批評ひひょう

批評ひひょう（ひひょう、英語えいご・フランス語ふらんすご：critique）とは、ある事物じぶつの是非ぜひ・善悪ぜんあく・美醜びしゅうなどを指摘してきして、その価値かちを判断はんだんし、論ろんじることをいう。批判ひはん（ひはん）、評論ひょうろんともいう。批評ひひょう賞しょう、批判ひはん賞しょうはないが、評論ひょうろん賞しょうというものはある。出版しゅっぱん社しゃ的てきには評論ひょうろんが一般いっぱんの呼よび名なである。

英語えいご・フランス語ふらんすごの 「批評ひひょう」critique という単語たんごは、ギリシャ語ごの kritiki （κριτική，何なんらかのモノの価値かちについての「洞察どうさつある判断はんだん」）の語かたりに由来ゆらいする。

文芸ぶんげい・美術びじゅつ・文化ぶんかにおける「批評ひひょう」

critique は、美学びがくあるいは文学ぶんがく理論りろんにおいても用もちいられる。そこでの critique とは、主おもに詩し、絵画かいが、遊あそびなどの「作品さくひん批評ひひょう」を意味いみする。この場合ばあい、「批評ひひょう」とはより幅はばを広ひろく取とって、「ある作品さくひんの出来でき・品質ひんしつ・良よし悪あし（quality ）についてのあらゆる議論ぎろん」を指さすことになる。文芸ぶんげい批評ひひょうには批評ひひょう理論りろんというのもある。

哲学てつがくにおける「批判ひはん」

哲学てつがくの分野ぶんやではしばしば「批判ひはん」ともいう。イマヌエル・カントが「人間にんげんの認識にんしき能力のうりょくに関かんする限界げんかいや妥当だとう性せいについての反省はんせい的てきな考察こうさつ」という意味いみでKritik（独語どくご）を用もちいた。この文脈ぶんみゃくではKritikは「批評ひひょう」ではなく「批判ひはん」となる。しかし、Kritik（独どく）もcritique（英えい）も、それ自体じたいは、日本語にほんごにおける「批評ひひょう」と「批判ひはん」、どちらの意味合いみあいも含ふくんでいる。

さらに今日きょうの哲学てつがくにおけるcritique（批判ひはん・批評ひひょう） という単語たんごは「概念がいねん（concept）・理論りろん（theory）・研究けんきゅうの方法ほうほう論ろんや原理げんり（discipline）、あるいはそれらを用もちいた具体ぐたい的てきな分析ぶんせき手段しゅだん（approach）などについての諸しょ条件じょうけんや因果いんが関係かんけいに対たいして、体系たいけい的てきな問といを立たてること」「またそうした概念がいねん・理論りろん・方法ほうほう論ろん・分析ぶんせき手段しゅだんの限界げんかいや妥当だとう性せいを理解りかいしようと努つとめること」というような意味いみに拡張かくちょうされている。

なお、このような現代げんだい的てき意味いみにおけるcritical（批判ひはん的てき・批評ひひょう的てき）なアプローチと対立たいりつする思考しこう法ほうを「ドグマ的てきアプローチ」、すなわち「独善どくぜん的てきに決きめられた法則ほうそくを、決けっして疑うたがわないような思考しこう法ほう」と呼よぶ。

社会しゃかい思想しそうにおける批判ひはん理論りろん

政治せいじ理論りろんの文脈ぶんみゃくにおいては、カール・マルクスの唯物ゆいぶつ論ろんを継承けいしょうしたフランクフルト学派がくはの「批判ひはん理論りろん」(critical theory）において、「批判ひはん」という意味合いみあいでの critique の継承けいしょうが見みられる（ユルゲン・ハーバーマスなど）。また、ミシェル・フーコーやアラスデア・マッキンタイアの権力けんりょく批判ひはんも、そのやり方かたは著いちじるしく異ことなるものの、社会しゃかい批判ひはん（social critique）の文脈ぶんみゃくにある。

批判ひはん的てき思考しこう

心理しんり学がく、論理ろんり学がく、教育きょういく学がくなどで批判ひはん的てき思考しこう(クリティカル・シンキング)という概念がいねんがあり、批判ひはんを用もちいた思考しこうによって誤あやまった推論すいろんや論理ろんり展開てんかいを避さけるための解決かいけつなどとしても研究けんきゅうされている。

魅力みりょく

心理しんり学者がくしゃのエドワード・デボノは、何なにかを批評ひひょうする者ものは、批評ひひょうされる対象たいしょうよりも偉えらく見みえると指摘してきし、それが批評ひひょうの魅力みりょくであると述のべた。

関連かんれん項目こうもく

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