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KH-12

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
KH-12衛星えいせい典型てんけいてきしょもと
( USA-245 (NROL-65) )
デルタ IV Heavy ロケットによる USA-245 の打上うちあげ(ヴァンデンバーグ空軍くうぐん基地きち)
所属しょぞく アメリカ国家こっか偵察ていさつきょく (NRO)
しゅ製造せいぞう業者ぎょうしゃ ロッキード・マーティン
衛星えいせいバス EIS (KH-12)
任務にんむ 光学こうがく画像がぞう偵察ていさつ衛星えいせい
打上うちあ日時にちじ 2013ねん8がつ28にち, 18:03:00 (UTC)
輸送ゆそうロケット デルタ IV Heavy D364
打上うちあ場所ばしょ ヴァンデンバーグ空軍くうぐん基地きち SLC-6
COSPAR ID 2013-043A
SATCAT 39232
軌道きどう要素ようそ
参照さんしょう座標ざひょう 地球ちきゅう周回しゅうかい軌道きどう
軌道きどう 太陽たいよう同期どうき軌道きどう
軌道きどう傾斜けいしゃかく 97.86°[1]
とおてん高度こうど 1010 km[1]
きんてん高度こうど 276 km[1]
軌道きどう周期しゅうき 97.44 ふん[1]
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KH-12 (キーホール12、Key Hole 12) は、アメリカ国家こっか偵察ていさつきょく (National Reconnaissance Office; NRO) が運用うんようちゅうの、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく軍事ぐんじ画像がぞう偵察ていさつ衛星えいせい (いわゆるスパイ衛星えいせい) のキーホールシリーズにぞくするとかんがえられる、衛星えいせいのシリーズである [2] [3]

この衛星えいせいはキーホールシリーズにぞくすることが公表こうひょうされている KH-11 (Crystal) の後継こうけいであり、ロッキード・マーティンしゃによって製造せいぞうされた。地上ちじょう目標もくひょう分解能ぶんかいのうおそらくすう cm にたっするとかんがえられる (詳細しょうさい後述こうじゅつ)。

名称めいしょう

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KH-12という名称めいしょうアマチュア観測かんそくしゃいたるなどが便宜べんぎてきにつけた通称つうしょうひとつであり、NROがKH-8、KH-9、およびKH-11とつづいたれんばん公開こうかい名称めいしょうのちで、衛星えいせいをランダムづけばん原則げんそく(たとえば NROL-20。NROL は NRO Launch) で命名めいめいすることを決定けっていしたため、公式こうしき命名めいめいシステムではKH-12という名称めいしょう存在そんざいしないことになっている [4]

ただし、おなアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく政府せいふ機関きかんであるアメリカ航空こうくう宇宙うちゅうきょく (NASA) のNSSDC衛星えいせいデータベースでは、USA-86(1992-083A)、USA-116(1995-066A)、USA-129(1996-072A)の3について、それぞれ KH-12-1、KH-12-2、KH-12-3 の名称めいしょうもちいているれいもある (NSSDCにおける記載きさいれい1992-083A = KH-12-1)。

多数たすう民間みんかん軍事ぐんじアナリストは、KH-12はほとんどのてんでKH-11に追加ついかてき改良かいりょうほどこしたものであるとかんがえており、軍事ぐんじアナリストあるいアマチュア観測かんそくしゃなかには、これをKH-11の派生はせいがた分類ぶんるいしてKH-11ブロックIIIあるいはブロックIVとものもいる。また、「発展はってんがたケンナン」 (Advanced KENNAN)、あるいはコードネームにより「アイコン」 (Ikon)、または「改良かいりょうがたクリスタル」 (Improved Crystal) などの名称めいしょうばれる場合ばあいもある。

2013ねん8がつ30にちワシントン・ポストかみは、エドワード・スノーデンがリークした資料しりょうなかふくまれていた米国べいこく政府せいふ諜報ちょうほうプログラムの2013会計かいけい年度ねんど予算よさん米国べいこく議会ぎかいへの予算よさん説明せつめいしょ (National Intelligence Program - FY 2013 Congressional Budget Justification) から、いままでなぞつつまれていた米国べいこく諜報ちょうほう活動かつどうかんするあらたな事実じじつ判明はんめいしたとほうじた [5]

この資料しりょうなかには複数ふくすうのスパイ衛星えいせい名称めいしょう記述きじゅつされており、下表かひょうだい3世代せだい衛星えいせい、USA-224(KH-12-6)、USA-245(KH-12-7)に該当がいとうする衛星えいせい正式せいしき名称めいしょうEIS (Enhanced Imagery System) であるらしいことが判明はんめいした。シリーズのこの2以外いがい衛星えいせいも EIS とばれているかは不明ふめいである。

この後継こうけいとして2012会計かいけい年度ねんどから EECS (Evolved Enhanced CRYSTAL System) の整備せいびはじまることもあきらかになっているが [6]下表かひょうだい4世代せだい衛星えいせい、USA-290(KH-12-7、2019ねん1がつ19にち打上うちあげ)が、EECSの初号しょごうではないかとの意見いけんがある [7]

このリーク資料しりょう一部いちぶCryptome閲覧えつらん可能かのうである [8]

