GNU Free Documentation License

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
GNU Free Documentation License
GFDLのロゴ[1]
作者さくしゃ Vektor
バージョン 1.3
公開こうかいもと フリーソフトウェア財団ざいだん
リリース 2008ねん11月3にち (15ねんまえ) (2008-11-03)
コピーレフト Yes
ウェブサイト GNU Free Documentation License
テンプレートを表示ひょうじ

GNU Free Documentation License (グニュー・フリー・ドキュメンテーション・ライセンス, 略称りゃくしょう GFDL)は、GNUプロジェクト一環いっかんとしてフリーソフトウェア財団ざいだんから配布はいふされているコピーレフトライセンスひとつである。

略称りゃくしょうとして GNU FDL(グニュー・エフディーエル)、GFDL(ジーエフディーエル)などとかれることもある。GNUグニューあるいはグヌー[2]発音はつおんされることがおおい。

日本語にほんごやくでは、「GNU フリー文書ぶんしょ利用りよう許諾きょだく契約けいやくしょ」というかたりもちいられることがあるが[3]一般いっぱんてきに「契約けいやく」とえるかかは、異論いろん存在そんざいする(ライセンス#著作ちょさくぶつ全般ぜんぱん利用りよう許諾きょだくのライセンス参照さんしょう)。なお、GNUの公式こうしきサイトで使つかわれる日本語にほんごやくGNU自由じゆう文書ぶんしょライセンスである[4]。これは英語えいごのFreeが無料むりょう自由じゆう両方りょうほう意味いみ存在そんざいするため、誤解ごかいける目的もくてきで「自由じゆう」という用語ようごえられたためである[5]

概要がいよう[編集へんしゅう]

このライセンスは、文書ぶんしょたる著作ちょさくぶつにつき、営利えいり営利えいりわず著作ちょさくけんしゃ著作ちょさくけんしゃ以外いがいものたいして改変かいへん複製ふくせい頒布はんぷすることを一定いってい制約せいやく条件じょうけんした許諾きょだくするものである。

おおまかにえば、GPL同様どうよう著作ちょさくけんしゃつぎのような許可きょかあたえるライセンスである。

  • この文書ぶんしょ無断むだん複製ふくせいしてよい。
  • この文書ぶんしょ無断むだん改変かいへんしてよい。
  • この文書ぶんしょ無断むだん頒布はんぷ販売はんばいしてよい。ただし、頒布はんぷけたもの購入こうにゅうしたものたいして、上記じょうき許可きょかあたえなければならない。

かぶとが、他人たにんたいして、自己じこ創作そうさくによる著作ちょさくぶつAの自由じゆう利用りようゆる方法ほうほうとしては、かぶと著作ちょさくぶつAにかか著作ちょさくけんをすべて放棄ほうきして著作ちょさくぶつAをパブリックドメイン帰属きぞくさせる方法ほうほうがまずかんがえられる。しかし、この方法ほうほうによれば、他人たにん著作ちょさくぶつAを改変かいへん翻訳ほんやくすることによって創作そうさくしたてき著作ちょさくぶつA'の著作ちょさくけん処分しょぶん当該とうがい他人たにん自由じゆう意思いしゆだねられるため、著作ちょさくぶつA'にたいして当該とうがい他人たにん著作ちょさくけん主張しゅちょうした場合ばあいはらもと著作ちょさくぶつAの自由じゆう利用りよう保証ほしょうされず、いわゆるコピーレフト実現じつげん不十分ふじゅうぶんとなる。

そこでかぶとが、著作ちょさくぶつAの著作ちょさくけん放棄ほうきすることなく、他人たにんたいして著作ちょさくぶつAの改変かいへん翻訳ほんやく許諾きょだくする条件じょうけんとして、当該とうがい他人たにん著作ちょさくぶつAの改変かいへん翻訳ほんやくにより創作そうさくしたてき著作ちょさくぶつA'もまた、おつ以外いがい他人たにん自由じゆう利用りようさせる義務ぎむすことにより、問題もんだい解決かいけつしようとするのがGFDLの骨子こっしである。

