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hERG

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hERG (ヒト遅延ちえん整流せいりゅうせいカリウムイオンチャネル遺伝子いでんし, human Ether-a-go-go Related Gene) とは、心筋しんきん活動かつどう電位でんいさい分極ぶんきょくになう、 カリウムイオンチャンネルKv11.1をコードする遺伝子いでんしである。

構造こうぞう

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hERGカリウムチャンネルは、それぞれ6(S1-S6)のまく貫通かんつう領域りょういきふくよっつの同一どういつのサブユニットから構成こうせいされている。S4ヘリックスはアルギニンもしくはリシンを3ヶ所かしょごとにち、電位でんいセンサーとして作用さようするとかんがえられている。S5ヘリックスとS6ヘリックスを連結れんけつしているポアヘリックスは、そのの3つのサブユニットとの結合けつごう部分ぶぶんとなり、イオンチャンネルのほそあな形成けいせいして選択せんたく透過とうかせい発現はつげんしている。選択せんたく透過とうか過程かてい(SVGFG)はKcsAチャンネルの動作どうさ非常ひじょう類似るいじしている。

遺伝いでんがく

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このイオンチャンネルの異常いじょうは、機能きのう喪失そうしつがた変異へんいによりQT延長えんちょう症候群しょうこうぐん(LQTS)を、機能きのう獲得かくとくがた変異へんいによりQT短縮たんしゅく症候群しょうこうぐんこしうる。心筋しんきん活動かつどう電位でんいさい分極ぶんきょくみだれからしょうじるQT延長えんちょう短縮たんしゅくはともに致命ちめいてき不整脈ふせいみゃく原因げんいんとなる。[1][2]

薬物やくぶつ相互そうご作用さよう

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このイオンチャンネルは、薬物やくぶつとの結合けつごう細胞さいぼうがいのカリウムレベルの低下ていかたいして敏感びんかんである。どちらの場合ばあい結果けっかとしてチャンネルの機能きのう低下ていかやQT延長えんちょう症候群しょうこうぐんこす。あるしゅこう不整脈ふせいみゃくやくとくにIaぐんとIIIぐん)、こう精神病せいしんびょうやくキノロンけいマクロライドけい抗生こうせい物質ぶっしつにおいてQT延長えんちょう副作用ふくさようられることがある。 [3]

心臓しんぞうたいする副作用ふくさようこす機構きこうほかにも存在そんざいするが、おおくのQT延長えんちょうこすれいにおいて薬物やくぶつとhERGカリウムイオンチャンネルとのあいだ相互そうご作用さようがあることがられている。この現象げんしょうおも原因げんいんはhERGチャンネルの前庭ぜんてい部分ぶぶんおおきいことによる。そのため、よりおおくのことなる種類しゅるい薬物やくぶつがカリウムチャンネルと結合けつごうし、チャンネルをブロックする余地よちがある。 [4]

このような薬物やくぶつによるQT異常いじょう危険きけんせい認知にんちされたため、行政ぎょうせい当局とうきょく臨床りんしょうぜん開発かいはつにおけるこころ疾患しっかん安全あんぜんせい確立かくりつたいする勧告かんこくした(ICH S7B、心室しんしつさい分極ぶんきょく遅延ちえん(QT間隔かんかく遅延ちえん)の薬学やくがくてき臨床りんしょうぜん評価ひょうか)。この勧告かんこくはCHMP(欧州おうしゅう医薬品いやくひん審査しんさちょう医薬品いやくひん委員いいんかい)により2005ねん5がつにより承認しょうにんされ、CHMP/ICH/423/02として公布こうふされた。臨床りんしょうまえのhERG研究けんきゅうGLP環境かんきょうによりおこなわれなければならない。

