lynch.|結成15周年に送る、中毒性を帯びた “究極”のアルバム

類似るいじおそれない

──興味深きょうみぶかいのは、斬新ざんしんきょくというよりは、これまでにもあったタイプのきょく進化しんかけいべそうなものが目立めだつことです。そういった自覚じかく当事とうじしゃとしてもありますか?

葉月(Vo)

葉月はづき あります。というか、やっぱりそこに気付きづかれましたか!

──ええ。そこでおもうのは、自分じぶんつくったきょくについてOKを判断はんだんむずかしかったのではないかということなんです。「こういうかんじのきょく過去かこにもあったな」とおもってしまうと、自分じぶん自身じしんにダメしをしてしまいがちなのがアーティストの性分しょうぶんでもあるはずだし。

葉月はづき そこなんですよね。ただ、じつはそこについては去年きょねん一昨年いっさくねん段階だんかいでもうあきらめてました。あるインタビューでASKAさんが発言はつげんしていた「これはまえにもあったよな、とって自分じぶんきょくをボツにするのはおろかなことだ」という言葉ことば印象いんしょうのこっていて。それが自分じぶんってものなんじゃないかと。その言葉ことばになるほどねとおもわされて。たしかにそれを理由りゆうにおぞうりにしちゃうのはもったいないし、そこがきでlynch.をいてくれてるひとたちにとっては、「これはまえにもあった」というのは結局けっきょく「これはlynch.らしい」ってことでもあるはず。だからそれをおそれる必要ひつようはないんだなと。しかも原曲げんきょくとしてはおなじようなタイプのものであったとしても、そこからとおざけていく作業さぎょうはできるわけです。基本きほんてきおなじタイプだとしても、さらに「これはいいね」という状態じょうたい仕上しあげればいい。そういったおもいはきょくづくりをしている段階だんかいでありました。だから「あのきょくのこういうところがよかったんだよな」とおもうものがあれば、ぎゃくにそれを意識いしきしながらつくっていくケースもあったし。

──それもまた、さきほどのゆうかいさんの発言はつげんかさなることだとおもうんです。過去かこにもつくってきたタイプのきょくを、よりいののこらないものとしてあらたにつくる、ということだったわけで。

葉月はづき うん。だから……へんはなしぼくにはあんまりロックてき人間にんげんではないところがあるのかも。ぼくあこがれるロッカーたちはみんな、やっぱり過去かこおなじことはしないんですよ。そんなのクソらえだとってどんどんわっていくことを美徳びとくとするというか。そういうひとたちにぼくかれてきたんだけど、自分じぶん自身じしん全然ぜんぜんそうじゃない(笑)。これまでつくってきたきょくなかにだっていまでもいいとおもえるものがたくさんあるし、「こういうきょくがもっとあっていいな」とおもえたりする。だからある意味いみ自分じぶんのことをファン目線めせんてるのかもしれないですね。だからこそ、こういうことが普通ふつうにできてるのかもしれない。

lynch.(撮影:土屋良太)

りギリギリにくタイプ

──今回こんかい、アルバム制作せいさくのプロセスめんでは従来じゅうらいとのちがいはなにかあったんでしょうか? 葉月はづきさんがみなさんにデモをおくっていたのは去年きょねんのことですよね?

葉月はづき そうです。実際じっさいのレコーディングは12月なかばくらいにはじまって。いまになってかえってみると、あきごろからつい先々さきざきしゅう(2がつ上旬じょうじゅん)くらいまでは、ホントにもうんでましたね。めちゃくちゃ大変たいへんでした、今回こんかいは。なぜだかはよくわからないですけど。

れいひさし 年末ねんまつに15周年しゅうねん企画きかくがスタートして、実際じっさいにはそのまえからZeppツアーなんかもあるなか作業さぎょうしてたんで、スケジュールてきにも思考しこうのうえでも、つねにライブモードと制作せいさくモードのチャンネルをえながら、というかんじだったので。正直しょうじきつねに「ああ、つぎはこっちをやらなきゃ」とわれてるかんじではありました。

