高畠たかはた華宵かしょう

1949年ねん（昭和しょうわ24年ねん）

高畠たかはた 華宵かしょう（たかばたけ かしょう、1888年ねん（明治めいじ21年ねん）4月がつ6日にち - 1966年ねん（昭和しょうわ41年ねん）7月がつ31日にち）は、日本にっぽんの画家がか。本名ほんみょう、高畠たかはた幸吉こうきち。

愛媛えひめ県けん宇和島うわじま市し裡うら町まちに生うまれ、京都きょうと市立しりつ美術びじゅつ工芸こうげい学校がっこう日本にっぽん画が科か卒業そつぎょう。大正たいしょうから昭和しょうわ初期しょきにかけて、華宵かしょうの絵えは当時とうじの少年しょうねん少女しょうじょの間あいだで絶大ぜつだいな人気にんきを得えた。宇和島うわじま市長しちょう・衆議院しゅうぎいん議員ぎいんを務つとめた高畠たかはた亀太郎かめたろうは、実兄じっけい。

栄光えいこうの日々ひび

華宵かしょうの意匠いしょうを用もちいた入浴にゅうよく剤ざい

1905年ねん京都きょうと市立しりつ美術びじゅつ工芸こうげい学校がっこうを中退ちゅうたい、1906年ねん関西かんさい美術びじゅつ院いんに学まなび、上京じょうきょうして寺崎てらさき広業こうぎょうに師事しじした。当座とうざは生活苦せいかつくに喘あえいでいたが、1911年ねん（明治めいじ44年ねん）に「華宵かしょう」名義めいぎで発表はっぴょうした津村つむら順じゅん天堂てんどう「中将ちゅうじょう湯ゆ」の広告こうこく画がで一躍いちやく有名ゆうめいになる。アール・ヌーボーやユーゲントシュティール、特とくにオーブリー・ビアズリーの影響えいきょうを受うけたとされるシャープなペン画がによるモダンな絵えはそれまでの広告こうこくイラストとは一線いっせんを画かくしたもので、世間せけんの注目ちゅうもくを集あつめた。

1924年ねん（大正たいしょう13年ねん）『七転八起しちてんはっき開運かいうん出世しゅっせ双六すごろく』高畠たかはた華宵かしょう

『少女しょうじょ画が報ほう』1926年ねん（大正たいしょう15年ねん）9月がつ号ごうの表紙ひょうし

『少女しょうじょ画が報ほう』1928年ねん（昭和しょうわ3年ねん）12月がつ号ごうの表紙ひょうし

その後ご『少女しょうじょ画が報ほう』（東京とうきょう社しゃ）『少女しょうじょ倶楽部くらぶ』『少年しょうねん倶楽部くらぶ』（いずれも講談社こうだんしゃ）『日本にっぽん少年しょうねん』『婦人ふじん世界せかい』（いずれも実業之日本社じつぎょうのにほんしゃ）などの少女しょうじょ向むけ雑誌ざっしや少年しょうねん雑誌ざっし、婦人ふじん雑誌ざっしなどに描えがいた独特どくとくな美少年びしょうねん・美少女びしょうじょの挿絵さしえや美人びじん画がは一世いっせいを風靡ふうびし、たちまち竹久たけひさ夢ゆめ二にらと並ならぶ人気にんき画家がかとなった。1925年ねん～30年ねん池田いけだ芙蓉ふよう（亀鑑きかん）著ちょ『馬賊ばぞくの唄うた』の挿画そうがを描えがいた。1926年ねんには自身じしんの意匠いしょうによる便箋びんせんや封筒ふうとうを発売はつばいするなど、現代げんだいでいうメディアミックス風ふうのプロモーションも行おこない、当時とうじの流行りゅうこう歌か「銀座ぎんざ行進曲こうしんきょく」（正岡まさおか容ひろし作詞さくし、1928年ねん（昭和しょうわ3年ねん））の歌詞かしに「華宵かしょう好このみの君きみも往ゆく」と歌うたわれるほどになった。また、鎌倉かまくら・稲村ヶ崎いなむらがさき一いちの谷たに（いちのやと）に建たてた異国いこく情緒じょうちょあふれる自邸じていは「華宵かしょう御殿ごてん」と呼よばれ、華宵かしょうの趣味しゅみが凝縮ぎょうしゅくしたものとして注目ちゅうもくを集あつめた。華宵かしょう御殿ごてんには、全国ぜんこくの女性じょせい（とくに女学生じょがくせい）からのファンレターが殺到さっとうし、地方ちほうの令嬢れいじょうが華宵かしょう御殿ごてん見みたさに家出いえでするほどだった。当時とうじの華宵かしょうの画が料りょうは本人ほんにんのい値いねで決きまっていたとされ、1925年ねんには『少年しょうねん倶楽部くらぶ』の加藤かとう謙一けんいちらの画が料りょう引ひき下さげの求もとめに対たいし、華宵かしょうは寄稿きこうの取とりやめで応おうじたという。

