立たて命いのち館かん禁衛きんえい隊たい

立たて命いのち館かん禁衛きんえい隊たい（りつめいかんきんえいたい）は、1928年ねん（昭和しょうわ3年ねん）から1945年ねん（昭和しょうわ20年ねん）にかけて立命館大学りつめいかんだいがくに存在そんざいした私設しせつ警備けいび組織そしき。

沿革えんかく

前史ぜんし

1930年ねん（昭和しょうわ5年ねん）頃ごろの立命館大学りつめいかんだいがく広小路ひろこうじ学舎がくしゃ

立たて命いのち館かん禁衛きんえい隊たいは、1928年ねん（昭和しょうわ3年ねん）に昭和しょうわ天皇てんのうの即位そくいの礼れいが京都きょうとで挙行きょこうされた際さい、期間きかん中ちゅうの京都きょうと御所ごしょ警護けいごの奉仕ほうしをするという目的もくてきを掲かかげて設立せつりつされた。当時とうじの立命館大学りつめいかんだいがくは河原町かわらまち広小路ひろこうじにキャンパスを有ゆうしており、京都きょうと御所ごしょに近接きんせつしていたため、当初とうしょは有志ゆうし学生がくせい約やく30人にんが自主じしゅ的てきに作つくった組織そしきであった。

この取とり組くみを知しった大学だいがく当局とうきょくは、即位そくいの礼れいによる禁衛きんえい隊たいの働はたらきが立たて命いのち館かんの存在そんざいを社会しゃかいにアピールする機会きかいと捉とらえ、大学だいがくの学部がくぶ・予よ科か・専門せんもん学部がくぶの学生がくせい・生徒せいと約やく1950名めいと、中学校ちゅうがっこうの生徒せいと約やく700名めいを編成へんせいし、全ぜん学園がくえんを挙あげた組織そしきへと発展はってんさせた。軍隊ぐんたい編成へんせいを擬ぎして総そう司令しれいには田島たじま錦にしき治ち学長がくちょう、参謀さんぼう長ちょうには中川なかがわ小しょう十郎じゅうろう館長かんちょうが就任しゅうにんし、その下したに各かく教授きょうじゅのほか、所属しょぞくする部ぶ活動かつどうや学年がくねんから銃じゅう隊たい、杖つえ術じゅつ隊たい、剣道けんどう隊たい、柔道じゅうどう隊たい、軍楽隊ぐんがくたい、自転車じてんしゃ隊たいなど組織そしきされた各かく隊たいに学生がくせいが配置はいちされた。

即位そくいの礼れい期間きかん中ちゅうの活動かつどう

禁衛きんえい隊たいの活動かつどうは昭和しょうわ天皇てんのうが御所ごしょ駐在ちゅうざい中ちゅうである11月7日にちから26日にちにかけての20日間にちかん行おこなわれ、昼間ひるま服務ふくむは中学ちゅうがく部隊ぶたい、17時じから翌朝よくあさ5時じまでの夜間やかん服務ふくむは大学だいがく部隊ぶたいが御所ごしょの巡察じゅんさつを行おこなった。巡察じゅんさつのほかには、天皇てんのう警護けいごのために上洛じょうらくした近衛このえ歩あゆみ兵へい第だい3連隊れんたい、近衛このえ歩あゆみ兵へい第だい2連隊れんたい・警視庁けいしちょう警察けいさつ隊たいの接待せったいや提灯ちょうちん行列ぎょうれつを行おこなっている。22日にちに御所ごしょに近接きんせつする同志社大学どうししゃだいがくの有終ゆうしゅう館かんが火災かさいにあった際さいは、禁衛きんえい隊たいが出動しゅつどうして20m間隔かんかくに銃剣じゅうけんで武装ぶそうした中学ちゅうがく部隊ぶたいが御所ごしょを守まもり、火災かさい現場げんばへは大学だいがく部隊ぶたいが出動しゅつどうし鎮火ちんかまで警戒けいかいに当あたった。その際さいに彰あきら栄さかえ館かんの鐘かねの音おとを聞きいて駆かけ付つけた同志社どうししゃの寄宿舎きしゅくしゃ生せいが、立たて命いのち館かんの禁衛きんえい隊員たいいんに銃剣じゅうけんを突つき付つけられる事故じこが起おきている。

即位そくいの礼れい終了しゅうりょう後ご

当時とうじの世相せそうは禁衛きんえい隊たいに対たいして好意こうい的てきであり、期間きかん中ちゅうは多おおくの寄付きふを集あつめ、新聞しんぶんなども好意こうい的てきに報道ほうどうする傾向けいこうが見みられた。かなりの社会しゃかい的てき注目ちゅうもくを浴あびたことを受うけて即位そくいの礼れい終了しゅうりょう後ごも禁衛きんえい隊たいの活動かつどうは続つづき、結成けっせい翌年よくねんの1929年ねん（昭和しょうわ4年ねん）からは新入生しんにゅうせい全員ぜんいんが入学にゅうがくと同時どうじに禁衛きんえい隊たいに編入へんにゅうされることになった。これ以後いごも1930年代ねんだい以降いこうは、禁衛きんえい隊たいの中隊ちゅうたい・小隊しょうたい単位たんいでの行軍こうぐんや天皇陵てんのうりょうの参拝さんぱい、軍事ぐんじ教練きょうれんなどが実施じっしされていった。

