EA-6 (航空機こうくうき)

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

EA-6 プラウラー

EA-6B

EA-6B

EA-6は、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくグラマンしゃ開発かいはつした電子でんし戦機せんきA-6 イントルーダー艦上かんじょう攻撃こうげきあらため設計せっけいがたであり、主要しゅようがたであるBがた愛称あいしょうはプラウラー(Prowler:「うろつくもの」の)。

1960年代ねんだいよりすう改良かいりょうされながら運用うんようつづけられ、2019ねん3がつ退役たいえきした。

概要がいよう[編集へんしゅう]

EA-6A[編集へんしゅう]

EA-6A

1960年代ねんだいはいり、A-6 イントルーダー攻撃こうげき開発かいはつすすんでくると、十分じゅうぶん搭載とうさいりょうゆうするこの機体きたい電子でんし戦機せんきとすることが検討けんとうされはじめた。

まず、アメリカ海兵かいへいたいA-6A電子でんしせん装備そうび搭載とうさいしたEA-6A当初とうしょ名称めいしょう:A2F-1Q)[1]開発かいはつした。これは1963ねん4がつはつ飛行ひこう[2]1965ねんにはだい2混成こんせい偵察ていさつ飛行ひこうたい(VMCJ-2、のVMAQ-2)に配備はいび開始かいしされた[3]1966ねんからはだい1混成こんせい偵察ていさつ飛行ひこうたい(VMCJ-1)とともに、ダナン基地きちとし、ベトナム戦争せんそう投入とうにゅうされている[4]。これは、EF-10 スカイナイト更新こうしんするものであり、電子でんし偵察ていさつ電子でんし妨害ぼうがいてき防空ぼうくうもう制圧せいあつ目的もくてきとするものであった[5]

A-6Aとおなじくふくであり、操縦そうじゅう電子でんし戦士せんしかん(EWO)が搭乗とうじょうする[4]機首きしゅの20cm延長えんちょう[2]レーダーかわそうのほか、垂直すいちょく尾翼びよく上端じょうたんにはふくらみをレドーム追加ついかされ[2]ESM装置そうちとして当初とうしょはAN/ALQ-53、のちにAN/ALQ-86が搭載とうさいされた[6]。また、AN/ALQ-55通信つうしんジャマーにくわえ、機外きがいにポッドしき複数ふくすうのAN/ALQ-76 ジャマーを装備そうびした[6]電子でんし妨害ぼうがい装置そうち以外いがいにも、AGM-45 シュライクたいレーダーミサイルもちいた攻撃こうげき能力のうりょくゆうしていた[6]。しかし分析ぶんせき妨害ぼうがい手動しゅどうおこな必要ひつようがあり、ふくであったこともあってベトナム戦争せんそう濃密のうみつ錯綜さくそうした環境かんきょうでは正常せいじょう手順てじゅん時間じかんてき余裕よゆうがなく、実用じつようじょうSA-2対空たいくうミサイルのみを対象たいしょうとし、しかも周波数しゅうはすうまとしぼらないヤマ勘やまかんてき指向しこうせい妨害ぼうがいしかおこなえなかった[7]

非公式ひこうしきに「エレクトリック・イントルーダー」とも呼称こしょうされている[1][2]

新造しんぞうの15および改修かいしゅうふくめたけい27生産せいさんおこなわれ[2][8]予備よびやくとしての期間きかんふくめ、1990年代ねんだいまで運用うんようされた[9]

EA-6B[編集へんしゅう]

EA-6B

アメリカ海軍かいぐんベトナム戦争せんそう当初とうしょ電子でんし戦機せんきとしてEA-1 スカイレイダー投入とうにゅうしていたが、老朽ろうきゅうてい性能せいのういちじるしかった。きたベトナムへのばくげき本格ほんかくすると、自軍じぐん航空機こうくうき損害そんがい抑止よくしのため、きたベトナム防空ぼうくうもう制圧せいあつ必要ひつようとなり、より高性能こうせいのう艦載かんさい電子でんし妨害ぼうがいもとめることとなった。あたらしい電子でんし妨害ぼうがいとして、A-3 スカイウォーリアー攻撃こうげき派生はせいがたであるEKA-3B スカイウォーリアー電子でんし妨害ぼうがい部隊ぶたい配備はいび1967ねん配備はいび開始かいし)をすすめるとともに、当時とうじさい新鋭しんえいA-6 イントルーダー攻撃こうげきあらため設計せっけいし、電子でんし妨害ぼうがいにすることとした。通常つうじょう、EA-6といえばこれによって開発かいはつされたBがたす。

