目的もくてき

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目的もくてき(もくてき、まれ: τέλος, テロス、えい: goal)とは、げようとすることがら[1]行為こうい目指めざすところ[1]

概説がいせつ[編集へんしゅう]

プラトンは、イデアろんとなえた。これは[よう検証けんしょう]観念かんねん物質ぶっしつ合目的的ごうもくてきてき形成けいせいされるというかんがえを基礎きそにしていた[よう出典しゅってん]」という[だれ?][いつ?]

アリストテレスは『自然しぜんがく』において、ものごとの原因げんいんについて解説かいせつし、質料しつりょう形相ぎょうそう作用さよう目的もくてきよんしゅげた(よん原因げんいんせつ)。アリストテレスの『自然しぜんがく』においては、《目的もくてき》はよっつの原因げんいんのひとつである。

自然しぜんがくだいかんだいさんしょうではつぎのように記述きじゅつされている。

物事ものごとおわり、すなわち物事ものごとがそれのためにでもあるそれ(目的もくてき)をも原因げんいんう。たとえば、散歩さんぽのそれは健康けんこうである、というのは、「ひとはなにゆえに[なんのために]散歩さんぽするのか」とのいにわれわれは「健康けんこうのために」とこたえるであろうが、この場合ばあいにわれわれは、こうこたえることによってそのひと散歩さんぽする原因げんいんをあげているものとかんがえているのだから。なおまたこれと同様どうようのことは、あるる(わりへの)運動うんどうにおいてそのわり(目的もくてき)にたっするまでのあらゆる中間ちゅうかん物事ものごとについても、たとえばせさせることや洗滌せんじょうすることや薬剤やくざい医療いりょう器具きぐなど健康けんこうたっするまでの中間ちゅうかん物事ものごとについても、える。というのは、これらはすべてそのわり(すなわち健康けんこう)のためにある物事ものごとだから。ただし、これらのうちでも、そのある物事ものごとまえふたつ)は行為こういであるが、ある物事ものごとふたつ)はそのための道具どうぐである(そして道具どうぐはさらに行為こういのための手段しゅだんである)という差別さべつがある。」

アリストテレスは、質料しつりょう形相ぎょうそう実現じつげんしていくなかでたかまっていく過程かていをもって、万物ばんぶつ一定いってい目的もくてき実現じつげんのために存在そんざいする、というせつをたてた[よう出典しゅってん]。たとえば、ポリスてき生物せいぶつ(Zoon politikon)にある目的もくてきは、「ポリスないでのみ可能かのうな、なま実現じつげん[よう出典しゅってん]」とされた。アリストテレスの場合ばあい目的もくてき個人こじん自己じこ決定けっていによるものではない。「かみてきなものにあずかることが、自由じゆう意志いしえた必然ひつぜん目的もくてきとされた。[よう出典しゅってん]」 [2]

トマスにおいては、かみによって目的もくてきあたえられる[よう出典しゅってん]というかんがえにいたり、そこからかみ存在そんざい証明しょうめいしようとするこころみもでてきた。

ライプニッツ予定よてい調和ちょうわせつもこの系譜けいふぞく[よう出典しゅってん]

目的もくてき法学ほうがく[編集へんしゅう]

法学ほうがくにおいては、ルドルフ・フォン・イェーリングが、目的もくてき個人こじんてき目的もくてき社会しゃかい目的もくてきの2種類しゅるいけられる、とし、個人こじんてき目的もくてき個人こじんエゴイズムで、等価とうか交換こうかん媒介ばいかいにして経済けいざい生活せいかつ私法しほう生活せいかつし、社会しゃかい目的もくてき共同きょうどうたい維持いじすることであり、そのためには等価とうか交換こうかんとともに強制きょうせい必要ひつようであり、これが国家こっかおよびほうす、とかんがえた。

このかんがえを基盤きばんとした法学ほうがく傾向けいこう目的もくてき法学ほうがくという。

目的もくてきろん[編集へんしゅう]

ドイツではTeleologieで、語源ごげんギリシャ普遍ふへんてき終局しゅうきょく、ゴール、完成かんせいなどを意味いみする「telos テロス」+ logie

「18世紀せいきにドイツの哲学てつがくしゃクリスティアン・ヴォルフつくった[よう出典しゅってん][だれ?]とされる。

自然しぜんしょ事物じぶつのうちにさまざまな意図いとがあるとする観点かんてん[よう出典しゅってん]。その意図いとかみ意図いとともされ、プロテスタントとしてのヴォルフが目指めざしたキリスト教きりすときょう普遍ふへん神学しんがく枠組わくぐみのなかろんじられた。目的もくてきろんしゃにとってはそのゴールがいものだとされる[よう出典しゅってん]。 「ゴールが到来とうらいするというだけの観念かんねん終末しゅうまつろんである[よう出典しゅってん][だれ?]

