実験じっけん式しき

実験じっけん式しき（じっけんしき、英えい: empirical formula）あるいは経験けいけん式しきは、化学かがくおよび物理ぶつり学がくで用もちいられる概念がいねんで、分野ぶんやにより意味いみの相違そういがある。

化学かがくにおける実験じっけん式しき

化学かがくでは、実験じっけん式しきあるいは経験けいけん式しきとは、化合かごう物ぶつに存在そんざいするそれぞれの元素げんその原子げんし数かずの最もっとも単純たんじゅんな比ひである。実験じっけん式しきは、異性いせいや構造こうぞうあるいは原子げんしの絶対ぜったい数すうとは全まったく関連かんれんがない。実験じっけん式しきは、CaCl₂といったほとんどのイオン性せい化合かごう物ぶつや、SiO₂などの高分子こうぶんしで標準ひょうじゅん的てきに使用しようされる。「実験じっけん」(empirical) という表現ひょうげんは、化合かごう物ぶつ中ちゅうの元素げんその相対そうたい比ひを決定けっていする分析ぶんせき化学かがくの手法しゅほうである元素げんそ分析ぶんせきのプロセスを参照さんしょうしている。

対照たいしょう的てきに、分子ぶんし式しきは、1分ふん子中こなかのそれぞれの種類しゅるいの原子げんしの数かずを表あらわしており、構造こうぞう式しきはさらに分子ぶんしの構造こうぞうも示しめしている。

例たとえば、化合かごう物ぶつ n-ヘキサンの構造こうぞう式しきは CH₃CH₂CH₂CH₂CH₂CH₃ であり、6個この炭素たんそ原子げんしが直ちょく鎖くさり状じょうに並ならんでおり、14個この水素すいそ原子げんしがあることを示しめしている。ヘキサンの分子ぶんし式しきは C₆H₁₄ であり、実験じっけん式しきは C:H 比ひが 3:7 であることを示しめす C₃H₇ である。異ことなる化合かごう物ぶつでも、等ひとしい実験じっけん式しきを持もつ。例たとえば、ホルムアルデヒドと酢酸さくさん、グルコースは等ひとしい実験じっけん式しき CH₂O を持もつ。これは、正ただしいホルムアルデヒドの化学かがく式しきであるが、酢酸さくさんは2倍ばい、グルコースは6倍ばいの原子げんし数すうを持もつ。

一般いっぱん的てきな物質ぶっしつの実験じっけん式しきの例れい

物質ぶっしつ	分子ぶんし式しき	実験じっけん式しき
水みず	H2O	H2O
メタン	CH4	CH4
ベンゼン	C6H6	CH
硫黄いおう	S8	S
グルコース	C6H12O6	CH2O

物理ぶつり学がくにおける実験じっけん式しき

物理ぶつり学がくでは、実験じっけん式しきは、実験じっけんや推測すいそくなどの経験けいけん的てき関係かんけいに由来ゆらいするが、第だい一いち原理げんりには直接ちょくせつ由来ゆらいしない、実験じっけん結果けっかを予測よそくする数学すうがく方程式ほうていしきを意味いみする。

例れいとして、水素すいそのスペクトル線せんの波長はちょうを予測よそくするリュードベリの式しきがある。リュードベリの式しきは1888年ねんに提唱ていしょうされ、ライマン系列けいれつの波長はちょうを完璧かんぺきに予測よそくしたが、1913年ねんにニールス・ボーアがボーアの原子げんし模型もけいを生うみ出だすまでは理論りろん的てきな基礎きそを欠かいていた。

関連かんれん項目こうもく

• 経験けいけん論ろん（哲学てつがくおよび歴史れきし学がく）
• 実証じっしょう研究けんきゅう
• en:Empirical（科学かがくにおける概念がいねん）
• 現象げんしょう学がく (科学かがく)
• 経験けいけん的てき関係かんけい
• 組成そせい式しき

外部がいぶリンク

• Construction of empirical formulas for prediction of experimental data (PDF, 110 KB)