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SN 2006gy

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
SN 2006gy
チャンドラにより撮影された、SN 2006gyとNGC 1260の核のX線写真。左下がNGC 1260の核で右上がSN 2006gyである。
チャンドラにより撮影さつえいされた、SN 2006gyとNGC 1260のかくのXせん写真しゃしん左下ひだりしたがNGC 1260のかくみぎじょうがSN 2006gyである。
星座せいざ ペルセウス
変光星へんこうせいがた SN
分類ぶんるい たい不安定ふあんていがた超新星ちょうしんせい/ごく超新星ちょうしんせい/Iaがた超新星ちょうしんせい?
発見はっけん
発見はっけん 2006ねん9がつ18にち
発見はっけんしゃ Robert Quimby

P. Mondol

位置いち
距離きょり 2おく3800まん光年こうねん
Template (ノート 解説かいせつ■Project

SN 2006gy2006ねん9月18にち発見はっけんされた、通常つうじょう超新星ちょうしんせいの10ばい以上いじょうあかるさでかがやいたちょうこう輝度きど超新星ちょうしんせい[1]。Robert QuimbyとP. Mondolによって最初さいしょ発見はっけんされ、そのチャンドラリック天文台てんもんだいW・M・ケック天文台てんもんだいなどをもちいておおくの天文学てんもんがくしゃチームによって観測かんそくされた。2007ねん5がつ7にちアメリカ航空こうくう宇宙うちゅうきょくはこの超新星ちょうしんせい詳細しょうさい分析ぶんせきデータをはじめて公開こうかいし、この超新星ちょうしんせいを「これまで記録きろくされたなかもっとあかるいほし爆発ばくはつである」とべた[ちゅう 1]

特徴とくちょう

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SN 2006gyの爆発ばくはつ様子ようす

SN 2006gyはペルセウス方向ほうこうのおよそ2おく3800まん光年こうねんはなれた銀河ぎんがNGC 1260なかあらわれた。この爆発ばくはつによって放出ほうしゅつされた運動うんどうエネルギーは1045 ジュール (J)だったと見積みつもられ、通常つうじょうIaがた超新星ちょうしんせい爆発ばくはつのエネルギー (1×1044 J ~ 2×1044 J) よりも1けたたかい。異常いじょうあかるさというてんわないものの、水素すいそせんっていたことから、IInがた超新星ちょうしんせい分類ぶんるいされた。

SN 2006gyの光度こうど曲線きょくせん

この超新星ちょうしんせいあかるさは、発見はっけんからおよそ70日間にちかん、12月のはじめまでつづき、その徐々じょじょ収束しゅうそくしていった。2007ねん5がつはじめ、あかるさは一般いっぱん超新星ちょうしんせいあかるさ程度ていどにまでちた。SN 2006gyは、肉眼にくがん観測かんそくできたSN 1987Aの100ばいあかるかったにもかかわらず、距離きょりが1400ばいとおかったため、望遠鏡ぼうえんきょう使つかわなければ観測かんそくできなかった。

理論りろんモデル

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発見はっけん当初とうしょからじゅうすう年間ねんかんは、太陽たいようすうひゃくばい質量しつりょう恒星こうせいたい不安定ふあんていがた超新星ちょうしんせいとなったシナリオや、太陽たいようすうじゅうばい質量しつりょうだい質量しつりょうぼしごく超新星ちょうしんせいとなったシナリオなど、だい質量しつりょうぼし単独たんどく爆発ばくはつとするせつ主流しゅりゅうであった[1]。それにたいして、2020ねん、マックスプランク天体てんたい物理ぶつりがく研究所けんきゅうじょ京都大学きょうとだいがく広島大学ひろしまだいがくとう共同きょうどう研究けんきゅうチームにより、「白色はくしょく矮星だい質量しつりょうぼしからなるれんほしけいにおいて、白色はくしょく矮星がだい質量しつりょうぼしまれて共通きょうつう外層がいそうつにいたったのち白色はくしょく矮星とだい質量しつりょうぼしのヘリウムかく合体がったいして超新星ちょうしんせい爆発ばくはつこる」というシナリオが提唱ていしょうされた[1][2]

たい不安定ふあんていがた超新星ちょうしんせい爆発ばくはつ

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ガンマ線がんませんによってたい生成せいせいきる様子ようす

