15パズル

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
15パズルの目的もくてき配置はいち、ないし初期しょき配置はいち

15パズルは、スライディングブロックパズル(Sliding puzzle)一種いっしゅである。4×4のボードのうえに4×4-1すなわち15まいこまがあり、1こまぶんそらしょ利用りようしてこまをスライドし、こま目的もくてき配置はいちにする。3×3のボードじょうで8まいこま同様どうようあそぶものは8パズルばれる。m×nのボードとm×n-1個いっここま(m, n ≧ 2)に一般いっぱんできる。みぎすみまたは左上ひだりうえすみそらしょとした配置はいち最終さいしゅう目標もくひょうとするものがおおい。

原案げんあん1874ねんにノイス・チャップマン(Noyes Palmer Chapman)が、GEM PUZZLEとして考案こうあんしていたものである。

概要がいよう[編集へんしゅう]

そらしょ利用りようしたこま移動いどうのみがただしいとしてゆるされ、複数個ふくすうここまはずしてならなおすといったことがゆるされないひとしスライディングブロックパズル同様どうようである。左上ひだりうえからカレンダーのようなじゅんならべた配置はいちもどす、あるいはそのような配置はいちからなんらかの配置はいちならえるパズルである。

冒頭ぼうとうでは 12 のこままたは 15 のこま移動いどうさせることができる。そらしょ隣接りんせつするたてまたはよこ連続れんぞくした複数ふくすうこま一斉いっせいにスライドさせてもい。たとえば冒頭ぼうとうで 8 と12、13 と 14 と 15をうごかすとうである。コンピュータゲームでは、スワイプとうでそのような操作そうさゆるすようプログラミングされているものもある。ただし、最短さいたん手数てかずなどの評価ひょうかでは「1」がことなったものになる。

数字すうじ渦巻うずまき」という問題もんだいれいとする。まず、初期しょき配置はいち以下いかとおりである。

1 2 3 4
5 6 7 8
9 10 11 12
13 14 15  

たとえば、「8」のこましたにずらせばつぎのようになる。

1 2 3 4
5 6 7  
9 10 11 8
13 14 15 12

つぎに「5」をみぎにずらせばつぎのようになる。

1 2 3 4
  5 6 7
9 10 11 8
13 14 15 12

これをかえして目的もくてきかたちにする。

1 2 3 4
12 13 14 5
11   15 6
10 9 8 7

ひとつの手法しゅほうとして、まず上辺うわべ左辺さへん目的もくてき配置はいちにして固定こていしてしまうことでよりちいさなサイズのパズルに帰着きちゃくさせ、再帰さいきてきくというものがある。ただしこま番号ばんごうではなく絵柄えがらとう場合ばあいはしくだりれつがわかりづらいこともある。コンピュータにかせる場合ばあいも、ぜん局面きょくめんをなんらかの探索たんさく手法しゅほう探索たんさくして一定いってい時間じかんない目的もくてき配置はいちちかづく手順てじゅんつからない場合ばあいに、同様どうよう部分ぶぶん問題もんだいむようフォールバックをれる場合ばあいがある。

不可能ふかのう配置はいち[編集へんしゅう]

けない問題もんだい

1878ねん、パズル作家さっかサム・ロイド[1]が「15パズルで、14と15 をえた状態じょうたいもともどす」という、絶対ぜったいけることのない問題もんだいに、1,000ドルの賞金しょうきんをかけて出題しゅつだいした。このパズルで中毒ちゅうどくになるひともおり、その懸賞けんしょうにより15パズルはおおきく普及ふきゅう商品しょうひんおお販売はんばいされるようになった。

不可能ふかのう配置はいちについては一般いっぱん可能かのうであるが、以下いか解説かいせつでは上記じょうきれいとする。

15パズルを数学すうがくてき分析ぶんせきすると、1個いっここまのスライドという操作そうさは、そらしょと、そのこまにゅうえとることができ、これは群論ぐんろんでいう「互換ごかん」である。ここで、ある状態じょうたいから操作そうさつづけ、そらしょもと位置いちもどったとすると、それにはかなら偶数ぐうすうかい操作そうさ偶数ぐうすうかいにゅうえが必要ひつようであり、その配置はいちもと配置はいちからの偶数ぐうすうかい互換ごかん(偶置換ちかん)となっている。一方いっぽう、14と15のにゅうえは1かいにゅうえであり、置換ちかんである。したがって、14と15をえた状態じょうたいから目的もくてき配置はいちにすることはできない。一般いっぱんすると、15パズルではランダムな配置はいちから指定していされた配置はいちへの変換へんかんはできないことがある。

