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NEC Vシリーズ

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V30から転送てんそう

NEC Vシリーズは、日本電気にほんでんき(NEC、現在げんざいルネサス エレクトロニクス分離ぶんり)が製造せいぞうしたマイクロプロセッサーマイクロコントローラのシリーズである。

V30・V40・V50は16ビット8086互換ごかんのシリーズである。V60以上いじょうは、独自どくじ仕様しよう32ビットプロセッサのシリーズである。なお、VR3000などのMIPSプロセッサやV850などのV810系列けいれつのプロセッサの名称めいしょうもVからはじまるが直接ちょくせつのつながりはい。名称めいしょうVVLSI頭文字かしらもじったもので、Victory意味いみめられている[1]

総論そうろん

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日本電気にほんでんき(NEC)は、NEACつづいてACOSと、大型おおがたコンピュータを開発かいはつしてきたメーカであり、またトランジスタ、つづいて集積しゅうせき回路かいろ開発かいはつ製造せいぞうしてきた半導体はんどうたいメーカでもあった。NECのマイクロプロセッサ半導体はんどうたい部門ぶもんからはじまっているが、NECは世界せかい最初さいしょにマイクロプロセッサを開発かいはつした企業きぎょうのひとつである。世界せかい最初さいしょのマイクロプロセッサのひとつであるμみゅーPD707・708につづき、NECは1970年代ねんだいにはμみゅーCOMシリーズ開発かいはつ展開てんかいした。μみゅーCOMシリーズには、オリジナル仕様しようのもの、インテルけいおもとした(ザイログZ80ふくむ)互換ごかん製品せいひん類似るいじ仕様しようのもの、などがあった。

1980年代ねんだいはいると、NECはVシリーズを開発かいはつ展開てんかいした。まず、1980年代ねんだい前半ぜんはんより開発かいはつ販売はんばいしていた80888086互換ごかんモデルをCMOSするとともに、内部ないぶバスの本数ほんすうやして能力のうりょく向上こうじょうさせたV20・V30開発かいはつした[2]。また、これらのCPUをコアとして周辺しゅうへん回路かいろ集積しゅうせきしたV40・V50や、より高性能こうせいのうはかったV33とうへと展開てんかいした。しかし、V30は提訴ていそにより、充分じゅうぶん商機しょうきることができなかった。海外かいがいでは、8088コンパチでIBM PC互換ごかんPC/XT互換ごかん採用さいようされたV20のほうが、V30よりもメジャーである。

一方いっぽうで、より高性能こうせいのう目指めざした、独自どくじ仕様しようの32ビットCPU、V60・V70・V80開発かいはつした。また、Vシリーズ以外いがいマイクロコントローラ78Kシリーズを展開てんかいしている。

V10は欠番けつばんとなっている。これは当初とうしょCMOSばんZ80コード互換ごかんCPUであるμみゅーPD70008にV10の呼称こしょうあたえて販売はんばい計画けいかくしたものの、訴訟そしょう問題もんだいへの影響えいきょうかんがえて、Vシリーズから除外じょがいする方針ほうしんとしたため、結局けっきょくもちいられなかったためである[1]μみゅーPD70008のもととなったμみゅーPD780にはμみゅーCOM-82と命名めいめいして販売はんばいしたが、ザイログとセカンドソース契約けいやくをしていなかったためうったえられている(のち和解わかい)。

1990年代ねんだいにNECが開発かいはつした独自どくじ仕様しようのRISCがV810である。V805、V820、V821、V830、V850ファミリと展開てんかいした。

μみゅーPD70008A V10の表記ひょうきはない
  • V10 (μみゅーPD70008) ※実際じっさいにはその名称めいしょう正式せいしき発売はつばいされていないためVシリーズではない。Z80コード互換ごかんNMOS-CPUであるμみゅーPD780(μみゅーCOM-82)のCMOSばん。Aも-数字すうじもつかないもの(D70008C)は4MHzばん