なお、GPL がおもコンピュータプログラム配布はいふ目的もくてきとしたライセンスであるのにたいし、GFDL は文書ぶんしょ配布はいふ目的もくてきとしており、文書ぶんしょとくした条項じょうこうさだめられている。

自由じゆう利用りよう維持いじ骨格こっかく[編集へんしゅう]

文書ぶんしょ自由じゆう利用りようできる状態じょうたいうしなわれないようにするために、以下いかのような条項じょうこうがある。

  • GFDLの条件じょうけんしたがかぎり、だれでも自由じゆう文書ぶんしょ複製ふくせいしたり、改変かいへんしたり、有料ゆうりょう無料むりょうわず配布はいふ貸出かしだしをしてよい(だい2じょうより)。GFDLのもとの複数ふくすう文書ぶんしょ結合けつごうしてもよい。
  • 改変かいへんばん配布はいふするさいには、GFDLのもとに配布はいふしなければならない(だい4じょうより)。
  • もしも文書ぶんしょ透過とうかてき複製ふくせいぶつを 100以上いじょう配布はいふするならば、一緒いっしょ透過とうかてき複製ふくせいぶつ配布はいふするか、またはだれもが自由じゆう透過とうかてき複製ふくせいぶつをダウンロードできるような場所ばしょ(URLなど)をしめさなければならない(だい3じょうより)。
    • 透過とうかてき複製ふくせいぶつとは、機械きかい自動的じどうてきることがむずかしいものや、だれもが自由じゆう編集へんしゅうできるわけではない形式けいしき複製ふくせいぶつのこと。
    • 透過とうかてき複製ふくせいぶつとは、機械きかい自動的じどうてきることが簡単かんたん(テキストデータなどの機械きかい可読かどくのデータをふくむ)で、編集へんしゅうてきし、それらの仕様しよう一般いっぱん人々ひとびと入手にゅうしゅ可能かのうで、なおかつ一般いっぱんてきなアプリケーションで改訂かいていするのにてきしている形式けいしき複製ふくせいぶつのこと。

著作ちょさくしゃ名誉めいよなど[編集へんしゅう]

A という人物じんぶつが GFDL で文書ぶんしょ公開こうかいしたとする。B という人物じんぶつがその文書ぶんしょ自分じぶんいたかのようにせて配布はいふしたとすると、A の「著作ちょさくしゃ原作げんさくしゃ)としての名誉めいよ」がうしなわれてしまう。また、B がその文書ぶんしょ改変かいへんばんつくったうえで、改変かいへんのものを A がいたかのようにせて配布はいふすると、改変かいへんした内容ないようによっては、これもまた A の名誉めいよそこねてしまう結果けっかとなることがある。これらの問題もんだいけるために、改変かいへんするさいにはつぎのような規定きていがある(だい4じょうより)。

  • はら著作ちょさくしゃ許可きょかないかぎり、「だいとびら」や「表紙ひょうし」にはもとはん見分みわけがくような題名だいめいやバージョンをけること。
  • 変更へんこうおこなった1人ひとり以上いじょう人物じんぶつ団体だんたい名前なまえを「だいとびら」に記載きさいしておくこと。そして、もと文書ぶんしょ著作ちょさくしゃとして最低さいてい5にん以上いじょう主要しゅよう著作ちょさくしゃ列挙れっきょすること。
  • だいとびら」に出版しゅっぱんしゃめい記載きさいすること。
  • 文書ぶんしょにあるすべての著作ちょさくけん表示ひょうじのこすこと。
  • もと著作ちょさくけん表示ひょうじちかくに、おこなった変更へんこうたいする適切てきせつ著作ちょさくけん表示ひょうじをすること。
  • 履歴りれき」とだいされたあきらに、適切てきせつ題名だいめい(バージョン)・著作ちょさくしゃめい出版しゅっぱんねん出版しゅっぱん社名しゃめいけくわえること。
  • 謝辞しゃじ」や「献辞けんじ」のようなだいしょうは、その趣旨しゅしそこねないようにすること。
  • 推薦すいせん」のようなだいしょう削除さくじょすること(推薦すいせんしゃ改変かいへんばん推薦すいせんしているわけではないため)。