しかし戦時せんじ色しょくが濃こくなるにつれ、人気にんき絶頂ぜっちょうの1937年ねん（昭和しょうわ12年ねん）ごろから雑誌ざっしなどの活動かつどうが減へってゆき、一般いっぱん大衆たいしゅうの間あいだでもその人気にんきは持続じぞくしなかった。戦後せんごも華々はなばなしいカムバックとはいかず、1960年代ねんだいに再さい評価ひょうかを受うける（後述こうじゅつ）まではやや歴史れきしの中なかに埋うずもれた存在そんざいとなっていた。それでも完全かんぜんに忘わすれ去さられることはなく、昭和中しょうわなか後期こうきにおける少年しょうねん少女しょうじょ、婦人ふじん雑誌ざっしの人物じんぶつの挿絵さしえは華宵かしょうの影響えいきょうを受うけたものが多おおい。漫画まんが家かの丸尾まるお末広すえひろも華宵かしょうの画風がふうから影響えいきょうを受うけていることがよく知しられている。

画風がふう

人物じんぶつ画がが中心ちゅうしん。連載れんさい小説しょうせつの挿絵さしえ・雑誌ざっし口絵くちえ・レターセットなどの小物こものの意匠いしょうなどに使つかわれた。独特どくとくの三白眼さんぱくがんを有ゆうする、無む国籍こくせき風ふうな表情ひょうじょうと中性ちゅうせい的てきな雰囲気ふんいきをもつ人物じんぶつを描えがく。妖艶ようえんさと清楚せいそさを併あわせ持もつ少女しょうじょ画が・美人びじん画がと、凛々りりしく潔いさぎよい、しかしやはりどこか色香いろかを漂ただよわせる少年しょうねん画がはいずれも一目いちもくで彼かれの作品さくひんとわかるほどの個性こせいを放はなっている。また、明治めいじから昭和しょうわ初期しょきにかけての和装わそう・洋装ようそうを含ふくむありとあらゆる服装ふくそう・髪型かみがた・アクセサリーが画題がだいとなっていることも注目ちゅうもくされる。描えがかれるファッションのレパートリーは幅広はばひろく、たとえば和服わふくについては生涯しょうがいにわたって同おなじ柄がらの着物きものを二に度ど以上いじょう描えがいたことがないと豪語ごうごしたとも伝つたえられるほどに衣装いしょうデザインは多彩たさいだった。実際じっさい、彼かれは浴衣ゆかたや洋服ようふくのデザインを行おこない、それが雑誌ざっし口絵くちえに鳴なり物入ものいりで掲載けいさいされるなど、時代じだいのファッションをリードするデザイナーとしても活躍かつやくした（雑誌ざっし口絵くちえにはそのデザイン服ふくは「華宵かしょう好このみ」という名なを冠かんして掲載けいさいされた）。そのレパートリーの広ひろさを存分ぞんぶんに生いかした渾身こんしんの大作たいさくが「移うつり行いく姿すがた」（昭和しょうわ初期しょき1935年ねん、現在げんざいは個人こじん蔵ぞう）である。これは明治めいじから昭和しょうわ初期しょきにかけての女性じょせいファッションの移うつり変かわりを、60人にん以上いじょうの女性じょせいを配はいした六ろく曲きょく一双いっそうの屏風びょうぶ絵えに仕立したてたものである。華宵かしょうはこの作品さくひんを暑あつい季き節ぶしにも寝食しんしょくを忘わすれて描えがき、すっかりやせ細ほそってしまったという弟子でしの証言しょうげんがあるほどの、一世一代いっせいちだいの力作りきさくであった。