V30けい

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V20(μみゅーPD70108)
V25(μみゅーPD70320)
V35(μみゅーPD70335)
V53A(μみゅーPD70236A)
V35+(μみゅーPD70335)
  • V20 (μみゅーPD70108) - データバス8bitばん、8088ピン互換ごかん
  • V25 (μみゅーPD70320,μみゅーPD70322) - V20をコアに、周辺しゅうへんI/Fを追加ついかした用途ようとけプロセッサ。また、レジスタセットが複数ふくすうバンクあり、コンテキストスイッチを高速こうそくおこなうことができる。機器ききけを意図いとして設計せっけいされている。μみゅーPD70320はμみゅーPD70322からROMをのぞいたもの。
  • V25+ (μみゅーPD70325) - V25のDMA転送てんそう速度そくど改善かいぜんし、高速こうそくしたもの。
V30(μみゅーPD70116)

V30 (μみゅーPD70116) は、NECが製造せいぞうした、インテル8086の(正確せいかくにはNECのμみゅーPD8086(μみゅーCOM-86)の)上位じょうい互換ごかんマイクロプロセッサである。外部がいぶバス8ビットのV20 (μみゅーPD70108) がある。V30はPC-9800シリーズほか同社どうしゃ輸出ゆしゅつけノートPCのw:NEC UltraLiteにも(V20ではなくV30が)採用さいようされた。V20はワープロ専用せんよう文豪ぶんごうミニ5の一部いちぶ機種きしゅや、一部いちぶのPC/XT互換ごかんなどに採用さいようされた。またV30・V20のセカンドソース製品せいひんには、ソニーCXQ70116・CXQ70108、シャープLH70116・LH70108、ザイログZ70116・Z70108 がある。

ハードウェアめんでは、オリジナルの8086にたいしてピン配置はいち互換ごかんである。信号しんごうのタイミングは、8086のクロックのデューティが1:2なのにたいし、V30は1:1と多少たしょうことなっており、これに付随ふずいしてのタイミングの定義ていぎことなる。ただし、実際じっさいにはそのままえても問題もんだいなくうごくことがおおかった。

  • 8MHzまでは、はら発振はっしんを2ふんしゅうするクロックジェネレータμみゅーPD71011のほかに、3ふんしゅうμみゅーPD71084も使用しようできる[3]ことから、1:2も許容きょようされている模様もよう。10MHz以上いじょう(8MHzちょう)はμみゅーPD71011指定していで、1:1のみ。最低さいていクロック周波数しゅうはすうは2MHzで、停止ていしすることはできない。
  • 8086のなかには沖電気おきでんきげん ラピスセミコンダクタ)のMSM80C86A-10(10MHzバージョン)のように、メーカやクロック周波しゅうはすうによってはデューティが1:1のもの(MSM80C86A-10データシート J2O0010-27-X3。これはクロックの停止ていし可能かのう)もあり、これらからの交換こうかん場合ばあいはさらに有利ゆうりだった。実際じっさいにJ-3100SS(元祖がんそDynaBook)のCPUをMSM80C86A-10からV30にえたれいもある。ただし、フラットパッケージ同士どうしでパッケージ形状けいじょうおよびピン配置はいち(MSM80C86A-10は56ピン、V30は52ピン)がことなるため、簡単かんたんではない。