これらのかいにつながる指針ししんは、パズルにおいて「パリティ」ともしょうされる。

はずしてバラバラにできるこまだと、こま紛失ふんしつしてしまうこともあるため、スライドはできるがこまはずすことができない構造こうぞうにした製品せいひんなどもある。これは、こと不可能ふかのう状態じょうたいにしてしまうことがい、という利点りてんがある一方いっぽう、パズルとしてはいきなりバラバラの配置はいちにしてしまうことができない、という欠点けってんもある。コンピュータゲームでもmacOSのDashboardウィジェットなどのように、いきなりランダムな配置はいちになるのではなく、目的もくてき配置はいちからバラバラになってゆくようなデモしきのものがある(参考さんこうプログラム参照さんしょう)。

困難こんなんせい[編集へんしゅう]

n×nパズルにおいて、最短さいたん手数てかずもとめる問題もんだいNP困難こんなんである[2]最短さいたん手数てかず定数ていすうばい変形へんけいもとめる多項式たこうしき時間じかんアルゴリズムが提案ていあんされている。

8パズルは任意にんい可能かのう配置はいちへ31以内いない変形へんけいでき、31必要ひつよう配置はいち確認かくにんされている[3]。15パズルは任意にんい可能かのう配置はいちへ80以内いない変形へんけいでき、80必要ひつよう配置はいち確認かくにんされている[4]

簡単かんたんなソルバーをプログラミングする場合ばあい評価ひょうか関数かんすうかくこま目的もくてき位置いちまでのマンハッタン距離きょりとするのが手頃てごろである。

日本にっぽんでの動向どうこう[編集へんしゅう]

日本にっぽんでは明治めいじ40ねん(1907ねん)にかれた書物しょもつ世界せかい遊戯ゆうぎほう大全たいぜん」に「じゅうあそび」の紹介しょうかいされている。

古典こてんてきスライディングブロックパズル同様どうよう多数たすうのパズル業者ぎょうしゃ製造せいぞう販売はんばいしている。前述ぜんじゅつのようにこまはずれない構造こうぞうのものもある。また番号ばんごうでなくなんらかの絵柄えがらをあしらって、いわゆるキャラクター商品しょうひんひとしとするにも手頃てごろであるため、そういった商品しょうひんおおく「セイカのパズル できるんです!」や、それに類似るいじしたコンピュータゲームもすくなくない。絵合えあわせパズルとして制作せいさくする場合ばあいジグソーパズルひとしちがい、区別くべつ不可能ふかのうこまけて設計せっけいする必要ひつようがある(参考さんこうプログラム参照さんしょう)。

コンピュータゲーム[編集へんしゅう]

コンピュータゲームとしての実装じっそうおおく、macOSDashboardようWidgets(ウィジェット)Windows Vistaガジェットひとし、デスクアクセサリがたアプリがおおい。『ファイナルファンタジー』(だいいちさく作中さくちゅうのミニゲーム)や『ゼルダの伝説でんせつ ふうのタクト』(作中さくちゅうのミニゲーム)など、ミニゲームとして仕込しこまれることもおおい。

15パズルのルールを応用おうようしたぶつパズルゲームの一種いっしゅとしては、1990ねん発売はつばいされたメガドライブようソフト『メガパネル』がある。

参考さんこうプログラム[編集へんしゅう]

コンピュータプログラムで動作どうさする15パズル(外部がいぶリンク) - 総合そうごう情報じょうほう通信つうしん技術ぎじゅつ研究けんきゅう機関きかん ADS 名古屋なごや電算でんさん技術ぎじゅつしつ

