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横よこ紋もん筋すじ肉腫にくしゅ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア（Wikipedia）』
（葡萄ぶどう状じょう妊娠にんしんから転送てんそう）
横よこ紋もん筋すじ肉腫にくしゅ
低ていエコー画像がぞうによる頭蓋とうがい内ないの横よこ紋もん筋すじ肉腫にくしゅ
（耳みみ後部こうぶにできた胞巣性せいの腫瘍しゅよう）
概要がいよう
診療しんりょう科か 腫瘍しゅよう学がく
分類ぶんるいおよび外部がいぶ参照さんしょう情報じょうほう
ICD-10 C49.M50
ICD-9-CM 171.9
ICD-O M8900/3-M8920/3
OMIM 268210
DiseasesDB 11485
MedlinePlus 001429
eMedicine ent/641
Patient UK 横よこ紋もん筋すじ肉腫にくしゅ
MeSH D012208

横よこ紋もん筋すじ肉腫にくしゅ（おうもんきんにくしゅ、英語えいご: Rhabdomyosarcoma）とは骨ほね、そして筋肉きんにくや脂肪しぼうといった軟部組織そしきにできる腫瘍しゅようである。小児しょうにや青少年せいしょうねんがかかることが多おおいが、まれに成人せいじんでも発症はっしょうする[1]。腫瘍しゅようは体からだの様々さまざまな部分ぶぶんにできるが、自覚じかく症状しょうじょうがなく発症はっしょう頻度ひんどが低ひくいため、腫瘍しゅようが大おおきくなってから初はじめて気きが付つくこともある。

疫学えきがく[編集へんしゅう]

性せい比ひは男おとこ(1.4)：女おんな(1.0)[2]、小児しょうにがん全体ぜんたいに占しめる割合わりあいは3%程度ていど[3]から 8%程度ていど[4]とされ、1歳さいから4歳さいくらいまでは特とくに多おおく[5]、全体ぜんたいの2⁄3 が 6 歳さい以下いか[2]。乳児にゅうじ期き、5-7 歳さい頃ごろ、10 歳さい代だいに発生はっせいのピークがある[2]。日本にっぽんでの発症はっしょう者しゃ数すうは年間ねんかん90人にん程度ていどとされる[4]。

当該とうがい疾患しっかんの発症はっしょう率りつを高たかめる疾患しっかんとして、リー・フラウメニ症候群しょうこうぐん、神経しんけい線維せんい腫しゅ1型がた(NF1)、ベックウィズ-ヴィーデマン症候群しょうこうぐん、コステロ症候群しょうこうぐん、ヌーナン症候群しょうこうぐん、MEN2A症候群しょうこうぐんなどが知しられているが、充分じゅうぶんに解明かいめいされていない[4]。

横よこ紋もん筋肉きんにく腫しゅの特徴とくちょう[編集へんしゅう]

全すべての部位ぶいに発生はっせいする可能かのう性せいはあるが、好こう発はつ部位ぶいが存在そんざいする[3]。

  1. 頭あたま頸部（約やく35%）、通常つうじょうは眼窩がんかまたは上うえ咽頭いんとう道どう：学齢がくれい期きの小児しょうにで最もっとも多おおくみられる
  2. 泌尿生殖せいしょく器き系けい（約やく25%）、膀胱ぼうこう、前立腺ぜんりつせん、腟ちつ
  3. 四肢しし（約やく20%）：青年せいねんで最もっとも多おおくみられる
  4. 体からだ幹みき/その他たの部位ぶい(20%)

転移てんいは患者かんじゃの15-25%に発生はっせいし最もっとも多おおい部位ぶいは肺はいである。骨ほね、骨髄こつづい、リンパ節ぶしにも転移てんいする[3]。

胎児たいじ型がたと胞巣型がたの2種類しゅるいに大別たいべつされる。

胎児たいじ型がた
特徴とくちょうは、染色せんしょく体たい11p15.5のヘテロ接合せつごう性せいの消失しょうしつ[3]。
胞巣型がた
PAX3遺伝子いでんしをFOXO1(FKHR)遺伝子いでんしと融合ゆうごうさせる転てん座ざt(2;13)、およびPAX7遺伝子いでんしをFOXO1(FKHR)遺伝子いでんしと融合ゆうごうさせる転てん座ざt(1;13)と関連かんれんするもの[3][6]。

症状しょうじょうと症候しょうこう[編集へんしゅう]