ソフトウェアめんでは、バイナリコードレベルで80186上位じょうい互換ごかんであり、オリジナルの8086にたいしても上位じょうい互換ごかんである。

また、8086・80186にいいくつかの命令めいれい追加ついかされていた。V30専用せんようのアセンブリニーモニックは、8080からのながれをんだ8086のニーモニックとはことなっており、V30のニーモニックに対応たいおうしたアセンブラはほとんど存在そんざいしなかった[4]。また、80286とはことなる拡張かくちょうをした命令めいれいぐんは80286以後いごのインテルけいCPUではサポートされないため積極せっきょくてきもちいられず、市場いちばではおもに「高速こうそくな8086」となされて利用りようされていた。一方いっぽうで、一部いちぶのソフトウェアはV30固有こゆう拡張かくちょう命令めいれい使用しようしていたため、PC-9801シリーズではソフトウェア資産しさん継承けいしょう視点してんから、しばらくのあいだはV30とインテルけいCPUを両方りょうほう実装じっそうし、えて使用しようする方式ほうしきをとった。EPSON PCシリーズでは、V30を搭載とうさいしたのはPC-286Uや初期しょきのPC-286NOTEなどPC-286シリーズのごく一部いちぶ機種きしゅのみで、それ以外いがい機種きしゅでは、このようなソフトウェアのなかには正常せいじょう動作どうさしないものもあった。1990ねんのPC-9801DA/DS/DX以降いこう機種きしゅではPC-98GSなど一部いちぶのぞきPC-9800シリーズでもV30を省略しょうりゃくしたため同様どうよう問題もんだいかかえることになったが、そのころにはそのようなソフトがすくなくなっていたため、あまり表面ひょうめんしなかった。なお、NEC自身じしんはV30固有こゆう命令めいれい使用しよう推奨すいしょうしないむね案内あんないしていた[5]

CPU内部ないぶのバスを増強ぞうきょうしてデータ転送てんそう効率こうりつげるとともに、所要しょようクロックすうおお乗算じょうざん除算じょざん命令めいれいハードワイヤードし、命令めいれい実行じっこうようするクロックすう削減さくげんしたため、おおくの命令めいれいを8086のやく2/3のクロックすう実行じっこう可能かのうとなり、単純たんじゅんにCPUをえただけで、同一どういつ動作どうさクロックでかず%からすう10%高速こうそく演算えんざん処理しょりおこなうことができた。

マイクロコード著作ちょさくけんがセカンドソース契約けいやく問題もんだいとなり、NECは先手せんてって1984ねん、Vシリーズがインテルの著作ちょさくけん侵害しんがいしていないことを確認かくにんする訴訟そしょう債務さいむ存在そんざい確認かくにん訴訟そしょう)をこした。これにたいしてインテルが反訴はんそしたため裁判さいばん長引ながびいたが、5ねん1989ねんにV30はi8086の著作ちょさくけん侵害しんがいしていないとの判決はんけつた。ただし、その直接ちょくせつ理由りゆうは、8086に著作ちょさくけん表示ひょうじがなく、当該とうがい製品せいひんたいして著作ちょさくけんみとめられないからである。一方いっぽうで、マイクロコードにも著作ちょさくけんがあることが判示はんじされ、互換ごかんプロセッサの製造せいぞう困難こんなんとなった。86けいマイクロコード著作ちょさくけんへの抵触ていしょく回避かいひするために、完全かんぜんハードワイヤードされたV33けい移行いこうした。

V30はμみゅーPD8080AF(μみゅーCOM-80F)もとにした、8080エミュレーション機能きのう実装じっそうしていたのも特徴とくちょうひとつである。

V30独自どくじ命令めいれい

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V30は、80186とはバイナリ上位じょうい互換ごかんたもたれていたが、V30独自どくじ命令めいれい[6]80286実行じっこうすると無効むこうオペコード例外れいがい発生はっせいし、80386以降いこうではインテルがべつ命令めいれいてているため誤動作ごどうさする。

オペコード V30命令めいれい インテル命令めいれい
64 REPNC FS:
65 REPC GS:
66 FPO2 オペランドサイズプリフィクス
67 FPO2 アドレスサイズプリフィクス
0F 10, 11, 18, 19 TEST1 SSE命令めいれい
0F 12, 13, 1A, 1B CLR1 SSE命令めいれい
0F 14, 15, 1C, 1D SET1 SSE命令めいれい
0F 16, 17, 1E, 1F NOT1 SSE命令めいれい
0F 20 ADD4S MOV dest, CRn
0F 22 SUB4S MOV CRn, src
0F 26 CMP4S MOV TRn, src
0F 28 ROL4 SSE命令めいれい
0F 2A ROR4 SSE命令めいれい
0F 31 INS RDTSC
0F 39 INS
0F 33 EXT RDPMC
0F 3B EXT
0F FF BRKEM UD0