爆発ばくはつしたほし太陽たいようやく150ばい質量しつりょうちょう巨星きょせいで、たい生成せいせいともなうタイプの超新星ちょうしんせい爆発ばくはつだったとかんがえられている。たい生成せいせいともな超新星ちょうしんせい爆発ばくはつ恒星こうせい質量しつりょう太陽たいようやく130から250ばいととてもおおきい場合ばあいにのみこる。ちょう巨星きょせいかくこうエネルギーのガンマ線がんませんはっしており、そのエネルギーはE=mc2しきによると電子でんし2ぶんのエネルギーよりもおおきい。このガンマ線がんません恒星こうせい磁場じば干渉かんしょうし、電子でんし陽電子ようでんしたい生成せいせいする。これにより、ガンマ線がんません平均へいきん伝播でんぱ距離きょりみじかくなり、恒星こうせい内部ないぶ温度おんど上昇じょうしょうがもたらされる。やがて反応はんのう暴走ぼうそうし、エネルギーはどんどんかくまれ、恒星こうせい表面ひょうめん内部ないぶはじめ、かくはさらに圧縮あっしゅくされる。この圧縮あっしゅくねつによりかく構成こうせいする物質ぶっしつ急激きゅうげきねつかく燃焼ねんしょう発生はっせいする。爆発ばくはつにより、恒星こうせいブラックホールすらのこさず、完全かんぜんばされたとされる。このような爆発ばくはつたい不安定ふあんていがた超新星ちょうしんせい爆発ばくはつばれる。

りゅうこつηいーたほしとの類似るいじせい

りゅうこつηいーたほしは、地球ちきゅうからの距離きょりやく7500光年こうねんというわれわれの銀河系ぎんがけいぞくするちょう巨星きょせいで、SN 2006gyがたい不安定ふあんていがた超新星ちょうしんせい爆発ばくはつであると仮定かていすれば、その前駆ぜんく天体てんたいおな程度ていど質量しつりょうつとかんがえられている。りゅうこつηいーたほしはSN 2006gyより32000ばい地球ちきゅうちかいため、おなじような超新星ちょうしんせい爆発ばくはつこせばそのあかるさは10おくばいおおきくなる。SN 2006gyの等級とうきゅうは15とうであったが、りゅうこつηいーたほし場合ばあい-7.5にもなるだろうと見積みつもられている。SN 2006gyの発見はっけんしゃ一人ひとりDave Pooleyはもしりゅうこつηいーたほしおなじように超新星ちょうしんせい爆発ばくはつこせば、地球ちきゅうではよるでもほんめ、ひるでもそのかりがえるほどにあかるくなるだろうとかたっている。天体てんたい物理ぶつり学者がくしゃMario Livioは、りゅうこつηいーたほし超新星ちょうしんせい爆発ばくはつはいつこってもおどろくにあたいしないが、地球ちきゅうからの距離きょりとおいため地球ちきゅうじょう生命せいめいへの影響えいきょうひくいとしている。

カルガリー大学だいがくのDenis LeahyとRachid Ouyedは、SN 2006gyはもともとクォークぼしだったと主張しゅちょうしている。

白色はくしょく矮星とだい質量しつりょうぼしとの合体がったいによるIaがた超新星ちょうしんせい爆発ばくはつ

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2009ねん川端かわばた弘治こうじ中心ちゅうしんとしたグループは、超新星ちょうしんせい爆発ばくはつ観測かんそくされてから200にちから400にちにかけてハワイ・マウナケアのすばる望遠鏡ぼうえんきょう微光びこう天体てんたい分光ぶんこう撮像さつぞう装置そうち (Faint Object Camera and Spectrograph, FOCAS) で観測かんそくしたSN 2006gyの後期こうきスペクトルのデータを発表はっぴょうした[3]。このスペクトルは、既知きちのどの超新星ちょうしんせい爆発ばくはつともことなっており、とくに「元素げんそ起因きいんする放射ほうしゃ輝線きせんはばせまいこと」、「8000-8500Åあたりに未知みち放射ほうしゃ存在そんざいすること」というてんで、当時とうじ理論りろん予測よそく一致いっちしないものであった[1][3]前者ぜんしゃ超新星ちょうしんせい爆発ばくはつ放出ほうしゅつ物質ぶっしつ膨張ぼうちょう速度そくど通常つうじょう超新星ちょうしんせい爆発ばくはつの10~15%しかないこと、後者こうしゃ放出ほうしゅつ物質ぶっしつ性質せいしつ既知きち超新星ちょうしんせい爆発ばくはつおおきくことなるてんがあることをしめしていた[1]