法的ほうてき問題もんだい[編集へんしゅう]

GFDLは、以上いじょうのような文書ぶんしょたる著作ちょさくぶつコピーレフト目的もくてきとしたライセンスとして代表だいひょうてきなもののひとつであるが、以下いかのような解決かいけつ法律ほうりつ問題もんだいかかえている。

著作ちょさくしゃ著作ちょさくけん表示ひょうじ[編集へんしゅう]

GFDLは著作ちょさくけんしゃ以外いがいものによる文書ぶんしょ改変かいへんみとめるとともに、改変かいへんばんには、だいとびらもと文書ぶんしょ著作ちょさくしゃとして最低さいてい5にん主要しゅよう著作ちょさくしゃ列記れっきするとともに、文書ぶんしょにあるすべての著作ちょさくけん表示ひょうじのこすことを要求ようきゅうしている(だい4じょう)。

著作ちょさくけんほう28じょうによれば、原著げんちょ作物さくもつ著作ちょさくしゃゆうする氏名しめい表示ひょうじけんてき著作ちょさくぶつにもおよび、原著げんちょ作物さくもつ著作ちょさくけんしゃは、てき著作ちょさくぶつ利用りようかんしててき著作ちょさくぶつ著作ちょさくしゃおな内容ないよう権利けんりゆうする。しかし、原著げんちょ作物さくもつ創作そうさくてき表現ひょうげん存在そんざいしないとみとめられる程度ていど改変かいへんがされた場合ばあいは、当該とうがい改変かいへんばん原著げんちょ作物さくもつてき著作ちょさくぶつではないため、原著げんちょ作物さくもつ著作ちょさくけんしゃ改変かいへんばんたいして著作ちょさくけん行使こうしすることができない。さらに、著作ちょさくしゃ氏名しめい表示ひょうじ要求ようきゅうすることができなくなる。具体ぐたいてきれいとしては、スティーヴン・スピルバーグの『ジョーズ』(1975)は『ゴジラ』(1954)を下敷したじきにしているが、「盗作とうさく」ではなく「オマージュ」としてみとめられているので、ことさらに原作げんさくへの謝辞しゃじなどはえられていない。 GFDLは、すべてのものたいして自由じゆう改変かいへんみとめるライセンスであるがゆえに、複数ふくすうものによる改変かいへんることにより原著げんちょ作物さくもつ創作そうさくてき表現ひょうげん消滅しょうめつしてしまう機会きかいおおいとかんがえられるが、そのような場合ばあいでも、だい4じょうもとづき主要しゅよう著作ちょさくしゃとしての表示ひょうじ必要ひつようになったり、著作ちょさくけん表示ひょうじのこすべきかは問題もんだいがある(日本にっぽんでは、著作ちょさくしゃではないもの実名じつめいとう著作ちょさくしゃめいとして表示ひょうじした著作ちょさくぶつ複製ふくせいぶつ頒布はんぷした場合ばあいは、著作ちょさくけんほう121じょうにより刑罰けいばつ対象たいしょうになる)。 GNUはプログラムのコードをもと言語げんごから言語げんご移植いしょくすることをきんじておらず、日本にっぽん著作ちょさくけんほうおよび特許とっきょほうはアイディアやアルゴリズムを法的ほうてきには保護ほごしないことになっている(ただし、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく国内こくないほうではカーマーカーのアルゴリズムかんする特許とっきょろんそうなどのれいがある)ので、著作ちょさくけんから派生はせいする翻訳ほんやくけんについては議論ぎろん余地よちがある。

国際こくさい私法しほうじょう問題もんだい[編集へんしゅう]