V30がマイクロコード著作ちょさくけんうったえられたことをけて、内部ないぶ論理ろんりのハードワイヤーおこない、マイクロコードの違法いほう使用しようをしていないことを明確めいかくにするとともに、マイクロコード実行じっこうにかかるオーバーヘッドを削減さくげんして、実行じっこう処理しょり速度そくど向上こうじょう・アドレス空間くうかん拡張かくちょうはかったものである。68pin-PLCCおよびPGA・74pin-QFPによる製品せいひん提供ていきょうされ、40pin-DIPパッケージの8086直接ちょくせつえて高速こうそくはかることはできなかった[7]のちに、V50のCPUコアをこのコアにえたV53も開発かいはつされている。

8080エミュレーションがはぶかれている[8]

  • V33 (μみゅーPD70136) - V30に最大さいだい16MBまでのメモリ空間くうかんあつかえるようアドレッシング機能きのう拡張かくちょうし、さらにオールワイヤードしたプロセッサ。プログラマブルなI/Oウェイト追加ついか機能きのうとう、8086ようソフトウェアをそのまま動作どうささせるための機能きのう豊富ほうふ実装じっそうされているが、アドレス信号しんごうせんを20ビットから24ビットへ拡張かくちょうした関係かんけいもあり、V30とはピン互換ごかんではい。8086互換ごかんプロセッサとしては、当時とうじの80286とほぼ同等どうとう処理しょり速度そくどつ。
  • V33A (μみゅーPD70136A) - 未定義みていぎ命令めいれいベクタとう、V33に存在そんざいしていた80286との互換ごかん部分ぶぶん修正しゅうせいしたもの。PC-98DO+やワープロ専用せんよう文豪ぶんごうミニ5SCに搭載とうさいされた。[1]

そののV30けい

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  • V30HL (μみゅーPD70116H) - 5Vで16MHz、または3Vで8MHz動作どうさ可能かのうな、V30の高速こうそくしょう電力でんりょくばんしょう電力でんりょく機能きのうすぐれ、周辺しゅうへんチップの消費しょうひコントロール機能きのうつ。その特長とくちょうかし、コンパクトがたデスクトップのPC-9801UF・PC-9801UR、ノートがたPC-9801NV・PC-9801NL搭載とうさいされた。クロックを停止ていし再開さいかいすることにより、動作どうさ停止ていし復帰ふっきできる。V20上位じょうい互換ごかんV20HL (μみゅーPD70108H) もある。
  • V30MT - ようのIPコア。V30MXの小型こがたしょう電力でんりょくばん。V30HL,V30MXとソフトウェア互換ごかん[9]
  • V30MX - ようのIPコア。V30HLの上位じょうい互換ごかんひん。V30HLのアドレスバス・データバスマルチプレクスを分離ぶんりし2クロック/バスサイクルを実現じつげん[9]。33MHz,4.3MIPS。V33けい同様どうよう、8080エミュレーションはない[10]
  • V30MZ - ようのIPコア。1クロック/バスサイクル、66MHz動作どうさ、0ウェイトで35MIPSの性能せいのう携帯けいたいゲームワンダースワンにも、カスタムされたものが搭載とうさいされた。V30HL,V30MXとソフトウェア互換ごかん。V33けい同様どうよう、8080エミュレーションはない[10]
  • V30MZC - ようのIPコア。V30MZにキャッシュメモリ4kiBを追加ついかし、50MHzで20MIPSの性能せいのう。キャッシュヒットは1クロック/バスサイクル、外部がいぶアクセスは4クロック[9]
  • V35 (μみゅーPD70330,μみゅーPD70332) - V30に周辺しゅうへんI/Fを追加ついかした用途ようとけプロセッサ。μみゅーPD70330はμみゅーPD70332からROMをのぞいたもの。
  • V35+ (μみゅーPD70335) - V35のDMA転送てんそう速度そくど改善かいぜんし、高速こうそくしたもの。
  • μみゅーPD9002 - V30(一部いちぶ命令めいれい[11]削除さくじょされた下位かい互換ごかん)モードとZ80上位じょうい互換ごかん動作どうさモードをつ。PC-88VA搭載とうさいされた[12]開発かいはつ当初とうしょV51とされていたが、μみゅーPD9002にまるとともに撤回てっかいされ、V51はμみゅーPD70280(後述こうじゅつ)の呼称こしょうとなった。
V40(μみゅーPD70208)