幾多いくたの美女びじょ・美少女びしょうじょ・美少年びしょうねんを描えがき続つづけたが、特定とくていのモデルはいなかったとされている。また本人ほんにんにはまったく浮ういた話はなしがなく、生涯しょうがい独身どくしんであった。縁談えんだんを勧すすめられたときも「私わたしには絵えの中なかの女おんなたちがいますから」と切きり返かえした話はなしは有名ゆうめいである。

失意しついの戦後せんごと幸しあわせな晩年ばんねん

戦後せんごしばらくは夢ゆめを抱だいて渡米とべいするも、経済けいざい的てきに貧窮ひんきゅうし、健康けんこうにも恵めぐまれずに帰国きこくするなど失意しついの日々ひびを過すごし、怪盗かいとうルパンシリーズの挿絵さしえなど、子供こども向むけの仕事しごとを細々こまごまと続つづけながら、全盛期ぜんせいきとは比くらべ物ものにならないほど凋落ちょうらくした生活せいかつを送おくっていた。晩年ばんねんにはかつて絶縁ぜつえんした実家じっかの兄あにを頼たよるほどに困窮こんきゅうし、神戸こうべの老人ろうじん福祉ふくし施設しせつに入はいっている。そんな中なか、幼少ようしょう時じに華宵かしょうのファンだったという弁護士べんごしの鹿野かの琢みがく見みが偶然ぐうぜん華宵かしょうの困窮こんきゅうぶりを伝つたえる記事きじを目めにし、本人ほんにんと文通ぶんつうを開始かいしした（のちに華宵かしょうはあらたに「新しん・さらば故郷こきょう!」と題だいする水彩すいさい画がを描えがき、鹿野かのに贈おくっている）。鹿野かのらの尽力じんりょくに加くわえ、かつて華宵かしょうの絵えに熱狂ねっきょうした世代せだいの後押あとおしもあり、首都しゅと圏けんで華宵かしょうの回顧かいこ展てんが開催かいさいされ、爆発ばくはつ的てきに人気にんきが再燃さいねんした。その隆盛りゅうせいぶりを見届みとどけたのちの1966年ねん（昭和しょうわ41年ねん）7月がつ31日にち、鹿野かのとかつて画が料りょう問題もんだいで対立たいりつした加藤かとう謙一けんいちに看取みとられつつ生涯しょうがいを閉とじた。同どう日付ひづけで挿絵さしえ画家がかとしては初はつとなる勲くん五ご等とう双そう光ひかり旭日きょくじつ章あきらを受うけた。墓所はかしょは神奈川かながわ県けん鎌倉かまくら市しの鎌倉かまくら霊園れいえんにあり、養子ようしの華はな晃あきらものちに同おなじ墓ぼに葬ほうむられている。鹿野かのらは1984年ねん（昭和しょうわ59年ねん）に東京とうきょう都と文京ぶんきょう区くに「弥生やよい美術館びじゅつかん」を開ひらき、華宵かしょうの作品さくひんの常設じょうせつ展示てんじを始はじめた（後述こうじゅつ）。

展示てんじ施設しせつ

弥生やよい美術館びじゅつかん（東京とうきょう都と文京ぶんきょう区く）

3階かいにて鹿野かのらが集あつめた多おおくの作品さくひんが常設じょうせつ展示てんじされている。竹久たけひさ夢ゆめ二に美術館びじゅつかんが併設へいせつされ、これらの美術館びじゅつかんでは華宵かしょう作品さくひんを中心ちゅうしんとして当時とうじの風俗ふうぞく・ファッション・イラスト・少年しょうねん少女しょうじょの生活せいかつなどを対象たいしょうとする研究けんきゅうが積極せっきょく的てきに行おこなわれている。

