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Prp8

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
Crystal Structure of Prp8
Prp8の結晶けっしょう構造こうぞう
識別子しきべつし
略号りゃくごう PRP8
略号りゃくごう USA2, DBF3, DNA39, RNA8, SLT21
PDB 4I43 (RCSB PDB PDBe PDBj)
UniProt P33334
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Prp8pre-mRNA processing 8)は、スプライソソーム触媒しょくばいコアに位置いちする高度こうど保存ほぞんされたタンパク質たんぱくしつであり、触媒しょくばいコアでしょうじる分子ぶんしてきさい編成へんせい中心ちゅうしんてき役割やくわりたしていることがあきらかにされている。スプライソソームは、イントロンエクソンふくんだ状態じょうたいpre-mRNAスプライシングになっているふく合体がったいである。スプライシングはmRNA翻訳ほんやくおこなわれるまえ必要ひつよう転写てんしゃ修飾しゅうしょくの1つであり、スプライソソームふく合体がったいによるイントロンの除去じょきょなどの過程かていることで成熟せいじゅくしたmRNA転写てんしゃ産物さんぶつ形成けいせいされる。Prp8はスプライソソームにおけるRNA触媒しょくばいのコファクターとして機能きのうしているという仮説かせつてられている[1]

ホモログ

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出芽しゅつが酵母こうぼのPrp8タンパク質たんぱくしつ系統けいとうめいはYHR165Cであり、PRP8遺伝子いでんしだいVIII染色せんしょくたい位置いちする。ヒトでは、Prp8タンパク質たんぱくしつ17ばん染色せんしょくたい英語えいごばんPRPF8英語えいごばん遺伝子いでんしにコードされ、この遺伝子いでんしは42エクソンから構成こうせいされる。Prp8タンパク質たんぱくしつおおきさは、生物せいぶつしゅによって230–280 kDaである。Prp8タンパク質たんぱくしつ配列はいれつかく生物せいぶつしゅあいだ高度こうど保存ほぞんされており、ヒトと酵母こうぼのPrp8ののアミノ酸あみのさん配列はいれつ同一どういつせいは61%である[1]

スプライシングにおける役割やくわり

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スプライシング機構きこう。Prp8は黒色こくしょくしめされている。

pre-mRNAスプライシングは2段階だんかいエステル交換こうかん反応はんのうによっておこなわれ、スプライソソームないヒドロキシルもとによる攻撃こうげきおこなわれる。これらの反応はんのうでは、イントロンの除去じょきょはスプライソソームによって触媒しょくばいされ、グループIIイントロン同様どうよう機構きこうもちいられている[2]。この過程かていには5種類しゅるいsnRNP関与かんよしており、RNAにくわえてやく50種類しゅるいタンパク質たんぱくしつがコアスプライソソームに寄与きよしている[2]。Prp8は、U5 snRNPのかくとなるタンパク質たんぱくしつである[3]

Prp8の構造こうぞう機能きのう研究けんきゅうひろもちいられている手法しゅほうは、免疫めんえきども沈降ちんこうウェスタンブロットである。Prp8の構造こうぞうには、RNA認識にんしきモチーフ、C末端まったん近傍きんぼうのMPN/JABユビキチン結合けつごうドメイン、そしてタンパク質たんぱくしつ細胞さいぼうかく輸送ゆそうするための標識ひょうしきとなるかく局在きょくざいシグナル(NLS)がふくまれている[4]。Prp8タンパク質たんぱくしつ(885–2413ばんざんもと)の結晶けっしょう構造こうぞうでは、レトロエレメントにコードされるぎゃく転写てんしゃ酵素こうそやIIがた制限せいげん酵素こうそ類似るいじしたドメインが密接みっせつ結合けつごうしていることがあきらかにされている。こうした構造こうぞうエレメントの存在そんざいにより、Prp8は活性かっせいされたレトロエレメントのぎゃく転写てんしゃ酵素こうそから進化しんか[5]自己じこスプライシング反応はんのうおこなっていた祖先そせん触媒しょくばいドメインがsnRNPへとわって機能きのうしているものであるとかんがえられている[2]

Aar2に結合けつごうしたPrp8の結晶けっしょう構造こうぞう

Prp8は、結合けつごうしたRNAやスプライシング反応はんのう基質きしつ適切てきせつなコンフォメーションの維持いじおおきな役割やくわりたしている。Prp8はの2つのU5 snRNP構成こうせいタンパク質たんぱくしつとともに、スプライソソームの活性かっせい触媒しょくばい活性かっせい中心ちゅうしん形成けいせい補助ほじょしている。GTP加水かすい分解ぶんかいによってPrp8のさい編成へんせいこされてスプライソソームからU1 snRNPとU4 snRNPが放出ほうしゅつされ、スプライソソームの触媒しょくばいコアが活性かっせいされるというモデルが提唱ていしょうされている[6]。Prp8はスプライソソームにおいて足場あしばタンパク質たんぱくしつのような機能きのうたし、相互そうご作用さようする基質きしつおおくのサブユニットに結合けつごうしている。クロスリンク実験じっけんでは、mRNAの3'スプライス部位ぶいと5'スプライス部位ぶい双方そうほう架橋かきょうされる[7]