通常つうじょう著作ちょさくぶつ利用りよう許諾きょだくをする場合ばあい利用りよう許諾きょだくしょ規定きていするライセンスの成立せいりつおよ効力こうりょくにつき、準拠じゅんきょほう指定していする条項じょうこう存在そんざいする。しかし、GFDLには準拠じゅんきょほうかんする条項じょうこう存在そんざいしない。法律ほうりつ行為こうい成立せいりつおよ効力こうりょくにつき、当事とうじしゃ準拠じゅんきょほうさだめをしなかった場合ばあい準拠じゅんきょほうを「締結ていけつほう」 (lex loci contractus) とするか、「履行りこうほう」 (lex loci solutionis) とするか、当事とうじしゃの「本国ほんごくほう」 (lex patriae) とするかについては、国際こくさい私法しほう内容ないようくにによりことなることもあり、世界せかいてき統一とういつされたあつかいができないが、いずれにしても当事とうじしゃ意思いしとは無関係むかんけい準拠じゅんきょほうさだまることになる。日本にっぽん法廷ほうていになる場合ばあいほう適用てきようかんする通則つうそくほう8じょう適用てきようされ、利用りよう許諾きょだくにつきもっと密接みっせつ関係かんけいがあるほうによる。

このため、はら著作ちょさくけんしゃA がその著作ちょさくぶつにつき GFDL を適用てきようして公開こうかいしたのちべつものB がその改変かいへんばん公開こうかいする場合ばあい、AによるライセンスとBによるライセンスとでは、おなじGFDLを適用てきようしていながら、それぞれ準拠じゅんきょほうことなるケースがしょうじることになる。そのため、おな文言もんごんのライセンスのした利用りよう許諾きょだくをしているにもかかわらず、改変かいへんばんをめぐって法的ほうてきあらそいがしょうじた場合ばあいもと文書ぶんしょ著作ちょさくけんしゃごとにライセンスの成立せいりつおよ効力こうりょくについてことなったほう適用てきようしなければならず、法律ほうりつ関係かんけい複雑ふくざつになる懸念けねんしょうじかねないという問題もんだいがある(なお、著作ちょさくけん内容ないよう自体じたいは、著作ちょさくぶつ利用りよう行為こういほう準拠じゅんきょほうになるとほぐされている。詳細しょうさい著作ちょさくけん準拠じゅんきょほう参照さんしょう)。

その問題もんだい[編集へんしゅう]

その問題もんだいについては、ライセンス#著作ちょさくぶつ全般ぜんぱん利用りよう許諾きょだくのライセンス参照さんしょう

ライセンスの原文げんぶんおよ言語げんごやく[編集へんしゅう]

フリーソフトウェア財団ざいだん(FSF)によりGFDLとしての効力こうりょくがあると承認しょうにんされているものは、英語えいご原文げんぶんによるライセンスのみであり、公式こうしき言語げんごやく存在そんざいせず、FSFとしても言語げんご訳文やくぶん承認しょうにんしない方針ほうしんっている[6]。これは誤訳ごやく可能かのうせいがあるものを承認しょうにんすることによってしょうじるリスクを回避かいひするためである[6]。そのため、使用しようするときは英語えいごのライセンス文書ぶんしょ使つかうことになっており、日本語にほんごやくはあくまで参考さんこうとしてしめすにとどまっている。しかしながら、「言語げんご訳文やくぶん承認しょうにんしない」とはいえ「関知かんちしない」という立場たちば表明ひょうめいしているにすぎず、「C言語げんごかれたプログラムをRubyに移植いしょくした」といったケースは「関知かんちしない」だけのことであり、GNU ライセンスに違反いはんはしていない。

非公式ひこうしきではあるものの、八田はったしんぎょうによる"version 1.2"の日本語にほんごやく存在そんざいする[3]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ GNU License Logos” (英語えいご). 2018ねん1がつ14にち閲覧えつらん
  2. ^ GNUの発音はつおん仕方しかた”. 2018ねん1がつ14にち閲覧えつらん
  3. ^ a b GNU フリー文書ぶんしょ利用りよう許諾きょだく契約けいやくしょ”. 2018ねん1がつ14にち閲覧えつらん
  4. ^ GNU自由じゆう文書ぶんしょライセンス”. 2018ねん1がつ14にち閲覧えつらん
  5. ^ GNU自由じゆう文書ぶんしょライセンス v1.3 - GNUプロジェクト - フリーソフトウェアファウンデーション”. www.gnu.org. 2022ねん8がつ19にち閲覧えつらん
  6. ^ a b Unofficial Translations” (英語えいご). 2018ねん1がつ14にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]