EF-111 (航空機こうくうき)

EF-111 レイヴン

EF-111A

用途ようと：電子でんし戦せん
分類ぶんるい：電子でんし戦機せんき
製造せいぞう者しゃ：ジェネラル・ダイナミクス社しゃ、グラマン社しゃ
運用うんよう者しゃ：アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく（アメリカ空軍くうぐん）
初はつ飛行ひこう：1977年ねん 3月がつ10日とおか
生産せいさん数すう：42機き
運用うんよう開始かいし：1981年ねん
退役たいえき：1998年ねん
運用うんよう状じょう況きょう：退役たいえき
ユニットコスト：1,500-2,500万まんUSドル

EF-111Aは、アメリカ空軍くうぐんが運用うんようしていた電子でんし戦機せんきである。愛称あいしょうは「レイヴン」（Raven：ワタリガラスの意い）。非公式ひこうしきな愛称あいしょうとして「スパークバーク」（Spark Vark）や「エレクトリック・フォックス」（Electric Fox）がある。F-111A アードバーク戦闘せんとう爆撃ばくげき機きの改造かいぞう型がたであり、1977年ねん 3月がつ10日とおかに初はつ飛行ひこうした。

開発かいはつ

1960年代ねんだい-1970年代ねんだいにかけて、アメリカ空軍くうぐんはEB-66 デストロイヤーを電子でんし戦機せんきとして運用うんようしており、ベトナム戦争せんそうにおいて電子でんし妨害ぼうがいを行おこなっていた。EB-66の性能せいのうが陳腐ちんぷ化かし、1972年ねんにアメリカ海軍かいぐんがEA-6B プラウラーをベトナムに投入とうにゅうすると、空軍くうぐんも新型しんがた電子でんし戦機せんきの開発かいはつを検討けんとうするようになった。当初とうしょはEA-6Bの採用さいようも考かんがえられたが能力のうりょく的てきに不十分ふじゅうぶんであるとされ、十分じゅうぶんな機内きない容量ようりょうと航続こうぞく性能せいのうおよび速度そくどを有ゆうするF-111A アードバークをもとに電子でんし戦機せんきを開発かいはつすることとされた。

EF-111Aの製造せいぞうにはジェネラル・ダイナミクスとグラマンが名乗なのりを上あげ、検討けんとうの結果けっか、1974年ねん12月にグラマン案あんが採用さいようされ、1975年ねん1月がつに契約けいやくが結むすばれた。42機きが1985年ねんまでにEF-111Aに改修かいしゅうされ、総そう改修かいしゅう費用ひようは約やく150億おくUSドルであった。

EF-111Aに搭載とうさいする電子でんし妨害ぼうがい装置そうちはEA-6Bに搭載とうさいされていたものの改良かいりょう型がたであるAN/ALQ-99Eを使用しようすることとされたため、電子でんし戦せん機材きざいに関かんする開発かいはつ期間きかんは短みじかく、機体きたい形状けいじょうの変化へんかによる空そら力りょく特性とくせいの研究けんきゅうに時間じかんが費ついやされた。空気くうき抵抗ていこうを抑おさえるため、電子でんし機器ききやアンテナ類るいは爆ばく弾だん槽そうや胴体どうたい下部かぶ、垂直すいちょく尾翼びよく先端せんたんに収納しゅうのうしており、EA-6Bのような主翼しゅよく下かの外部がいぶポッドは使用しようしていない。そのため、F-111Aとの外見がいけん上じょうの相違そういは、腹部ふくぶのカヌー型かたレドーム（4.8m長ちょう）と垂直すいちょく尾翼びよく先端せんたんのポッド程度ていどである。また、電子でんし機材きざいの増加ぞうかに伴ともない、発電はつでん能力のうりょくも増強ぞうきょうされている。電子でんし機器ききや機体きたい改修かいしゅうに伴ともなう重量じゅうりょう増加ぞうかは4t近ちかくにもおよんでいる。

