(Translated by https://www.hiragana.jp/)
NMDA型グルタミン酸受容体 - Wikipedia コンテンツにスキップ

NMDAがたグルタミン酸ぐるたみんさん受容じゅようたい

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

NMDAがたグルタミン酸ぐるたみんさん受容じゅようたい(エヌエムディーエーがたグルタミンさんじゅようたい)はグルタミン酸ぐるたみんさん受容じゅようたい一種いっしゅ記憶きおく学習がくしゅう、またのうきょ神経しんけい細胞さいぼうなどにふかかかわる受容じゅようたいであるとかんがえられている。グルタミン酸ぐるたみんさん受容じゅようたいサブタイプである AMPA受容じゅようたいカイニンさん受容じゅようたいことなり、NMDA(N-メチル-D-アスパラギンさん)がアゴニストとして選択せんたくてき作用さようすることから分類ぶんるいされた。

概要がいよう[編集へんしゅう]

中枢ちゅうすう神経しんけいけい中心ちゅうしん生体せいたいないひろ分布ぶんぷし、リガンドであるグルタミン酸ぐるたみんさん結合けつごうて、イオン透過とうかする、イオンチャネル共役きょうやくがた受容じゅようたいである。

リガンドを受容じゅようした NMDA受容じゅようたい透過とうかさせるイオンにはとく選択せんたくせいがなく、ナトリウムイオン (Na+) やカリウムイオン (K+) のほかに、カルシウムイオン (Ca2+) もとおすことがられている。

構造こうぞう[編集へんしゅう]

NR1 と NR2 のヘテロ2りょうからだ2セットからなる4つのサブユニットで構成こうせいされているとかんがえられており、ゆえにすべての NMDA受容じゅようたいは NR1サブユニットをふくむ(ただしいくつものスプライスバリアント報告ほうこくされている)。NR2サブユニットにはさらに NR2A、NR2B、NR2C、NR2D の4種類しゅるいクローニングされており、それぞれ生体せいたいないでの発現はつげん部位ぶい発現はつげん時期じきことなる。たとえば、NR2Dサブユニットは胎生たいせい選択せんたくてき発現はつげんするサブユニットであるとかんがえられている。なお、NR2サブユニットにグルタミン酸ぐるたみんさん結合けつごう部位ぶいがあるとかんがえられている。

近年きんねんあらたに NR3A、NR3B というふたつのサブユニットがクローニングされたが、これらはグルタミン酸ぐるたみんさん結合けつごう部位ぶいたず、NR1 とヘテロ多量たりょうたい形成けいせいしてイオンをとおす、興奮こうふんせいグリシン受容じゅようたいとしてはたらくという報告ほうこくもされている。

電気でんき生理学せいりがくてき特性とくせい[編集へんしゅう]

NMDA受容じゅようたいI-Vプロットのイメージ

NMDA受容じゅようたい通常つうじょう活性かっせい性質せいしつつ。これは、細胞さいぼうがいからのマグネシウムイオンがこの受容じゅようたい活動かつどう阻害そがいしているためである(マグネシウム・ブロック)。ただし、これはまく電位でんいおおきくまけときかぎられている。そのため、まく電位でんいせいであるか、−10~−20 mV 程度ていど範囲はんいにおいてはマグネシウムイオン阻害そがいがかからず、結果けっかとして受容じゅようたい電気でんき生理学せいりがくてき特性とくせいオームの法則ほうそくしたがう。まく電位でんいおおきくまけになるとマグネシウムイオンの阻害そがいがかかりはじめ、−60~−70 mV 程度ていど静止せいしまく電位でんい相当そうとうするまく電位でんいでは、ほとんど電流でんりゅうながさない。これらのことから、NMDAがた受容じゅようたいそと整流せいりゅうせいつ、としょうされる。また、刺激しげきおうじてなが電流でんりゅうは、AMPA受容じゅようたいくらべておそく、持続じぞくてきである。

アゴニスト・アンタゴニスト[編集へんしゅう]

NMDA受容じゅようたい(活性かっせい)

この受容じゅようたい構成こうせいする主要しゅようサブユニットひとつ、NR1 サブユニットにはグリシンを結合けつごうする部位ぶいがあり、グリシン結合けつごうしていない NMDAがた受容じゅようたいは、グルタミン酸ぐるたみんさん刺激しげきによって活性かっせいされない。また通常つうじょう細胞さいぼうがいマグネシウムイオン (Mg2+) によってチャネル活性かっせい阻害そがいされている(後述こうじゅつ)ため、だつ分極ぶんきょく刺激しげきなどで Mg2+はずしてやらないと活動かつどうできない。つまり、活動かつどうには2しゅのリガンドと Mg2+除去じょきょ必要ひつようえる。 したがって、NMDAがた受容じゅようたいは、シナプスぜん終末しゅうまつからのグルタミン酸ぐるたみんさんによる刺激しげきと、シナプスまくだつ分極ぶんきょく同時どうじこったとき活性かっせいされ、シナプスまくからカルシウムイオンの流入りゅうにゅうこす、シナプスぜん終末しゅうまつとシナプスまく神経しんけい活動かつどう同時どうじ検出けんしゅつ(coincidence detector)として機能きのうしている。