戦前せんぜんまでの立命館大学りつめいかんだいがくは、「禁衛きんえい立りつ命いのち」と呼称こしょうされるように国家こっか主義しゅぎ的てきな校風こうふうを有ゆうしており、1941年ねん（昭和しょうわ16年ねん）には満州まんしゅう事変じへんの立役者たてやくしゃとして知しられる石原いしはら完かん爾なんじを所長しょちょうに迎むかえて国防こくぼう学がく研究所けんきゅうじょを開設かいせつするなど、時局じきょくに同調どうちょうした動うごきをしていた。同年どうねん5月がつ7日にちにはすべての体育たいいく会かいの解散かいさんがなされると同時どうじに関連かんれん校こうを含ふくめた全ぜん学園がくえんの学生がくせい・生徒せいとが禁衛きんえい隊たい傘下さんかに統合とうごうされた。これは、禁衛きんえい隊たいが従来じゅうらいの学生がくせいの自治じち的てき組織そしきから、総長そうちょうが統括とうかつする学園がくえんの包括ほうかつ的てき組織そしきへ再編さいへんされる改革かいかくが行おこなわれたことを示しめしている。同年どうねん8月がつ8日にちに文部省もんぶしょうより高等こうとう専門せんもん学校がっこう以上いじょうの全ぜん学校がっこうに「学校がっこう報国ほうこく隊たい（団だん）」の編成へんせいが訓令くんれいされると、禁衛きんえい隊たいも戦時せんじ体制たいせい化かを進すすめていった。

禁衛きんえい隊たいの終焉しゅうえん

太平洋戦争たいへいようせんそう終結しゅうけつ後ごの立命館大学りつめいかんだいがくにおいては、禁衛きんえい隊たいの存在そんざいが天皇てんのう制せいによる国家こっか主義しゅぎイデオロギーを象徴しょうちょうするものとされ、GHQによる学園がくえんの民主みんしゅ化か指令しれいに反はんするものとして、大学だいがく廃校はいこうや改組かいその危機ききに陥おちいった。従来じゅうらいの国家こっか主義しゅぎ的てきな校風こうふうから民主みんしゅ主義しゅぎ的てきな校風こうふうへと転換てんかんすることが求もとめられた立たて命いのち館かんは、1945年ねん（昭和しょうわ20年ねん）12月3日にちに行おこなわれた協議きょうぎ員いん会かいにて従前じゅうぜんの寄付行為きふこういから禁衛きんえい隊たい精神せいしんを表あらわした字句じくを削除さくじょした。これにより立たて命いのち館かん禁衛きんえい隊たいは名実めいじつともに消滅しょうめつした。

校歌こうか

総長そうちょう就任しゅうにん直後ちょくごの末川すえかわ博はく（1947年ねん）

1931年ねん（昭和しょうわ6年ねん）に制定せいていされた「立命館大学りつめいかんだいがく校歌こうか」（作詞さくし：明あきら本ほん京きょう静しず）の2番ばん歌詞かしには、「禁衛きんえい立りつ命いのち」という語かたりが入はいっていた。禁衛きんえい隊たい消滅しょうめつ後ごの1948年ねん（昭和しょうわ23年ねん）には、末川すえかわ博はく総長そうちょうから「平和へいわと民主みんしゅ主義しゅぎ」を掲かかげる新あたらしい教学きょうがく理念りねんに合あわないことを理由りゆうに2番ばん歌詞かしの改廃かいはいが理事りじ会かいに提案ていあんされたが、議事ぎじ録ろくの記録きろくによれば「審議しんぎの結果けっか学生がくせいの輿論よろん（よろん）に一任いちにんすることに決定けってい」として、2番ばん歌詞かしはその存在そんざいを忘わすれられていったものの、正式せいしきに廃止はいしされることなく放置ほうちされた。

1990年ねん（平成へいせい2年ねん）に大学だいがく新聞しんぶん社しゃが2番ばん歌詞かしを再さい発見はっけんしたことをきっかけに、学生がくせいや同窓生どうそうせいから学園がくえんの精神せいしんに合あわないという指摘してきを受うけて、理事りじ会かいは正式せいしきな廃止はいしを決意けついし、全学ぜんがく協議きょうぎ会かいや各かく学部がくぶ教授きょうじゅ会かいの賛同さんどうを経へた上うえで、5月25日にちの理事りじ会かいで2番ばん歌詞かしの廃止はいしが正式せいしきに決定けっていされた。

「立命館大学りつめいかんだいがく#校歌こうか」も参照さんしょう

関連かんれん項目こうもく

• ストーム (学生がくせい生活せいかつ)
• 立たて命いのち館かん日本刀にっぽんとう鍛錬たんれん所しょ - 立たて命いのち館かん禁衛きんえい隊たいと同どう時期じきに存在そんざいした大学だいがく付属ふぞくの日本にっぽん刀がたな製造せいぞう工房こうぼう。

外部がいぶリンク

• 立たて命いのち館かん 史し資料しりょうセンター
• 立命館大学りつめいかんだいがく 国際こくさい平和へいわミュージアム - 禁衛きんえい隊員たいいんに配布はいふしていた記章きしょうや禁衛きんえい隊たい旗はたが常設じょうせつ展示てんじされている。