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補償ほしょう光学こうがく

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
VLT補償ほしょう光学こうがく装置そうちSPHEREが撮影さつえいした小惑星しょうわくせいベスタ画像がぞうひだり)と、ドーン画像がぞうもとにしたモデル(みぎ)。かなりの精度せいど地形ちけいとらえているのがわかる
通常つうじょうかがみによる反射はんしゃ空気くうきによるゆらぎがそのまま反射はんしゃされている。
補償ほしょう光学こうがくしたがったかがみ変形へんけいによる波面はめん補正ほせい空気くうきによるゆらぎが補償ほしょうされる。

補償ほしょう光学こうがく(ほしょうこうがく、えい: Adaptive Optics適応てきおう光学こうがく[注釈ちゅうしゃく 1]))は、宇宙うちゅうから地球ちきゅう撮影さつえいしたり、地球ちきゅうから宇宙うちゅう撮影さつえいしたりするときに問題もんだいとなる大気たいきらぎ解決かいけつするために開発かいはつされた光学こうがく技術ぎじゅつである。その構成こうせいから「波面はめん補償ほしょう光学こうがく」といったわれかたもしている。

宇宙うちゅう望遠鏡ぼうえんきょうたよることなく望遠鏡ぼうえんきょう回折かいせつ限界げんかいまでのこう精度せいど観測かんそく可能かのうになるため、惑星わくせい小惑星しょうわくせいなどの観測かんそくもちいられて衛星えいせい発見はっけんなどあらたな発見はっけんがもたらされた。

概要がいよう

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補償ほしょう光学こうがくは、大気たいきらぎとうによってしょうじるほしぞうみだ[注釈ちゅうしゃく 2]を、波面はめんセンサーでとらえて、電子でんし制御せいぎょ回路かいろて、変形へんけいきょう変形へんけいさせることによって、対象たいしょうとなる天体てんたい物体ぶったいぞう正確せいかくとらえるための技術ぎじゅつである。工学こうがくてきには、エレクトロニクスにおける位相いそう同期どうき回路かいろ(フェーズ・ロック・ループ、PLL)と同様どうよう原理げんりもとづくものであり、天文てんもん科学かがく分野ぶんやでは32素子そし波面はめんセンサーと変形へんけいきょうもちいたリアルタイム・補償ほしょう光学こうがく実用じつようされている。

現在げんざいでは波長はちょう問題もんだいからおも赤外線せきがいせんによる観測かんそくもちいられているが、2012ねん日本にっぽん国立こくりつ天文台てんもんだいなどの研究けんきゅうチームがすばる望遠鏡ぼうえんきょう高性能こうせいのう補償ほしょう光学こうがく装置そうちにより可視かし光線こうせん成功せいこう[1]、さらなる観測かんそく精度せいど向上こうじょう期待きたいされている。

当初とうしょアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく他国たこく軍事ぐんじよう偵察ていさつ衛星えいせい形状けいじょう観測かんそくのために開発かいはつし、1989ねん2がつ完成かんせいした。開発かいはつたずさわったウィリアム・ハッパーたちのはたらきかけにより1991ねん5がつアメリカ天文てんもん学会がっかいはじめて一般いっぱん公開こうかいされ、ひろ研究けんきゅうされ、また応用おうようされるようになった。

技術ぎじゅつてき説明せつめい

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このシステムは、波面はめんセンサーと変形へんけいきょう、それを制御せいぎょする位相いそう制御せいぎょ計算けいさんによる位相いそう補償ほしょうおこなわれる。波面はめんセンサーは、シャックハルトマンセンサーときょくりつセンサーが代表だいひょうてきなものである。シャックハルトマンセンサーは、こまかなレンズアレイによって、ぞうのずれを測定そくていするものであり、もっと一般いっぱんてき方式ほうしきである。きょくりつセンサーは、センサー本体ほんたい移動いどうによって、ひかり強度きょうど変化へんかとらえて波動はどう干渉かんしょうによる波面はめん状態じょうたいとらえるものである。

これらのセンサーがとらえた情報じょうほうもと位相いそう制御せいぎょ計算けいさんによって、変形へんけいきょう制御せいぎょするための制御せいぎょ信号しんごうベクトル(電圧でんあつ)をつくす。基本きほんてきには、隣接りんせつするセンサーぐんのマトリックス(行列ぎょうれつ)演算えんざんによるものであり、さほど高度こうど技術ぎじゅつ必要ひつようとされない。

