伊豆いず（読よみ）イズ

静岡しずおか県けん東部とうぶ，伊豆半島いずはんとうの中央ちゅうおう部ぶにある市し。2004年ねん4月がつ天城湯ヶ島あまぎゆがしま（あまぎゆがしま），修善寺しゅぜんじ（しゆぜんじ），土肥どい（とい），中伊豆なかいず（なかいず）の4町まちが合体がったいして成立せいりつした。人口じんこう3万まん4202（2010）。

天城湯ヶ島あまぎゆがしま

伊豆いず市し中央ちゅうおう部ぶの旧きゅう町まち。旧きゅう田方たがた郡ぐん所属しょぞく。人口じんこう7960（2000）。伊豆半島いずはんとう中央ちゅうおう部ぶに位置いちし，狩野川かのがわの上うえ流域りゅういきを占しめる。東ひがし・南みなみ・西にしの三さん方ぽうを天城あまぎ連山れんざんに囲かこまれて，町まちの大だい部分ぶぶんは山林さんりんで占しめられ，杉すぎ，ヒノキなどの良材りょうざいを産出さんしゅつするほか，ワサビ，シイタケの特産とくさんがある。狩野川かのがわと支流しりゅうの沖積ちゅうせき低地ていちは水田すいでんや果樹かじゅ園えんに利用りようされているが，耕地こうちが少すくなく経営けいえい規模きぼが小ちいさいため，年ねん々農業のうぎょうの地位ちいは低下ていかしている。富士ふじ箱根はこね伊豆いず国こく立たて公園こうえんに属ぞくし，狩野川かのがわの清流せいりゅうに臨のぞむところに温泉おんせんが湧出ゆうしゅつし，湯ゆヶ島とう，嵯峨さが沢さわ，吉奈よしな，月ヶ瀬つきがせ，船原ふなはらなどの温泉おんせんが点在てんざいする温泉郷おんせんきょうになっている。湯ゆヶ島とう温泉おんせんは単純たんじゅん泉いずみ，セッコウ泉いずみで，泉いずみ温あつしは50℃。木下きのした杢太郎もくたろう，若山わかやま牧水ぼくすい，井上いのうえ靖やすしらの文人ぶんじんに愛あいされ，川端かわばた康成やすなりの《伊豆いずの踊子おどりこ》は湯ゆヶ島とうで執筆しっぴつされた。近世きんせい初期しょきに金山かなやまの開発かいはつが行おこなわれ，持越もちこし鉱山こうざんでは1978年ねんまで金かねの精錬せいれんが行おこなわれた。天城あまぎ原生げんせい林りんにおおわれ，野鳥やちょうも多おおい南部なんぶ一帯いったいは〈昭和しょうわの森もり〉に指定していされ八丁池はっちょういけ，浄きよし蓮の滝たきの名勝めいしょうを中心ちゅうしんに観光かんこう開発かいはつが進すすめられている。

修善寺しゅぜんじ

伊豆いず市し北端ほくたんの旧きゅう町まち。旧きゅう田方たがた郡ぐん所属しょぞく。人口じんこう1万まん6830（2000）。伊豆半島いずはんとう北部ほくぶに位置いちし，伊豆箱根鉄道いずはこねてつどうが通つうじる。町まちの中央ちゅうおうを狩野川かのがわが北きた流ながし，大見おおみ川がわ，桂川かつらがわが中心ちゅうしん部ぶで狩野川かのがわに合流ごうりゅうする。桂川かつらがわの渓谷けいこく沿ぞいにある修善寺しゅぜんじ温泉おんせん（弱じゃく食塩しょくえん泉いずみ，単純たんじゅん泉いずみ。30～82℃）を中心ちゅうしんに発展はってんした温泉おんせん町まちで，伊豆山いずさんの走はし湯ゆ（はしりゆ），伊豆長岡いずながおかの古奈こな（こな）温泉おんせんとともに伊豆いず三湯みゆと呼よばれた。弘法大師こうぼうだいしの発見はっけんと伝つたえられる独鈷とっこ（とつこ）の湯ゆ，曹洞宗そうとうしゅうの古刹こさつ（こさつ）修禅寺しゅぜんじ，源範頼みなもとののりより・頼よりゆき家かの史跡しせきなどがある。富士ふじ箱根はこね伊豆いず国立こくりつ公園こうえんに属ぞくし，西部せいぶの達磨山だるまやま付近ふきんには西伊豆にしいずスカイライン（2004年ねん無料むりょう開放かいほう）が走はしり，キャンプ場じょう，ゴルフ場じょうなどが開発かいはつされている。東部とうぶの大野おおのにサイクルスポーツセンター，瓜生野うりうのに江戸えど初期しょき大久保おおくぼ長安ながやすが開ひらき，1965年ねんに閉山へいざんした大仁おおひと（おおひと）金山かなやま跡あとがある。耕地こうちは少すくなく，酪農らくのうやミカン，シイタケの栽培さいばいが行おこなわれる。

