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さそえおこり効果こうか

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化学かがくおよび物理ぶつりがくにおいて、さそえおこり効果こうか(ゆうきこうか、えい: Inductive effect)は、分子ぶんしうち原子げんしくさりつうじた電荷でんか伝達でんたつ実験じっけんてき観測かんそくされる効果こうかであり[1]結合けつごう永久えいきゅう双極そうきょくしょうじさせる。σしぐま結合けつごうにおけるさそえおこり効果こうかπぱい 結合けつごうにおけるエレクトロメリー効果こうか英語えいごばん相当そうとうする。すべてのハロゲンは電子でんしもとめ引性もとすべてのアルキルもと電子でんし供与きょうよせいもとである。

結合けつごう分極ぶんきょく

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水分すいぶんにおける結合けつごう水素すいそ原子げんし近傍きんぼう若干じゃっかんまさに、より電気でんき陰性いんせいつよ酸素さんそ原子げんし近傍きんぼうでは若干じゃっかんまけ帯電たいでんしている。

共有きょうゆう結合けつごう結合けつごうをなす原子げんし同士どうし電気でんき陰性いんせいにより分極ぶんきょくしうる。2つのことなる原子げんしあいだσしぐま結合けつごうちゅう電子でんしくも一様いちようにはならず、より電気でんき陰性いんせいたか原子げんしがわ若干じゃっかん移動いどうする。これにより永久えいきゅうてき分極ぶんきょく結合けつごう状態じょうたいしょうじ、より電気でんき陰性いんせいたか原子げんしはわずかにまけに (δでるた–)、電気でんき陰性いんせいのよりひく原子げんしはわずかにまさに (δでるた+) 帯電たいでんすることになる。

たとえば、H2O 分子ぶんしでは電気でんき陰性いんせいつよ酸素さんそ原子げんし電荷でんかをひきつける。これを水分すいぶんない酸素さんそ原子げんし近傍きんぼうδでるた- とき、水素すいそ原子げんし近傍きんぼうには δでるた+ とくことによりあらわす。個々ここ結合けつごう双極そうきょくモーメント英語えいごばんのベクトル分子ぶんしそう双極そうきょくモーメントとなる。

さそえおこり効果こうか

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電気でんき陰性いんせいたか原子げんし原子げんしくさり通常つうじょう炭素たんそσしぐま結合けつごうするとき、その結合けつごうした原子げんし付近ふきん原子げんし電子でんしσしぐま結合けつごうつたってけてしまう。これは電子でんしもとめ引性さそえおこり効果こうかばれ、 効果こうかともいう。

これにたいしてアルキルもとなどの水素すいそ原子げんしよりも電子でんしもとめ引性のひく原子げんしだん電子でんし供与きょうよせいかんがえることができる。これが電子でんし供与きょうよせいさそえおこり効果こうかであり 効果こうかともいう。まとめれば、アルキルもと電子でんしわた傾向けいこうがあり、これによりさそえおこり効果こうかしょうじる。

分子ぶんし極性きょくせい変化へんかはもともとの極性きょくせいよりもちいさいため、さそえおこり効果こうか減衰げんすいはや短距離たんきょりにおいてしか顕著けんちょ影響えいきょうおよぼさない。さらに、さそえおこり効果こうか永久えいきゅうてきであるが、つよ拘束こうそくされている σしぐま-結合けつごう電子でんしのシフトがかかわるものなのでその影響えいきょうちいさく、よりつよ因子いんしがあるとこの効果こうかおおかくされてしまう。

さそえおこり効果こうか相対そうたいせい

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さそえおこり効果こうか相対そうたいせい水素すいそ基準きじゅんにして実験じっけんてき測定そくていされ、 -I 効果こうかつよじゅんから +I 効果こうかつよじゅんならべると以下いかのようになる。

–NH3+ > –NO2 > –SO2R > –CN > –SO3H > –CHO > –CO > –COOH > –COCl> –CONH2 > –F > –Cl > –Br > –I > –OR > -OH > –NH2 > –C6H5 > –CH=CH2 > –H

さそえおこり効果こうかつよさは置換ちかんもとと、相互そうご作用さよう相手あいてとなるしゅくさりとの距離きょりにも依存いぞんする。距離きょりおおきければ効果こうかちいさくなる。

さそえおこり効果こうかは、置換ちかんもとたいする反応はんのう速度そくど平衡へいこう定数ていすうとのあいだ関係かんけいしきであるハメットのしきつうじてはかることができる。