この信号しんごうによって制御せいぎょされるアクチュエーターの微小びしょう運動うんどうによって変形へんけいきょう変形へんけいし、ひかりみちびかれたほしぞう位相いそう補償ほしょうおこなわれる。

能動のうどう光学こうがく

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  • ケック望遠鏡ぼうえんきょう分割ぶんかつミラーをいちてん焦点しょうてんにあわせるための光学こうがく技術ぎじゅつ
  • すばる望遠鏡ぼうえんきょうおもきょう重力じゅうりょくによって変形へんけいするため、それをものめんたもつための光学こうがく技術ぎじゅつ
  • 野辺山のべやま宇宙うちゅう電波でんぱ観測かんそくしょの45mミリ望遠鏡ぼうえんきょうおもきょう重力じゅうりょくによって変形へんけいするため、それをものめんたもつためのホモロガス変形法へんけいほう
  • 反射はんしゃしき天体てんたい望遠鏡ぼうえんきょうおもきょう支持しじするためのてん支持しじ装置そうち

これらの基本きほんは、静的せいてきサポート(Static Support)と能動のうどうサポート(Active Support)に区分くぶんされるが、具体ぐたいてきうえれい分類ぶんるいすれば、ケック望遠鏡ぼうえんきょうすばる望遠鏡ぼうえんきょう場合ばあいには、能動のうどうサポートによる補償ほしょう光学こうがく技術ぎじゅつによって、しゅ鏡面きょうめん精度せいどたもち、回折かいせつ限界げんかい目指めざした設計せっけいおこなわれている。理由りゆうとしては、だい口径こうけいおもきょうともなれば、その重量じゅうりょうによって、おもきょう位置いちによってはものめん維持いじされず、おもきょうことなる位置いちはんしたひかり焦点しょうてんにおいていちてん収束しゅうそくずに分散ぶんさんしてしまうのを補正ほせいする必要ひつようがあることによる。野辺山のべやま宇宙うちゅう電波でんぱ観測かんそくしょの45mミリ望遠鏡ぼうえんきょうおよび、反射はんしゃしき望遠鏡ぼうえんきょうおもきょう支持しじするためのてん支持しじ装置そうちは、静的せいてきサポートに分類ぶんるいされる。ただし、45mミリ望遠鏡ぼうえんきょう場合ばあいには、重力じゅうりょくによるおもきょう変形へんけい積極せっきょくてき活用かつようすることによって、しゅ鏡面きょうめんふく鏡面きょうめんとのあいだ焦点しょうてんたもたれる工夫くふうがなされている。
能動のうどうサポートを利用りようしている望遠鏡ぼうえんきょうは、波長はちょうがあまりにもみじかいため、おもきょうのほんのわずかなゆがみが、その性能せいのういちじるしく影響えいきょうあたえる場合ばあい活用かつようされているとえる。それにたいして、静的せいてきサポートの場合ばあいには、ある程度ていど許容きょようできる範囲はんい、もしくは重量じゅうりょうぶつささえることによって、鏡面きょうめんのメンテナンスや自然しぜんちから利用りようした支持しじ装置そうちであるとえるのである。

その

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非線形ひせんけい光学こうがく結晶けっしょうもちいた「位相いそう共役きょうやくきょう」を利用りようした補償ほしょう光学こうがくによる、天文てんもん観測かんそく性能せいのう向上こうじょうについても研究けんきゅうされている。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 理工りこうがくでは一般いっぱんに「補償ほしょう」のかたりはcompensationのわけだが、この分野ぶんやではadaptiveに「補償ほしょう」のかたりてている(こともある)。
  2. ^ シンチレーション現象げんしょう

出典しゅってん

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参考さんこう文献ぶんけん

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  • 日本にっぽん天文てんもん学会がっかい(へん), シリーズ「現代げんだい天文学てんもんがくだい15かん -宇宙うちゅう観測かんそくⅠ -ひかりあかがい天文学てんもんがく だい7しょう, 日本にっぽん評論ひょうろんしゃ, 2007.7

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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