裁縫(ソーイング)の「裁ち」の作業
裁縫(さいほう)は、布などを裁つこと(裁断)および縫うこと(縫製)であり、特にそのようにして衣服類を作ることを指す。縫いもの、針仕事ともいい、英語でもソーイング(英: sewing)という。
衣類を仕立てるために、裁ったり縫ったりすること。辞書の説明では、布地を裁って衣服などに縫いあげること[1] なお衣服を制作する行為は仕立て(したて)ともいう。
服作りの作業全般を指すための用語であり、実際には材料の選択から始まり、裁断、縫い、さらに着装、保存の技能までを含む[2]。
明治以降の日本では洋裁(洋服を作ること)と和裁(和服を作ること)に分類する。現代で一般的なのは洋裁のほうである。
洋裁・和裁のいずれも、家庭裁縫(英: home sewing)と家庭外の裁縫(主にプロによる裁縫)とがあり[2]、どちらも裁縫である。
なお、広義には、服だけでなく、服よりも簡単なものを作るために布地を裁ち縫うことを指すこともある。たとえば、小学・中学の教科の家庭科や技術・家庭のカリキュラムで「裁縫」として生徒に行わせるのは、たとえばぞうきん作りや簡単な布製のカバン作りなどである。ただし、布を裁つ作業や、縫う作業がしっかり含まれる。
[注釈 1]
多くの文化で、石器時代には縫物をしていた形跡が見られた。骨やシカの角、木材から針が作られ、動物の健・消化器カットグット・植物のツタなどが紐として縫物が行われていた[4]。
機械化以前は衣服は貴重品であり、針仕事は衣服を長持ちさせる重要な仕事であった。長い間、女性の仕事であり、日本でもヨーロッパでも針箱・裁縫道具が嫁入り道具であった[5][6]。
江戸時代では裁縫をする人は針妙(しんみょう)と呼ばれた。針子、お針子とも。
現代のアパレル工場では、ライン方式で分業制で作業内容ごとに細かく分けて分担し、大量生産している。縫う作業を担当する人のことは「ソーイングスタッフ」や縫製技術者という。
アパレル工場では自動化が進行しており、自動検反[注 1]システム、自動裁断システム、自動袖付けミシン、自動ボタン付けミシン、自動縫製システムなどが使われるようになって、裁縫は労働集約的では無くなってきている[7]。
[注釈 2]
手と針で縫うことを手縫いといい、ミシンで縫うことを縫製という。
裁縫(針仕事)には、糸、布、針などを用いる。こういった裁縫道具などを収める箱のことを裁縫箱という。簡単な「ソーイングキット」(最低限の道具をセットにした裁縫セット)も販売されている。
基本的な縫製手法を基礎縫いという。
- 縫い方
- 本縫い(ぐし縫い) - 布を縫い合わせるときなどに用いる一般的な方法[9]
- 本返し縫い
- 半返し縫い - 一針進んだ半分の長さを返りながら縫い進む方法[9]
- かがり縫い
- まつり縫い
- 糸の処理
- 玉結び - 親指と人差し指で糸端を持って、人差し指で輪を作りながら指先から外して糸玉を作る方法[9]
- 玉どめ - 縫い終わりの縫い目に縫い針を直角に当てて糸を巻き付けて引き抜き糸玉を作ってとめる方法[9]
- 他
ミシンで縫うことは、家庭からアパレル工場まで、広く行われている。
教育や学習[編集]
日本では家庭科や技術・家庭のカリキュラムで裁縫の入門段階に当たる布の裁ち方や縫い方の基本が教えられているものの、(家庭科や技術・家庭のカリキュラムのかなり限られた時間の中で、まだ服を作ったことがない小・中学生に一律に教えるのは困難なので)服づくりまでは教えられておらず、主に衣服の管理方法(洗濯方法、洗濯表示の見方)などを教えている。
専門学校では服作りを教えるコースが設置されているところもある。被服科などでは服作りを教えている。大学などでは、被服学あるいは被服構成学の一部として教授される場合がある。
その他、カルチャーセンターや公民館でも教えられている。
NHKの番組『すてきにハンドメイド』の「ソーイング」の回で裁縫が教えられている。
裁縫の技能資格[編集]
裁縫に関連する技能資格を下に挙げる。
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手芸のことは、手芸に書くほうがよい
笹本の論文(1998)では、手芸と裁縫は異なる、と書いてある。
裁縫をもっと広く解釈していて、「糸や布を用いた手仕事」だという[3]。
この広義の意味で使うとすると、「手芸」という用語とどれだけ意味が重なるか、どのように「裁縫」と「手芸」という用語を使い分ければよいかが問題なるが、飯塚信雄は「裁縫」と「手芸」の違いについて、裁縫(針仕事)は純粋に機能性を求めるのに対し、手芸は機能性とともに装飾性を求める点で異なるとしているが、一方で手芸の場合は必ずしも針仕事に限られないという違いもある[3]。なお、日本語の「手芸」と「裁縫」の関係については、1895年(明治28年)高等女学校規程で裁縫が実生活の観点から必須科目、手芸が「勤勉ヲ好ムノ習慣ヲ養フ」観点から随意科目に編入され、目的の異なる科目として成立した経緯がある[3]。
裁縫は、簡単なものでは取れてしまったボタンを取り付け直したり、またはほつれてしまった部分を直すことであるが、手芸として高度化すると布から衣服を作り上げたり、ぬいぐるみなどの玩具に至るまで布製の物品を作ることも対象となる。
なおマジックペンの使用や布を縛ることも裁縫の一部として知られている[3]。
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大規模な縫製工場ではロボット化により裁縫に人間が関わらないこともある[8]。
- ^ 検反(けんたん)とは、衣服の材料となる布地に汚れや傷があるか無いかあらかじめ検査すること。衣服の材料の布地を古風ない方では反物(たんもの)と呼んだので、反物を検査するからこう呼ばれるようになった。
- 編み物 - 編む行為全般や編んだもの全般を指しており、そこには編んでセーターやカーディガンなどを作ることも含める。
- 刺繍 - 布と糸で意匠を凝らす装飾技法。
- リメイク
- 手袋 - 各種縫製手法が記述されている。
- ドレスメイカー(英語版)
- オナガサイホウチョウ - クモの糸で葉を袋状に縫い合わて土台を作りその中に巣を架けることからこの名が付いた。
- もったいない - 再使用
- かつて布製品が貴重だった時代には、着古した衣服から更に衣類を作り、それでも古くなったらおしめや雑巾・手拭などに作り替え、徹底的に再利用して資源を無駄なく利用していた。日本でも21世紀に入り、循環型社会などでこういった家庭内で可能な資源循環も見直されている。
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