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異化いか (言語げんごがく)

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

音韻おんいんろんとく歴史れきし言語げんごがくにおいて、異化いか(いか、英語えいご: dissimilation)とは、かたりなか類似るいじした子音しいん母音ぼいん類似るいじしなくなる現象げんしょうである。英語えいごでは、/r/ や /l/ などのながれおん連続れんぞくする場合ばあいに、異化いかとくによくられる。この現象げんしょうは、言語げんご使用しようしゃ同一どういつ言語げんご構造こうぞうかえしをけるという原則げんそくであるhorror aequi起因きいんすることがおおい。

具体ぐたいれい

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/r..r/連続れんぞくにおけるあたま子音しいん/r/の脱落だつらく(r削除さくじょ

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英語えいごRおと方言ほうげんにおいて、単語たんご途中とちゅうのあるr([ɹ̠ʷ]などやRおとせい母音ぼいんになる)がのRおとまえ場合ばあいberserk/bəˈsɚk/[注釈ちゅうしゃく 1]surprise/səˈpɹaɪz/particular/pəˈtɪk.jə.lɚ/governor/ˈɡʌvənɚ/のように、最初さいしょおと脱落だつらくすることがある[1]。これは、Rおとが1つしかないgovernment発音はつおんには影響えいきょうしない(英語えいごgovernment/n/いて/ˈɡʌvɚmənt/発音はつおんすることがある)。

英語えいごでは、deteriorateは"de-ter-iate"、temperatureは"tem-pa-ture"のように、音節おんせつつよぜいがない場合ばあいに、r削除さくじょこり/r/が完全かんぜん脱落だつらくすることがあり、これはじゅうおと脱落だつらくばれる過程かていである[よう出典しゅってん]/r//bru/ふくまれる場合ばあい/j/変化へんかすることがある(れいFebyuary → February、これは音素おんそ配列はいれつろんてき要因よういん、あるいはJanuaryのような一般いっぱんてき音素おんそれつとの形態けいたいろんてき類似るいじせいによって説明せつめいされている。Cf.nucular同様どうようのプロセスでしょうじた可能かのうせいがある)[2][3][4]

/r..r/の/l..r/への異化いか

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音韻おんいん異化いか比較的ひかくてきふる事例じれいが、つづりにおいて人為じんいてきもともどされたれいとして、英語えいごcolonelがあり、その標準ひょうじゅんてき発音はつおんは、北米ほくべい英語えいごでは/ˈkɝnəl/(rおとき)、RPでは/ˈkɜːnəl/である。以前いぜんはcoronelと表記ひょうきされていた。これは、イタリアcolonnelloからの異化いか結果けっかしょうじた、フランス語ふらんすごcoronnelからの借用しゃくようであった。

/l..l/の/r..l/への異化いか

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原因げんいん

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異化いか原因げんいんについてはいくつかの仮説かせつがある。ジョン・オハラによると、ききて長距離ちょうきょり音響おんきょう効果こうかおとまどわされるという。英語えいごの/r/の場合ばあいrおとかたりだい部分ぶぶんひろがっている。早口はやくちはな言葉ことばでは、おおくの母音ぼいんがあたかもrがあるかのようにこえることがある。あるかたりのrの音色ねいろ由来ゆらいが1つなのか2つなのかを見分みわけるのはむずかしいかもしれない。2つある場合ばあい、ききて一方いっぽうをもう一方いっぽう音響おんきょう効果こうかとしてあやまって解釈かいしゃくし、精神せいしんてき雑音ざつおんとして除去じょきょしてしまうかもしれない。

このような共同きょうどう調音ちょうおん効果こうか相殺そうさいは、実験じっけんてき再現さいげんされている。たとえば、ギリシャpakhu- (πぱいαあるふぁχかいυうぷしろん-) 「あつい」は、それ以前いぜんの*phakhu-に由来ゆらいする。被験者ひけんしゃに*phakhu-をカジュアルな会話かいわってもらうと、両方りょうほう子音しいんからのゆう気性きしょう両方りょうほう音節おんせつひろがり、母音ぼいんいきもれごえになる[よう出典しゅってん][citation needed]。このような場合ばあいきては、いきもれごえのある母音ぼいんというひとつの効果こうかき、それを子音しいん両方りょうほうではなく片方かたがた子音しいん帰着きちゃくさせる。つまり、もう片方かたがた音節おんせつゆう気性きしょうは、長距離ちょうきょり共同きょうどう調音ちょうおん効果こうかであると仮定かていする。これは、ギリシャ歴史れきしてき変化へんか再現さいげんしている[よう出典しゅってん]

もしオハラの指摘してきただしければ、鼻音びおん咽頭いんとうなど、遠距離えんきょり効果こうか頻繁ひんぱんこすおとほか言語げんごでも異化いかられることが予想よそうされる。

類型るいけい

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異化いかは、同化どうかおなじように、影響えいきょうける分節ぶんせつ隣接りんせつする分節ぶんせつたいする発音はつおん変化へんかはなれた分節ぶんせつたいする発音はつおん変化へんかがあり、先行せんこうする分節ぶんせつたいする変化へんか後続こうぞくする分節ぶんせつたいする変化へんかがある。同化どうか同様どうよう逆行ぎゃっこう異化いかは、順行じゅんこう異化いかよりもはるかに一般いっぱんてきだが、同化どうかとはことなり、ほとんどの異化いかは、連続れんぞくしていない分節ぶんせつがねとなってこる。また、おおくの同化どうかおと法則ほうそく特徴とくちょうつのにたいし、異化いかはほとんどなく、特定とくてい語彙ごいきる突発とっぱつてき特徴とくちょうつ。