打上うちあげ記録きろく

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発射はっしゃじょうすべヴァンデンバーグ空軍くうぐん基地きち (Vandenberg AFB ; カリフォルニアしゅうサンタバーバラぐん)である。

衛星えいせい世代せだいけは説明せつめい便宜上べんぎじょう打上うちあ時期じき打上うちあげロケットを基準きじゅんにして区別くべつおこなったものであり、アマチュア観測かんそくしゃなどのあいだでコンセンサスのられているものではない。

名称めいしょう(通称つうしょう) USA番号ばんごう
NROL番号ばんごう
COSPAR ID
SATCAT No.
打上うちあ
(活動かつどう停止ていし時期じき)
きんてん高度こうど
とおてん高度こうど
軌道きどう傾斜けいしゃかく
軌道きどうめん
だい1世代せだい衛星えいせい
KH-12-1 USA-86
N/A
1992-083A[9]
22251
1992ねん11月28にち
(2000ねん6がつ5にち)
408km
931km
97.7°[10]
East
KH-12-2 USA-116
N/A
1995-066A[11]
23728
1995ねん12月5にち
(2008ねん11月19にち)
405km
834km
97.7°[12]
East
KH-12-3 USA-129
NROL-2
1996-072A[13]
24680
1996ねん12がつ20日はつか
(2014ねん4がつ24にち [14])
292km
894km
97.7°[15]
West
だい2世代せだい衛星えいせい
KH-12-4 USA-161
NROL-14
2001-044A[16]
26934
2001ねん10がつ5にち
(2014ねんまつ[17])
309km
965km
97.9°[18]
East
KH-12-5 USA-186
NROL-20
2005-042A[19]
28888
2005ねん10がつ19にち
(運用うんようちゅう)
256km
1006km
97.9°[20]
West
だい3世代せだい衛星えいせい
KH-12-6 USA-224
NROL-49
2011-002A[21]
37348
2011ねん1がつ20日はつか
(運用うんようちゅう)
290km
985km
97.9°[22]
East
KH-12-7 USA-245
NROL-65
2013-043A[23]
39232
2013ねん8がつ28にち
(運用うんようちゅう)
260km
1007km
97.9°[24]
West
KH-12-9? USA-314
NROL-82
2021-032A
48247
2021ねん4がつ26にち
(運用うんようちゅう)
528km
775km
98.1°[25]
East
だい4世代せだい衛星えいせい
KH-12-8? USA-290
NROL-71
2019-004A[26]
43941
2019ねん1がつ19にち
(運用うんようちゅう)
391km
418km
73.6°[27]
KH-12-11? [28][29] USA-338
NROL-91
2022-117A
53883
2022ねん9がつ24にち
(運用うんようちゅう)
373.5km
423.2km
73.6°
世代せだい不明ふめい衛星えいせい
KH-12-10? [30]

[31]

USA-326
NROL-87
2022-009A
51445
2022ねん2がつ2にち
(運用うんようちゅう)
498km
524km
97.4°

(2022ねん6がつ現在げんざい)

沿革えんかく

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だい1世代せだい衛星えいせい

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1992ねん11月から1996ねん12がつにかけて、NRO所属しょぞく機密きみつ衛星えいせいKH-12-1(USA-86、1992ねん11月28にち打上うちあげ)、KH-12-2(USA-116、1995ねん12月5にち打上うちあげ)、KH-12-3(USA-129、1996ねん12月20にち打上うちあげ)の3(だい1世代せだい衛星えいせい)がヴァンデンバーグ空軍くうぐん基地きちからタイタンIVロケットをもちいて打上うちあげられた。各々おのおの衛星えいせい価格かかくは10おくあめりかドル以上いじょうであり、費用ひようは4おくあめりかドルにちかいと見積みつもられている[2]

だい1世代せだい衛星えいせいのKH-12の打上うちあ質量しつりょうは、打上うちあげにもちいられたタイタンIVロケットの能力のうりょくから推定すいていして、最大さいだいで 21680kgにたっするとかんがえられている。KH-11 と同様どうように KH-12 はひかり捕捉ほそくするのに大型おおがたおもきょうカセグレン光学こうがくシステムを使用しようし、おそらく全体ぜんたいおおきさと形状けいじょうハッブル宇宙うちゅう望遠鏡ぼうえんきょう (HST) に非常ひじょうているであろうとかんがえられている[2]

これらはKH-11同様どうようにデジタル・イメージング技術ぎじゅつもちいており、前身ぜんしん設計せっけいシギント信号しんごう諜報ちょうほう機能きのうと、おそらく赤外線せきがいせんまでにいたる、よりひろスペクトル範囲はんいわた光学こうがくてき検知けんち能力のうりょく付加ふかしたものであるとかんがえられている。おもきょう直径ちょっけいは 2.9 から 3.1 m とかんがえられており [32][2] によれば 直径ちょっけい 4.0 m)、これは直径ちょっけい 2.3 m とかんがえられている KH-11 のおもきょうや、直径ちょっけい 2.4 m のハッブル宇宙うちゅう望遠鏡ぼうえんきょうおもきょうよりもややおおきい。