目的もくてきろんでは展開てんかい目的もくてきそくして基礎きそけられているとかんがえられる。個人こじん組織そしき自己じこ目標もくひょうえて行動こうどうするありかた目的もくてき志向しこうだが、それだけではまだ目的もくてきろんてき姿勢しせいとはべない。だが目的もくてき志向しこうであることは、目的もくてきろんかんがえを妥当だとうだとおもっているからこるので、そのかぎりでは目的もくてき志向しこうもまた目的もくてきろんてきだともえる。[よう出典しゅってん]

カントにとって、目的もくてきろんたいするものは、因果いんがろん 機械きかいろんてきなものだった。目的もくてきかれZweckんで、Ziel とはしていない。

生物せいぶつがくにおいては、もともとは目的もくてきろんてきかんがえが主流しゅりゅうであったが、ダーウィン進化しんかろんはそうでなくなり、時代じだいくだってしん生気せいきろんしんラマルクせつふたた目的もくてきろんてきせつ登場とうじょうした。

なお、たねにとっての自己じこ保存ほぞんというきものを目的もくてきとして想定そうていするテレオノミーとは、個体こたいにとってきものが目的もくてきであるというてん目的もくてき論点ろんてんとは対立たいりつする[よう出典しゅってん][だれ?]進化しんかろんでは進化しんか軌跡きせきによってのちから想定そうていされる目的もくてきしかないのにたいし、目的もくてきろんでは展開てんかいまえから目的もくてきさだまっているものである[よう出典しゅってん][だれ?]

工学こうがく目的もくてき[編集へんしゅう]

工学こうがくにおける教育きょういくプログラムにかんする検討けんとう委員いいんかい」の文書ぶんしょ(1998ねん)では、工学こうがくつぎのように定義ていぎしている。

工学こうがくとは数学すうがく自然しぜん科学かがく基礎きそとし、ときには人文じんぶん社会しゃかい科学かがく知見ちけんもちいて、公共こうきょう安全あんぜん健康けんこう福祉ふくしのために有用ゆうよう事物じぶつ快適かいてき環境かんきょう構築こうちくすることを目的もくてきとする学問がくもんである。[3]

ウィーナーらのサイバネティックスでは、環境かんきょう事物じぶつもっともよく適応てきおうする過程かていを"目的もくてきてき"であるとした[よう出典しゅってん]

目的もくてき目標もくひょう関係かんけい[編集へんしゅう]

目的もくてきは「げようとすることがら」で、目標もくひょうのほうは(その)目的もくてき達成たっせいするためにもうけためあてのことである[4]。たとえば、目的もくてきを「自分じぶんひとも、ともに幸福こうふくにする人生じんせいわたしはまっとうする」としたとする。その目的もくてき実現じつげんできる道筋みちすじについていろいろ調しらべて、ひと親切しんせつにしてそれを記録きろくすればともに幸福こうふくになれるということをり、「すくなくとも1週間しゅうかんに1かいひと親切しんせつにしてそれをノートに記録きろくする」とか「1にちに1かい、その出会であったひと親切しんせつにしてそれを日記にっきく」という「めあて」を設定せっていすれば、それが《目標もくひょう》である[ちゅう 1]

また、青年せいねんひとでこれから自分じぶん職業しょくぎょうめてゆこうとしている時期じきひとなどでは、目的もくてき達成たっせいするのにてきした職業しょくぎょうについてもかんがえることになるであろうが、「ともに幸福こうふくにする人生じんせいをまっとうする」という目的もくてきっている場合ばあい、たとえば(あくまで「たとえば」であるが)その目的もくてき実現じつげんするために「6ねん以内いない看護かんごになる」という「めあて」をもうければ、この「6ねん以内いない看護かんごになる」というめあてが《目標もくひょう》である。

