課徴かちょう金きん

課徴かちょう金きん（かちょうきん）とは、国家こっかが国権こっけんに基もとづいて徴収ちょうしゅうする租税そぜい以外いがいの金銭きんせんをいう。財政ざいせい法ほう第だい3条じょうより、すべて法律ほうりつ又または国会こっかいの議決ぎけつに基もとづいて定さだめなければならない。

概要がいよう

行政ぎょうせい権けんに基もとづく例れいとしては、私的してき独占どくせんの禁止きんし及および公正こうせい取引とりひきの確保かくほに関かんする法律ほうりつ（独占どくせん禁止きんし法ほう）、不当ふとう景品けいひん類るい及および不当ふとう表示ひょうじ防止ぼうし法ほう（景品けいひん表示法ひょうじほう）、金融きんゆう商品しょうひん取引とりひき法ほう、公認こうにん会計士かいけいし法ほうなどに違反いはんした場合ばあいに納付のうふを命めいじられる課徴かちょう金きん、使用しよう料りょう、特許とっきょ料りょうなどがあり、司法しほう権けんに基もとづく例れいとしては、罰金ばっきん、科料かりょう、裁判さいばん費用ひようなどがある。

独占どくせん禁止きんし法ほうにおける課徴かちょう金きんとは、カルテル・入札にゅうさつ談合だんごう等とうの違反いはん行為こうい防止ぼうしという行政ぎょうせい目的もくてきを達成たっせいするため、行政ぎょうせい庁ちょうが違反いはん事業じぎょう者しゃ等とうに対たいして課かす金銭きんせん的てき不利益ふりえきのことをいう。公正こうせい取引とりひき委員いいん会かいは、事業じぎょう者しゃ又または事業じぎょう者しゃ団体だんたいが課徴かちょう金きんの対象たいしょうとなる独占どくせん禁止きんし法ほう違反いはん行為こういを行おこなっていた場合ばあい、当該とうがい違反いはん事業じぎょう者しゃ等とうに対たいして、課徴かちょう金きんを国庫こっこに納付のうふすることを命めいじる（課徴かちょう金きん納付のうふ命令めいれい）。

課徴かちょう金きん納付のうふを命めいじられた際さい、別個べっこに刑事けいじ上じょうも罰金ばっきんが科かされることもあり、双方そうほうを科かすことは二に重じゅう処罰しょばつを禁きんずる日本国にっぽんこく憲法けんぽう第だい39条じょうに違反いはんするという意見いけんもあるが、最高裁判所さいこうさいばんしょはこれを合憲ごうけんとしている。なお、同どう一いち事件じけんについて、課徴かちょう金きんと罰金ばっきんの双方そうほうが併あわせて課かされるときは、罰金ばっきん額がくの2分ぶんの1に相当そうとうする金額きんがくが課徴かちょう金きんから控除こうじょされる。

独占どくせん禁止きんし法ほうにおける課徴かちょう金きん制度せいど

現行げんこう課徴かちょう金きん制度せいどの課題かだい

独占どくせん禁止きんし法ほうにおける課徴かちょう金きん制度せいどは、法定ほうていされた客観きゃっかん的てきな算定さんてい要件ようけん・算定さんてい方式ほうしきに従したがって、カルテル等とうの対象たいしょう商品しょうひん又または役務えきむの売上うりあげ額がく等とうに一律いちりつに一定いってい率りつを乗じょうずる方法ほうほうにより画一かくいつ的てき・機械きかい的てきに算定さんていされる課徴かちょう金額きんがくを義務ぎむ的てきに賦課ふかする制度せいどである。したがって、経済けいざい活動かつどうのグローバル化か・多様たよう化か・複雑ふくざつ化か等とうの進展しんてんに対応たいおうし、事案じあんに即そくして違反いはん行為こういに対応たいおうした適正てきせいな課徴かちょう金きんの額がくを柔軟じゅうなんに算定さんてい・賦課ふかできないといわれている。また、日本にっぽんでは、諸しょ外国がいこくに比ひして、事業じぎょう者しゃが当局とうきょくの調査ちょうさに協力きょうりょくするインセンティブ及および調査ちょうさへの非ひ協力きょうりょく・妨害ぼうがいへのディスインセンティブを確保かくほする仕組しくみが不十分ふじゅうぶんであり、他方たほう、事業じぎょう者しゃが調査ちょうさ協力きょうりょくを拒否きょひしたり調査ちょうさ妨害ぼうがいを行おこなったりしたとしても、課徴かちょう金額きんがくが増額ぞうがくされることはないといわれている。そして、国際こくさい標準ひょうじゅん的てきな制裁せいさい金きん等とうの制度せいどとの整合せいごう性せいに欠かけているといわれている。