アメリカ海軍かいぐんのA-6あらため設計せっけい電子でんし戦機せんき計画けいかくは、1964ねん6月より開始かいしされた[5]1965ねんには開発かいはつ契約けいやくむすばれ[5]EA-6B命名めいめいされた。EA-6BはA-6攻撃こうげき大幅おおはばあらため設計せっけいした電子でんし妨害ぼうがい専任せんにんであり、海兵かいへいたいのEA-6Aとはまったことなっている。A-6Aの胴体どうたいを1.37m延長えんちょうし、4変更へんこうされている。操縦そうじゅう1めい電子でんしせん要員よういん3めい搭乗とうじょうする。さらに、垂直すいちょく尾翼びよく上端じょうたん受信じゅしんよう大型おおがたアンテナようフェアリングもうけられた。電子でんし妨害ぼうがい発信はっしんようのアンテナ関連かんれん機器ききはポッドにおさめられ、機体きたいの5ヶ所かしょハードポイント搭載とうさいする。ポッドへの電力でんりょく供給きょうきゅうは、ポッドにけられた風車かざぐるまによる発電はつでんによっておこなわれている。対象たいしょう脅威きょういおうじて必要ひつよう周波数しゅうはすうおびけの妨害ぼうがいポッドを選択せんたく搭載とうさいできるようになっている。このほか、キャノピーについては、電磁波でんじは影響えいきょうけるために非常ひじょううすきむられている。

1968ねん5月25にちにA-6A改装かいそうそらりょく試験しけんはつ飛行ひこうおこなった。電子でんしせん機材きざい開発かいはつよう機体きたいもA-6Aから改装かいそうされて試験しけんおこなっている。1969ねんより量産りょうさん開始かいしされ、1971ねん1がつよりだい129戦術せんじゅつ電子でんしせん飛行ひこうたい(VAQ-129)に部隊ぶたい配備はいび開始かいしされた[ちゅう 1]。その、すぐさまベトナム戦争せんそう投入とうにゅうされている。

そのエルドラド・キャニオン作戦さくせん湾岸わんがん戦争せんそうなどに投入とうにゅうされた。1991ねんまで生産せいさんおこなわれ、生産せいさんすうは183

アメリカ空軍くうぐんは、電子でんし戦機せんきとしてF-111A戦闘せんとう爆撃ばくげき改修かいしゅうしてほんどう系列けいれつ電子でんしせんシステムを搭載とうさいしたEF-111A レイヴン運用うんようしていたが[ちゅう 2]、ベースとなったF-111戦闘せんとう爆撃ばくげき1996ねん退役たいえきすると機体きたい維持いじむずかしくなっていた[10]。EF-111Aの運用うんようは1998ねんまでに終了しゅうりょうすることになるが、後継こうけい開発かいはつされず、かわりに海軍かいぐんのEA-6Bを共同きょうどう運用うんようすることになった[10]空軍くうぐんだい366戦闘せんとう航空こうくうだんだい390電子でんし戦闘せんとう飛行ひこうたいでEA-6Bに搭乗とうじょうする電子でんし戦士せんしかん(EWO)の養成ようせいおこなっており、空軍くうぐん要員よういん参加さんかして共同きょうどう運用うんよう体制たいせいとなったVAQ(パープルスコードロン)の編成へんせい[ちゅう 3]、1990年代ねんだい中盤ちゅうばんより開始かいしされた[10]冷戦れいせんから各種かくしゅ戦役せんえきおおきな戦果せんかげたEA-6Bは、冷戦れいせん終結しゅうけつ様々さまざま場所ばしょでのてき防空ぼうくうもう制圧せいあつ任務にんむ活躍かつやくした。

2015ねん海軍かいぐんのEA-6Bは後継こうけいEA-18G グラウラー機種きしゅ転換てんかんされ退役たいえきした。海兵かいへいたいでは3飛行ひこうたい1個いっこ訓練くんれん飛行ひこうたい運用うんようされ、日本にっぽんざい日米にちべいぐん基地きちにも飛来ひらいすることがあったが、2019ねん3月8にちノースカロライナしゅうチェリー・ポイント海兵かいへいたい航空こうくう基地きちだい2海兵かいへい戦術せんじゅつ電子でんしせん飛行ひこうたい英語えいごばんかいたいし、海兵かいへいたいのEA-6Bもぜん退役たいえきとなった[11]

