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Advanced Encryption Standard

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
Advanced Encryption Standard
(Rijndael)
The SubBytes step, one of four stages in a round of AES
一般いっぱん
設計せっけいしゃ フィンセント・ライメン, ホァン・ダーメン英語えいごばん
初版しょはん発行はっこう 1998
派生はせいもと Square
後継こうけい Anubis, Grand Cru
認証にんしょう AES採用さいよう, CRYPTREC, NESSIE, NSA
暗号あんごう詳細しょうさい
かぎちょう 128, 192 or 256 bits[1]
ブロックちょう 128 bits[2]
構造こうぞう SPN構造こうぞう
ラウンドすう 10, 12, 14(かぎちょうによる)
最良さいりょう暗号あんごう解読かいどくほう
完全かんぜんそうたり攻撃こうげきよりも計算けいさんりょうおお攻撃こうげき発表はっぴょうされているが、2013ねん時点じてんでは計算けいさんりょうすくない攻撃こうげきつかっていない:[3] AES-128については、完全かんぜん2グラフ(Biclique)使用しようすると2126.1計算けいさんりょうかぎ復元ふくげんすることが可能かのうである。AES-192とAES-256にたいするBiclique攻撃こうげき英語えいごばんでは、それぞれ2189.7と2254.4計算けいさん複雑ふくざつ適用てきようされる。関連かんれんかぎ攻撃こうげきでは、AES-192とAES-256をそれぞれ2176と299.5複雑ふくざつさでやぶることができる。

Advanced Encryption Standard (AES) は、アメリカ2001ねん標準ひょうじゅん暗号あんごうとしてさだめた共通きょうつうかぎ暗号あんごうアルゴリズムである。アメリカ国立こくりつ標準ひょうじゅん技術ぎじゅつ研究所けんきゅうじょ(NIST)が公募こうぼし、Rijndael(ラインダール)がAESとして採用さいようされた[4]

概要がいよう

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AES以前いぜん標準ひょうじゅん暗号あんごうであったDESは、つぎの2てん問題もんだいであった。

  • コンピュータの能力のうりょくとネットワーク技術ぎじゅつ上昇じょうしょうによる相対そうたいてき強度きょうど低下ていか
  • NSA関与かんよがある設計せっけい不透明ふとうめいせい詳細しょうさいDES記事きじ参照さんしょう

そこで、あたらしい標準ひょうじゅん暗号あんごうアメリカ国立こくりつ標準ひょうじゅん技術ぎじゅつ研究所けんきゅうじょ(NIST)の主導しゅどうによって公募こうぼされ、AESが選出せんしゅつされた。2001ねん3がつFIPS PUB 197 として公表こうひょうされた。

厳密げんみつには「AES」は、選出せんしゅつされなかった暗号あんごうふくむ、手続てつづ期間きかんちゅうから使つかわれた「あたらしい標準ひょうじゅん暗号あんごう」の総称そうしょうであり、選出せんしゅつされた暗号あんごう方式ほうしき自体じたいはRijndael(ラインダール)である。

AESはSPN構造こうぞうブロック暗号あんごうである。ブロックちょうは128ビットであり、かぎちょうには128ビット・192ビット・256ビットの3種類しゅるい選択せんたくできる(かぎちょうおおきいほうが暗号あんごう強度きょうどたかい)。これにたいし、AESのもととなった Rijndael では、ブロックちょうかぎちょう可変かへんであり、128ビットから256ビットまでの32ビットの倍数ばいすうえらべる。NISTが公募こうぼしたさいのスペックにしたがい、米国べいこく標準ひょうじゅんとなったAESではブロックちょうは128ビットに固定こていされ、かぎちょうも3種類しゅるいかぎられた[5]

経緯けいい

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AESの選定せんてい

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きゅう規格きかく DES (FIPS 46) の安全あんぜんせい低下ていかしたので、1997ねん9月にNIST(アメリカ国立こくりつ標準ひょうじゅん技術ぎじゅつ研究所けんきゅうじょ)が後継こうけい暗号あんごう標準ひょうじゅんAES (Advanced Encryption Standard) とすべく共通きょうつうかぎブロック暗号あんごう公募こうぼした。公募こうぼ要件ようけんには下記かきのような条件じょうけんげられた[5]

  • 米国べいこくかぎらず世界せかいなかで、制限せいげんなく無料むりょう利用りようできなければならないこと。
  • 詳細しょうさいなアルゴリズム仕様しよう公開こうかいすること。
  • ANSI CおよJavaによる実装じっそうおこなうこと。
  • 暗号あんごう強度きょうど評価ひょうか公開こうかいすること。

AESの最終さいしゅう候補こうほ

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世界せかいから応募おうぼされた21方式ほうしきから、公募こうぼ要件ようけんたした15方式ほうしきたいする評価ひょうかおこなわれ、安全あんぜんせい実装じっそう性能せいのうすぐれた5方式ほうしき最終さいしゅう候補こうほとしてのこった。最終さいしゅう候補こうほおよび設計せっけいしゃ下記かきのとおりである[5]

AESの決定けってい

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最終さいしゅう選考せんこう結果けっか、あらゆる実装じっそう条件じょうけんすぐれた実装じっそう性能せいのう発揮はっきしたベルギールーヴェン・カトリック大学だいがく研究けんきゅうしゃホァン・ダーメン英語えいごばん (Joan Daemen) と フィンセント・ライメン (Vincent Rijmen) が設計せっけいした Rijndael (ラインダール)が2000ねん10月採用さいようされた。