ジェーン・ディフェンス・ウィークリーはカセグレン光学こうがくシステムのふくかがみ大幅おおはば可動かどうであり、これが衛星えいせいでは通常つうじょう不可能ふかのうなアングルでの撮像さつぞう可能かのうにしていると示唆しさしている。 また、同誌どうしには衛星えいせいは5びょうごとに1まい映像えいぞう撮像さつぞう可能かのうであるとの示唆しさもある。 データは通信つうしん衛星えいせい中継ちゅうけいネットワークをつうじて地上ちじょう送信そうしんされるが、SDS (Satellite Data System)、MILSTAR、またはTDRS (Tracking and Data Relay Satellite System) といったいくつかのことなる中継ちゅうけい衛星えいせいくみ利用りよう可能かのうであり、衛星えいせい利用りようしているのはこのいずれでもありる。 どれを使つかっているかについては、ニュースソースにより意見いけんことなる [33]

だい2世代せだい衛星えいせい

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だい1世代せだい衛星えいせいの3打上うちあげげののちで、1999ねんにアメリカ政府せいふは、よりあたらしい光学こうがく画像がぞう偵察ていさつ衛星えいせいとレーダー・イメージング衛星えいせい開発かいはつ計画けいかくである将来しょうらい画像がぞうアーキテクチャー(Future Imagery Architecture、FIA)プログラムをべいボーイングしゃ連合れんごうおも契約けいやくしゃとして開始かいしした。

FIAプログラムの成果せいかたずに、おそらくだい1世代せだい衛星えいせいの3改良かいりょうがたおもわれる、NRO所属しょぞく機密きみつ衛星えいせいKH-12-4(USA-161、2001ねん10がつ5にち打上うちあげ)とKH-12-5(USA-186、2005ねん10がつ19にち打上うちあげ)の2(だい2世代せだい衛星えいせい)がヴァンデンバーグ空軍くうぐん基地きちからタイタンIVBロケットをもちいて打上うちあげられた。

タイタンIVロケットとタイタンIVBロケットの打上うちあ能力のうりょくおなじであるから、だい1世代せだい衛星えいせいだい2世代せだい衛星えいせいおな質量しつりょうかんがえられ、性能せいのう同等どうとうであろうとおもわれる。

だい3世代せだい衛星えいせい

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USA-224 (NROL-49) のミッションパッチ
USA-245 (NROL-65) のミッションパッチ

2005ねんいたって、FIAプログラムのうち、光学こうがく画像がぞう偵察ていさつ衛星えいせい開発かいはつプログラムについては、開発かいはつ遅延ちえん予算よさん超過ちょうか理由りゆうに、アメリカ政府せいふによって完全かんぜん終了しゅうりょう宣言せんげんされた(レーダー・イメージング衛星えいせいについては無事ぶじ開発かいはつ完了かんりょうし、その成果せいかであるTopaz衛星えいせい現在げんざい配備はいびちゅうである)。

これにともなって、アメリカの光学こうがく画像がぞう偵察ていさつ衛星えいせいプログラムの維持いじのために、アメリカ政府せいふまえ5同様どうようのKH-12がた衛星えいせいシステム2ロッキード・マーティンしゃ追加ついか発注はっちゅうした。この決定けっていたいする批判ひはんしゃは、これらの「ちょう高性能こうせいのう衛星えいせい最新さいしんがたのニミッツきゅう空母くうぼであるジョージ・H・W・ブッシュ (CVN-77、その調達ちょうたつ費用ひよう見積みつもりは2005ねん5がつにおいて63.5おくあめりかドルにたっしていた)よりさらに高額こうがくになるとの懸念けねん表明ひょうめいした [34] [35]

これら2衛星えいせい(だい3世代せだい衛星えいせい)の最初さいしょのものがNRO所属しょぞく機密きみつ衛星えいせいUSA-224 、2USA-245であり、それぞれ2011ねん1がつ20日はつかと、2013ねん8がつ28にちに、ヴァンデンバーグ空軍くうぐん基地きちからデルタ IV Heavy ロケットをもちいて打上うちあげられている。これらはロッキード・マーティンしゃが、当初とうしょ見積みつもりより20おくドルやすく、さらに計画けいかくよりも2ねんはや完成かんせいさせたものである [36]

だい3世代せだい衛星えいせいは、だい2世代せだい衛星えいせい製造せいぞうから8ねんから10ねん製造せいぞうされていることから、電子でんし技術ぎじゅつ進歩しんぽんで、ある程度ていど改良かいりょうおこなわれていることが予測よそくされるが、設計せっけい大幅おおはば変更へんこうされているとはかんがえにくい(根本こんぽんてき変更へんこう目指めざしたのがFIAであったが、それが完全かんぜん挫折ざせつしたことから、設計せっけい大幅おおはば変更へんこうというリスクをおかしたとはかんがえにくい)。

だい3世代せだい衛星えいせい打上うちあ質量しつりょうは、打上うちあげにもちいられたデルタ IV Heavyロケットの能力のうりょくから推定すいていして、最大さいだいで28790kgにたっするとかんがえられており、だい1世代せだい衛星えいせいおよびだい2世代せだい衛星えいせいより7トン程度ていどおも可能かのうせいがある。この質量しつりょう余裕よゆうおそらく機器ききるい増強ぞうきょうではなく、マニューバーよう燃料ねんりょう増加ぞうかてられている可能かのうせいたかいとおもわれる。