ページ下部かぶにある「Script samples」のなかから「Sliding 15 puzzle」をさがし、1かいすと、ページ上部じょうぶのFormulaウィンドウに15パズルを再現さいげんするしき入力にゅうりょくされる(したかずだけ入力にゅうりょくされるため、連続れんぞく押下おうか注意ちゅういされたい)。その状態じょうたい演算えんざんボタン(画面がめんないキーボードさい下段げだんみぎすみにある「=」ボタン)をすとページがリロードされ、Answerウィンドウに15パズルが再現さいげんされる。

シャッフルの無効むこう[編集へんしゅう]

ほんプログラムには「不可能ふかのう配置はいちこうれた「目的もくてき配置はいちからバラバラになってゆくデモ」を再現さいげんするコードもふくまれており、デフォルトしきでは開始かいしにシャッフルが実行じっこうされる。この処理しょりしき末尾まつび記述きじゅつされている ,s=setInterval(m,1); を除去じょきょするか、以下いかのように当該とうがいコードの直前ちょくぜんに // を挿入そうにゅう

 visibility=h//,s=setInterval(m,1);

それ以降いこう記述きじゅつコメントあつかいにすることで無効むこうできる。

不可能ふかのう配置はいち再現さいげん[編集へんしゅう]

しきちゅうにある以下いか部分ぶぶんつぎのように変更へんこう

for(i=1;17>i;i++) 
       ↓
for(i=0;16>i;i++)

(i-1) を i に変更へんこう

(i-1) → i

さらに2箇所かしょ存在そんざいする $[15] を $[0] に変更へんこうすると

$[15] → $[0]

さきしめした「不可能ふかのう配置はいち」にひとしい状態じょうたい意図いとてきつくすことも可能かのうである。その状態じょうたいで、さらにシャッフルの無効むこうれた場合ばあい初期しょき配置はいちしめすと以下いかのようになる。

  1 2 3
4 5 6 7
8 9 10 11
12 13 14 15

この配置はいちも、14と15をえた状態じょうたいひとしい意味いみふくむ。すなわち上述じょうじゅつのコンピュータプログラムをもちいて検証けんしょうすれば、目的もくてき配置はいちからバラバラになってゆくデモのうごきや、具体ぐたいてき実装じっそうれい確認かくにんできるほか、14と15をえた状態じょうたいから「みぎそらしょとする目的もくてき配置はいち」にはならべられないが、の「左上ひだりうえそらしょとする目的もくてき配置はいち」にはならべることが可能かのうであり、反対はんたいに14と15をえたにひとしい状態じょうたいとなっておらねば、配置はいちにはならべられないこともかる。

また、上述じょうじゅつのコンピュータプログラムを改変かいへんしてこま数字すうじ絵柄えがらえ、「日本にっぽんでの動向どうこうこうれた「セイカのパズル できるんです!」と同様どうよう絵合えあわせパズルへさい構築こうちくする取組とりくみもあり、いくつかの成果せいかぶつ公開こうかいされている(外部がいぶリンク参照さんしょう)。それらをもちいれば、絵合えあわせパズルの雰囲気ふんいき制作せいさく構成こうせいじょう課題かだい、および絵柄えがらちがいによってしょうじるなんについても具体ぐたいてきれい確認かくにんできる。

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • Jerry Slocum「The 15 Puzzle」ISBN 1-890980-15-3
  • Brüngger, A.; Marzetta, A.; Fukuda, K.; Nievergelt, J. (1999), “The parallel search bench ZRAM and its applications”, Annals of Operations Research 90 (2): 45–63, doi:10.1023/A:1018972901171 
  • Ratner, D.; Warmuth, M. (1990), “The (n2−1)-puzzle and related relocation problems”, Journal of Symbolic Computation 10 (2): 111–137, doi:10.1016/S0747-7171(08)80001-6 
  • Reinefeld, A. (1993), “Complete solution of the eight-puzzle and the benefit of node ordering in IDA*” (PDF), Proceedings of the 13th international joint conference on Artificial intelligence 1: 248–253, https://www.ijcai.org/Proceedings/93-1/Papers/035.pdf 

ちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ ばん良輔りょうすけ巨匠きょしょう傑作けっさくパズルベスト100』 〈文春ぶんしゅん新書しんしょ 2008ねん〉pp.26-30にくわしい。
  2. ^ Ratner & Warmuth 1990.
  3. ^ Reinefeld 1993.
  4. ^ Brüngger et al. 1999.

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]