──たし前作ぜんさくのときもツアーをしながら制作せいさくすすめられていて「こんなひどいには二度にどいたくない!」みたいなことをっていた記憶きおくがあるんですが。

葉月はづき いや、あの当時とうじ以上いじょうひど状況じょうきょうだったことは過去かこにもいっぱいあったはずなんですよ。それこそAK(明徳めいとく)が復帰ふっきして「SINNERS」(2018ねん3がつ発売はつばいの「SINNERS -no one can fake my blood-」。5にんのゲストベーシストをむかえて制作せいさくされた2017ねん作品さくひん「SINNERS-EP」を明徳めいとく演奏えんそうろくなおした)をフルサイズでつくなおしたときなんか最低さいていだったがするんですけどね。あのころくらべれば時間じかんてきにも余裕よゆうはあったはずなんですけど……なんでこんなに大変たいへんだったんだろう?

れいひさし かんがえるべきことがおおかったからかもしれない。

葉月はづき ……ああ、そうかも。自分じぶんなかでのハードルがたかくなってたもするし。

玲央(G)

れいひさし 楽器がっきたい年末ねんまつにはひとまずろくりをえて、年明としあけにはリアンプという作業さぎょうのこしてたんですけど、カウントダウンライブがわって「ああ、やっとひと段落だんらくかなあ」なんておもってた時期じきに、葉月はづき1人ひとり黙々もくもく歌詞かしいてましたからね。なんか大変たいへんそうでした。

葉月はづき たしかに作詞さくし今回こんかい一番いちばん大変たいへんだったかもしれない。

れいひさし これまではリアンプの作業さぎょうにもずっとってたのに、今回こんかいめずらしく途中とちゅうで「まかせます!」とってげてたし。MV撮影さつえい段階だんかいになっても、ずっとそのでうわごとのように歌詞かし復唱ふくしょうしてたのをぼく横目よこめてました。ああ、いまはなしかけないほうがいいぞ、とかおもいながら。

葉月はづき はははは!(笑)

あきらただし 楽器がっきたい作業さぎょうてきにはいままでとおりだったんですよ。でもちょっと意識いしきめんわったのは、楽曲がっきょくそろうまであんまり「はやくそろわないかなあ」とはおもわずにおこう、ということで。そこはもう、ケツにかないといいものはてこないんだろうな、とることにして。かしてもしょうがないというか。

葉月はづき いやいや、そういうことじゃないんですよ(笑)。じつぼく、「Xlll」のときの作業さぎょうもけっこうギリギリでやったんで、そこでかなり反省はんせいして、今回こんかいはホントにはやくやろうとおもって、2019ねん1がつにはすでに作曲さっきょくはじめてたんです。ところが……これは性格せいかくなのかもしれないし、ケツにかないとやらないっていうのと結局けっきょくおなじことかもしれないけど、時間じかんがあると「もっとよくなるはずだ」というよくてくるんです。そこで、もっとくわえれば、もっとためしてみればもっとよくできるかもとかんがえてしまうからなかなか完成かんせいいたらない。そこにりがあらわれると、それが“あきらめのかべ”になるというか(笑)。もっといけるとおもっていても、それまでに完成かんせいさせないとダメっていうあきらめのパワーが発生はっせいして、それによって完成かんせいいたる、みたいな。だからその時点じてんでは「ああ、ここまでしかけなかった」というくやしさがけっこうあるんですよ。でも、ちょっと時間じかんいていてみると素直すなおに「いいじゃん!」とおもえたりする。

れいひさし それはわかるけど、結局けっきょくあきらじきってたことと内容ないようてきには一緒いっしょかもしれない。

葉月はづき ははは!(笑) ただ、さっきのあきらただしくんのいいかただと、ケツにくまではやるがないみたいなかんじにられそうじゃないですか。けっしてそういうことじゃないんで。

──ようするに、ギリギリまでなまけてるわけじゃないってことをわかってくれ、と。

葉月はづき そうそうそう(笑)。

れいひさし ようするに土壇場どたんばになるとちから発揮はっきするところがある、ということですよね。