硬直こうちょく化かした横よこ紋もん筋すじ肉腫にくしゅ

小児しょうにの典型てんけい例れいでは、全身ぜんしん症状しょうじょうは現あらわれない。腫瘍しゅよう発生はっせい部位ぶいに触さわって判別はんべつ出来できる硬かたい腫しゅ瘤こぶが認みとめられる。深部しんぶに発生はっせいした腫瘍しゅようでは近隣きんりん臓器ぞうきが圧迫あっぱくされ、圧迫あっぱくされた臓器ぞうきの機能きのう障害しょうがいや血尿けつにょう、声質せいしつの変化へんか、疼痛とうつうなどが現あらわれる。

眼窩がんかおよび上うえ咽頭いんとう
流ながれ涙なみだ、眼め痛つう、眼球がんきゅう突出とっしゅつ。
上うえ咽頭いんとう腔
鼻はな閉、声質せいしつの変化へんか、粘液ねんえき膿うみ性せいの分泌ぶんぴつ物ぶつ。
泌尿生殖せいしょく器き
腹痛はらいた、触さわ知ち可能かのうな腹部ふくぶ腫しゅ瘤こぶ、排尿はいにょう困難こんなん、血尿けつにょう。
四肢しし
密着みっちゃくした硬かたい腫しゅ瘤こぶが上肢じょうしまたは下肢かしのあらゆる部位ぶい。無む症状しょうじょうのままリンパ節ぶしへの転移てんい。肺はい、骨髄こつづい

胎児たいじ型がた(ERMS)と胞巣型がた(ARMS)[編集へんしゅう]

胞巣性せい横よこ紋もん筋肉きんにく腫しゅの拡大かくだい写真しゃしん

小児しょうにの横よこ紋もん筋肉きんにく腫しゅは、病理びょうり組織そしき学がく診断しんだんを目的もくてきとした、顕微鏡けんびきょう下したでの観察かんさつによる腫瘍しゅよう細胞さいぼうの増殖ぞうしょくパターン、及および形状けいじょうに応おうじて[4]、胎児たいじ型かた(ERMS)と胞巣型がた(ARMS)との2大だい組織そしき型がた亜あ型がたに分わけられる[6]。胎児たいじ型がたは小児しょうにに多おおく、眼窩がんかや頭あたま頚部けいぶ、泌尿生殖せいしょく器き系けいなどに腫瘍しゅようができることが多おおい。長期ちょうき予よ後ごは比較的ひかくてき良好りょうこうといえる[6]。また鼻腔びこう、膣ちつ、膀胱ぼうこうなど粘膜ねんまくで覆おおわれた管かん腔臓器きにもできることがある。この場合ばあいは胎児たいじ型がたの特殊とくしゅ型がたである、ブドウの房ぼう状じょうの組織そしき所見しょけんが出現しゅつげんする[4]。一方いっぽう、胞巣型がたは年長ねんちょうの子供こどもや青年せいねんに多おおく、体からだ幹みきや四肢ししに主おもに発生はっせいする。しかも転移てんいや再発さいはつが起おこりやすく、治療ちりょう抵抗ていこう性せい[注釈ちゅうしゃく 1]となりやすいため、胎児たいじ型がたよりも悪性あくしょうである[6]。

胎児たいじ型がたと胞巣型がたはさらに以下いかのタイプに分わけられる。

胎児たいじ型がた[編集へんしゅう]

  • ブドウ状じょう亜あ型がた (botryoid variant)
  • 紡錘ぼうすい細胞さいぼう亜あ型がた (spindle cell variant)
  • 退すさ形成けいせい亜あ型がた(anaplastic variant)

胞巣型がた[編集へんしゅう]

  • 固形こけい亜あ型がた(solid variant)
  • 胎児たいじ胞巣混合こんごう亜あ型がた(mixed embryonal / alveolar) 胎児たいじ型がたと混在こんざいするため、混合こんごう型がたと診断しんだんされる場合ばあいもある。
  • 退すさ形成けいせい亜あ型がた(anaplastic variant)

検査けんさ[編集へんしゅう]

血液けつえき検査けんさ、尿にょう検査けんさ、画像がぞう検査けんさ、骨髄こつづい検査けんさ（生なま検けん）を組合くみあわせて行おこなう。

画像がぞう検査けんさ
核かく磁気じき共鳴きょうめい画像がぞう法ほう、コンピュータ断層だんそう撮影さつえい、ポジトロン断層だんそう法ほう

治療ちりょう[編集へんしゅう]