フラグメンテーション

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さそえおこり効果こうか分子ぶんしない原子げんしおよびもとじょう存在そんざいする電荷でんか依存いぞんして安定あんていせい決定けっていするのにもちいられる。たとえば、原子げんしせい電荷でんかをもち −I もと結合けつごうしている場合ばあい、その電荷でんかは「増幅ぞうふく」され分子ぶんしはより不安定ふあんていになる。同様どうように、電荷でんかびた原子げんしが +I もと結合けつごうしている場合ばあい電荷でんかは「増幅ぞうふく」され、分子ぶんしはより不安定ふあんていになる。ぎゃくに、電荷でんかびた原子げんしが −I もと結合けつごうしている場合ばあい、その電荷でんかは「減衰げんすい」され、さそえおこり効果こうか考慮こうりょしない場合ばあいよりも分子ぶんし安定あんていになる。同様どうように、せい電荷でんかびた原子げんしが +I もと結合けつごうする場合ばあい電荷でんかは「減衰げんすい」され、さそえおこり効果こうか考慮こうりょしない場合ばあいよりも分子ぶんし安定あんていになる。上述じょうじゅつ現象げんしょうは、より電荷でんかびた原子げんし安定あんていせいひくく、電荷でんかすくなければ安定あんていせいるという事実じじつから説明せつめいができる。

さん塩基えんき

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さそえおこり効果こうか分子ぶんし酸性さんせい塩基えんきせい決定けっていにおいても重要じゅうよう役割やくわりはたす。+I 効果こうかもと分子ぶんし結合けつごうすると分子ぶんし全体ぜんたい電子でんし密度みつど増加ぞうかし、電子でんしたい供与きょうよせいすため分子ぶんし塩基えんきせいとなる。同様どうように、-I 効果こうかもと分子ぶんし結合けつごうすると分子ぶんし全体ぜんたい電子でんし密度みつど低下ていかし、電子でんし欠乏けつぼう状態じょうたいになるため酸性さんせいとなる。分子ぶんし結合けつごうする -I もとかずえればえるほど酸性さんせいつよくなり、+I もとえればえるほど塩基えんきせいつよくなる。

応用おうよう

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カルボンさん

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カルボンさんさんとしてのつよさは、そのイオン化いおんか傾向けいこう依存いぞんする。よりイオン化いおんか傾向けいこうつよければさんとしてもつよくなる。さんつよくなれば pKaちいさくなる。

さん場合ばあい、アルキルもと電子でんし供与きょうよせいさそえおこり効果こうかにより酸素さんそ原子げんし電子でんし密度みつど増加ぞうかし、結果けっかとして O-H 結合けつごう解離かいり阻害そがいされてイオン化いおんか傾向けいこう低下ていかする。ギ酸ぎさん (pKa=3.74) は酢酸さくさん (pKa=4.76) にくらべて強酸きょうさんである。しかし、モノクロロ酢酸さくさん (pKa=2.82) はギ酸ぎさんよりもつよく、これは塩素えんそ原子げんし電子でんしもとめ引性さそえおこり効果こうかによりイオン化いおんか傾向けいこう増進ぞうしんされた結果けっかである。

安息香あんそくこうさんでは、たまき炭素たんそsp2混成こんせい軌道きどうつ。その結果けっか安息香あんそくこうさん (pKa=4.20) はシクロヘキサンカルボンさん英語えいごばん (pKa=4.87) よりもつよさんである。また、芳香ほうこうぞくカルボンさんでは、オルトおよびパラ電子でんしもとめ引性もとにより置換ちかんするとさん強度きょうどつよくなる。

カルボキシルもとはそれ自体じたい電子でんしもとめ引基であるから、ジカルボンさん一般いっぱんにモノカルボン酸類さんるいえんたいよりも強酸きょうさんである。さそえおこり効果こうかにはその結合けつごう双極そうきょくから炭素たんそ原子げんしべつ位置いち原子げんしとのあいだ結合けつごう形成けいせいたすける効果こうかもある。

さそえおこり効果こうかとエレクトロメリー効果こうかとの対比たいひ

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さそえおこり効果こうか エレクトロメリー効果こうか
電気でんき陰性いんせい起因きいんするたん結合けつごうにおける σしぐま 結合けつごう分極ぶんきょくさそえおこり効果こうかばれる 適切てきせつもとめ電子でんしざい存在そんざいによる、じゅう結合けつごうおよび三重みえ結合けつごうにおける πぱい 結合けつごう電子でんしたい隣接りんせつ原子げんしへの完全かんぜんなシフトがエレクトロメリー効果こうかばれる
永続えいぞくてき効果こうかである 一時いちじてき効果こうかである
反応はんのうざい存在そんざいようしない もとめ電子でんしざい存在そんざいようする

出典しゅってん

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  1. ^ Richard Daley. Organic Chemistry, Part 1 of 3. Lulu.com. pp. 58–. ISBN 978-1-304-67486-9. https://books.google.com/books?id=y8xEAgAAQBAJ&pg=PA58 

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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