モーション・ピクチャー・アソシエーション

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MPAAから転送てんそう
モーション・ピクチャー・アソシエーション・インク
Motion Picture Association, Inc.
略称りゃくしょう MPA
設立せつりつ 1922ねん (102ねんまえ) (1922)(MPPDAとして)
設立せつりつしゃ ウィリアム・ヘイズ
目的もくてき 映画えいがレイティングロビー活動かつどう著作ちょさくけん侵害しんがい対策たいさく営利えいり団体だんたい自主じしゅ規制きせい
本部ほんぶ アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくワシントンD.C.
会長かいちょうけんCEO チャールズ・H・リブキン
加盟かめい
ウェブサイト www.motionpictures.org
かつての
アメリカ映画えいが製作せいさくしゃ配給はいきゅうしゃ協会きょうかい(MPPDA、1922–1945ねん
アメリカ映画えいが協会きょうかい(MPAA、1945–2019ねん
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モーション・ピクチャー・アソシエーション・インク英語えいご: Motion Picture Association, Inc.、MPA)は、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくメジャー映画えいがスタジオ5しゃと、動画どうがストリーミングサービスのNetflix代表だいひょうする米国べいこく業界ぎょうかい団体だんたいである。1922ねんアメリカ映画えいが製作せいさくしゃ配給はいきゅうしゃ協会きょうかい(Motion Picture Producers and Distributors of America、MPPDA)として設立せつりつされ、1945ねんから2019ねん9がつまではアメリカ映画えいが協会きょうかい(Motion Picture Association of America、MPAA[1]としてられていた。

当初とうしょ目的もくてきは、アメリカの映画えいが産業さんぎょう存続そんぞく確保かくほすることだった。また、MPAは映画えいが内容ないようかんするガイドラインを制定せいていし、その結果けっか、1930ねんに「映画えいが製作せいさくコード」が作成さくせいされた。このコードはヘイズ・コードともばれていたが、1968ねん任意にんい映画えいが評価ひょうかシステムにえられ、CARA(Classification and Rating Administration)によって管理かんりされている。

最近さいきんでは、MPAは、効果こうかてき著作ちょさくけん保護ほご促進そくしん海賊かいぞく行為こうい減少げんしょう市場いちばアクセスの拡大かくだい目標もくひょうに、映画えいが・テレビ業界ぎょうかいのために活動かつどうしている。MPAは、ファイル共有きょうゆうネットワーク海賊版かいぞくばんサイトからのストリーミングによる著作ちょさくぶつ共有きょうゆう制限せいげんするなど、長年ながねんにわたり著作ちょさくけん侵害しんがい抑制よくせいつとめてきた。もとちゅうふつ米国べいこく大使たいしのチャールズ・リブキンが会長かいちょうけんCEOをつとめている。

認証にんしょうマークはえんだん手書てがふうでmpaaとかれていたが、地球ちきゅうのデザインの楕円だえんなかにフィルムロールのえんわせたのようなものである。認証にんしょうけた映画えいがにはエンドロールなどに認証にんしょう番号ばんごうとともに表示ひょうじされている。ただし、映画えいがかん上映じょうえいされている作品さくひんすでにMPAAの認証にんしょうけているため、観客かんきゃく鑑賞かんしょうまえ判断はんだんのために確認かくにんするマークではない。また、映画えいがまえのチラシやパンフレットにレーディングの表示ひょうじはあるがマークの表示ひょうじはない。

歴史れきし[編集へんしゅう]

MPPDAは、アメリカ映画えいが産業さんぎょうのイメージをおどかしたファッティ・アーバックル事件じけんのようなスキャンダルにメジャー・スタジオが対応たいおうできるように組織そしきされたものだった。また、しゅう政府せいふ地方ちほう政府せいふ映画えいが検閲けんえつするかもれないという危険きけんせい対応たいおうするためでもあった。