変異へんい疾患しっかん

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欠損けっそんしょう

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ヒトでは、Prp8の変異へんい網膜もうまく色素しきそ変性へんせいしょう関係かんけいしている。この疾患しっかんでは網膜もうまくひかり受容じゅようたい変性へんせいによって視力しりょく喪失そうしつこされ、とく成人せいじん進行しんこうする。Prp8を原因げんいんとする場合ばあいにはつね染色せんしょくたい優性ゆうせいかた疾患しっかんであり、成熟せいじゅくmRNAの最終さいしゅうエクソンに位置いちする高度こうど保存ほぞんされた7つのアミノ酸あみのさん変化へんかこされている。酵母こうぼでの研究けんきゅうでは、このC末端まったん領域りょういき変異へんいによって、U5 snRNPの構成こうせい要素ようそであるBrr2英語えいごばんとの相互そうご作用さよう影響えいきょうしょうじることがしめされている[8]

さまざまなたねでのPrp8変異へんい表現ひょうげんがた

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せんちゅうCaenorhabditis elegansのPrp8は生殖せいしょく発生はっせい関係かんけいしている。RNAiによってPrp8をノックアウトしたせんちゅうでは高度こうどにん透明とうめいからだしょく突出とっしゅつしたかげもんがみられ、こうした表現ひょうげんがたはいずれも生殖せいしょく発生はっせい関係かんけいしている[9][10]。マウスではPrp8の変異へんいによって網膜もうまく色素しきそ変性へんせいしょう上述じょうじゅつ)と同様どうよう症状しょうじょうがみられる[11]酵母こうぼでは、Prp8の変異へんいによってU5 snRNPの成熟せいじゅく欠陥けっかんしょうじる[8]

出典しゅってん

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  1. ^ a b “Prp8 protein: at the heart of the spliceosome”. RNA 11 (5): 533–57. (May 2005). doi:10.1261/rna.2220705. PMC 1370742. PMID 15840809. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1370742/. 
  2. ^ a b c Cox, David L.; Nelson, Michael M. (2008). Lehninger Principles of Biochemistry (5th ed.). New York: W.H. Freeman. pp. 1037–1039. ISBN 9780716771081. https://archive.org/details/lehningerprincip00lehn_1/page/1037 
  3. ^ Whittaker, E.; Lossky, M.; Beggs, J. D. (1990-03). “Affinity purification of spliceosomes reveals that the precursor RNA processing protein PRP8, a protein in the U5 small nuclear ribonucleoprotein particle, is a component of yeast spliceosomes”. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 87 (6): 2216–2219. doi:10.1073/pnas.87.6.2216. ISSN 0027-8424. PMC 53657. PMID 2138328. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2138328. 
  4. ^ “Ubiquitin binding by a variant Jab1/MPN domain in the essential pre-mRNA splicing factor Prp8p”. RNA 12 (2): 292–302. (February 2006). doi:10.1261/rna.2152306. PMC 1370909. PMID 16428608. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1370909/. 
  5. ^ “Prp8, the pivotal protein of the spliceosomal catalytic center, evolved from a retroelement-encoded reverse transcriptase”. RNA 17 (5): 799–808. (May 2011). doi:10.1261/rna.2396011. PMC 3078730. PMID 21441348. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3078730/. 
  6. ^ PRP8 - U4/U6-U5 snRNP complex component PRP8”. WikiGenes. Collaborative Publishing. 2 November 2015閲覧えつらん
  7. ^ “Crystal structure of Prp8 reveals active site cavity of the spliceosome”. Nature 493 (7434): 638–43. (January 2013). Bibcode2013Natur.493..638G. doi:10.1038/nature11843. PMC 3672837. PMID 23354046. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3672837/. 
  8. ^ a b “prp8 mutations that cause human retinitis pigmentosa lead to a U5 snRNP maturation defect in yeast”. Nature Structural & Molecular Biology 14 (11): 1077–83. (November 2007). doi:10.1038/nsmb1303. PMC 2584834. PMID 17934474. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2584834/. 
  9. ^ “Functional genomic analysis of cell division in C. elegans using RNAi of genes on chromosome III”. Nature 408 (6810): 331–6. (November 2000). Bibcode2000Natur.408..331G. doi:10.1038/35042526. PMID 11099034. 
  10. ^ “Mutations in the pre-mRNA splicing factor gene PRPC8 in autosomal dominant retinitis pigmentosa (RP13)”. Human Molecular Genetics 10 (15): 1555–62. (July 2001). doi:10.1093/hmg/10.15.1555. PMID 11468273. 
  11. ^ “Three gene-targeted mouse models of RNA splicing factor RP show late-onset RPE and retinal degeneration”. Investigative Ophthalmology & Visual Science 52 (1): 190–8. (January 2011). doi:10.1167/iovs.10-5194. PMC 3053274. PMID 20811066. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3053274/. 

関連かんれん項目こうもく

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