V20・V30をコアに、8086よう周辺しゅうへんチップを集積しゅうせきしたマイクロコントローラ既存きそん8086応用おうよう機器ききにて、複数ふくすうのチップをまとめてえる用途ようとけ。PC-98LTPC-98HA使用しようされている。内蔵ないぞうされている周辺しゅうへん回路かいろ以下いかとおり。

クロックジェネレータ
入力にゅうりょくされたクロックの周波数しゅうはすうを2ふんしゅうし、CPU内部ないぶ外部がいぶそれぞれへ供給きょうきゅうする。
プログラマブル・ウェイト制御せいぎょユニット
速度そくどおそI/Oメモリ使用しようするさいきのバスタイミングを延長えんちょうするためのもの。
リフレッシュ制御せいぎょユニット
DRAM使用しようするさい自動的じどうてきにリフレッシュをおこなってくれるもの。
タイマ/カウンタユニット(μみゅーPD71054サブセット)
タイマおよびカウンタ。16ビットのカウンタを3ほん内蔵ないぞうしている。
シリアル制御せいぎょユニット(μみゅーPD71051サブセット)
調歩ちょうほ同期どうき方式ほうしきのシリアル通信つうしんおこなう。
制御せいぎょユニット(μみゅーPD71059サブセット)
8ほんまでのハードウェアみを調停ちょうていし、ひとつずつCPUにつたえる。外部がいぶμみゅーPD71059を追加ついかしてカスケード接続せつぞくとすることもできる。
DMA制御せいぎょユニット(μみゅーPD71071[13]サブセット)
4チャンネルのDMAユニット。これにより高速こうそくI/O-メモリあいだ転送てんそう実現じつげんできる。

なおV40・V50をベースとしたカスタムCPUもいくつか存在そんざいしており、PC-88VA搭載とうさいされたμみゅーPD9002(V50にZ80エミュレーション機能きのう追加ついかしたもの)などが代表だいひょうてき存在そんざいである。

  • V40 (μみゅーPD70208) - V20に8086ファミリ互換ごかん周辺しゅうへんI/Fを追加ついかした用途ようとけプロセッサ。コアをV20HLにしたV40HL (μみゅーPD70208H)もある。
  • V41 (μみゅーPD70270) - V40HLと同様どうようのコンセプトで、V20HLにPC/XTけの周辺しゅうへん回路かいろ内蔵ないぞうしたもの。海外かいがいでは、実際じっさいにこれを使つかったPC/XT互換ごかんた。
  • V50 (μみゅーPD70216) - V30に8086ファミリ互換ごかん周辺しゅうへんI/Fを追加ついかした用途ようとけプロセッサ。コアをV30HLにしたV50HL (μみゅーPD70216H)もある。HANDY98ことPC-98HAで使つかわれた。
  • V51 (μみゅーPD70280) - V41と同様どうようで、コアがV30HLのもの。μみゅーPD9002とはコアがV30けいであり周辺しゅうへん回路かいろ内蔵ないぞうしている以外いがい関係かんけいはない。
  • V53 (μみゅーPD70236) - V50のコアをV33に変更へんこうしたもの。
  • V53A (μみゅーPD70236A) - V53のコアをV33Aに変更へんこうしたもの。
  • V55PI (μみゅーPD70433) - 80186相当そうとう命令めいれいセットとペリフェラルを集積しゅうせきしたプロセッサ。