川端かわばたらのグループはこの後期こうきスペクトルの理論りろんさい解析かいせきおこない、未知みち放射ほうしゃ中性ちゅうせいてつ元素げんそによるものである可能かのうせい見出みいだした[1][2]理論りろん解析かいせきから、太陽たいよう質量しつりょうの0.3ばい以上いじょうてつ放出ほうしゅつされていれば同定どうてい放射ほうしゃ輝線きせん波長はちょう強度きょうど説明せつめいできることがしめされ、十分じゅうぶんりょうてつ元素げんそ放出ほうしゅつできるIaがた超新星ちょうしんせい爆発ばくはつである可能かのうせい示唆しさされた[1][2]超新星ちょうしんせい爆発ばくはつでは放出ほうしゅつ物質ぶっしつ高速こうそく膨張ぼうちょうすることで密度みつどひくくなるためてつ元素げんそはほとんどイオン化いおんかされてしまうが、SN 2006gyでは放出ほうしゅつ物質ぶっしつ速度そくどひくく、密度みつど通常つうじょう超新星ちょうしんせい爆発ばくはつより300ばいほどたかくなるため、中性ちゅうせいてつ元素げんそ存在そんざいできる[1][2]。さらに、Iaがた超新星ちょうしんせい放出ほうしゅつ物質ぶっしつ大量たいりょうほしあまね物質ぶっしつかって衝突しょうとつしながら膨張ぼうちょうした場合ばあい挙動きょどう光度こうど曲線きょくせん理論りろん計算けいさんしたところ、SN 2006gyの後期こうきスペクトルの性質せいしつ光度こうど光度こうど進化しんか一致いっちすることがしめされた[1][2]。この研究けんきゅう結果けっかから川端かわばたらの研究けんきゅうグループは、SN 2006gyはこれまで提唱ていしょうされてきただい質量しつりょうぼし超新星ちょうしんせい爆発ばくはつではなく、白色はくしょく矮星とだい質量しつりょうぼしれんぼし合体がったいによるIaがた超新星ちょうしんせい爆発ばくはつであるとすれば観測かんそく結果けっか矛盾むじゅんなく説明せつめいできる、としている[1][2]

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 2007ねん10がつ、QuimbyはSN 2005apがこの超新星ちょうしんせい記録きろくいて史上しじょうもっとあかるい超新星ちょうしんせいになったと発表はっぴょうしている。

出典しゅってん

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  1. ^ a b c d e f g h i j 宇宙うちゅうもっとあかるい爆発ばくはつ現象げんしょうなぞあきらかに -ちょうこう輝度きど超新星ちょうしんせい「SN2006gy」の正体しょうたいはIaがた超新星ちょうしんせいだった-」(PDF)『宇宙うちゅう科学かがくセンター』、広島大学ひろしまだいがく、2020ねん1がつ24にちhttps://www.hiroshima-u.ac.jp/system/files/134309/%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B9%EF%BC%88%E5%AE%87%E5%AE%99%E3%81%A7%E6%9C%80%E3%82%82%E6%98%8E%E3%82%8B%E3%81%84%E7%88%86%E7%99%BA%E7%8F%BE%E8%B1%A1%E3%81%AE%E8%AC%8E%E3%81%8C%E6%98%8E%E3%82%89%E3%81%8B%E3%81%AB%EF%BC%89.pdf 
  2. ^ a b c d e f Jerkstrand, Anders; Maeda, Keiichi; Kawabata, Koji S. (2020). “A type Ia supernova at the heart of superluminous transient SN 2006gy”. Science 367 (6476): 415-418. doi:10.1126/science.aaw1469. ISSN 0036-8075. 
  3. ^ a b Kawabata, Koji S. et al. (2009). “The Extremely Luminous Supernova 2006gy at Late Phase: Detection of Optical Emission from Supernova”. The Astrophysical Journal 697 (1): 747-757. arXiv:0902.1440. Bibcode2009ApJ...697..747K. doi:10.1088/0004-637X/697/1/747. ISSN 0004-637X.