それゆえ、(まえ郵政ゆうせい長官ちょうかんウィル・ヘイズ指導しどうにありヘイズ・オフィスとしてられていた)MPPDAの設立せつりつは、検閲けんえつけん映画えいが産業さんぎょうしたにおこうとするこころみだった。モラルにかかわるあらたな難題なんだいとサウンドに対応たいおうして、MPPDAは、ダニエル・ロードとマーティン・クィグリーの2人ふたりカトリック教徒きょうと指導しどうけつつ、1930ねんに(ヘイズ・コードとしてもられている)映画えいが製作せいさく倫理りんり規程きてい成立せいりつさせた。

それにもかかわらず、あからさまなせい描写びょうしゃつづき、カトリック矯風きょうふうだん(Catholic Legion of Decency)が圧力あつりょくをかけたのちの1934ねんにヘイズ・コードは義務ぎむとして厳格げんかく運用うんようされることになった。この映画えいが製作せいさく倫理りんり規程きてい委員いいんかい委員いいんちょうがカトリック教徒きょうとのジョセフ・プリーンであった(ので、プリーン・コードともばれる)。この時点じてんで、メジャー・スタジオの映画えいがにはすべて映画えいが製作せいさく倫理りんり規程きてい承認しょうにんいん必要ひつようとされ、遵守じゅんしゅしない場合ばあいには罰金ばっきんせられることとなった。

MPPDAは、台本だいほんからファイナル・カットにいたる製作せいさくのあらゆる段階だんかいにおいて、プロデューサーになに容認ようにん可能かのうなのかについて助言じょげんした。せい犯罪はんざい描写びょうしゃかんするこまかい規則きそく目的もくてきとしていたのは、健全けんぜんなイメージを維持いじしていくことだった。

映画えいが製作せいさく基準きじゅんは、観客かんきゃく減少げんしょうやその問題もんだい直面ちょくめんしていたスタジオのあつりょくによって1956ねんと1966ねん改正かいせいされた。1966ねん改正かいせいでは現在げんざい格付かくづ諮問しもんレイティング・システムってわられ、映画えいが製作せいさく倫理りんり規程きていはその廃止はいしされた。

映画えいが製作せいさく倫理りんり規程きていはMPPDAの仕事しごとなかもっともよくられたいちめんであるが、ほかにも、中央ちゅうおう配役はいやくきょく(Central Casting Bureau)や、タイトルにまつわる論争ろんそう調停ちょうていするタイトル登録とうろくきょく(Titles Registration Bureau)など、様々さまざま職務しょくむがあった。

1945ねん、MPPDAはアメリカ映画えいが協会きょうかいMPAA)となり、エリック・ジョンストン会長かいちょうのもとでジョンストン・オフィスとしてられるようになった。このMPAAは発足ほっそくまもなく、パラマウント判決はんけつ余波よは(→スタジオ・システム)、観客かんきゃく減少げんしょう映画えいが製作せいさく倫理りんり規程きていきによる崩壊ほうかい海外かいがい展開てんかい必要ひつようせいなどの問題もんだい直面ちょくめんした。海外かいがい展開てんかいへの対応たいおうとして1945ねんにアメリカ映画えいが輸出ゆしゅつ協会きょうかい(MPEA)が設立せつりつされた。

1966ねんからリンドン・ジョンソン大統領だいとうりょうもと補佐ほさかんであり、1966ねんからMPAAとMPEAの会長かいちょうとなったジャック・ヴァレンティは、とくにハリウッドの作品さくひん海外かいがい市場いちばむために、映画えいが産業さんぎょう政府せいふあいだにより親密しんみつ関係かんけいつくげた。ヴァレンティは1968ねんのレイティング・システムの責任せきにんしゃであった。

メンバーが現在げんざいのすべてのメジャー・スタジオ出身しゅっしんしゃからなるMPEAとMPAAは、アメリカ映画えいが産業さんぎょうにおいて主要しゅよう勢力せいりょくでありつづけている。近年きんねんビデオDVD発達はったつでますます重要じゅうようになっている著作ちょさくけん著作ちょさくけん侵害しんがい行為こういという問題もんだいとく積極せっきょくてきんでいる。

