駐留ちゅうりゅう軍ぐん用地ようち特措法とくそほう

日本にっぽん国こくとアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくとの間あいだの相互そうご協力きょうりょく及および安全あんぜん保障ほしょう条約じょうやく第だい六ろく条じょうに基もとづく施設しせつ及および区域くいき並ならびに日本にっぽん国こくにおける合衆国がっしゅうこく軍隊ぐんたいの地位ちいに関かんする協定きょうていの実施じっしに伴ともなう土地とち等とうの使用しよう等とうに関かんする特別とくべつ措置そち法ほう
	; 日本にっぽんの法令ほうれい
通称つうしょう・略称りゃくしょう	駐留ちゅうりゅう軍ぐん用地ようち返還へんかん特別とくべつ措置そち法ほう、米べい軍ぐん用地ようち特別とくべつ措置そち法ほう、米べい軍ぐん用地ようち特措法とくそほう、沖縄おきなわ特措法とくそほう
法令ほうれい番号ばんごう	昭和しょうわ27年ねん法律ほうりつ第だい140号ごう
種類しゅるい	外事がいじ
効力こうりょく	現行げんこう法ほう
成立せいりつ	1952年ねん5月がつ9日にち
公布こうふ	1952年ねん5月がつ15日にち
施行しこう	1952年ねん5月がつ15日にち
主おもな内容ないよう	在ざい日米にちべい軍ぐん基地きち用地ようち確保かくほのための収用しゅうようなど
関連かんれん法令ほうれい	日米にちべい安保あんぽ条約じょうやく、土地とち収用しゅうよう法ほう
制定せいてい時じ題名だいめい	日本にっぽん国こくとアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくとの間あいだの安全あんぜん保障ほしょう条約じょうやく第だい三さん条じょうに基もとづく行政ぎょうせい協定きょうていの実施じっしに伴ともなう土地とち等とうの使用しよう等とうに関かんする特別とくべつ措置そち法ほう
条文じょうぶんリンク	駐留ちゅうりゅう軍ぐん用地ようち特措法とくそほう - e-Gov法令ほうれい検索けんさく
	テンプレートを表示ひょうじ

駐留ちゅうりゅう軍ぐん用地ようち特措法とくそほう（ちゅうりゅうぐんようちとくそほう）とは、日米にちべい安保あんぽ条約じょうやくに基もとづき、在ざい日米にちべい軍ぐん基地きちに土地とちを提供ていきょうするために定さだめた特別とくべつ措置そち法ほうである。正式せいしき題名だいめいは「日本にっぽん国こくとアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくとの間あいだの相互そうご協力きょうりょく及および安全あんぜん保障ほしょう条約じょうやく第だい六ろく条じょうに基もとづく施設しせつ及および区域くいき並ならびに日本にっぽん国こくにおける合衆国がっしゅうこく軍隊ぐんたいの地位ちいに関かんする協定きょうていの実施じっしに伴ともなう土地とち等とうの使用しよう等とうに関かんする特別とくべつ措置そち法ほう」。法令ほうれい番号ばんごうは昭和しょうわ27年ねん法律ほうりつ第だい140号ごう、1952年ねん（昭和しょうわ27年ねん）に公布こうふされた。

概要がいよう[編集へんしゅう]

制定せいていと沖縄おきなわ基地きち問題もんだい[編集へんしゅう]

1951年ねん、日本にっぽん国こくとアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくとの間あいだの安全あんぜん保障ほしょう条約じょうやく（旧きゅう安保あんぽ）が締結ていけつされ、日本にっぽんは米べい軍ぐんに基地きちの用地ようちを提供ていきょうする義務ぎむが生しょうじた。米べい軍ぐんは終戦しゅうせん直後ちょくごより基地きち用地ようちとして国有こくゆう地ち・民みん公有こうゆう地ちを問とわず接収せっしゅうしていたが、日本にっぽんの主権しゅけん回復かいふくによって強制きょうせい的てきな「接収せっしゅう」から合意ごういに基もとづく「提供ていきょう」へと移行いこうすることとなり、民みん公有こうゆう地ちの提供ていきょうにあたっては、日本国にっぽんこく政府せいふが土地とち所有しょゆう者しゃと賃貸借ちんたいしゃく契約けいやくを結むすんだ上じょうで米べい軍ぐんに提供ていきょうすることとなった。

