゅう地ち」へ集団しゅうだん移住いじゅうさせられた。当初とうしょは移住いじゅう先さきの保留ほりゅう地ちが肥沃ひよくであり、集団しゅうだん移住いじゅうも順調じゅんちょうに進すすんだ。しかし、台湾たいわん西部せいぶでは、肥沃ひよく地ちはまたたく間まに減少げんしょうし、1934年ねん（昭和しょうわ9年ねん）には、「平地ひらち」以外いがいにも保留ほりゅう地ちを求もとめざるを得えないと認みとめざるを得えなかった。さらには、先さきに移住いじゅうがされていた土地とちに、後ごから追加ついかして移住いじゅうさせる「割わり込こみ移住いじゅう」も行おこなわれた。

霧きり社しゃ事件じけんと理り蕃しげる政策せいさくの見直みなおし

理り蕃しげる警察けいさつは、先住民せんじゅうみん族ぞくの生殺与奪せいさつよだつを握にぎっており、そのような中なか、理り蕃しげる事業じぎょうの先進せんしん地域ちいきと見みなされていた霧きり社しゃで、最大さいだいにして最後さいごの先住民せんじゅうみん族ぞく蜂起ほうきである霧きり社しゃ事件じけんが1930年ねん（昭和しょうわ5年ねん）10月がつ27日にちに発生はっせいした。この蜂起ほうきは日本にっぽんの警察けいさつと軍ぐんによって鎮圧ちんあつされたが、これに大おおきな衝撃しょうげきを受うけた総督そうとく府ふは、理り蕃しげる政策せいさくそのものの抜本ばっぽん的てきな見直みなおしを迫せまられた。新あらたに台湾たいわん総督そうとくに就任しゅうにんした太田おおた政弘まさひろは、着任ちゃくにんした訓示くんじの中なかで霧きり社しゃ事件じけんの善後ぜんご策さくを政治せいじ課題かだいとすることを表明ひょうめいした。太田おおたの下したで理り蕃しげる体制たいせいの再建さいけんを図はかった新しん警務けいむ局長きょくちょう井上いのうえ英すぐるや理り蕃しげる課長かちょう石川いしかわ定じょう俊しゅんは、同どう事件じけんの原因げんいんを特定とくていしようとした。井上いのうえは、同どう事件じけんの原因げんいんを「警察官けいさつかんが往々おうおうにして欺瞞ぎまん等とうをもって蕃人ばんじんに臨のぞむこと」や「官紀かんき上じょう許ゆるすべからざる非違ひい」があったと示唆しさした。理り蕃しげる警察官けいさつかんの質しちや勤務きんむ条件じょうけんに「理り蕃しげるの根本こんぽん問題もんだい」を見みて取とったのである。1931年ねん（昭和しょうわ6年ねん）12月28日にちに「理り蕃しげる政策せいさく大綱たいこう」を制定せいていし、理り蕃しげる警察官けいさつかんの「座右ざゆうの銘めい」とさせた。同どう大綱たいこう第だい1項こうには、「理り蕃しげるは蕃人ばんじんを教化きょうかし、其その生活せいかつの安定あんていを図はかり、一視同仁いっしどうじんの聖徳せいとくに浴よくせしむることを以って目的もくてきとする」とある。このとき「一視同仁いっしどうじん」の対象たいしょうが「蕃人ばんじん」では、具合ぐあいが悪わるいので、先住民せんじゅうみん族ぞくの呼称こしょうを、平地ひらちに住すむ「熟蕃じゅくばん」は「平ひら埔族」に、山地さんちに住すむ「生蕃せいばん」は「高砂たかさご族ぞく」へとそれぞれ改あらためた。すなわち、「理り蕃しげる」をして先住民せんじゅうみん族ぞくの征服せいふくではなく、「一視同仁いっしどうじん」という高邁こうまいな事業じぎょうとして昇華しょうかさせ、警察官けいさつかんに高邁こうまいな天職てんしょく意識いしきを植うえ付つけるとともに、先住民せんじゅうみん族ぞくへの憎悪ぞうお軽視けいしの対象たいしょうとしないことを意識いしきさせることにより、霧きり社しゃ事件じけんのような「不祥事ふしょうじ」の再発さいはつを防ふせごうとしたのである。厳重げんじゅうな警戒けいかい態勢たいせいのもとでの皇すめらぎ民みん化か政策せいさくこそが、霧きり社しゃ事件じけん後ごの理り蕃しげる政策せいさくとなった。日本人にっぽんじん警察官けいさつかんの中なかには先住民せんじゅうみん族ぞくの生活せいかつ改善かいぜん、孤児こじの自立じりつ支援しえん、女性じょせいの地位ちい向上こうじょうなどの社会しゃかい制度せいど改革かいかくに真剣しんけんに取とり組くんだ者ものもいた。