なお、前述ぜんじゅつのように、この2衛星えいせいエドワード・スノーデンが2013ねん8がつ30にち暴露ばくろした資料しりょうによれば、米国べいこく議会ぎかい予算よさんしょじょう正式せいしき名称めいしょうEIS (Enhanced Imagery System) である可能かのうせいたかくなっている [5] [6]

イラン・サフィール・ロケット(ナヒード1ごう衛星えいせい)打上うちあ失敗しっぱい撮影さつえい

[編集へんしゅう]
トランプ大統領だいとうりょう がツイートした、USA-224で撮影さつえいされたとかんがえられている、イランのロケット打上うちあ事故じこ映像えいぞう

2019ねん8がつ30にちに、トランプ大統領だいとうりょうは、諜報ちょうほうブリーフィングで入手にゅうしゅしたイランセムナーン衛星えいせい発射はっしゃセンターにおけるサフィール・ロケット打上うちあ準備じゅんび発生はっせいしたとかんがえられている事故じこ惨状さんじょう撮影さつえいした写真しゃしんをツイートした [37] [38]軍事ぐんじアナリストたちは、この写真しゃしんはUSA-224により撮影さつえいされたもののようであるとべている。 [39] [40] [41]

ロシア・コスモス2542ごう、2543ごうによる USA-245 への異常いじょう接近せっきん追尾ついび

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2020ねん2がつ10日とおかに、アメリカ宇宙うちゅうぐん司令しれいかんジョン・ウイリアム・レイモンド英語えいごばん大将たいしょうは、タイム取材しゅざいたいして、つぎのようにかたった。

ロシア昨年さくねん11がつ26にち打上うちあげた衛星えいせいであるコスモス2542ごうが、12月初旬しょじゅん軌道きどうじょうだい2の衛星えいせい、コスモス2543ごう放出ほうしゅつした。この衛星えいせいのペアが、1がつ中旬ちゅうじゅんごろから USA-245接近せっきんした状態じょうたい追尾ついびつづけるという異常いじょう当惑とうわくさせるような状態じょうたい現在げんざいでもつづいている。やく160km(100マイル)まで接近せっきんすることもなんかあった。
ジョン・ウイリアム・レイモンド、TIME[42]

タイムによれば、この事実じじつは、アマチュア観測かんそくしゃのミカエル・トンプソン(Michael Thompson)により、1がつ31にちツイッターうえ最初さいしょ指摘してきされた[43]

だい4世代せだい衛星えいせい新規しんきだい3世代せだい衛星えいせい

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USA-314 (NROL-82) のミッションパッチ

2021ねん4がつ26にち 20:47:00 UTC に、NRO所属しょぞく機密きみつ衛星えいせい USA-314 (NROL-82)が、デルタ IV Heavy ロケットをもちいてヴァンデンバーグ空軍くうぐん基地きちから打上うちあげられ、アマチュア観測かんそくしゃたちの観測かんそくにより、軌道きどう傾斜けいしゃかくやく 98.1きん地点ちてん高度こうどやく528km、遠地点えんちてん高度こうどやく755 km の太陽たいよう同期どうき軌道きどうはいったことがあきらかにされた[25]

アマチュア観測かんそくしゃたちは、太陽たいよう同期どうき軌道きどうはいっていることと軌道きどう高度こうどからかんがえて、光学こうがく画像がぞう偵察ていさつ衛星えいせいであることは間違まちがいなく、デルタ IV Heavy ロケットをもちいていることから、KH-12だい3世代せだいぞくするEIS衛星えいせいまたはその発展はってんがたではないかとかんがえている [44]

また、あるアマチュア観測かんそくしゃは、2021ねん4がつまつにおける USA-314 の軌道きどうめんは、高度こうどはややことなるが、USA-224 (NROL-49、KH-12-6)の軌道きどうめん(東側ひがしがわ軌道きどうめん)と一致いっちしており、いままでの経験けいけんからかんがえて、打上うちあげげからすう週間しゅうかんのチェック期間きかんて、USA-314 が USA-224 の軌道きどうめんぎ、USA-224 はべつ軌道きどうめん(だい2東側ひがしがわ軌道きどうめん)にうつるものと予測よそくしている[25]

ロシア・コスモス2576衛星えいせいによるUSA-314への干渉かんしょう

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2024ねん5がつ20日はつか米国べいこくのRobert Wood国連こくれん代理だいり大使たいし国連こくれん安全あんぜん保障ほしょう理事りじかいで「Cosmos 2576はおそらく宇宙うちゅう兵器へいきであり、おそらくLEOにあるほか衛星えいせい攻撃こうげきできるもの」と発言はつげんした。どう大使たいしによれば、ロシアは2019ねんと2022ねんにもたい宇宙うちゅうシステムを搭載とうさいした衛星えいせいげたとしている[45]。この衛星えいせいは2024ねん5がつ16にち打上うちあげられたが、USA-314とパラメーターの一部いちぶかさなる軌道きどうじょうにあることが研究けんきゅうしゃやアマチュア観測かんそくしゃから指摘してきされている。なお、米国べいこく・ハーバード・スミソニアン天体てんたい物理ぶつりがくセンター(CfA)所属しょぞくのアマチュア衛星えいせい観測かんそくしゃであるジョナサン・マクドウェルは2024ねん5がつ23にちに「実際じっさいには、コスモス2576はUSA-314とおな軌道きどうめんはいっているが、同一どういつ軌道きどうではない」[46] とツイートしている。