かくかたおよび武装ぶそう[編集へんしゅう]

EA-6Bの主要しゅよう目的もくてきは、電子でんし妨害ぼうがいおよびてき防空ぼうくうもう制圧せいあつである。電子でんし妨害ぼうがいよう機材きざい中心ちゅうしんとなるのはAN/ALQ-99であり、これのコンピュータ受信じゅしんアンテナ部分ぶぶん機内きない搭載とうさいし、受信じゅしんした電波でんぱみなもと測定そくていなどをおこなう。妨害ぼうがい電波でんぱ発信はっしんは、機外きがいポッドからおこなう。かくポッドは2のアンテナをち、サブタイプごとに対応たいおうする周波数しゅうはすうおびことなる。このほかにも、AN/ALQ-92通信つうしん妨害ぼうがい装置そうちなどを装備そうびする。要員よういんは、ぜんせきの1めい通信つうしん妨害ぼうがいこうせきの2めい電子でんし妨害ぼうがい担当たんとうする。

物理ぶつりてき攻撃こうげきへいそうとして、能力のうりょく向上こうじょうIIがた以降いこうではAGM-45 シュライクAGM-88 HARMなどのたいレーダーミサイル搭載とうさいでき、自力じりき電波でんぱげんへの攻撃こうげきおこなえる。

標準ひょうじゅんがた(Standard)
初期しょき開発かいはつされたかた。23製造せいぞう[5]
能力のうりょく拡張かくちょうがた(Excap)
電子でんし妨害ぼうがいよう機材きざいをAN/ALQ-99Aに更新こうしん対応たいおう周波数しゅうはすうたいばい拡大かくだいし、演算えんざん速度そくど向上こうじょうした。25生産せいさん[5]のちにAN/ALQ-99B、AN/ALQ-99Cに更新こうしんした。1973ねんから部隊ぶたい配備はいび
能力のうりょく向上こうじょうIがた(ICAP-I)
電子でんし妨害ぼうがいよう機材きざいをAN/ALQ-99Dに更新こうしん[5]受信じゅしんアンテナ変更へんこうなど。標準ひょうじゅんがたからも17改修かいしゅう1976ねんから部隊ぶたい配備はいび
能力のうりょく向上こうじょうIIがた(ICAP-II)
電子でんし妨害ぼうがいよう機材きざいをAN/ALQ-99Fに更新こうしん[5]対応たいおう周波数しゅうはすうたい拡大かくだいし、演算えんざん速度そくど向上こうじょうした。たいレーダーミサイルの搭載とうさい可能かのうとした。72生産せいさんされ、うち37はさらに改良かいりょうくわえられたブロック86。1985ねんから部隊ぶたい配備はいび一部いちぶ機体きたいはブロック89改修かいしゅうける。
先進せんしん能力のうりょくがた(Adcap)
大幅おおはば改良かいりょうがたであり、1980年代ねんだい後半こうはん-1990年代ねんだいにかけて検討けんとうされた。エンジンおよび主翼しゅよくかわそうストレーキ追加ついか垂直すいちょく尾翼びよく拡大かくだい電子でんし妨害ぼうがい機材きざい更新こうしんGPS搭載とうさいなどが検討けんとうされた。標準ひょうじゅんがたより1改修かいしゅうされたが、1995ねん計画けいかく中止ちゅうしとなった。
能力のうりょく向上こうじょうIIIがた(ICAP-III)
電波でんぱげんへの妨害ぼうがい対応たいおう速度そくど向上こうじょう周波数しゅうはすう測定そくていおよび妨害ぼうがい周波数しゅうはすう極限きょくげん能力のうりょく向上こうじょうとそれにともな妨害ぼうがい電波でんぱ出力しゅつりょく向上こうじょう操作そうさ計器けいきるい更新こうしんおこなったかた受信じゅしんAN/ALQ-218更新こうしんされる。2005ねんから部隊ぶたい配備はいび開始かいし少数しょうすう改修かいしゅうするにまる。