土肥どい

伊豆いず市し西端せいたんの旧きゅう町まち。旧きゅう田方たがた郡ぐん所属しょぞく。人口じんこう5478（2000）。伊豆半島いずはんとう西海岸にしかいがんの北部ほくぶに位置いちし，西にしは駿河湾するがわんに臨のぞむ。北きた，東ひがし，南みなみの三さん方ぽうを達磨山だるまやまなどの山々やまやまに囲かこまれ，町まち域いきの大だい部分ぶぶんを山林さんりんが占しめる。土肥どい温泉おんせん（セッコウ泉いずみ，57℃）を中心ちゅうしんにした温泉おんせんと海水浴かいすいよくの町まちで，温泉おんせんは江戸えど初期しょきに土肥どい金山かなやまの採掘さいくつ中ちゅう湧出ゆうしゅつし，〈まぶの湯ゆ〉と呼よばれた。1577年ねん（天正てんしょう5）発見はっけんされた金山かなやまは慶長けいちょう年間ねんかん（1596-1615）に代官だいかん大久保おおくぼ長安ながやすの管理かんりに置おかれ，慶長けいちょう小判こばんの地金じがねも精錬せいれんされたが，1690年ねん（元禄げんろく3）に休山やすみやまとなった。1917年ねん土肥どい金山かなやま会社かいしゃの手てで再開さいかいされたが，68年ねん閉山へいざんした。かんきつ類るいやビワなどの果樹かじゅ，カーネーションなどの花卉かき，野菜やさいなどの園芸えんげい農業のうぎょうが盛さかんであり，土肥どい港こうを中心ちゅうしんに沿岸えんがん漁業ぎょぎょうも行おこなわれる。土肥峠といとうげ（585m）を越こえて国道こくどう136号線ごうせんが通つうじ，沼津ぬまづ港こうとの間あいだに船便せんびんもある。

中伊豆なかいず

伊豆いず市し東端ひがしばたの旧きゅう町まち。旧きゅう田方たがた郡ぐん所属しょぞく。人口じんこう8313（2000）。伊豆半島いずはんとう中央ちゅうおう部ぶに位置いちする。町まちの南部なんぶは伊豆いず地方ちほう最高峰さいこうほうの万三郎岳ばんざぶろうだけ（1405m）を主峰しゅほうとする天城あまぎ連山れんざんがそびえ，年間ねんかん2500mm以上いじょうの多雨たう地帯ちたいであり，天城あまぎ国有こくゆう林りんが広ひろがる。町まちの中央ちゅうおう部ぶを大見おおみ川がわが北きた流ながして狩野川かのがわに注そそぐ。町まち域いきの大だい部分ぶぶんは山林さんりんで，ワサビ，シイタケが栽培さいばいされ，大見おおみ川がわと支流しりゅうの低地ていちでは稲作いなさくが行おこなわれている。伊豆いずスカイラインの開通かいつう（1964），白岩しらいわ（しらいわ）温泉おんせん（単純たんじゅん泉いずみ，セッコウ泉いずみ，43℃）の湧出ゆうしゅつ（1963）などもあって観光かんこう開発かいはつも進すすんでいる。大見おおみ川下かわしも流域りゅういきには縄文じょうもん中ちゅう・後期こうきの上白岩かみしらいわ遺跡いせき（史ふみ）があり，環状かんじょう列石れっせき遺構いこうをもつ。
執筆しっぴつ者しゃ：萩原はぎはら 毅あつし