Rijndaelという名称めいしょうのうち、RijnはRijmen、daeはDaemenからられたことは明白めいはくだが、lはどこからたのかが不明ふめいだった。指導しどう教授きょうじゅだったバート・プレネル (Bart Preneel)英語えいごばん からったのではというせつがあり、Rijmenが講演こうえんしたさい質問しつもんけたが、そのこたえは "It's a conjecture.(それは憶測おくそくぎないね)" だった[よう出典しゅってん]

暗号あんごう方法ほうほう

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AESはSPN構造こうぞうブロック暗号あんごうで、ブロックちょうは128ビットかぎちょうは128ビット・192ビット・256ビットの3つが利用りようできる[4]

暗号あんごう処理しょりでは、はじめにかぎ生成せいせいおこなう。AES暗号あんごうかぎちょうによって変換へんかんのラウンドすうことなる。つぎのとおりである。

  • かぎちょう128ビットのとき、ラウンドすうは10かいである。
  • かぎちょう192ビットのとき、ラウンドすうは12かいである。
  • かぎちょう256ビットのとき、ラウンドすうは14かいである。

暗号あんごう下記かきの4つの処理しょりから構成こうせいされる[5]

  1. SubBytes - 換字かんじひょう(Sボックス)による1バイト単位たんい置換ちかん
  2. ShiftRows - 4バイト単位たんいくだり一定いってい規則きそくひだりシフトする。
  3. MixColumns - ビット演算えんざんによる4バイト単位たんい行列ぎょうれつ変換へんかん
  4. AddRoundKey - ラウンドかぎとのXORをとる。

これら4つの処理しょりを1ラウンドとして暗号あんごうおこなう。

なお、復号ふくごう上記じょうき処理しょりぎゃく変換へんかん逆順ぎゃくじゅん実行じっこうする。

  1. AddRoundKey
  2. InvMixColumns
  3. InvShiftRows
  4. InvSubBytes

安全あんぜんせい

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関連かんれんかぎ攻撃こうげきにより、256ビットのAES暗号あんごうだい9ラウンドまでが解読かいどく可能かのうである。また、選択せんたく平文へいぶん攻撃こうげきにより、192ビットおよび256ビットのAES暗号あんごうだい8ラウンドまで、128ビットのAES暗号あんごうだい7ラウンドまでが解読かいどく可能かのうである (Ferguson et al., 2000)。シュナイアーはAESの「代数だいすうてき単純たんじゅんさに疑問ぎもん」をかんじているが、AESは欧州おうしゅう暗号あんごう規格きかくNESSIE日本にっぽん暗号あんごう規格きかくCRYPTRECでも採用さいようされた。AESの数学すうがくてき構造こうぞうのブロック暗号あんごうことなり、きちんとした記述きじゅつもある[6][7]

この暗号あんごうはまだどんな攻撃こうげきにもくっしていないが、何人なんにんかの研究けんきゅうしゃがこの数学すうがくてき構造こうぞう利用りようした攻撃こうげき方法ほうほう存在そんざいするかもしれないと指摘してきしている[8][9]

関連かんれん項目こうもく

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脚注きゃくちゅう

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  1. ^ Rijndaelでは128, 160, 192, 224, 256 bitsが選択せんたく可能かのう。AESのスペックにわせて3つに限定げんてい
  2. ^ Rijndaelでは128, 160, 192, 224, 256 bitsが選択せんたく可能かのう。AESのスペックにわせて128 bitsのみに限定げんてい
  3. ^ Biclique Cryptanalysis of the Full AES” (PDF) (英語えいご). 2016ねん3がつ6にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。October 9, 2016閲覧えつらん
  4. ^ a b 岡本おかもと 暗号あんごう理論りろん入門にゅうもん だい2はん(2002:51-52)
  5. ^ a b c d 結城ゆうき 暗号あんごう技術ぎじゅつ入門にゅうもん だい3はん(2003: 69-71)
  6. ^ A simple algebraic representation of Rijndael (Niels Ferguson, Richard Schroeppel, and Doug Whiting)(2003ねん6がつ6にち時点じてんアーカイブ
  7. ^ Sean Murphy 英語えいご
  8. ^ すみ幸保さちほ, 久保くぼひろしやすし, しげる真紀まき, つじはら悦子えつこ, 宮内みやうちひろし, "S-boxにおけるキャッシュ遅延ちえん利用りようしたAESへのタイミング攻撃こうげき (PDF) ", SCIS2003
  9. ^ Cache-timing attacks on AES (PDF) 英語えいご - (Daniel J. Bernstein)

参考さんこう文献ぶんけん

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  • FIPS 197 (PDF) 、NIST発行はっこう、2001ねん 英語えいご
  • Daemen and Rijmen, Rijndael 仕様しようしょおいばん (PDF) 、1999ねん発行はっこう-2003ねんおい 英語えいご
  • 岡本おかもと栄司えいじ暗号あんごう理論りろん入門にゅうもん』(だい2はん共立きょうりつ出版しゅっぱん、2002ねんISBN 4-320-12044-2 
  • 結城ゆうきひろし暗号あんごう技術ぎじゅつ入門にゅうもん - 秘密ひみつくにのアリス』(だい3はん)ソフトバンクパブリッシング、2003ねんISBN 4-7973-2297-7 
  • 澤田さわだ秀樹ひでき:「暗号あんごう理論りろん代数だいすうがく 増補ぞうほ・AES(高度こうど暗号あんごう標準ひょうじゅん) Kindleばん」,(2021ねん9がつ16にち).

外部がいぶリンク

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