逆行ぎゃっこう異化いか

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遠距離えんきょりでの逆行ぎゃっこう異化いか圧倒的あっとうてきおおい):

  • ラテン語らてんごの*medio-diēs(「なかば-にち」、すなわち「正午しょうご」または「みなみ」)はmerīdiēsとなった。ラテン語らてんご venēnumどく」 > イタリア veleno. このカテゴリーには、体系たいけいてきおと法則ほうそくめずらしいれいとして、グラスマンの法則ほうそくとしてられるギリシャとサンスクリットゆうおん異化いかふくまれる: *thi-thē-miわたしく」(重複じゅうふく接頭せっとうつ)>ギリシャtí-thē-mi (τίθημι)、*phakhuあつい」>ギリシャpakhus (παχύς)、*sekhōわたしっている」> *hekhō > ギリシア ékhō (χかいωおめが; cf. 未来みらいがた *hekh-s-ō > héksō ξくしーωおめが)。eks-がふくまれるすうおおくのかたち(またはその影響えいきょうわせ)に汚染おせんされている可能かのうせいもありうたがわしいが、etcetera由来ゆらいする英語えいごの "eksetera"のように、"ect. "という一般いっぱんてきなスペルミスは異化いか暗示あんじする。

連続れんぞくする分節ぶんせつからの逆行ぎゃっこう異化いか非常ひじょうにまれ):

  • 一連いちれん摩擦音まさつおんにおける摩擦音まさつおんから閉鎖へいさおんへの変化へんかは、ここにぞくするかもしれない: ドイツsechs /zeks/つづりから証明しょうめいされるように、/k/以前いぜん摩擦音まさつおんであった)。サンスクリットでは、元々もともと2つのこすおと連続れんぞくする場合ばあいは、かなら最初さいしょこすおと閉鎖へいさおんになる(しばしば、さらに発展はってんする):語根ごこん vas-ふく」、未来みらい vas-sya- > vatsya-; *wiś-s一族いちぞく」(nom.sg.) > *viťś > *viṭṣ > viṭ語末ごまつ子音しいん連続れんぞく簡略かんりゃくされる); *wiś-su しょかく pl. > *viṭṣu > vikṣu. 英語えいごamphitheater非常ひじょう一般いっぱんてきに"ampitheater"と発音はつおんされる(ただし、つづ発音はつおんspelling pronunciationはここでのはなし一部いちぶまたは全部ぜんぶかもしれない)。ロシアконфорка [kɐnˈforkə]はオランダkomfoor火鉢ひばち」に由来ゆらいする。

順行じゅんこう異化いか

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遠距離えんきょりでの順行じゅんこう異化いか(かなり一般いっぱんてき):

  • 英語えいごpurpleちゅう英語えいごではpurpulpurpure中期ちゅうきフランス語ふらんすごではporpre)で、古典こてんラテン語らてんごpurpuraむらさき」に由来ゆらいし、/r//L/異化いかしたものである。ラテン語らてんごrārus「まれな」>イタリアradocardamom一般いっぱんてきcardamon発音はつおんされる。ちゅう英語えいごでは、したいただきおん先行せんこうしている -nわるいくつかのかたりで、-n-m変化へんかした:seldom, random, venom.英語えいごmarble究極きゅうきょくてきラテン語らてんごmarmor由来ゆらいする。ロシアфевраль /fevrˈalʲ/「2がつ」はラテン語らてんごFebruārius由来ゆらいする。
  • スペインでは、/r/と/l/の相互そうご変化へんかはよくられる。一覧いちらんスペイン # ながれおん/l/と/r/の相互そうご変化へんか § 参照さんしょうのこと。バスクでも、異化いか頻繁ひんぱんこる。

連続れんぞくする分節ぶんせつからの順行じゅんこう異化いか非常ひじょうにまれ):

パラダイムてき異化いか

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おと変化へんかにより、文法ぶんぽうパラダイムの要素ようそ混同こんどうはじめると、言葉ことばのいいかだけでは容易ようい改善かいぜんされないため、かたち異化いかすることがある。たとえば、現代げんだい韓国かんこくでは、首都しゅとソウルのおおくの人々ひとびとにとって母音ぼいん/e//ɛ/統合とうごうされつつあり、同時どうじ二人称ににんしょう代名詞だいめいし /ne/きみの」は、一人称いちにんしょう代名詞だいめいし /nɛ/ぼくの」との混同こんどうけるために /ni/移行いこうしつつある。

同様どうように、英語えいごshe歴史れきしてきにはheo)は、heからの異化いかによって現代げんだいshかたち獲得かくとくした可能かのうせいがあるが、そのメカニズムがheo特異とくいおと変化へんか口蓋こうがい)であったのか、heo女性じょせい指示しじ代名詞だいめいしseoえたのかはあきらかではない。

関連かんれん項目こうもく

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脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 形容詞けいようしのときのみ。

出典しゅってん

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  1. ^ "//r// Dissimilation" in The Linguist List, 3 Aug 2006.
  2. ^ Pinker (Oct 4, 2008). “Everything You Heard Is Wrong”. 2015ねん5がつ19にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2013ねん11月15にち閲覧えつらん
  3. ^ Zwicky (March 21, 2005). “Axe a stupid question”. 2008ねん9がつ14にち閲覧えつらん
  4. ^ Nunberg (October 2, 2002). “Going Nucular”. 2008ねん9がつ14にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん

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  • Crowley, Terry. (1997) An Introduction to Historical Linguistics. 3rd edition. Oxford University Press.
  • Vasmer's dictionary
  • Dissimilation (International Encyclopedia of Linguistics, 2nd ed.)