  • V20・V30よう数値すうちデータプロセッサ (μみゅーPD72091 V30NDP) - 数値すうち演算えんざんコプロセッサ(FPU)。Intel 80188・80186を接続せつぞくしたさい動作どうさ考慮こうりょはされていないため、これらを接続せつぞくしたさいには8087とは一部いちぶ動作どうさことなる。これを回避かいひするには別途べっと補助ほじょ回路かいろ必要ひつようである[1]。NECにて対応たいおうするゲートアレイが販売はんばいされている。なお、V30を搭載とうさいしたPC-9800シリーズではほんコプロセッサは採用さいようされず、タイミングとう調整ちょうせいしたうえで8087を接続せつぞくする手法しゅほうられていたため、V30を理想りそうてきなタイミングで動作どうささせておらず、パフォーマンスは理想りそう条件じょうけんよりおとる。
VシリーズのファミリLSI μみゅーPD71055 パラレルI/Oの8255相当そうとう

周辺しゅうへん

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  • その、ファミリLSIがある。オリジナルがNMOSひん(れい i8255A)でもバイポーラひん(れい i8284A)でもCMOSされている。型番かたばんはi8251A→μみゅーPD71051、i8255A→μみゅーPD71055など、8080・8086ファミリLSIにならったものとなっている。

V60けい

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V70 (μみゅーPD70632GD-20) ジャレコ メガシステム32実装じっそうれい

独自どくじ仕様しようの32ビットマイクロプロセッサとして開発かいはつされた。32ビットレジスタを32ほんち、まった独自どくじ命令めいれいセットであり、非常ひじょう豊富ほうふアドレッシングモードった直交ちょっこうせいたかいアーキテクチャが特徴とくちょうである。また、複数ふくすうのCPUを並列へいれつ接続せつぞくして相互そうごかんすることで、フォールトトレラントシステム構成こうせいすることができた。はじめて浮動ふどう小数点しょうすうてん演算えんざんユニットを1チップに内蔵ないぞうした。内部ないぶ32ビット構成こうせい外部がいぶ16ビットバスのV60と、内部ないぶ構成こうせい外部がいぶバスともに32ビット構成こうせいのV70・V80がある。高信頼こうしんらいせいシステムを構成こうせいできる利点りてんかしてNTT交換こうかん使用しようされた。一部いちぶ業務ぎょうむようゲーム基板きばんれい セガ・システム32)のCPUとしても採用さいようされていたが、その採用さいよう理由りゆうは「市場いちばにほとんど出回でまわっていないCPUのため、ぎゃくアセンブルや違法いほうコピーの対策たいさくになる」という、いささかうしきなものだった[12]。またV60・V70にはV30エミュレーションモードがあり、旧来きゅうらいのソフトウェア資産しさん継承けいしょう可能かのうとなっている。日本にっぽんインターメトリックス英語えいごばんからのコンパイラInterC V60がV60・V70をサポートしていた[14]

