掛かけ布ぬの雅之まさゆき「“権利けんり主張しゅちょう”なら義務ぎむを果はたせ！」

　私わたしが気きになっているのが連盟れんめいと選手せんしゅ会かいの関係かんけいです。以前いぜんの野球やきゅう界かいは、選手せんしゅ側がわというのはまったく力ちからがありませんでした。私わたしの現役げんえきの時ときもそう。選手せんしゅが要望ようぼうを出だしても連盟れんめい側がわから却下きゃっかされるのが当あたり前まえの時代じだいでした。しかし、今いまの野球やきゅう界かいは選手せんしゅ会かいがストライキを起おこすなど、チーム側がわの意見いけんを非常ひじょうに伝つたえやすい環境かんきょうにあります。

　ただ、懸念けねんされるのは、最近さいきんではその関係かんけい性せいが色濃いろこく出ですぎていることです。連盟れんめい側がわが強つよかった昔むかしと違ちがい、今いまは選手せんしゅ会かいのほうが強つよくなってきている傾向けいこうがあるのです。

　久保くぼ康友やすとものFA権けん行使こうしもその一ひとつ。阪神はんしんを離はなれて新天地しんてんちを探さがすのは彼かれの持もつ当然とうぜんの権利けんりです。私わたしが首くびをかしげるのは、球団きゅうだん側がわが彼かれに提示ていじした年俸ねんぽうが今年ことしと同おなじくらいだということです（今季こんき推定すいてい1億おく2000万まん円えん）。いくらチームにとどまってほしいとはいえ、彼かれの今こんシーズンの成績せいせきは決けっしてその金額きんがくに見合みあうものでないのはご存ぞんじのとおり。（3勝しょう4敗はい6S11H）。はたして球団きゅうだん側がわが出だした金額きんがくに、ファンは納得なっとくするのでしょうか。

　この最大さいだいの原因げんいんとなっているのはFA権けんです。もちろん、私わたし自身じしんもFA権けん自体じたいはあってしかるべき選手せんしゅの権利けんりだと考かんがえています。しかしその反面はんめん、選手せんしゅの持もつ権利けんりが本来ほんらい影響えいきょうしてはいけないところにまで波及はきゅうしてしまっているのもまた事実じじつなのです。

　チームの勝利しょうりに貢献こうけんできなくても減俸げんぽうされない。これは明あきらかにおかしい。球団きゅうだん側がわは選手せんしゅがFA権けんを行使こうししたとしても、はっきりと彼かれの年俸ねんぽうを減へらすべきではないでしょうか。

　もし、久保くぼがここで現状げんじょう維持いじのまま契約けいやくをしてしまえば、他たの選手せんしゅにも示しめしがつかず、今後こんごも球団きゅうだんと選手せんしゅの間あいだで、こういったマネーゲームが続つづいてしまう可能かのう性せいだってあります。

　おまけに今いまは、球界きゅうかい全体ぜんたいにおいて球団きゅうだんの経営けいえいは非常ひじょうに厳きびしくなっています。その中なかで選手せんしゅたちが自分じぶんたちの年俸ねんぽうアップだけを主張しゅちょうするのは、権利けんりに甘あまえていると思おもわれてもしかたがありません。

　いっそのこと球団きゅうだん側がわは契約けいやくする際さい、どの選手せんしゅにもまずはダウン提示ていじを行おこない、評価ひょうかによって増額ぞうがくをしていくのも一ひとつの解決かいけつ策さく。そうした基準きじゅんを作つくれば、より選手せんしゅの成績せいせきに見合みあった金額きんがくを提示ていじできるはずです。

　そのうえで、ファンの代表だいひょう、マスコミの代表だいひょう、球団きゅうだんの代表だいひょう、選手せんしゅの代表だいひょうが一堂いちどうに集あつまって議論ぎろんをする機会きかいを用意よういするべきです。そういった場ばで意見いけん交換こうかんを行おこなって、お互たがいに矛盾むじゅんした部分ぶぶんを指摘してきしていく。そうすれば、おのずと球界きゅうかいがよくなる解決かいけつ策さくも出でてきます。

　権利けんりを主張しゅちょうするならば、義務ぎむを果はたさなければいけない。上本うえほんにはこの言葉ことばを胸むねに、連盟れんめいと選手せんしゅ会かいのバランスを考かんがえながら、選手せんしゅ会長かいちょうとしてぜひチームをまとめてほしいです。