外科げか手術しゅじゅつ、放射線ほうしゃせん療法りょうほう、化学かがく療法りょうほう

ステージ分類ぶんるい[編集へんしゅう]

TNM分類ぶんるい
詳細しょうさいは「TNM分類ぶんるい」を参照さんしょう
  • T 腫瘍しゅよう
    • T1:原発げんぱつ部位ぶいに限局げんきょく、T2:原発げんぱつ巣すの周囲しゅうい組織そしきに浸潤しんじゅん 腫瘍しゅよう径みち/ a < 5cm 、b > 5cm
  • N リンパ節ぶし
    • N0:臨床りんしょう的てきに浸潤しんじゅんなし、N1:臨床りんしょう的てきに浸潤しんじゅんあり、Nx:臨床りんしょう的てきに浸潤しんじゅん不明ふめい
  • M 遠隔えんかく転移てんい
    • M0:遠隔えんかく転移てんいなし、M1:遠隔えんかく転移てんいあり
IRS の術じゅつ前ぜんステージ分類ぶんるい
記号きごう 原発げんぱつ部位ぶい 腫瘍しゅよう 腫瘍しゅよう径みち リンパ節ぶし 遠隔えんかく転移てんい
1 眼窩がんか、頭あたま頸部（傍はた髄ずい膜まくを除のぞく）、
泌尿生殖せいしょく器き系けい（膀胱ぼうこう・前立腺ぜんりつせんを除のぞく） 		T1/T2 a/b N0/N1/Nx なし(M0)
2 膀胱ぼうこう / 前立腺ぜんりつせん、四肢しし、傍はた髄ずい膜まく、
その他た（後腹あとばら膜まく，躯幹くかんなど含ふくむ） 		T1/T2 a N0/Nx なし(M0)
3 膀胱ぼうこう / 前立腺ぜんりつせん、四肢しし、傍はた髄ずい膜まく、
その他た（後腹あとばら膜まく，躯幹くかんなど含ふくむ） 		T1/T2 a N1 なし(M0)
b N0/N1/Nx なし(M0)
4 全すべて T1/T2 a/b N0/N1 あり(M1)

※『横よこ紋もん筋すじ肉腫にくしゅ 診療しんりょうガイドライン』[2]より引用いんようし改変かいへん。

IRS の術後じゅつごグループ分類ぶんるい
I 局所きょくしょ限局げんきょく性せい腫瘍しゅよう、完全かんぜん切除せつじょ
II 顕微鏡けんびきょう的てき腫瘍しゅよう残存ざんそん、肉眼にくがん的てきには全ぜん摘、所属しょぞくリンパ節ぶし転移てんいなし/あり、微小びしょう残存ざんそん＋/−
III a．生なま検けんのみ、
b．亜あ全ぜん摘/50 %以上いじょうの部分ぶぶん切除せつじょ
IV a．遠隔えんかく転移てんい、
b．髄ずい液えき/胸水きょうすい/腹水ふくすい中ちゅうに腫瘍しゅよう細胞さいぼうあり、
c．胸膜きょうまく播種はしゅ/腹膜ふくまく（大網おおあみ）播種はしゅ

※『横よこ紋もん筋すじ肉腫にくしゅ 診療しんりょうガイドライン』[2]より引用いんようし改変かいへん。

予よ後ご因子いんし[編集へんしゅう]

究きわむ報告ほうこくからの予よ後ご因子いんし[2]