だい4世代せだい衛星えいせい

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USA-290 (NROL-71) のミッションパッチ
USA-338 (NROL-91) のミッションパッチ

2019ねん1がつ19にちに、NRO所属しょぞく機密きみつ衛星えいせいUSA-290(NROL-71)が、デルタ IV Heavy ロケットをもちいてヴァンデンバーグ空軍くうぐん基地きちから打上うちあげられているが、打上うちあまえからこの衛星えいせいはエドワード・スノーデンの暴露ばくろ資料しりょうにある、EECS (Evolved Enhanced CRYSTAL System) の初号しょごうではないかとの意見いけんがあった。

しかし打上うちあげられた衛星えいせい軌道きどうは、アマチュア観測かんそくしゃなどの予測よそくはんして、いままでのKH-12衛星えいせいのように太陽たいよう同期どうき軌道きどう(軌道きどう傾斜けいしゃかくやく97.9きん地点ちてん高度こうどやく260km、遠地点えんちてん高度こうどやく1000km)ではなく、打上うちあげげから数日すうじつ観測かんそくでは、きん地点ちてん高度こうどやく265km、遠地点えんちてん高度こうどやく455km、軌道きどう傾斜けいしゃかくやく73.6という光学こうがく画像がぞう偵察ていさつ衛星えいせいとしては類例るいれいいものであった [7] [47]

太陽たいよう同期どうき軌道きどう場合ばあい衛星えいせい燃料ねんりょう消費しょうひすることなく、きん地点ちてん地球ちきゅうひるがわ半球はんきゅう維持いじされるので、長期間ちょうきかんにわたって軌道きどうじょう運用うんようされる、可視かしこうまたは近赤外線きんせきがいせんもちいる光学こうがく画像がぞう偵察ていさつ衛星えいせいは、 きん地点ちてん付近ふきん太陽光たいようこうにより撮影さつえいおこなうために例外れいがいなく太陽たいよう同期どうき軌道きどうっている。USA-290のように太陽たいよう同期どうき軌道きどうでない場合ばあいは、きん地点ちてん地球ちきゅうよるがわ半球はんきゅうはい場合ばあいもあることになる。

2021ねん11月21にち現在げんざいのアマチュア観測かんそくしゃTLEレポートでは、軌道きどう傾斜けいしゃかくつづやく73.6であるが、きん地点ちてん高度こうど遠地点えんちてん高度こうどはそれぞれやく403kmおよびやく411kmとほとんどがなくなっており、そもそもきん地点ちてん付近ふきんでの撮影さつえいにこだわる必要ひつようはない状態じょうたいとなっている [48]

もし、USA-290が光学こうがく画像がぞう偵察ていさつ衛星えいせいであるなら、従来じゅうらい光学こうがく偵察ていさつ衛星えいせいでは達成たっせいできなかった、つぎのような特長とくちょういずれかまたは全部ぜんぶっており、軌道きどうじょう任意にんい地点ちてんで、かならずしも太陽光たいようこう依存いぞんしない撮影さつえいおこなうことが可能かのうになっているとかんがえないかぎり、このような軌道きどう理由りゆう説明せつめいするのはむずかしいであろう。

  • 撮影さつえい地点ちてん地球ちきゅうよるがわ半球はんきゅうにある場合ばあいでも、月明つきあかり程度ていど微光びこう撮影さつえい可能かのうである。
  • 同上どうじょう場合ばあいにおいて、常温じょうおん物体ぶったい放射ほうしゃするとお赤外線せきがいせん(波長はちょう4μみゅーm以上いじょう)での撮影さつえい可能かのうである。
  • 従来じゅうらい衛星えいせいよりもたか分解能ぶんかいのう(解像度かいぞうど)をっており、従来じゅうらいよりもたか高度こうどでの撮影さつえいでも従来じゅうらいどう程度ていど分解能ぶんかいのうられる。

これらの機能きのう実現じつげんするための共通きょうつう課題かだいは、おもきょうのさらなるだい口径こうけいである。USA-290は従来じゅうらいのKH-12のようなハッブル宇宙うちゅう望遠鏡ぼうえんきょうちか形状けいじょうではなく、ジェイムズ・ウェッブ宇宙うちゅう望遠鏡ぼうえんきょう(おもきょう直径ちょっけいは6.5m。かがみとうく、おもきょうはむきしの状態じょうたい)のような形状けいじょうとなっている可能かのうせいがある。

上表じょうひょうではUSA-290をKH-12のだい4世代せだい衛星えいせいとして分類ぶんるいしたが、この予測よそく事実じじつであるなら、USA-290はもはやまったべつ光学こうがく画像がぞう偵察ていさつ衛星えいせいシリーズの初号しょごうかんがえるべきであろう。なお、USA-290が光学こうがく画像がぞう偵察ていさつ衛星えいせいではなく、部外ぶがいしゃにはまったおもいつかない種類しゅるい軍事ぐんじ衛星えいせいである可能かのうせいのこっている(ただし、この可能かのうせいはごくすくないとかんがえられる)。

