神かみ櫛くし皇子おうじ

神かみ櫛くし皇子おうじ（かみくしのみこ（かみくしおう）/かむくし-/かんくし-/かんぐし-、生なま没年ぼつねん不ふ詳しょう）は、記紀きき等ひとしに伝つたわる古代こだい日本にっぽんの皇族こうぞく。

『日本書紀にほんしょき』では「神かみ櫛くし皇子おうじ」、『古事記こじき』では「神かみ櫛くし王おう」、他た文献ぶんけんでは「神かみ櫛くし別命べつめい」「神かみ櫛くし命いのち」「五ご十じゅう香こう彦命」とも表記ひょうきされる。『日本書紀にほんしょき』『古事記こじき』とも事績じせきの記載きさいはない。

第だい12代だい景けい行ぎょう天皇てんのうの皇子おうじである。

系譜けいふ

『日本書紀にほんしょき』によれば、第だい12代だい景けい行ぎょう天皇てんのうと、妃ひの五十河いかが媛ひめ（いかわひめ）との間あいだに生うまれた皇子おうじである。同書どうしょでは、同母どうぼ弟おとうととして稲いね背せ入にゅう彦皇子おうじ（いなせいりひこのみこ）の名なを挙あげる。

一方いっぽう『古事記こじき』では、景けい行ぎょう天皇てんのうと、針はり間あいだ之の伊那いな毘能大だい郎女いらつめ（播磨はりま稲いね日大にちだい郎ろう姫ひめ）との間あいだに生うまれた皇子おうじとする。また同母どうぼ兄けいとして、櫛くし角かく別べつ王おう・大だい碓うす命いのち・小碓おうす命いのち（日本にっぽん武たけ尊たかし）・倭やまと根子ねっこ命いのちの名なを記載きさいする。

なお、『続ぞく日本にっぽん後ご紀き』承うけたまわ和わ3年ねん（836年ねん）3月がつ19日にち条じょうでは、「神かみ櫛くし命いのち」の名なで景けい行ぎょう天皇てんのう第だい十じゅう皇子おうじである旨むねが記しるされている。

墓はか

神かみ櫛くし王おう墓ぼ（香川かがわ県けん高松たかまつ市し）

墓はかは、宮内庁くないちょうにより香川かがわ県けん高松たかまつ市し牟礼むれ町まち牟礼むれの神かみ櫛くし王おう墓はか（かみくしのみこのはか、北緯ほくい34度ど20分ふん35.24秒びょう 東経とうけい134度ど7分ふん17.26秒びょう）に治定じじょうされている。宮内庁くないちょう上じょうの形式けいしきは上うえ円えん下方かほう。

この墓はかは、明治めいじ2年ねん（1869年ねん）に高松たかまつ藩はん知事ちじの松平まつだいら頼よりゆき聰さとしによって再さい営された。毎年まいとし、王おうの命日めいにちと伝つたえる10月がつ20日はつかに「正辰まさとき祭さい」と称しょうする祭まつりが斎とき行ぎょうされている。

後裔こうえい

氏族しぞく

『古事記こじき』では、神かみ櫛くし王おうを木き国こく之の酒さけ部ぶ阿おもね比ひ古いにしえ・宇陀うだ酒さけ部ぶらの祖そとする。

『新撰しんせん姓氏せいし録ろく』には、次つぎの氏族しぞくが後裔こうえいとして記載きさいされている。

• 右京うきょう皇すめらぎ別べつ 讃岐さぬき公こう - 大足おおあし彦忍代だい別べつ天皇てんのう（景けい行ぎょう天皇てんのう）皇子おうじの五ご十じゅう香こう彦命（亦また名なを神かみ櫛くし別命べつめい）の後のち。
• 右京うきょう皇すめらぎ別べつ 酒さけ部ぶ公おおやけ - 同どう皇子おうじ三さん世せい孫まごの足あし彦大兄けい王おうの後のち。
• 和泉いずみ国こく皇すめらぎ別べつ 酒さけ部ぶ公おおやけ - 讃岐さぬき公こう同どう祖そ。神かみ櫛くし別命べつめいの後のち。

『続ぞく日本にっぽん後ご紀き』承うけたまわ和わ3年ねん（836年ねん）3月がつ19日にち条じょうによると、後裔こうえいを称しょうする讃岐さぬき国こく寒川さむかわ郡ぐんの讃岐さぬき公こう永えい直ただし・讃岐さぬき公こう永えい成しげるらが朝臣あそん姓せいを賜たまわり、右京うきょう三条さんじょう二に坊ぼうに貫つらぬけ付ふされている。

また『日本にっぽん三さん代だい実録じつろく』貞さだ観かん6年ねん（864年ねん）8月がつ17日にち条じょうによると、同おなじく後裔こうえいを称しょうする右京うきょうの讃岐さぬき朝臣あそん高だか作さく・讃岐さぬき朝臣あそん時雄ときお・讃岐さぬき朝臣あそん時人じじんらが「和気わき朝臣あそん」姓せいを賜たまわっている。

国造くにのみやつこ

『日本書紀にほんしょき』では、神かみ櫛くし皇子おうじを讃岐さぬき国造くにのみやつこの祖そとする。

また『先代せんだい旧きゅう事こと本紀ほんぎ』「国造くにのみやつこ本紀ほんぎ」には、次つぎの国造くにのみやつこが後裔こうえいとして記載きさいされている。

• 讃岐さぬき国造くにのみやつこ

  軽けい島しま豊ゆたか明朝みんちょう（応神天皇おうじんてんのう）の御世みよに景けい行ぎょう天皇てんのうの子この神かみ櫛くし王おうの三さん世せい孫まごの須売保ほ礼れい命いのちを国造くにのみやつこに定さだめる、という。

  のちの讃岐さぬき国こく寒川さむかわ郡ぐん・多度たど郡ぐん（香川かがわ県けんさぬき市し・善通寺ぜんつうじ市し・多度津たどつ町まち一帯いったい）に推定すいていされる。

信仰しんこう

香川かがわ県けんに伝つたわる讃さん留とめ霊れい王おう（さるれお、讃さん王おう）伝説でんせつによれば、景けい行ぎょう天皇てんのう23年ねんに讃たたえ留とめ霊れい王おうは勅命ちょくめいを受うけ、讃岐さぬき入いりして瀬戸内せとうちの悪あく魚さかな退治たいじを行おこない、同地どうちに留とまり仲哀ちゅうせつ天皇てんのう8年ねん9月がつ15日にちに125歳さいで薨去こうきょしたという。この讃さん留とめ霊れい王おうについて、東ひがし讃さんでは神かみ櫛くし王おうのこととし（櫛梨くしなし神社じんじゃ社しゃ伝でん等とう）、西にし讃さんでは武たけ卵たまご王おう（たけかいごのみこ：日本にっぽん武たけ尊たかしの子こ）のこととしている。

参考さんこう文献ぶんけん

• 坂本さかもと太郎たろう・平野ひらの邦雄くにお 監かん『日本にっぽん古代こだい氏族しぞく人名じんめい辞典じてん 普及ふきゅう版ばん』吉川弘文館よしかわこうぶんかん、2010年ねん。ISBN 978-4642014588。 
  • 「讃岐さぬき氏し」、「別べつ氏し（わけうじ）」。

関連かんれん項目こうもく

• 景けい行ぎょう天皇てんのう
• 讃さん王おう（讃さん留とめ霊れい王おう伝説でんせつ）

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• 香川かがわ県けんの古墳こふん
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• 日本にっぽんの陵墓りょうぼ