実際じっさい研究けんきゅう現場げんばにおいては細胞さいぼうがいの Mg2+ やグリシンの濃度のうど操作そうさすることでNMDA受容じゅようたい由来ゆらい神経しんけい活動かつどう操作そうさするということが頻繁ひんぱんおこなわれている。

選択せんたくてきアンタゴニストとしては競合きょうごう阻害そがいざいD-AP5アカンプロサート開口かいこうチャネル阻害そがいざい機能きのうてきアンタゴニストジゾシルピンメマンチンなどがられる。その機能きのうてきアンタゴニストとしてはミノサイクリンアリピプラゾールなどがある。また、合成ごうせいカンナビノイドるいWIN 55,212-2CP 55,940もNMDA阻害そがいしめされている。

おも薬剤やくざい結合けつごう部位ぶい親和しんわせい[編集へんしゅう]

薬剤やくざいめい略称りゃくしょう 結合けつごう部位ぶい 親和しんわせい(nM) 作用さよう
ミノサイクリン (MINO 不明ふめい (IC50)[1] 00010[1] 機能きのうてきアンタゴニストグルタミン酸ぐるたみんさん阻害そがい[1]
ミノサイクリン 不明ふめい (IC50)[2] 00020[2] 機能きのうてきアンタゴニスト(NMDA阻害そがい[2]
WIN 55,212-2 (英語えいごばん カンナビノイド受容じゅようたい 00020[3] 機能きのうてきアンタゴニスト(NMDA阻害そがい
CP 55,940 (英語えいごばん カンナビノイド受容じゅようたい 00020[3] 機能きのうてきアンタゴニスト(NMDA阻害そがい
ミノサイクリン 不明ふめい (in vivo)[4] 0000?[4] 機能きのうてきアンタゴニスト(PCP拮抗きっこう[4]
アリピプラゾール (ARP, APZ 不明ふめい (in vivo)[5] 0000?[5] 機能きのうてきアンタゴニスト[5]
ジゾシルピン (MK-801 開口かいこうチャネル阻害そがい (Ki) 00030.5[6] 機能きのうてきアンタゴニスト[6]
3-MeO-PCP (英語えいごばん PCP結合けつごう部位ぶい(Ki) 00020 アンタゴニスト
フェンサイクリジン (PCP PCP結合けつごう部位ぶい(Ki) 00059 アンタゴニスト
メトキセタミン (MXE別称べっしょう:3-MeO-2'-Oxo-PCE PCP結合けつごう部位ぶい(Ki) 00259 アンタゴニスト
フェンサイクリジン [3H]-MK-801 (Ki)[7] 00313[7] アンタゴニスト[7]
ケタミン (Ketamine PCP結合けつごう部位ぶい(Ki) 00659 アンタゴニスト
メマンチン (Memantine PCP結合けつごう部位ぶい (Ki)[8] 00670[8] アンタゴニスト[8]
メマンチン [3H]-MK-801 (IC50)[8] 01470[8] アンタゴニスト[8]
ケタミン R(-)からだ 開口かいこうチャネル阻害そがい[9]アロステリック機構きこう[9] (Ki) 01100[10] 機能きのうてきアンタゴニスト[10]
D-AP5 (英語えいごばん NMDA置換ちかん (Kd)[11] 01400[11] アンタゴニスト[11]
ハロペリドール (HPD, HAL NR1A/NR2B (IC50)[12] 02000[12] アゴニスト[5]
アトモキセチン (Atomoxetine 開口かいこうチャネル阻害そがい (IC50)[13] 03000[13] 機能きのうてきアンタゴニスト[13]
オセルタミビル (OT PCP結合けつごう部位ぶい (IC14)[14][15] 03000[14][15] アンタゴニスト[14][15]
オセルタミビルカルボキシレート (OTC PCP結合けつごう部位ぶい (IC21)[14][15] 03000[14][15] アンタゴニスト[14][15]
ケタミン S(+)からだ 開口かいこうチャネル阻害そがい[9]、アロステリック機構きこう[9] (Ki) 03200[10] 機能きのうてきアンタゴニスト[10]
デキストロメトルファン (DXM PCP結合けつごう部位ぶい (Ki)[16] 07253[16] アンタゴニスト[16]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c Tikka T (2001-4-15). “Minocycline, a tetracycline derivative, is neuroprotective against excitotoxicity by inhibiting activation and proliferation of microglia.”. en:The Journal of Neuroscience. 21 (8): 2580-8. PMID 11306611. http://www.jneurosci.org/content/21/8/2580.full. 
  2. ^ a b c Tikka TM (2001-6-15). “Minocycline provides neuroprotection against N-methyl-D-aspartate neurotoxicity by inhibiting microglia.”. en:Journal of Immunology. 166 (12): 7527-33. doi:10.4049/jimmunol.166.12.7527. PMID 11390507. http://www.jimmunol.org/content/166/12/7527.full. 
  3. ^ a b Zhuang SY (2005-1). “Cannabinoids produce neuroprotection by reducing intracellular calcium release from ryanodine-sensitive stores.”. en:Neuropharmacology. 48 (8): 1086-96. doi:10.1016/j.neuropharm.2005.01.005. PMID 15910885. http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0028390805000316. 
  4. ^ a b c Fujita Y (2008-2-15). “Phencyclidine-induced cognitive deficits in mice are improved by subsequent subchronic administration of the antibiotic drug minocycline.”. en:Progress in Neuro-Psychopharmacology & Biological Psychiatry. 32 (2): 336-9. doi:10.1016/j.pnpbp.2007.08.031. PMID 17884273. http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0278584607003193. 