高畠たかはた華宵かしょう大正たいしょうロマン館かん（愛媛えひめ県けん東ひがし温ゆたか市し）

華宵かしょうの親族しんぞくが運営うんえい。自筆じひつを含ふくむ多おおくの作品さくひん、書簡しょかん写真しゃしんなどが展示てんじされている。

宇和島うわじま市立しりつ歴史れきし資料しりょう館かん（愛媛えひめ県けん宇和島うわじま市し）

華宵かしょう作品さくひんの常設じょうせつ展示てんじ室しつ「華宵かしょうの部屋へや」が開設かいせつされ、3ヶ月かげつ毎ごとに展示てんじ替がえが行おこなわれている。

関連かんれん書籍しょせき

• 『高畠たかはた華宵かしょう名作めいさく画集がしゅう』 講談社こうだんしゃ、1967年ねん
• 『想おもいでの華宵かしょう絵えごよみ 抒情じょじょう画が家いえ・高畠たかはた華宵かしょうの生涯しょうがい』 ノーベル書房しょぼう、1969年ねん
• 高畠たかはた華はな晃あきら編著へんちょ『画家がかの肖像しょうぞう　高畠たかはた華宵かしょうの伝記でんきと作品さくひん』 「画家がかの肖像しょうぞう」同どう刊行かんこう会かい、1971年ねん
• 『豪華ごうか限定げんてい版ばん　高畠たかはた華宵かしょう名画めいが大だい集しゅう』 講談社こうだんしゃ、1976年ねん（限定げんてい1500部ぶ）
• 『高畠たかはた華宵かしょう名めい画集がしゅう　優美ゆうび、華麗かれいな叙情じょじょう画がの世界せかい』 講談社こうだんしゃ、1984年ねん、ISBN 4-06-201655-9
• 『別冊べっさつ太陽たいよう　高畠たかはた華宵かしょう　美少年びしょうねん・美少女びしょうじょ幻影げんえい』 平凡社へいぼんしゃ、1985年ねん
• 朝日新聞あさひしんぶん東京とうきょう本社ほんしゃ編へん『生誕せいたん100年ねん　大正たいしょうロマンを描えがいた高畠たかはた華宵かしょう展てん図録ずろく』 朝日新聞社あさひしんぶんしゃ、1988年ねん
• 『高畠たかはた華宵かしょう大正たいしょうロマン館かん 図録ずろく』同どう編へん、1990年ねん
• 高橋たかはし光子みつこ『高畠たかはた華宵かしょうとその兄あに』　潮出版社うしおしゅっぱんしゃ、1993年ねん、ISBN 4-267-01341-1
• 近藤こんどう富枝とみえ『移うつり行いく姿すがた』 彩あや樹いつき社しゃ／星雲せいうん社しゃ：発売はつばい、1993年ねん、ISBN 4-7952-3925-8
• 弥生やよい美術館びじゅつかん監修かんしゅう『弥生やよい美術館びじゅつかん　叙情じょじょう画家がか高畠たかはた華宵かしょうの世界せかい』(CD-ROM)　アテイン販売はんばい
• 『高畠たかはた華宵かしょう　もう一ひとつの世界せかい』(CD-ROM)　リンクインク制作せいさく／ドーム発売はつばい、1996年ねん、ISBN 4-88734-801-0
• コロナ・ブックス編集へんしゅう部ぶ編へん『高畠たかはた華宵かしょう・美少年びしょうねん図鑑ずかん』 平凡社へいぼんしゃ、2001年ねん、ISBN 4-582-63388-9
• 中村なかむら圭子けいこ編へん 『昭和しょうわ美少年びしょうねん手帖てちょう』 河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ、2003年ねん、ISBN 4-309-72729-8
  • 『昭和しょうわ美少年びしょうねん手帖てちょう』 河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ、新装しんそう版ばん2012年ねん、ISBN 978-4-309-72790-5
• 松本まつもと品子しなこ編へん 『高畠たかはた華宵かしょう　大正たいしょう・昭和しょうわ レトロビューティー』 河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ、2004年ねん、ISBN 978-4-309-72735-6
  • 『高畠たかはた華宵かしょう　大正たいしょう・昭和しょうわ レトロビューティー』 河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ、新装しんそう版ばん2011年ねん、再訂さいてい版ばん2020年ねん、ISBN 978-4-309-75042-2
• 松本まつもと品子しなこ編へん 『華宵かしょうのおしゃれ教室きょうしつ』 河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ、2007年ねん、ISBN 978-4-309-72763-9

関連かんれん項目こうもく

• 大正たいしょうロマン
• 昭和しょうわモダン
• 叙情じょじょう画が

外部がいぶリンク

• 弥生やよい美術館びじゅつかん
• 高畠たかはた華宵かしょう大正たいしょうロマン館かん
• 宇和島うわじま市し歴史れきし資料しりょう館かん　華宵かしょうの部屋へや 2023