ぎゃくに、新薬しんやく開発かいはつ観点かんてんからは、探索たんさく初期しょき段階だんかい候補こうほ化合かごうぶつとhERGカリウムイオンチャンネルとの結合けつごうつよさを試験しけんし、こころ疾患しっかん危険きけんせいをある程度ていど回避かいひすることが期待きたいできる。これにより開発かいはつ費用ひよう時間じかん節約せつやくすることができるため、2008ねん現在げんざい分子ぶんし構造こうぞう結合けつごうつよさとのあいだ相関そうかん関係かんけい研究けんきゅうさかんにおこなわれている。hERGカリウムイオンチャンネルとの結合けつごうしやすい化合かごうぶつには以下いか特徴とくちょう共通きょうつうしてられる。[5]

名称めいしょう由来ゆらい

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hERGは、1960年代ねんだい、William D. Kaplan (現在げんざい、カリフォルニアしゅうドアルテにあるCity of Hope Hospitaに在籍ざいせき)により、ショウジョウバエにおいて見出みいだされたether-a-go-go遺伝子いでんしのヒトホモログであることからhERG遺伝子いでんしばれる。この遺伝子いでんし変異へんいしょうじたショウジョウバエをエーテルで麻酔ますいすると、ダンスするようにあしふるえさせたことから、カリフォルニアしゅうウェスト・ハリウッドのナイトクラブ「ウィスキー・ア・ゴーゴー」において当時とうじ人気にんきであったダンスにちなんでether-a-go-go遺伝子いでんし命名めいめいされた。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ Sanguinetti MC, Jiang C, Curran ME, Keating MT (1995). “A mechanistic link between an inherited and an acquired cardiac arrhythmia: HERG encodes the IKr potassium channel”. Cell 81 (2): 299–307. doi:10.1016/0092-8674(95)90340-2. PMID 7736582. 
  2. ^ Moss AJ, Zareba W, Kaufman ES, Gartman E, Peterson DR, Benhorin J, Towbin JA, Keating MT, Priori SG, Schwartz PJ, Vincent GM, Robinson JL, Andrews ML, Feng C, Hall WJ, Medina A, Zhang L, Wang Z (2002). “Increased risk of arrhythmic events in long-QT syndrome with mutations in the pore region of the human ether-a-go-go-related gene potassium channel”. Circulation 105 (7): 794–9. doi:10.1161/hc0702.105124. PMID 11854117. 
  3. ^ Sanguinetti MC, Tristani-Firouzi M (2006). “hERG potassium channels and cardiac arrhythmia”. Nature 440 (7083): 463–9. doi:10.1038/nature04710. PMID 16554806. 
  4. ^ Milnes JT, Crociani O, Arcangeli A, Hancox JC, Witchel HJ (2003). “Blockade of HERG potassium currents by fluvoxamine: incomplete attenuation by S6 mutations at F656 or Y652”. Br J Pharmacol 139 (5): 887–98. doi:10.1038/sj.bjp.0705335. PMID 12839862. 
  5. ^ Kerns, E. H.; Di, L. (2008). Drug-like properties: concepts, structure design and methods from ADME to toxicity optimization. Burlington, Massachusetts: Academic press. pp. 212. ISBN 978-01236-9520-8 

参考さんこう文献ぶんけん

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  • "The molecular genetics of the long QT syndrome: genes causing fainting and sudden death" Annu. Rev. Med., 49, pp. 263–74 (1998).
  • "The long QT syndrome: ion channel diseases of the heart" Mayo Clin. Proc., 73(3), pp. 250–69 (1998).
  • Taglialatela M, Castaldo P, Pannaccione A, et al. "Human ether-a-gogo related gene (HERG) K+ channels as pharmacological targets: present and future implications" Biochem. Pharmacol., 55(11), pp. 1741–6 (1998) .
  • Bjerregaard P, Gussak I "Short QT syndrome: mechanisms, diagnosis and treatment" Nature clinical practice. Cardiovascular medicine, 2(2), pp. 84–7 (2005).
  • Gutman GA, Chandy KG, Grissmer S, et al. "International Union of Pharmacology. LIII. Nomenclature and molecular relationships of voltage-gated potassium channels" Pharmacol. Rev., 57(4), pp. 473–508 (2006).

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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