また「6ねん以内いない看護かんごになる」という目標もくひょう分解ぶんかいして、「2ねん看護かんご学校がっこう試験しけん合格ごうかく入学にゅうがくする」という目標もくひょうや「3カ月かげつまでにこのテキストの学習がくしゅうえる」という目標もくひょうや「毎日まいにち2ページかそれ以上いじょう学習がくしゅうする」という目標もくひょう、「今日きょう時間じかんがあるので4ページ学習がくしゅうする」などという目標もくひょう設定せっていできる。

一般いっぱんに、まずは目的もくてき設定せっていし、目的もくてき達成たっせいした状態じょうたいをただ漠然ばくぜん夢見ゆめみるだけでなく、それを実現じつげんするためにはどのようなみちがあるのか知恵ちえはたらかせ、その目的もくてき達成たっせいするためのみち具体ぐたいてきおもえがき、途中とちゅうに「めあて=目標もくひょう」、つまり達成たっせいできたかできなかったか自分じぶん判定はんていできるようなかたち表現ひょうげんしたことをもうけ、それらの目標もくひょう達成たっせいすべく、日々ひびやるべきことをコツコツとやってゆけば、やがては目的もくてきとしていることをげることができる、といったことが説明せつめいされている。実用じつようしょなどではしばしば、だい目標もくひょうちゅう目標もくひょうしょう目標もくひょう分解ぶんかいし、さらに具体ぐたいてきな「期限きげん」(日付ひづけ)をふく目標もくひょう設定せっていすると、目的もくてきげやすくなる、といったことが解説かいせつされている。

目的もくてきっている場合ばあいは、一般いっぱんに、たとえなにかのトラブルで途中とちゅう目標もくひょうがいくつか実現じつげん不可能ふかのう困難こんなん事態じたいになっても、あきらめてほう必要ひつようはなく、知恵ちえはたらかせ、おな道筋みちすじでも目標もくひょう設定せってい方法ほうほう変更へんこうしたり、あるいは目的もくてきをなしとげられるべつ筋道すじみちつけてべつ目標もくひょう設定せっていすれば、目的もくてきとしていることをげることができる。目標もくひょうはあまり硬直こうちょくてきかんがえる必要ひつようはなく、より重要じゅうようなのは目的もくてきげることなので、それのために、目標もくひょうについてはより柔軟じゅうなんかんがえればよいわけである。人生じんせいというのは様々さまざまなことがきるものなので、一般いっぱんに、当初とうしょ予定よていどおりに途中とちゅう目標もくひょう達成たっせいしてゆけることはむしろまれである。目的もくてきげたひと調しらべてみるとわかることであるが、たいていは、途中とちゅうでさまざまな困難こんなん遭遇そうぐうし、それでもあきらめず、なん目標もくひょう見直みなおしたりさい設定せっていしたりして、(日々ひびコツコツと)目標もくひょうをひとつひとつ達成たっせいするための行動こうどうをつづけ、その結果けっか目的もくてきげている。

健康けんこう目的もくてき[編集へんしゅう]

2016ねん2がつ/ 3月の心身しんしん医学いがく:Journal of Biobehavioral Medicineの報告ほうこくによると、よりたか目的もくてき意識いしきっているひと長生ながいきする傾向けいこうがある。研究けんきゅうしゃは、136,000にん以上いじょう対象たいしょうとした10の研究けんきゅうをレビューし、人生じんせい目的もくてき死亡しぼうまたはこころ血管けっかん疾患しっかんのリスクとの関係かんけい評価ひょうかしました。参加さんかしゃ平均へいきん年齢ねんれい67さいで、やく7年間ねんかん追跡ついせきされた。まだつよ目的もくてき意識いしきっていると報告ほうこくしたひと死亡しぼうリスクはやく20%ひくかった。また、心臓しんぞう発作ほっさ脳卒中のうそっちゅうのリスクもひくくなった。研究けんきゅうしゃたちは、目的もくてき意識いしきがストレスをよりよく管理かんりし、よりアクティブなライフスタイルを促進そくしんするのに役立やくだつかもしれないと推測すいそくした[5]

