琳派

琳派（りんぱ）とは、桃山ももやま時代じだい後期こうきに興おこり近代きんだいまで活躍かつやくした、同どう傾向けいこうの表現ひょうげん手法しゅほうを用もちいる造形ぞうけい芸術げいじゅつ上うえの流派りゅうは、または美術家びじゅつか・工芸こうげい家からやその作品さくひんを指さす名称めいしょうである。本ほん阿弥あみ光悦こうえつと俵屋たわらや宗達そうたつが創始そうしし、尾形おがた光琳こうりん・乾山けんざん兄弟きょうだいによって発展はってん、酒井さかい抱一ほういつ・鈴木すずき其一が江戸えどに定着ていちゃくさせた。

概略がいりゃく[編集へんしゅう]

大和絵やまとえの伝統でんとうを基盤きばんとして、豊ゆたかな装飾そうしょく性せい・デザイン性せいをもち、絵画かいがを中心ちゅうしんとして書しょや工芸こうげいを統括とうかつする総合そうごう性せい、家系かけいではなく私淑ししゅくによる断続だんぞく的てきな継承けいしょう、などが特質とくしつとして挙あげられる。光琳こうりんが宗むね達たちに、抱一ほういつが光琳こうりんにそれぞれ傾倒けいとうし、その影響えいきょうを受うけている。狩野かの派はや円山まるやま・四条しじょう派はといった他ほかの江戸えど時代じだいの流派りゅうはは、模写もしゃを通つうじて直接ちょくせつ師しから画が技わざを学まなんだのに対たいし、琳派では時間じかんや場所ばしょ、身分みぶんが遠とおく離はなれた人々ひとびとによって受うけ継つがれたのは、他たに類るいを見みない特色とくしょくである^[1]。同おなじような主題しゅだいや図様ずよう、独特どくとくの技法ぎほうを意識いしき的てきに選択せんたく・踏襲とうしゅうすることで流派りゅうはのアイデンティティーを保持ほじする一方いっぽうで、絵師えし独自どくじの発見はっけんと解釈かいしゃくが加くわわり再さい構成こうせいされることで、単たんなるコピーやエピゴーネンではない新あらたな芸術げいじゅつを生うみ出だした^[2]。

呼称こしょう[編集へんしゅう]

かつては尾形おがた光琳こうりん・乾山けんざんとその作風さくふうを継承けいしょうした酒井さかい抱一ほういつらを一ひとつのグループとみなし「光琳こうりん派は」と呼よんだり、その先駆せんく者しゃと考かんがえられる俵屋たわらや宗達そうたつ・本ほん阿弥あみ光悦こうえつらを含ふくめて「宗そう達いたる光琳こうりん派は」と呼よんでいた。現在げんざいは「琳派」という呼称こしょうが一般いっぱん的てきである。

特色とくしょく[編集へんしゅう]

背景はいけいに金きむ銀箔ぎんぱくを用もちいたり、大胆だいたんな構図こうず、型紙かたがみのパターンを用もちいた繰くり返かえし、たらしこみの技法ぎほうなどに特色とくしょくが見みられる。題材だいざいは花木はなき・草花くさばな多おおいが、物語ものがたり絵えを中心ちゅうしんとする人物じんぶつ画がや鳥獣ちょうじゅう、山水さんすい、風月ふうげつに若干じゃっかんの仏画ぶつがを扱あつかった作品さくひんもある。

及およぼした影響えいきょう[編集へんしゅう]

琳派はヨーロッパの印象派いんしょうはや現代げんだいの日本にっぽん画が、デザインにも大おおきな影響えいきょうを与あたえている。風神ふうじん雷神らいじん図ずは多おおくの画家がかによって描えがかれ、それぞれの作品さくひんはよく比較ひかくの対象たいしょうにされる。

2004年ねんに東京とうきょう国立こくりつ近代きんだい美術館びじゅつかんで開催かいさいされた「琳派 RIMPA」展てんでは、明治めいじ以降いこうの日本にっぽん画がの作品さくひん（菱田ひしだ春草しゅんそう、横山よこやま大観たいかんなど）のほか、クリムトやウォーホルの作品さくひんにも「琳派的てきなもの」が見みられるとされた。

琳派に分類ぶんるいされる画家がか・芸術げいじゅつ家か[編集へんしゅう]

本ほん阿弥あみ光悦こうえつ（1558年ねん - 1637年ねん）
俵屋たわらや宗達そうたつ（江戸えど初期しょき）
俵屋たわらや宗はじめ雪ゆき（江戸前えどまえ期き）
喜多川きたがわ相しょう説せつ（江戸前えどまえ期き）
尾形おがた光琳こうりん（1658年ねん - 1716年ねん）
尾形おがた乾山けんざん（1663年ねん - 1743年ねん）
渡辺わたなべ始はじめ興きょう（1683年ねん - 1755年ねん）
深江ふかえ芦あし舟ぶね（1699年ねん - 1757年ねん）
中村なかむら芳かおる中なか（生年せいねん不ふ詳しょう - 1819年ねん）
酒井さかい抱一ほういつ（1761年ねん - 1828年ねん） - 江戸えど琳派とも。
鈴木すずき其一（1796年ねん - 1858年ねん）
池田いけだ孤こ邨（1801年ねん - 1866年ねん）
酒井さかい鶯うぐいす蒲がま（1808年ねん - 1841年ねん）
村越むらこし其栄（1808年ねん - 1867年ねん）
山本やまもと光一こういち（1843年ねん? - 1905年ねん?）
尾形おがた月耕げっこう（1859年ねん - 1920年ねん）
神坂かみさか雪ゆき佳けい（1866年ねん - 1942年ねん）

参考さんこう資料しりょう[編集へんしゅう]

『日本にっぽん美術びじゅつ史し事典じてん』平凡社へいぼんしゃ 1987年ねん
『琳派美術館びじゅつかん』全ぜん4巻かん（1宗むね達たちと琳派の源流げんりゅう、2光琳こうりんと上方かみがた琳派、3抱一ほういつと江戸えど琳派、4工芸こうげいと琳派感覚かんかくの展開てんかい）集英社しゅうえいしゃ 1993年ねん
展覧てんらん会かい図録ずろく
- 『琳派美びの継承けいしょう-宗そう達いたる・光琳こうりん・抱一ほういつ・其一』名古屋なごや市し美術館びじゅつかん 1994年ねん
- 『琳派 RINPA』東京とうきょう国立こくりつ近代きんだい美術館びじゅつかん 2004年ねん
- 『大だい琳派展てん継承けいしょうと変奏へんそう尾形おがた光琳こうりん生誕せいたん三さん五ご〇周年しゅうねん記念きねん』東京とうきょう国立こくりつ博物館はくぶつかん 2008年ねん

出典しゅってん[編集へんしゅう]

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

^ 名古屋なごや市し美術館びじゅつかん「特別とくべつ展てん琳派美びの継承けいしょうー宗達そうたつ・光琳こうりん・抱一ほういつ・其一」図録ずろく p.9。
^ 名古屋なごや市し美術館びじゅつかん「特別とくべつ展てん琳派美びの継承けいしょうー宗達そうたつ・光琳こうりん・抱一ほういつ・其一」図録ずろく p.10。