皇すめらぎ民みん化か運動うんどうと先住民せんじゅうみん族ぞく

「高砂たかさご義勇ぎゆう隊たい」も参照さんしょう

日本にっぽん国旗こっきを振ふる台湾たいわん原住民げんじゅうみん

日にち中ちゅう戦争せんそうの開始かいしと、これに伴ともない武官ぶかん総督そうとく制せいが復活ふっかつする。それとともに、本格ほんかく的てきな皇すめらぎ民みん化か運動うんどうが推進すいしんされる。1937年ねん（昭和しょうわ12年ねん）4月がつから、台湾たいわん人じんの母語ぼごの使用しようが制限せいげんされ、新聞しんぶんの漢文かんぶん欄らんも廃止はいしされ、伝統でんとう的てき宗教しゅうきょう行事ぎょうじも禁止きんしされた。さらに日本語にほんごの使用しよう強制きょうせい、天てん照あきら大神だいじんの奉祀ほうしや日本にっぽん式しき姓名せいめいへの改姓かいせい名めい運動うんどうが終戦しゅうせん直前ちょくぜんまで強行きょうこうされた。そして1941年ねん12月の太平洋戦争たいへいようせんそうの勃発ぼっぱつ後ご、先住民せんじゅうみん族ぞくの青年せいねんたちは南方なんぽう作戦さくせんへ動員どういんされた。陸海りくかい軍ぐんから供出きょうしゅつを命めいぜられた総督そうとく府ふが、軍ぐん後方こうほう任務にんむの労務者ろうむしゃ、山地さんち戦せん要員よういんとして7回かいほど「高砂たかさご義勇ぎゆう隊たい」を編成へんせいして先住民せんじゅうみん族ぞくを南方なんぽう戦線せんせんに送おくった。その高砂たかさご義勇ぎゆう隊たいを指揮しきしたのは、理り蕃しげる警察官けいさつかんであった。「蕃社ばんしゃ」における警察けいさつ支配しはいの構造こうぞうがそのまま戦場せんじょうに移動いどうしていったのである。また先住民せんじゅうみん族ぞく統治とうち技術ぎじゅつのマニュアルとしての「理り蕃しげる大綱たいこう」は、「文化ぶんかの低ひくい南方なんぽう原住民げんじゅうみん指導しどうの一大いちだい指針ししん、すなわち無む二にの指導しどう者しゃ心得こころえ帳ちょうたりうるもの」として、南方なんぽうの少数しょうすう民族みんぞくに対たいしても用もちいられようとした。

参考さんこう文献ぶんけん

• 載の國くに煇「台湾たいわん―人間にんげん・歴史れきし・心性しんせい―」（1988年ねん）岩波いわなみ新書しんしょ
• 岩波いわなみ講座こうざ「近代きんだい日本にっぽんと植民しょくみん地ち（第だい2巻かん）帝国ていこく統治とうちの構造こうぞう」所収しょしゅう、近藤こんどう正巳まさみ「2台湾たいわん総督そうとく府ふの「理り蕃しげる」体制たいせいと霧きり社しゃ事件じけん」
• 伊藤いとう潔きよし「台湾たいわん－四よん百ひゃく年ねんの歴史れきしと展望てんぼう」（1993年ねん）中公新書ちゅうこうしんしょ
• 岩波いわなみ講座こうざ「近代きんだい日本にっぽんと植民しょくみん地ち（第だい2巻かん）帝国ていこく統治とうちの構造こうぞう」所収しょしゅう、大江おおえ志乃しの夫おっと「1植民しょくみん地ち戦争せんそうと総督そうとく府ふの成立せいりつ」
• 「理り蕃しげるの友とも」台湾たいわん総督そうとく府ふ発行はっこう所収しょしゅう、第だい1年ねん11月がつ号ごう(1932年ねん) 藤井ふじい芳吉よしきち「タロコ族ぞくに残のこされたる『コーリ』の慣習かんしゅうと其その救済きゅうさい策さく」
• 「台湾たいわん警察けいさつ協会きょうかい雑誌ざっし」(1929年ねん)172-178頁ぺーじ所収しょしゅう、藤井ふじい芳吉よしきち「台湾たいわんの戸籍こせきを論ろんず」

関連かんれん項目こうもく

• 台湾たいわん原住民げんじゅうみん
• 同化どうか政策せいさく
• 樟脳しょうのうと台湾たいわん
• 匪徒ひと刑罰けいばつ令れい
• 罰金ばっきん及笞刑けい処分しょぶん例れい
• 皇すめらぎ民みん化か

外部がいぶリンク

• 日本にっぽんの理り蕃しげる政策せいさくと台湾たいわん原住民げんじゅうみん-戦せん時期じきを中心ちゅうしんに菊池きくち隆たかし、愛知学院大学あいちがくいんだいがく『人間にんげん文化ぶんか』28号ごう