人生じんせい目的もくてき[編集へんしゅう]

西田にしだ文郎ふみお人生じんせいにおける目的もくてきはたらきを自著じちょつぎのように説明せつめいした[6]

  • 目的もくてきくなると、努力どりょく無意味むいみおもえてくる[6]
  • 目的もくてきいと、さびしい人生じんせいになる[6]
  • 目的もくてきささえられない目標もくひょうは、面白おもしろくないしたのしくない[6]
  • 目的もくてきは、目標もくひょう具体ぐたいし、面白おもしろくする[6]

また西田にしだつぎのことも指摘してきした。

  • 人生じんせい目的もくてきは、結局けっきょく自分じぶんよろこばせるしあわせ」か「自分じぶん以外いがいよろこばせるしあわせ」のどちらかに[6]
  • しん成功せいこうしゃは「自分じぶん以外いがいよろこばせるしあわ」をっていた[6]

ただし、人生じんせい目的もくてきというのは理屈りくつでこねあげるようなものではなく、本当ほんとうしんかんじなければならないものなので、人生じんせい目的もくてきつためには、いくつかちょっとしたコツがある、と提案ていあんしている[6]

コツのひとつは》というタイムリミットをイメージすることである[6]ひとみなぬのであるが、普段ふだんはついそれをわすれてしまっていたりし、意識いしきしないと「いつでもできる」などと(あやまったことを)かんがえてしまう[6]自分じぶんをありありとイメージしタイムリミットを意識いしきすることは、人生じんせい目的もくてき目標もくひょうをはっきりさせ、目標もくひょういたるまでのプロセスを明確めいかくし、いまなすべきことを明確めいかくさせる[6]

こん日本にっぽんきている若者わかものなかには、自分じぶんきるのでせいいっぱいではイメージできない、とか、自分じぶん元気げんき自分じぶんはどうもリアルにおもえないなどとおもえてしまうものもいるかもれないが、そういう場合ばあいは「もしあなたの人生じんせい明日あしたわるとしたら、今日きょうあなたはなにをするか?」とわれたと想像そうぞうすればよい[6]

ちなみにスティーブ・ジョブズつぎのように自問じもんする習慣しゅうかんっていた。

今日きょう人生じんせい最後さいごだったら、今日きょうやろうとしていることを本当ほんとうにやりたいか?
関連かんれん項目こうもく

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

ちゅう
  1. ^ ひとに親切しんせつにしてそれを記録きろくしつづけるとひと幸福こうふくかんじるりつがとてもたかい、ということは、実証じっしょうてき研究けんきゅうであきらかになっている(出典しゅってん大石おおいししげるひろししあわせを科学かがくする―心理しんりがくからわかったこと』しん曜社、2009 ISBN 4788511541)。ウィキペディアの「幸福こうふく」という記事きじでは「親切しんせつ介入かいにゅうほう」というふし解説かいせつされている。
出典しゅってん
  1. ^ a b 広辞苑こうじえん だいろくはん目的もくてき
  2. ^ "世界せかい目的もくてきろんてき存在そんざい仕方しかた[よう出典しゅってん]"
  3. ^ 8大学だいがく工学部こうがくぶ中心ちゅうしんとした 工学こうがくにおける教育きょういくプログラムにかんする検討けんとう」(PDFファイル工学こうがくにおける教育きょういくプログラムにかんする検討けんとう委員いいんかい、1998ねん5がつ8にち
  4. ^ 広辞苑こうじえん だいろくはん目標もくひょう
  5. ^ Publishing, Harvard Health. “Finding purpose in life”. Harvard Health. 2020ねん11月3にち閲覧えつらん
  6. ^ a b c d e f g h i j k l 西田にしだ文郎ふみお人生じんせい目的もくてきつかる魔法まほうつえ』パンローリング株式会社かぶしきがいしゃ、2014ねん。ASIN B00K388BL4。KINDLEばんあり。だいいちしょうだいしょう

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 西田にしだ文郎ふみお人生じんせい目的もくてきつかる魔法まほうつえ』パンローリング株式会社かぶしきがいしゃ2014ねん。ASIN B00K388BL4。KINDLEばんあり。