  • V60 (μみゅーPD70616) - 内部ないぶ32ビット、外部がいぶバス16ビットの32ビットCPU。まった独自どくじ命令めいれいセットであり、非常ひじょう豊富ほうふアドレッシングモードった直交ちょっこうせいたかいアーキテクチャが特徴とくちょうである。また、はじめて浮動ふどう小数点しょうすうてん演算えんざんユニットを1チップに内蔵ないぞうした。V30をエミュレートするモードもち、ソフトウェア資産しさん継承けいしょう考慮こうりょしている。また、監視かんしモードをち、2のV60をわせてエラー検出けんしゅつシステムを、3以上いじょうわせて多数決たすうけつによるフォールトトレラントシステムを構成こうせいすることが可能かのうであり、高信頼こうしんらいせいシステムへの応用おうよう目指めざした。NECからは、PC-9800シリーズよう拡張かくちょうボードとセットでUNIX販売はんばいされていた。セガの業務ぎょうむよう基板きばんSystem32やModel1で使用しようされた。のメーカーでも海賊版かいぞくばんゲーム基板きばん対策たいさく使用しようされた。文豪ぶんごうミニ5SCではアウトラインフォント展開てんかいプロセッサとして採用さいようされている[1]TRONCHIP類似るいじせいがあると指摘してきするものもいるが、レジスタの本数ほんすうちがい、命令めいれいちょうがバイト可変長かへんちょうか16ビット単位たんい可変長かへんちょうかなど相違そういてんおおく、オペランド指定してい直交ちょっこうせいとか典型てんけいてきなCISCであることなどの類似るいじてんはこの2しゃかぎられるものではない。
  • V70 (μみゅーPD70632) - V60を完全かんぜん32ビットしたCPU。ITRONひとしのRTOSが実装じっそうされた。NTTの交換こうかんまれたほか、業務ぎょうむようゲーム基板きばん搭載とうさいされたり、パーソナルコンピュータX68000よう拡張かくちょうCPUボードに搭載とうさいされるといったおう用例ようれいがある。H-IIAロケット誘導ゆうどう制御せいぎょようコンピュータにも使つかわれている[1]
  • V80 - V60/V70の上位じょうい機種きしゅにあたり、命令めいれい/データキャッシュをかく1K バイト内蔵ないぞう、7だんパイプライン制御せいぎょ方式ほうしき分岐ぶんき予測よそく機構きこう仮想かそう記憶きおく管理かんり機構きこう数値すうち演算えんざんプロセッサμみゅーPD72691専用せんようバスをち、集積しゅうせき93まんトランジスタ、放熱ほうねつき280ピンPGAパッケージ[15]。CISCけいとしては最後さいごのVシリーズ。V30エミュレーション機能きのう削除さくじょ一般いっぱんにはほとんど出回でまわらなかった。これ以降いこうのNECの32ビット以上いじょうのCPUはRISCの、MIPSアーキテクチャのVRシリーズと、後述こうじゅつのV800シリーズに移行いこう

V810けい

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V810 (uPD70732GD-25)
PC-FXGA実装じっそうれい
NINTENDO64(1996ねん発売はつばい)のCPU、VR4300カスタム

1990年代ねんだいはいって、V810 (μみゅーPD70732) がリリースされた。型番かたばんじょうはVがいているが、直接ちょくせつのつながりはないぜんべつのアーキテクチャにもとづくRISCである。Hennessy-Pattersonほんられるような典型てんけいてきな5だんパイプライン構成こうせいる。

既存きそんようCPUシリーズの代替だいたいあるいは後継こうけい機種きしゅとして用途ようと使用しようされている。また、V810は日本電気にっぽんでんきホームエレクトロニクスせい家庭かていようゲームPC-FX任天堂にんてんどうせいバーチャルボーイBrainPad TiPOにももちいられている。

V830はPDAなどにてきしたV810/V850よりも高性能こうせいのうなCPUで、NECのワープロ「文豪ぶんごう JXS300」(1997ねん発売はつばい)などに搭載とうさいされていたが、はあまり採用さいようれいく、とうのNECでも自社じしゃのPDAにはV830を採用さいようしていなかった。

V850はルネサスエレクトロニクスせい半導体はんどうたい製品せいひんのうち、たとえば記録きろくがたDVD/HD DVD/BDドライブけチップセットであるSCOMBOシリーズのCPU、あるいはSCOMBOシリーズにぞくするワンチップコントローラの内蔵ないぞうCPUコアとして提供ていきょうされており、これらはソニーオプティアークパイオニアといったメーカーによる光学こうがくドライブ各種かくしゅ採用さいようされ大量たいりょう使用しようされている。ほかにも家電かでんやFA機器ききのサーボモーター、乗用車じょうようしゃよう内燃ないねん機関きかん各種かくしゅ駆動くどうようモーター制御せいぎょ、その各種かくしゅ多様たようなオペレーションに人知ひとしれず大量たいりょう採用さいようされている。

