ドラゴン桜・三田紀房 20代で借金1億円 漫画は現実逃避のため
(上)社会人1年目に迎えた大ピンチ 多額の負債を抱えた洋品店の店主から漫画家に転身、新たな人生をスタートさせるまで
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「ドラゴン桜」「アルキメデスの大戦」(講談社)など、数多くのヒット作で知られる漫画家の三田紀房さん。個性豊かなキャラクターと説得力のあるストーリーで読者の心をつかみ、デビューから36年を迎えた今も第一線で活躍中だ。漫画家として実績を積み重ねてきた三田さんだが、「私は漫画家ではなくて、漫画家もどきなんですよ」と話す。1億円の借金を背負った20代、漫画家デビューしても売れなかった30代の逆境をどのように乗り越え、ベストセラー作家になったのだろうか。三田さんの「大逆転人生」について話を聞いた。
(上)ドラゴン桜・三田紀房 20代で借金1億円 漫画執筆は現実逃避のためだった ←今回はココ
(下)三田紀房 人気漫画家になり借金完済「サボりたいから前進する」
2024年3月に自身の半生をつづった「ボクは漫画家もどき イケてない男の人生逆転劇」(講談社ビーシー/講談社)を出版した漫画家の三田紀房さん。現在「グランドジャンプ」(集英社)で、医療に取り組む若者の物語「Dr.Eggs ドクターエッグス」を連載中
社会人1年目で実家の洋品店がピンチに 1億円の借金を背負う
三田さんが漫画家としてデビューしたのは30歳のときだった。初めて描いた漫画が出版社の目に留まり、2作目で漫画誌が主催する新人賞に入選。10代後半、もしくは20代でデビューする人が多い漫画業界では遅咲きといわれるが、描き始めてからわずか1年ほどでチャンスをつかんだ。
デビューまでのサクセスストーリーを聞くと「才能に恵まれている」「運がいい」、そんな印象を抱くが、三田さんが漫画を描き始めた背景には、1億円の借金返済で苦しんだ日々があった。
「将来の夢もなく、運動も勉強も特別秀でたところがない子どもだった」と話す三田さんは、中学、高校、大学と剣道に打ち込むごく普通の少年だった。高校卒業後、上京して1年の浪人生活を送り、明治大学政治経済学部に入学。大学卒業後は西武百貨店に就職したが、働き始めて10カ月後、人生を変える大きな転機が訪れた。
「私の実家は岩手県で洋品店を営んでいました。商売ですから順調なときもあれば厳しいときもある。そんな様子を見て育ってきたので、大学卒業後はサラリーマンになって、安定した生活ができればいいと思っていたんです。将来のビジョンもないし、キャリアアップとか、やりがいなど考えていなかったですね。
ところが西武百貨店に新卒入社して10カ月後、父が病に倒れたため、退職して帰郷。兄と一緒に店を継ぐことになったのですが、そこで初めて父に莫大な借金があることを知りました」
兄と共に借金について調べ始めて半年後、その合計金額は1億円に上ると分かった。そのとき三田さんは大きなショックを受けたが、想像以上の金額にリアリティーを感じられなかったという。