2022ねん9がつ24にちに、NRO所属しょぞく機密きみつ衛星えいせいUSA-338(NROL-91)が、デルタ IV Heavy ロケットをもちいてヴァンデンバーグ宇宙うちゅうぐん基地きち(VSFB)から打上うちあげられているが、この衛星えいせいはUSA-290と酷似こくじした軌道きどうパラメーターをっており、だい4世代せだい衛星えいせいの2である可能かのうせいたかい。

世代せだい不明ふめい衛星えいせい

[編集へんしゅう]
USA-326 (NROL-87) のミッションパッチ

2022ねん2がつ2にちに、ヴァンデンバーグ宇宙うちゅうぐん基地きちからスペースXしゃ Falcon 9 Block 5 ロケットをもちいて、機密きみつ衛星えいせい USA-326 (NRO所属しょぞく、NROL-87) がげられ、きん地点ちてん高度こうど 498 km、遠地点えんちてん高度こうど 524 km、軌道きどう傾斜けいしゃかく 97.4°の太陽たいよう同期どうき軌道きどう(SSO)に投入とうにゅうされたことがアマチュア観測かんそくしゃなどの観測かんそく確認かくにんされた[31]。Falcon 9 をもちいた NRO所属しょぞく機密きみつ衛星えいせい打上うちあげはこれが最初さいしょであった[49]。Falcon 9 Block 5 のてい軌道きどう(LEO)へのペイロード打上うちあ能力のうりょく最大さいだい16.25トンであるので(だい1だんロケット着陸ちゃくりく回収かいしゅう場合ばあい)、単独たんどく衛星えいせいの USA-326 はこの程度ていど質量しつりょうつことになるが、この質量しつりょうはデルタ IV Heavy ロケットをもちいて打上うちあげられているだい3世代せだい衛星えいせいまたはだい4世代せだい衛星えいせい推定すいてい質量しつりょう28.79トンの56%にぎず、KH-12シリーズにぞくするにしては非常ひじょう軽量けいりょう衛星えいせいである。太陽たいよう同期どうき軌道きどうはいっているので、光学こうがく偵察ていさつ衛星えいせい、またはこれと密接みっせつ関連かんれんした衛星えいせいであることは間違まちがいないが、KH-11、KH-12シリーズとはことなる光学こうがく偵察ていさつ衛星えいせい初号しょごうではないかとのアマチュア観測かんそくしゃなどの意見いけんがある[30]

USA-326からの正体しょうたい不明ふめい物体ぶったい放出ほうしゅつ

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米国べいこく・ハーバード・スミソニアン天体てんたい物理ぶつりがくセンター(CfA)所属しょぞくのアマチュア衛星えいせい観測かんそくしゃであるジョナサン・マクドウェルは2022ねん7がつ29にちつぎのようにツイートしている。
「USA-326から正体しょうたい不明ふめい物体ぶったい(NORAD No. 53315)が放出ほうしゅつされた。デブリかサブ・サテライトかは現在げんざいのところ不明ふめい[50]

ロシア・コスモス2558衛星えいせいによるUSA-326への異常いじょう接近せっきん追尾ついび

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ロシアは2022ねん8がつ1にち20:25UTC に、プレセツク宇宙うちゅう基地きち (Plesetsk Cosmodrome) からソユーズ2.1vロケットをもちいて軍事ぐんじ衛星えいせいコスモス2558 (Kosmos 2558, COSPAR ID: 2022-089A) をげたが、このげタイミングは、どう時刻じこくどう宇宙うちゅう基地きち上空じょうくう通過つうかちゅうであったUSA-326を精密せいみつ追尾ついびするようにえらばれたものであり、軌道きどう到達とうたつはコスモス2558はUSA-326と非常ひじょう接近せっきんした位置いち維持いじしながら追尾ついびつづけていることがアマチュア観測かんそくしゃなどの観測かんそくによりあきらかになった [51] [52] [53] [54] [55]

2022ねん8がつ上旬じょうじゅん現在げんざい、コスモス2558はUSA-326より高度こうどやく60kmひく軌道きどう飛行ひこうしており、2022ねん8がつ4にち14:47UTCに75kmのさい接近せっきん位置いちとなった[51]

衛星えいせい運用うんよう

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前述ぜんじゅつのように、KH-11、KH-12などのように、長期間ちょうきかんにわたって軌道きどうじょう運用うんようされる、可視かしこうまたは近赤外線きんせきがいせんもちいる光学こうがく画像がぞう偵察ていさつ衛星えいせいは、燃料ねんりょう消費しょうひすることなく、きん地点ちてん地球ちきゅうひるがわ半球はんきゅう維持いじされる太陽たいよう同期どうき軌道きどうり、きん地点ちてん周辺しゅうへん太陽光たいようこう利用りようして、地表ちひょう目標もくひょうぶつ撮影さつえいおこなう。