一部いちぶアセンブラの書式しょしきがV60 - V80にせてあり、従来じゅうらいV60 - V80けソフトウェアを開発かいはつしていたプログラマが学習がくしゅうしやすいように配慮はいりょされていた。

VRファミリはPDAなどにてきした高性能こうせいのうなMIPSけいCPUで、1996ねん発売はつばいのゲーム・NINTENDO64に採用さいようされて1000まん単位たんい量産りょうさんされ、1997ねんには競合きょうごうセガサターンに搭載とうさいされたSHマイコンの出荷しゅっかりょう上回うわまわり、MIPSアーキテクチャのCPUはRISC CPUとして世界せかいだい1出荷しゅっかりょうほこった。またPDAけとしても、NECのPDA「モバイルギア」シリーズのほか、カシオ計算機かしおけいさんきが2001ねん発売はつばいしたPDA「カシオペア ラジェンダ BE-500」(VR4131)などでも採用さいようされていた。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b c d e f 月刊げっかんアスキー別冊べっさつ よみがえるPC-9801伝説でんせつ 永久えいきゅう保存ほぞんばん だい2だん 2007ねん4がつ9にち初版しょはん 「NEC V30開発かいはつ秘話ひわ」 (ISBN 978-4-7561-4883-4)
  2. ^ 8086/8088を単純たんじゅんにCMOSした製品せいひんはNECせいには存在そんざいしない
  3. ^ μみゅーPD70116データシート ドキュメントNo. IC-6660FおよびμみゅーPD70108データシート ドキュメントNo. IC-1827B・IC-6659D。この記述きじゅつμみゅーPD70108H/μみゅーPD70116Hデータシート ドキュメントNo. IC-3552Aからは削除さくじょされている。
  4. ^ NECのアセンブラ「インターツール」(RA70116-I)などのほか、PC-88VAのOS「PC-Engine」内蔵ないぞうのデバッガがVシリーズのニーモニックだった
  5. ^ 一応いちおう、V30と80286の時点じてんでは、おのおのの拡張かくちょう命令めいれいのコードはかちわないようになっていたが、80386では一部いちぶ拡張かくちょう命令めいれい(MOV CR0など)がV30の動作どうさことなる拡張かくちょう命令めいれい(ADD4Sなど)とかちっている。そのため、そのような命令めいれいもちいたV30ようソフトウェアは80386では誤動作ごどうさする
  6. ^ V30 16-BIT MICROPROCESSOR
  7. ^ PC-9800シリーズようV33アクセラレータはあった(拡張かくちょうスロットに挿入そうにゅうするボードがたのエム・エス・アイせいMIG98およびM3)
  8. ^ 16ビット Vシリーズ ユーザーズ・マニュアル 命令めいれいへん (ドキュメントNo. U11301JJ5V1UMJ1) 1ページおよび 1-1
  9. ^ a b c SEMICONDUCTOR SELECTIONGUIDE April 1999 (ドキュメントNo. X10679EJHV0SG00(17th wdition))
  10. ^ a b V30MZユーザーズ・マニュアル(暫定ざんてい) (ドキュメントNo. A13761JJ1V2UM00)
  11. ^ 80186互換ごかんのINM/OUTM(INSB/INSW/OUTSB/OUTSWに相当そうとう)とV30の特徴とくちょうのINS/EXT(ビット操作そうさ命令めいれい)の4しゅ命令めいれい
  12. ^ a b もう一度いちどCPUについてかんがえてみよう”. archive.org (1999ねん5がつ14にち). 2021ねん9がつ1にち閲覧えつらん
  13. ^ µPD71071 DMA Controller”. p. 940(5g1). 2024ねん2がつ20日はつか閲覧えつらん
  14. ^ インターフェース 1993ねん12がつごう, p. 65.
  15. ^ インターフェース 1989ねん3がつごう, p. 308.

参考さんこう文献ぶんけん

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