2006ねん制作せいさくされたアメリカの「ノット・レイテッド アメリカ映倫えいりんのウソをあばけ!」(原題げんだいThis Film Is Not Yet Rated)というドキュメンタリー映画えいがなかで、MPAAの極端きょくたん秘密ひみつ主義しゅぎ批判ひはんされた。映画えいがなかで、レーティングをおこな審査しんさいんかんする一切いっさい情報じょうほう秘匿ひとくされているてん、レーティングの基準きじゅん不明瞭ふめいりょうであるてん、そしてレーティングされる予定よてい映画えいが過去かこにレーティングされた映画えいがとの比較ひかく自体じたい禁止きんしされているてんなどが指摘してきがなされた。この映画えいが公開こうかい、MPAAはレーティングの審査しんさいん情報じょうほう公開こうかいおこない、過去かこ作品さくひんとの比較ひかくみとめるようになった。なお、この映画えいがはMPAAからNC-17(18きん)としてレーティングされたため、この映画えいが監督かんとくつとめたカービー・ディックはレーティングを拒否きょひした。その結果けっか、この映画えいがはアメリカにあるおおくの映画えいがかん上映じょうえいされなかった。これは、アメリカのおおくの映画えいがかん劇場げきじょう連盟れんめい加盟かめいしており、そこの規程きていで、MPAAがレーティングした映画えいがしか上映じょうえいできないからである。

2017ねん6がつ、MPAAは、6だいスタジオ、NetflixAmazonふくむエンターテインメント企業きぎょう連合体れんごうたいであるAlliance for Creativity and Entertainment(ACE)のげを支援しえんした。ACEは、MPAAのリソースを活用かつようし、調査ちょうさ法的ほうてきみをつうじてオンライン海賊かいぞく行為こうい削減さくげん目指めざす。

2019ねん1がつ25にち映画えいがストリーミングサービスのNetflixがMPAAに加盟かめいした[2]

2019ねん9がつ協会きょうかい映画えいが・テレビ・ストリーミング業界ぎょうかいのグローバルな性質せいしつ反映はんえいしてブランドを更新こうしんし、正式せいしきに1994ねんから国際こくさいてき使用しようしてきた名称めいしょうであるMotion Picture Association(MPA)に変更へんこうした。

批判ひはん[編集へんしゅう]

MPAAは、以下いかとお批判ひはんされている。ただし、1と3のてんについては改善かいぜんされている。

  1. レーティングをおこな審査しんさいんかんする一切いっさい情報じょうほう秘匿ひとく
  2. レーティングの基準きじゅん不明瞭ふめいりょう
  3. レーティングされる予定よてい映画えいが過去かこにレーティングされた映画えいがとの比較ひかく自体じたい禁止きんし
  4. MPAAとアメリカぐんとのつながり[ちゅう 1]
  5. 映画えいがのレーティングを利用りようした興行こうぎょう会社かいしゃ優遇ゆうぐう政策せいさく独立どくりつけい映画えいがプロダクションの作品さくひんには、きびしいレーティングをする)。

メンバー[編集へんしゅう]

当初とうしょのMPAA会員かいいんは、「ビッグ8」とばれる映画えいがスタジオであった。パラマウント・ピクチャーズフォックス・フィルムロウズユニバーサル・ピクチャーズワーナー・ブラザースコロンビア・ピクチャーズユナイテッド・アーティスツRKOピクチャーズである[3]。その2ねん、ロウズはメトロ・ピクチャーズゴールドウィン・ピクチャーズルイス・B・メイヤー・プロダクションズ合併がっぺいし、メトロ・ゴールドウィン・メイヤーとなり、つづいて1935ねんにフォックス・フィルムと20世紀せいきピクチャーズ合併がっぺいし、20世紀せいきフォックスとなった。

ユナイテッド・アーティスツは、1956ねん視聴しちょうりつ問題もんだい一時いちじてき脱退だったいしたが、10ねんさい加盟かめいした[4]。1966ねんには、アライド・アーティスツ・ピクチャーズがオリジナルメンバーにくわわった[5]。そのの10年間ねんかんで、1975ねんアヴコ・エンバシー、1979ねんウォルト・ディズニー・スタジオがMPAAに新規しんき加盟かめいした[6]翌年よくねんフィルムウェイズがMPAAに加盟かめいしたが、1986ねんデ・ローレンティス・エンタテインメント・グループオライオン・ピクチャーズがMPAAに加盟かめいしたことで、アヴコ・エンバシーと交代こうたいした。