しかし、土地とち所有しょゆう者しゃの中なかには反米はんべい感情かんじょうから国くにとの契約けいやくに応おうじない者ものも多数たすういた。一方いっぽうで、条約じょうやく締結ていけつによって米べい軍ぐんへの用地ようち提供ていきょうは日本国にっぽんこく政府せいふの義務ぎむとなったため、国くにによる土地とちの共同きょうどう使用しようの手段しゅだんを整備せいびする必要ひつようが生しょうじた。

土地とちの強制きょうせい収用しゅうよう・使用しようについては当時とうじから土地とち収用しゅうよう法ほうが存在そんざいしていたが、同どう法ほうの手続てつづきは非常ひじょうに厳格げんかくであり、手間てまも時間じかんもかかるものであったため、条約じょうやく上じょうの義務ぎむを履行りこうするという大義名分たいぎめいぶんの下した、土地とち収用しゅうよう法ほうの手続てつづきを簡略かんりゃく化かする目的もくてきで駐留ちゅうりゅう軍ぐん用地ようち特措法とくそほうが制定せいていされた。1952年ねんに本ほん法案ほうあんが政府せいふによって提出ていしゅつされ、自由じゆう、協同きょうどう、民主みんしゅクラブ、緑風りょくふう（緑風りょくふうは党議とうぎ拘束こうそくなし）の賛成さんせい、右みぎ社しゃ、左ひだり社しゃ、改あらため進すすむ、共産きょうさんの反対はんたいの結果けっか、可決かけつ成立せいりつしたのが本ほん法律ほうりつである（旧きゅう条約じょうやくでは「第だい三さん条じょう」、新しん条約じょうやくでは「第だい六ろく条じょう」）。

用地ようちの選定せんていは内閣ないかく総理そうり大臣だいじん（現在げんざいは防衛ぼうえい大臣だいじん）が権限けんげんを持もち、首相しゅしょうが「駐留ちゅうりゅう軍ぐんの用ように供きょうするため土地とち等とうを必要ひつようとする場合ばあいにおいて、その土地とち等とうを駐留ちゅうりゅう軍ぐんの用ように供きょうすることが適正てきせい且かつ合理ごうり的てき」（第だい三さん条じょう）と判断はんだんした場合ばあいは、国内こくないのいかなる土地とちでも使用しよう・収用しゅうようできる（借地しゃくち代だいは補償ほしょうされる）。ただし、主権しゅけん回復かいふくとともに米べい軍ぐんに提供ていきょうされた土地とちは国有こくゆう地ちが大半たいはんであり、本ほん法律ほうりつの適用てきようはそれほど多おおくなかった。

1961年ねん以来いらい適用てきよう例れいはなかったが、1972年ねんにアメリカの統治とうち下かであった沖縄おきなわ県けんが返還へんかんされ、その後ごも在日ざいにち米まい軍ぐん基地きちの大だい多数たすうが集中しゅうちゅうする地域ちいきであり続つづけたため、その対応たいおうをめぐって同どう法ほうが再ふたたびクローズアップされるようになった。沖縄おきなわ県けんでは、アメリカの統治とうち下か時代じだいに膨大ぼうだいな面積めんせきの民有みんゆう地ちが接収せっしゅうされたため、民有みんゆう地ちや県けん・市町村しちょうそん有ゆう地ちの割合わりあいが、県内けんないの軍ぐん用地ようちのそれぞれ3割わり以上いじょうと際きわだって高たかかった。そのため沖縄おきなわが日本にっぽんに返還へんかんされた結果けっか、米べい軍ぐんからの土地とち返還へんかんを求もとめる地主じぬしもそれだけ多おおくなり、さらに米べい軍ぐん基地きちに反対はんたいする反戦はんせん地主じぬしもこれに加くわわった。さらに、国有こくゆう地ちの中なかにも第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん中なかに無償むしょう収用しゅうようされた土地とちがあり、旧きゅう地主じぬしたちは返還へんかん訴訟そしょうを起おこしていた（1995年ねん、最高裁判所さいこうさいばんしょで旧きゅう地主じぬし側がわの全面ぜんめん敗訴はいそ）。