運用うんよう部隊ぶたい[編集へんしゅう]

スペック[編集へんしゅう]

  • 全幅ぜんぷく:16.15m/7.87m(主翼しゅよくたたとき
  • 全長ぜんちょう:18.24m
  • 全高ぜんこう:4.95m
  • 主翼しゅよく面積めんせき:49.13m2
  • 空虚くうきょ重量じゅうりょう:14,776kg
  • 最大さいだい離陸りりく重量じゅうりょう:29,484kg
  • エンジン:P&W J52-P408英語えいごばん ターボジェットx2推力すいりょく49.8kN)
  • 最大さいだい速度そくどM0.82
  • 海面かいめん上昇じょうしょうりつ:3,932m/min
  • 実用じつよう上昇じょうしょう限度げんど:12,558m
  • 航続こうぞく距離きょり:1,747nm(巡航じゅんこう)/955nm(機外きがいへいそう最大さいだい搭載とうさい
  • 乗員じょういん:4めい

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ VAQは、当初とうしょは「戦術せんじゅつ電子でんしせん飛行ひこうたい」であったが、1998ねんに「電子でんし攻撃こうげき飛行ひこうたい」に改称かいしょうされた[10]
  2. ^ 1983ねん実用じつよう、42改修かいしゅうされて3戦術せんじゅつ戦闘せんとう航空こうくうだん(TFW)の5電子でんし戦闘せんとう飛行ひこうたい(ECS)に配備はいびされた[10]
  3. ^ アメリカぐんにおいて、「パープル」(むらさき)はぐんしゅえた「統合とうごう運用うんよう」をあらわ用語ようごとしてもちいられている[10]

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b (English) A-6 Intruder Units of the Vietnam War. Osprey Publishing. (2012). p. 67-71. ISBN 9781849087551 
  2. ^ a b c d e The Grumman A-6 Intruder & EA-6B Prowler v1.0.3 / 01 jun 15 / greg goebel”. 2015ねん11月23にち閲覧えつらん
  3. ^ Col. H. Wayne Whitten USMC (ret) (2010ねん2がつ). “MCARA Aircraft > Grumman EA-6A Intruder - History”. Marine Corps Aviation Reconnaissance Association, Inc. 2015ねん11月23にち閲覧えつらん
  4. ^ a b 実戦じっせんにおけるイントルーダーの記録きろく,水野みずの民雄たみお,世界せかい傑作けっさく No.60 グラマンA-6イントルーダー,ぶん林堂はやしどう,1996ねん,P54-61
  5. ^ a b c d e f g アメリカ海軍かいぐん 1946-2000 増補ぞうほ改訂かいていばん ミリタリーエアクラフト’01ねん2がつごう別冊べっさつ デルタ出版しゅっぱん P184
  6. ^ a b c 山内やまうち 1996.
  7. ^ アメリカ海軍かいぐんだい一線いっせん 航空こうくうジャーナル別冊べっさつ 1982ねん 航空こうくうジャーナルしゃ P63
  8. ^ Frawley, Gerald (2002). "Grumman EA-6B Prowler". The International Directory of Military Aircraft, 2002/2003. Aerospace Publications. ISBN 1-875671-55-2
  9. ^ Eden, Paul (2004). "Grumman EA-6B Prowler". Encyclopedia of Modern Military Aircraft. Amber Books. ISBN 1-904687-84-9
  10. ^ a b c d e f 石川いしかわ 2023.
  11. ^ ぶん林堂はやしどう 航空こうくうファン No.798 2019ねん6がつごう 22ぺーじ-29ぺーじ 「The Last Prowlers まい海兵かいへいたい最後さいごのEA-6B飛行ひこうたい、VMAQ-2解散かいさん

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 石川いしかわ潤一じゅんいち世界せかい規模きぼ展開てんかいする統合とうごう遠征えんせい電子でんし攻撃こうげき飛行ひこうたい パープルスコードロンとEA-18G」『航空こうくうファン』だい72かんだい1ごう、52-59ぺーじ、2023ねん1がつCRID 1520857357551361152 
  • 山内やまうち秀樹ひでき「A-6イントルーダーのウエポンシステム」『グラマンA-6イントルーダー』ぶん林堂はやしどう世界せかい傑作けっさく No.60〉、1996ねん、68-75ぺーじISBN 978-4893190574 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]