乗員じょういんはF-111Aと同おなじ2名めいで、兵へい装そうシステム士官しかん（Weapon System Officer, WSO）の代かわりに電子でんしシステムを扱あつかう電子でんし戦士せんし官かん（Electric Warfare Officer, EWO）が搭乗とうじょうする。コックピットのWSO席せきがEWO席せきに改装かいそうされたことに伴ともない、複ふく操縦そうじゅう装置そうちも撤去てっきょされている。AN/ALQ-99EはEA-6Bと基本きほん的てきな能力のうりょくは変かわらないが、乗員じょういんは半分はんぶんの2名めいであり、しかも、電子でんし戦せんに専従せんじゅうするのは1名めいである。高度こうどな自動じどう化かが図はかられているとはいえ、この相違そういは、電子でんし戦せんを全面ぜんめん的てきにオールインワンで担になわなければならない海軍かいぐん機きと、そうせずともよい空軍くうぐん機きとの相違そういによる。自衛じえい用よう電子でんし装備そうびとしてAN/ALQ-137やAN/ALR-62が装備そうびされた。また、同おなじ電子でんし戦機せんきとはいえ、EA-6Bとは違ちがい、AGM-88 HARMなどの対たいレーダーミサイルは運用うんようできず、自衛じえい火器かきも有ゆうさない。EF-111Aは、改修かいしゅうによる飛行ひこう性能せいのうの低下ていかは少すくなく、優秀ゆうしゅうな高速こうそく性能せいのうを保持ほじしていたため、運用うんよう形態けいたいとして遠距離えんきょりからの電子でんし妨害ぼうがい（スタンドオフ・ジャミング）のほか、攻撃こうげき部隊ぶたいとともに目標もくひょうに接近せっきんしての電子でんし妨害ぼうがい（エスコート・ジャミング）も行おこなえることが考慮こうりょされていた。

運用うんよう

1981年ねん、第だい390電子でんし戦闘せんとう飛行ひこう隊たい（390ECS）に配備はいびが開始かいしされた。EB-66 デストロイヤー退役たいえき後ごは空軍くうぐん唯一ゆいいつの電子でんし戦機せんきとなり、初はつの実戦じっせんは1986年ねんのリビア爆撃ばくげき（エルドラド・キャニオン作戦さくせん）である。その後ごも1989年ねんのパナマ侵攻しんこうや1991年ねんの湾岸わんがん戦争せんそうなどで活躍かつやくした。1995年ねんのボスニア・ヘルツェゴビナ空爆くうばく（デリバリット・フォース作戦さくせん）が最後さいごの参戦さんせんとなった。損失そんしつは、湾岸わんがん戦争せんそう中ちゅうの1機きのみ。なお、湾岸わんがん戦争せんそう中ちゅうに火器かきを一切いっさい装備そうびしていないにもかかわらず、イラク空軍くうぐんのミラージュF1を1機き撃墜げきついしている。これは、ミラージュF1に追尾ついびされたEF-111Aが、地形ちけい追随ついずいモードによる超ちょう低空ていくう飛行ひこうで回避かいひしようとした結果けっか、ミラージュF1を地面じめんに激突げきとつさせたもので、「マニューバーキル」として公式こうしきに撃墜げきついと認定にんていされている。

詳細しょうさいは「撃墜げきつい#特殊とくしゅな例れい」を参照さんしょう

1990年代ねんだいにはGPS搭載とうさいを含ふくむ近代きんだい化か改修かいしゅうが行おこなわれたものの、維持いじ費ひがかさむため順次じゅんじ退役たいえきし、アリゾナ州しゅうのデビスモンサン空軍くうぐん基地きちにあるAMARGでモスボールされるなどした。1998年ねんには全すべての機体きたいの運用うんようを終了しゅうりょうした。アメリカ空軍くうぐんはEF-111Aの後継こうけい機きを開発かいはつしていなかったため、現在げんざい、空軍くうぐんには専用せんようの電子でんし戦機せんきは存在そんざいしておらず、電子でんし戦せんは海軍かいぐんのEA-18 グラウラーに頼たよっている。なお、2008年ねん時点じてんでは国立こくりつアメリカ空軍くうぐん博物館はくぶつかんをはじめとして4機きが展示てんじ保存ほぞんされている。