1995ねん時点じてんでMPAAのメンバーは、MGM(1981ねん合併がっぺいのユナイテッド・アーティスツをふくむ)、パラマウント・ピクチャーズ、ソニー・ピクチャーズ(1989ねん買収ばいしゅうのコロンビアとトライスター・ピクチャーズふくむ)、20世紀せいきフォックス、ユニバーサル・スタジオ、ウォルト・ディズニー・スタジオ、ワーナー・ブラザースであった[7]ターナー・エンターテインメントは1995ねんにMPAAに加盟かめいしたが、1996ねんタイム・ワーナー買収ばいしゅうされた。その結果けっか、20世紀せいきフォックスをふく21世紀せいきフォックスがディズニーに買収ばいしゅうされるまで、MPAAの加盟かめい企業きぎょうは2019ねんまでわらなかった[8]

Netflixは2019ねん1がつ新規しんきメンバーとして承認しょうにんされ、スタジオ以外いがいでははつ、ストリーミングサービスとしてははつ加盟かめいとなった。また、Netflixがくわわったことで、20世紀せいきフォックスがディズニーに買収ばいしゅうされたのちも、会員かいいんすう維持いじすることができた。MPAAは追加ついか会員かいいん募集ぼしゅう目指めざしている。

海外かいがい[編集へんしゅう]

日本にっぽん[編集へんしゅう]

すでにMPAAの認証にんしょうけている映画えいがも、日本にっぽん上映じょうえいする場合ばあい映画えいが倫理りんり機構きこう認証にんしょう必要ひつようである。また、別途べっと、「映倫えいりん」マークが映画えいがない表示ひょうじされる。MPAAのマークや認証にんしょう番号ばんごう日本にっぽん国内こくないでは効力こうりょくいが、削除さくじょされること上映じょうえいされている。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 米兵べいへいえがいた映画えいがひとぬシーンがあってもPGとレーティングされる。しかし、イラクにおける米兵べいへい活動かつどうじょうきょう実態じったいえがいた映画えいがガナー・パレス」は、暴力ぼうりょくシーンがすくないにもかかわらず、当初とうしょ、NC-17とレーティングされた。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ MPAA Rebrands to Reflect International Monicker”. Broadcasting & Cable (2019ねん9がつ18にち). 2019ねん9がつ18にち閲覧えつらん
  2. ^ Netflix、ストリーミング会社かいしゃとしてはじめてアメリカ映画えいが協会きょうかい加入かにゅう : 映画えいがニュース”. 映画えいが.com. 2021ねん8がつ26にち閲覧えつらん
  3. ^ Spring, Joel H. (1992-01-01) (英語えいご). Images of American Life: A History of Ideological Management in Schools, Movies, Radio, and Television. SUNY Press. ISBN 978-0-7914-1069-1. https://books.google.com/books?id=kvWRWJrRePAC&q=founding+member+mppda&pg=PA50 
  4. ^ Home” (英語えいご). AFI Catalog. 2021ねん8がつ26にち閲覧えつらん
  5. ^ Vaughn, Stephen (2006). Freedom and entertainment : rating the movies in an age of new media. Internet Archive. New York : Cambridge University Press. ISBN 978-0-521-85258-6. https://archive.org/details/freedomentertain0000vaug 
  6. ^ Nexis® - Sign In | LexisNexis”. signin.lexisnexis.com. 2021ねん8がつ26にち閲覧えつらん
  7. ^ Cook, David A. (2002-03-15) (英語えいご). Lost Illusions: American Cinema in the Shadow of Watergate and Vietnam, 1970-1979. University of California Press. ISBN 978-0-520-23265-5. https://books.google.com/books?id=HVygqYMVP2wC&q=mgm+united+artist 
  8. ^ Littleton, Cynthia (2019ねん3がつ19にち). “Disney Closes $71 Billion 21st Century Fox Deal” (英語えいご). Variety. 2021ねん8がつ26にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]