日本にっぽん政府せいふは返還へんかん1年ねん前まえの1971年ねん12月に時限じげん立法りっぽうの沖縄おきなわにおける公おおやけ用地ようち等とうの暫定ざんてい使用しように関かんする法律ほうりつ（公用こうよう地ち暫定ざんてい使用しよう法ほう）で、5年間ねんかんは引ひき続つづき強制きょうせい使用しようを可能かのうにし、その間あいだに買収ばいしゅうまたは賃貸借ちんたいしゃく契約けいやくをしようとした。しかし、5年ねんたってもそれに応おうじない地主じぬしが多おおく、1977年ねん5月に沖縄おきなわ県けんの区域くいき内ないにおける位置いち境界きょうかい不明ふめい地域ちいき内ないの各かく筆ふでの土地とちの位置いち境界きょうかいの明確めいかく化か等とうに関かんする特別とくべつ措置そち法ほう（地籍ちせき明確めいかく化か法ほう）の附則ふそくで使用しよう期限きげんを10年ねんに延長えんちょうした（この法案ほうあん成立せいりつの過程かていで「4日間にちかんの空白くうはく」が発生はっせいしている）。1982年ねんに同どう法ほうの期限きげんが切きれると、21年ねんぶりに駐留ちゅうりゅう軍ぐん用地ようち特措法とくそほうを沖縄おきなわ県けんに適用てきようし、引ひき続つづき使用しようを続つづけた。その後ご、日本にっぽん政府せいふは1987年ねん、1992年ねんと駐留ちゅうりゅう軍ぐん用地ようち特措法とくそほうに基もとづく使用しよう裁決さいけつにより、その使用しよう権原けんげんを取得しゅとくしてきた。

特措法とくそほう改正かいせい[編集へんしゅう]

1995年ねんに駐留ちゅうりゅう軍ぐん用地ようち特措法とくそほう上じょうの手続てつづき上じょうにおいて大田おおた昌秀まさひで沖縄おきなわ県知事けんちじが代理だいり署名しょめいを拒否きょひしたことで（これにより沖縄おきなわ代理だいり署名しょめい訴訟そしょうが起おこり、県けんが敗訴はいそした）、1996年ねんに使用しよう期限きげんが切きれて不法ふほう占拠せんきょとなった楚辺そべ通信つうしん所しょの土地とちが現あらわれた。地主じぬしの知花ちばな昌一しょういちらは即時そくじ返還へんかんを要求ようきゅうした。そこで、政府せいふは引ひき続つづき使用しようを続つづけるための改正かいせい案あんを出だした。米べい軍ぐん基地きちの地主じぬしが、契約けいやく期間きかん満了まんりょう後ごの更新こうしんを拒否きょひした場合ばあいでも、収用しゅうよう委員いいん会かいの審理しんり中ちゅうは補償ほしょうを行おこなうことで「暫定ざんてい使用しよう」を引ひき続つづき可能かのうとするもので、さらに委員いいん会かいが使用しようを却下きゃっかしても、防衛ぼうえい施設しせつ局きょく長ちょうが審査しんさ請求せいきゅうを行おこなう間あいだは引ひき続つづき使用しようを可能かのうにした。しかも、附則ふそくで使用しよう期限きげんが切きれた土地とちについても、さかのぼって改正かいせい案あんを適用てきようし、土地とちの明あけ渡わたしをせずに済すむようにした。また、新あらたに土地とちを使用しようするための規定きていを設もうけ、収用しゅうよう委員いいん会かいが却下きゃっか裁決さいけつを出だした場合ばあい、首相しゅしょうの権限けんげんで使用しようできるようにした（第だい二に十じゅう四よん条じょう）。こうして反戦はんせん地主じぬしと収用しゅうよう委員いいん会かいを無力むりょく化かし、土地とちを「永久えいきゅうに借かりておく」ことができるようにするものだった。