因子いんし分類ぶんるい 予よ後ご良好りょうこう 予よ後ご不良ふりょう
初発しょはつ年齢ねんれい 1歳さい以上いじょう、10歳さい未満みまん 1歳さい未満みまん、10歳さい以上いじょう
腫瘍しゅよう因子いんし
腫瘍しゅよう原発げんぱつ部位ぶい 		眼窩がんか、
傍はた髄ずい膜まくを除のぞく頭あたま頸部泌尿生殖せいしょく器き（膀胱ぼうこう・前立腺ぜんりつせんを除のぞく）、
胆道たんどう 		傍はた髄ずい膜まく、膀胱ぼうこう・前立腺ぜんりつせん、四肢ししなど
腫瘍しゅよう直径ちょっけい 5 cm 未満みまん 5 cm 以上いじょう
切除せつじょの可否かひ 完全かんぜん切除せつじょ 腫瘍しゅよう残存ざんそん
遠隔えんかく転移てんい（ステージ 4） 遠隔えんかく転移てんいなし 遠隔えんかく転移てんい＋
遠隔えんかく転移てんい肺はい 2 個こ未満みまんで切除せつじょ可能かのう 2 個こ以上いじょうで切除せつじょ不能ふのう
骨ほね、骨髄こつづい転移てんい なし あり
CPK や LDH の著いちじるしい高値たかね なし あり
病理びょうり組織そしき型がた 胎児たいじ型がた（含ブドウ肉腫にくしゅなど） 胞巣型がた，未み分化ぶんか肉腫にくしゅ
遺伝子いでんし異常いじょう なし 融合ゆうごう遺伝子いでんしあり
遺伝子いでんし異常いじょう
（PAX 遺伝子いでんし間あいだでの比較ひかく） 		PAX7-FKHR PAX3-FKHR（FOXO1）
治療ちりょう開始かいし後ご
100 日にち未満みまんの増悪ぞうあく 		なし あり
放射線ほうしゃせん治療ちりょう 規定きてい通どおりに照射しょうしゃされている 規定きていの照射しょうしゃなし、規定きてい違反いはん

※ CPK：クレアチンホスフォキナーゼ，LDH：乳酸にゅうさん脱水だっすい素もと酵素こうそ

横よこ紋もん筋肉きんにく腫しゅに関連かんれんした映像えいぞう作品さくひん[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 治療ちりょう抵抗ていこう性せいとは、すべての治療ちりょうが無効むこうであること、あるいは、患者かんじゃの希望きぼうと全身ぜんしん状態じょうたいを踏ふまえたうえで、予測よそくされる生命せいめい予よ後ごまでに有効ゆうこうで、しかも合併症がっぺいしょうの危険きけんがなく、手術しゅじゅつなどの侵おかせ襲かさねを行おこなえるだけの治療ちりょう手段しゅだんといったものが存在そんざいしない場合ばあいの、患者かんじゃの苦痛くつうのことを指さす[7]。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ 森もり正樹まさき, 今村いまむら好章よしあき, 前川まえかわ秀樹ひでき, 法木ほうぎ左近さこん, 都築つづき秀明ひであき、「頬ほお部ぶに発生はっせいした胞巣型がた横よこ紋もん筋肉きんにく腫しゅの1例れい」 『日本にっぽん臨床りんしょう細胞さいぼう学会がっかい雑誌ざっし』 2000年ねん 39巻かん 6号ごう p.502-506, doi:10.5795/jjscc.39.502, 日本にっぽん臨床りんしょう細胞さいぼう学会がっかい
  2. ^ a b c d e f 横よこ紋もん筋すじ肉腫にくしゅ 診療しんりょうガイドライン (PDF) 日本にっぽん小児しょうに血液けつえき・がん学会がっかい
  3. ^ a b c d e 横よこ紋もん筋すじ肉腫にくしゅ MSDマニュアル プロフェッショナル版ばん
  4. ^ a b c d e 横よこ紋もん筋すじ肉腫にくしゅ 京都府立医科大学きょうとふりついかだいがく 小児しょうに科学かがく教室きょうしつ
  5. ^ 横よこ紋もん筋肉きんにく腫しゅ〈小児しょうに〉 国立こくりつがん研究けんきゅうセンター 小児しょうにがん情報じょうほうサービス
  6. ^ a b c d 菊地きくち顕あらわ、細井ほそい創はじめ 「筋すじ発生はっせい分化ぶんかと横よこ紋もん筋肉きんにく腫しゅの発生はっせい病態びょうたい (PDF) 」『京きょう府ふ医大いだい誌し』122(6)、341-348、2013年ねん。
  7. ^ 編集へんしゅう：特定とくてい非ひ営利えいり活動かつどう法人ほうじん日本にっぽん緩和かんわ医療いりょう学会がっかい、緩和かんわ医療いりょうガイドライン作成さくせい委員いいん会かい 5章しょう 推奨すいしょうと委員いいん会かい合意ごうい3 治療ちりょうとケアの実際じっさい 1. 医学いがく的てき適応てきおうの検討けんとう『苦痛くつう緩和かんわのための鎮静ちんせいに関かんするガイドライン』2010年版ねんばん、2010年ねん。 (PDF)

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]

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