  5. ^ a b c d Segnitz N (2011-9). “Effects of chronic oral treatment with aripiprazole on the expression of NMDA receptor subunits and binding sites in rat brain.”. en:Psychopharmacology. 217 (1): 127-42. doi:10.1007/s00213-011-2262-z. PMID 21484241. https://link.springer.com/article/10.1007/s00213-011-2262-z. 
  6. ^ a b (+)-MK 801 (Maleate) 詳細しょうさい情報じょうほう ナミキ商事しょうじ株式会社かぶしきがいしゃ
  7. ^ a b c Seeman P (2005-9). “Dopamine receptor contribution to the action of PCP, LSD and ketamine psychotomimetics.”. en:Molecular Psychiatry. 10 (9): 877-83. doi:10.1038/sj.mp.4001682. PMID 15852061. http://www.nature.com/mp/journal/v10/n9/full/4001682a.html. 
  8. ^ a b c d e f メマンチン塩酸えんさんしお 国際こくさい共通きょうつう資料しりょう(CTD)神経しんけい細胞さいぼう保護ほご作用さよう” (pdf). だいいち三共さんきょう株式会社かぶしきがいしゃ. 2016ねん8がつ3にち閲覧えつらん
  9. ^ a b c d Orser BA (1997-4). “Multiple mechanisms of ketamine blockade of N-methyl-D-aspartate receptors.”. en:Anesthesiology. 86 (4): 903-17. doi:10.1097/00000542-199704000-00021. PMID 9105235. http://anesthesiology.pubs.asahq.org/article.aspx?articleid=1948382. 
  10. ^ a b c d Hirota K (1996-10). “Ketamine: Its mechanism(s) of action and unusual clinical uses.”. en:British Journal of Anaesthesia. 77 (4): 441-4. doi:10.1093/bja/77.4.441. PMID 8942324. http://bja.oxfordjournals.org/content/77/4/441.long. 
  11. ^ a b c D-AP5 Item № 14539 CAS № 79055-68-8 w:Cayman Chemical
  12. ^ a b Ilyin VI (1996). “Subtype-selective inhibition of N-methyl-D-aspartate receptors by haloperidol.”. en:Molecular Pharmacology. 50 (6): 1541-50. PMID 8967976. http://molpharm.aspetjournals.org/cgi/pmidlookup?view=long&pmid=8967976. 
  13. ^ a b c Ludolph AG (2010-5). “Atomoxetine acts as an NMDA receptor blocker in clinically relevant concentrations.”. en:British Journal of Pharmacology. 160 (2): 283-91. doi:10.1111/j.1476-5381.2010.00707.x. PMC 2874851. PMID 20423340. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1476-5381.2010.00707.x/abstract. 
  14. ^ a b c d e f Hama R, Bennett CL. (2016-6-30). “The mechanisms of sudden-onset type adverse reactions to oseltamivir.”. en:Acta Neurologica Scandinavica.. doi:10.1111/ane.12629. PMID 27364959. http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/ane.12629/abstract. 
  15. ^ a b c d e f Hama R. (2016-9). “The mechanisms of delayed onset type adverse reactions to oseltamivir.”. Journal of Infectious Diseases. 48 (9): 651-60. doi:10.1080/23744235.2016.1189592. PMID 27251370. http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/ane.12629/abstract. 
  16. ^ a b c Boyer Edward (2013). “Antitussives and substance abuse.”. en:Substance Abuse and Rehabilitation. 4: 75-82. doi:10.2147/SAR.S36761. PMC 3931656. PMID 24648790. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3931656/. 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]

セリンラセミ酵素こうそ - のう科学かがく辞典じてん 上位じょうい中枢ちゅうすう神経しんけいでの因子いんしとされるD-セリンの合成ごうせい酵素こうそかんする解説かいせつ