課徴かちょう金きん減免げんめん制度せいど（リーニエンシー制度せいど）

課徴かちょう金きん減免げんめん制度せいどとは、事業じぎょう者しゃが自みずから関与かんよしたカルテル・入札にゅうさつ談合だんごうについて、その違反いはん内容ないようを公正こうせい取引とりひき委員いいん会かいに自主じしゅ報告ほうこくした場合ばあい、課徴かちょう金きんが減免げんめんされる制度せいどである。公正こうせい取引とりひき委員いいん会かいが調査ちょうさを開始かいしする前まえに、他たの事業じぎょう者しゃよりも早期そうきに報告ほうこくすれば、課徴かちょう金きんの減額げんがく率りつが大おおきくなる仕組しくみとなっており、公正こうせい取引とりひき委員いいん会かいの調査ちょうさ開始かいし日び前まえと調査ちょうさ開始かいし日び以後いごとで合あわせて、最大さいだい5社しゃに適用てきようされる。事業じぎょう者しゃ自みずからがその違反いはん内容ないようを報告ほうこくし、更さらに資料しりょうを提出ていしゅつすることにより、カルテル・入札にゅうさつ談合だんごうの発見はっけん、解明かいめいを容易ようい化かして、競争きょうそう秩序ちつじょを早期そうきに回復かいふくすることを目的もくてきとしている。

名古屋なごや市し発注はっちゅうの地下鉄ちかてつ工事こうじを巡めぐる談合だんごう事件じけん（2007年ねん）では、自主じしゅ申告しんこくしたゼネコン1社しゃにリーニエンシー制度せいどを適用てきようし、刑事けいじ告発こくはつ対象たいしょうから除外じょがいした。北陸ほくりく新幹線しんかんせんの融雪ゆうせつ設備せつび工事こうじを巡めぐる談合だんごう事件じけん（2014年ねん）や、東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいで被災ひさいした高速こうそく道路どうろ復旧ふっきゅう工事こうじを巡めぐる談合だんごう事件じけん（2016年ねん）でも適用てきようされている。さらに、リニア工事こうじを巡めぐる独禁法どっきんほう違反いはん事件じけんで、大林組おおばやしぐみが課徴かちょう金きん減免げんめん制度せいどに基もとづき公正こうせい取引とりひき委員いいん会かいに違反いはんを申告しんこくしていた。

課徴かちょう金きん納付のうふ命令めいれいの最高さいこう額がく

独占どくせん禁止きんし法ほう違反いはんに対たいする課徴かちょう金きん納付のうふ命令めいれいに関かんして、1事件じけんの最高さいこう額がくは約やく270億おく円えん（対象たいしょう者しゃ数すう5社しゃ。地方ちほう公共こうきょう団体だんたいが発注はっちゅうするストーカ炉ろの建設けんせつ工事こうじの入札にゅうさつ談合だんごうに関かんする事件じけん）であり、1社しゃに対たいする最高さいこう額がくは約やく131億おく円えん（自動車じどうしゃ運送うんそう業務ぎょうむを行おこなう船舶せんぱく運航うんこう事業じぎょう者しゃによる海運かいうんカルテルに関かんする事件じけん）である。なお、2017年ねん9月がつ、欧州おうしゅう連合れんごう（EU）の欧州おうしゅう委員いいん会かいは、GoogleがEU競争きょうそう法ほうに違反いはんしたとして、過去かこ最高さいこう額がくの24億おく2000万まんユーロ（約やく3146億おく円えん）の制裁せいさい金きん（課徴かちょう金きんに相当そうとう）を支払しはらうように命めいじた。

関連かんれん項目こうもく

• 行政ぎょうせい行為こうい
• 公正こうせい取引とりひき委員いいん会かい
• 証券しょうけん取引とりひき等とう監視かんし委員いいん会かい
• 国民こくみん生活せいかつ安定あんてい緊急きんきゅう措置そち法ほう第だい十じゅう一いち条じょう
• 制裁せいさい金きん

外部がいぶリンク

• 公正こうせい取引とりひき委員いいん会かい：課徴かちょう金きん制度せいど
• 消費しょうひ者しゃ庁ちょう：平成へいせい29年版ねんばん消費しょうひ者しゃ白書はくしょ>第だい2部ぶ 第だい1章しょう 第だい3節せつ(1)課徴かちょう金きん制度せいどの導入どうにゅう
• 金融きんゆう庁ちょう：課徴かちょう金きん制度せいどについて