この場合ばあい当然とうぜんきん地点ちてん高度こうどひくいほうが地表ちひょう目標もくひょうぶつ分解能ぶんかいのうくなる。一方いっぽうてい高度こうどにおいてはごくくわずかではあるが大気たいき抵抗ていこうけ、位置いちエネルギーが減衰げんすいするので高度こうど低下ていかしてくる。そのままなにもしなければ、高度こうどがればがるほど大気たいき抵抗ていこうおおきくなるため、かなり短時間たんじかん大気圏たいきけんむことになる。もし、てい軌道きどう長時間ちょうじかん活動かつどうするのであれば、定期ていきてきにスラストをかけて高度こうどたかくする必要ひつようがあり、これを「リブースト」 (reboost) とぶ。たとえば高度こうどやく 350km 程度ていどてい軌道きどう周回しゅうかいする国際こくさい宇宙うちゅうステーション (ISS) も定期ていきてきにリブーストを実施じっししている (詳細しょうさいは、国際こくさい宇宙うちゅうステーション#高度こうど制御せいぎょ参照さんしょう)。高度こうどたかいほど空気くうき抵抗ていこうちいさくなるので、高度こうどやく 560km を周回しゅうかいするハッブル宇宙うちゅう望遠鏡ぼうえんきょうでは、リブーストは3ねんいちかい程度ていど十分じゅうぶんになる。

リブーストのために燃料ねんりょう消費しょうひするが、画像がぞう偵察ていさつ衛星えいせい活動かつどう可能かのう期間きかん燃料ねんりょうざんりょうまるとかんがえてよいほど燃料ねんりょう貴重きちょうであるので [3]燃料ねんりょう節約せつやくのため、平時へいじきん地点ちてん高度こうどやく 250km 以上いじょう軌道きどう周回しゅうかいし、なんらかの非常ひじょう事態じたい発生はっせいした場合ばあいきん地点ちてん高度こうどやく 150km 程度ていどまで低下ていかさせ、目標もくひょう撮影さつえいてきした軌道きどううつるという運用うんようおこなうのが一般いっぱんてきである[56]。 この作戦さくせんよう軌道きどう変更へんこうを「マニューバー」(maneuver)とぶ。前節ぜんせつでもれたが KH-11 および KH-12 のおおきさと形状けいじょうはハッブル宇宙うちゅう望遠鏡ぼうえんきょう非常ひじょうており、ことなるてんは、前者ぜんしゃがマニューバーよう大量たいりょう燃料ねんりょうスラスター搭載とうさいしていることであろうとかんがえられている。また、KH-11 にたいして KH-12 は質量しつりょうがかなり増加ぞうかしているが、このだい部分ぶぶんはマニューバーよう燃料ねんりょうのものとかんがえられている[2][3]

KH-12は、スペースシャトルにより燃料ねんりょう補給ほきゅうける設計せっけいとなっていたとかんがえられているが[3]、これが実際じっさい実行じっこうされているか、あるいはべつ代替だいたい手段しゅだん (たとえば無人むじん宇宙うちゅう) により燃料ねんりょう補給ほきゅうされているかは不明ふめいである。

地上ちじょう目標もくひょう分解能ぶんかいのうについての状況じょうきょう証拠しょうこ

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地上ちじょう目標もくひょうたいする分解能ぶんかいのう (地表ちひょう分解能ぶんかいのう) は高度こうど軍事ぐんじ機密きみつであり、当然とうぜん公式こうしきにはあきらかにされていないし、軍事ぐんじアナリストのあいだでも、30cm以下いかであることでは意見いけん一致いっちられるが[2] 具体ぐたいてき数値すうちでは意見いけんかれている。宇宙うちゅう開発かいはつ関係かんけいしゃあいだでは 5cm という意見いけん頻繁ひんぱんかれるが、いまのところ信頼しんらいできるニュースソースによるとはいがたい。しかし、前節ぜんせつれたとおり、KH-12 はハッブル宇宙うちゅう望遠鏡ぼうえんきょう非常ひじょうているというてんからかんがえると、この 5cm というがあながち誇張こちょうではない(むしろそれを上回うわまわ可能かのうせいがある)という状況じょうきょう証拠しょうこがある。

つぎの3つのひょうは、

  • ひょう1 – 地表ちひょう目標もくひょうぶつおおきさと観測かんそく距離きょり視角しかく (かく距離きょり)の関係かんけい
  • ひょう2 – ハッブル宇宙うちゅう望遠鏡ぼうえんきょう観測かんそく機器きき角度かくど分解能ぶんかいのう
  • ひょう3 – 回折かいせつ限界げんかいによる反射はんしゃ望遠鏡ぼうえんきょう角度かくど分解能ぶんかいのう理論りろんてき限界げんかい (このθしーたとすると、おもきょう直径ちょっけい d と観測かんそく波長はちょう λらむだあいだには sinθしーた = 1.22λらむだ/d の関係かんけいがある – エアリーディスク 参照さんしょう

整理せいりしたものである。かくひょうとも視角しかく角度かくど分解能ぶんかいのう単位たんいびょうかく (1°の 1/3600 = 4.848μみゅーrad (マイクロラジアン))に統一とういつしてある。