この改正かいせい案あんに、沖縄おきなわ県けんでは激はげしい反対はんたい運動うんどうが起おこったが、本土ほんどでの関心かんしんは薄うすかった。さらに、国会こっかいでは「九きゅう九きゅう％のシェアを持もつ二ふたつの新聞しんぶん（琉球新報りゅうきゅうしんぽうと沖縄おきなわタイムス）によって、それも反戦はんせん地主じぬしになっている幹部かんぶのもとにある新聞しんぶん社しゃが発行はっこうする新聞しんぶんによって沖縄おきなわの心しんがマインドコントロールされておる」（1997/4/9衆議院しゅうぎいん日米にちべい安全あんぜん保障ほしょう条約じょうやくの実施じっしに伴ともなう土地とち使用しよう等とうに関かんする特別とくべつ委員いいん会かい公聴こうちょう会かい、新進しんしん・西村にしむら眞しん悟さとる。反対はんたいの参考さんこう人じんとして招まねかれた新崎あらさき盛もり暉あきらに）「私権しけんは、安全あんぜん保障ほしょう上じょうの重大じゅうだいな国家こっかの利害りがいのために制限せいげんを受うける」（1997/5/16衆議院しゅうぎいん法務ほうむ委員いいん会かい、西村にしむら）、「（日米にちべい安保あんぽの堅持けんじを強調きょうちょうし、安保あんぽ反対はんたい派はを「極きわめて少数しょうすうの」「はっきり国益こくえきに反はんする」存在そんざいであるとした上うえで）沖縄おきなわはもちろん日本にっぽんの一部いちぶでございまして、日本にっぽんという大おおきな船ふねの中なかの一ひとつでございます。沖縄おきなわというところは例たとえばエンジンルームに近ちかくてうるさくて暑あつい、だから不公平ふこうへいだということでございまして、その負担ふたんをある程度ていどみんなで分わけようということをやっているわけでございますけれども、完全かんぜんに分わけられるはずのものでもございません」（1997/4/16参議院さんぎいん公聴こうちょう会かい、賛成さんせいの参考さんこう人じん岡崎おかざき久ひさ彦）といった論調ろんちょうが目立めだった。

改正かいせい案あんは、自民じみんと新進しんしんが合意ごういし、民主みんしゅも賛成さんせいの意向いこうを見みせたため、圧倒的あっとうてき多数たすうで可決かけつされる見込みこみとなった。衆議院しゅうぎいん委員いいん会かい通過つうか後ごの4月がつ11日にち、自民じみんの野中のなか広務ひろむ委員いいん長ちょうは本ほん会議かいぎでの委員いいん会かい報告ほうこくの最後さいごに、「この法律ほうりつがこれから沖縄おきなわ県民けんみんの上うえに軍靴ぐんかで踏ふみにじるような、そんな結果けっかにならないことを、そして、私わたしたちのような古ふるい苦くるしい時代じだいを生いきてきた人間にんげんは、再ふたたび国会こっかいの審議しんぎが、どうぞ大政たいせい翼賛よくさん会かいのような形かたちにならないように若わかい皆みなさんにお願ねがいをして、私わたしの報告ほうこくを終おわります」と付つけ加くわえた。自民じみんと新進しんしんの「保ほ保ほ連合れんごう」を牽制けんせいしたとも、性急せいきゅうな審議しんぎへの戒いましめとも云いわれているが、新進党しんしんとうはこの発言はつげんの会議かいぎ録ろくからの削除さくじょを要求ようきゅうし、同どう党とうの要求ようきゅう通どおり会議かいぎ録ろくから消けされた。4月11日にちの衆議院しゅうぎいん通過つうか後ご、4月がつ17日にち、自民じみん、新進しんしん、民主みんしゅ、さきがけ、太陽たいようの賛成さんせい、共産きょうさん、社民しゃみん、新しん社しゃ、沖縄おきなわ社しゃ大だい、二院にいんなどの反対はんたいで可決かけつ成立せいりつした。衆参しゅうさんともに、9割わり前後ぜんこうが賛成さんせいの圧倒的あっとうてき多数たすうでの可決かけつだった。社民しゃみんはこの当時とうじ、閣外かくがい協力きょうりょくで与党よとうだったが、本ほん法案ほうあんには反対はんたいした。