ひょう1 地表ちひょう目標もくひょうぶつ観測かんそく距離きょり視角しかく(びょうかく)の関係かんけい
地表ちひょう目標もくひょうぶつ
(cm)
観測かんそく距離きょり (km)
150 210 300 400 500 600
2.0 0.0275 0.0196 0.0138 0.0103 0.0083 0.0069
2.5 0.0344 0.0246 0.0172 0.0129 0.0103 0.0086
3.5 0.0481 0.0344 0.0241 0.0180 0.0144 0.0120
4.0 0.0550 0.0393 0.0275 0.0206 0.0165 0.0138
4.6 0.0633 0.0452 0.0316 0.0237 0.0190 0.0158
5.5 0.0756 0.0540 0.0378 0.0284 0.0227 0.0189
6.6 0.0908 0.0648 0.0454 0.0340 0.0272 0.0227
8.0 0.1100 0.0786 0.0550 0.0413 0.0330 0.0275
ひょう2 ハッブル宇宙うちゅう望遠鏡ぼうえんきょう観測かんそく機器きき角度かくど分解能ぶんかいのう
機器きき 分解能ぶんかいのう (びょうかく) 備考びこう
HST ACS (The Advanced Camera for Surveys)
Wide Field Channel 0.0500 視野しや 202x202びょうかく波長はちょう370〜1100 nm
High Resolution Channel 0.0270 視野しや 26x29びょうかく波長はちょう200〜1100 nm
Solar Blind Channel 0.0320 視野しや 31x35びょうかく波長はちょう115〜170 nm
HST WFPC2
Wide Field Camera 0.1000 視野しや 150x150びょうかく Lがた波長はちょう115〜1050 nm
Planetary Camera (PC) 0.0460 視野しや 34x34びょうかく
HST きゅう装置そうち (撤去てっきょずみ)
Faint Object Camera 0.0140 視野しや 14x14びょうかく波長はちょう115〜650 nm
ひょう3 反射はんしゃ望遠鏡ぼうえんきょう角度かくど分解能ぶんかいのう理論りろんてき限界げんかいびょうかく
おもきょう直径ちょっけい観測かんそく波長はちょう関係かんけい
波長はちょう
(μみゅーm)
いろ おもきょう直径ちょっけい (m)
2.0 2.4 3.0
0.20 むらさきがい 0.0252 0.0210 0.0168
0.26 むらさきがい 0.0327 0.0273 0.0218
0.33 むらさきがい 0.0415 0.0346 0.0277
0.40 むらさき 0.0503 0.0419 0.0336
0.47 あお 0.0591 0.0493 0.0394
0.58 0.0730 0.0608 0.0487
0.63 あか 0.0793 0.0661 0.0528
0.75 きんあかがい 0.0944 0.0786 0.0629
1.10 きんあかがい 0.1384 0.1153 0.0923

ひょう2にあるHST観測かんそく機器きき掃天観測かんそくよう高性能こうせいのうカメラ (ACS) は、2002ねん2がつに Faint Object Camera の代替だいたいとして取付とりつけられたもので、現在げんざいの HST の主力しゅりょく観測かんそく機器ききである。とくに ACS の High Resolution Channel (機器きき障害しょうがいのため現在げんざい使用しよう不可ふか)の角度かくど分解能ぶんかいのうは 0.0270びょうかくたっし (このはイメージセンサーの1ピクセルの幾何きかがくてきサイズであり、光学こうがくけいとしてこの角度かくど分解能ぶんかいのうつね達成たっせい可能かのうという意味いみではない)[57]、150km の距離きょりから 2.0cm のおおきさの物体ぶったいを、210km の距離きょりから 2.8cm のおおきさの物体ぶったい見分みわけられることがかる(210km とは高度こうど 150km で 45°なな物体ぶったい場合ばあい想定そうていした距離きょりである)。ただし、ひょう3からこの分解能ぶんかいのう可能かのうであるのは波長はちょうやく 0.26μみゅーm よりみじかひかり (紫外線しがいせん領域りょういき) の場合ばあいであることがかる。これらのみじか波長はちょうこうオゾンそう吸収きゅうしゅうされやすいため偵察ていさつ衛星えいせい実用じつようてき利用りよう可能かのうかは不明ふめいである。

実用じつようてきには 0.40μみゅーm よりもなが波長はちょうひかりてきしているとかんがえられるが、回折かいせつ限界げんかいのために波長はちょうながくなるほど角度かくど分解能ぶんかいのうわるくなる。KH-12のおもきょう直径ちょっけいを 3.0m と仮定かていした場合ばあい波長はちょう 0.40μみゅーm における角度かくど分解能ぶんかいのうひょう3から 0.0336びょうかくであり、ひょう1から高度こうど 150km から真下ました場合ばあい地表ちひょう分解能ぶんかいのうやく 2.5cm、高度こうど 150km から 45°なな場合ばあいやく 3.5cm となる。後者こうしゃ場合ばあい人物じんぶつ容貌ようぼうまたは車両しゃりょうのナンバーがかろうじて判読はんどくできる可能かのうせいがある。

なお、大気たいきみだれによりひかり経路けいろみだされて発生はっせいするシーイングばれる現象げんしょうにより画像がぞうがぼやける可能かのうせいがあるが、これは非常ひじょう短時間たんじかん露光ろこうによる多数たすうのイメージをコンピューターで合成ごうせいしてSNたかめるスペックル・イメージング技術ぎじゅつにより、ほぼ100%解決かいけつ可能かのうである。また、補償ほしょう光学こうがくもちいたおもきょう鏡面きょうめん制御せいぎょ技術ぎじゅつにより、カセグレン光学こうがくシステムの分解能ぶんかいのうをほぼ回折かいせつ限界げんかいまですことが可能かのうとなっている。

脚注きゃくちゅう

[編集へんしゅう]
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参考さんこう資料しりょう

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関連かんれん項目こうもく

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