ペイオフ解禁かいきん拡大かくだいと為替かわせ相場そうば

2005年ねん4月がつ1日にちにペイオフ（破綻はたん金融きんゆう機関きかんからの預金よきん払はらい戻もどし保障ほしょう額がくを元本がんぽん1000万まん円えんとその利子りしまでとする措置そち）の解禁かいきん拡大かくだいを迎むかえる。そのことは海外かいがいへの資本しほん流出りゅうしゅつを招まねき、円えん安やすにつながるのだろうか。

2002年ねん4月がつ1日にちに「定期ていき性せい預金よきん」のペイオフが解禁かいきんされたときは、全額ぜんがく保護ほごの「要求ようきゅう払はらい預金よきん（普通ふつう預金よきんなど）」へと資金しきんが大量たいりょうにシフトした。ただし、要求ようきゅう払はらい預金よきんは定期ていき性せい預金よきんに比くらべ流動りゅうどう性せいが高たかい分ぶんだけ利息りそくが低ひくいので、収益しゅうえき性せいを求もとめて預金よきん以外いがいの金融きんゆう商品しょうひんに向むかう資金しきんも少すくなからずあり、日本にっぽんより金利きんりの高たかい外国がいこく債券さいけんもその選択肢せんたくしの一ひとつとなった。しかし、ペイオフ解禁かいきん後ごの為替かわせ相場そうばは円えん安やすにはならず、むしろ円えん高だかが進行しんこうした。なぜだろうか。日本にっぽんの対外たいがい証券しょうけん投資とうし全体ぜんたいでみれば、4月がつ以降いこうに大おおきく増ふえたわけではなかったからだ。

当時とうじ、個人こじんは外債がいさいでの運用うんようを増ふやす一方いっぽうで、投資とうし信託しんたくでの資産しさん運用うんようを減へらしていた。米国べいこくのエネルギー商社しょうしゃエンロンの破綻はたん（2001年ねん12月がつ）を背景はいけいにMMFなど公社債こうしゃさい投信とうしんの元本がんぽん割われが続出ぞくしゅつしたからである。投信とうしんを通つうじた間接かんせつ的てきな投資とうしを含ふくめれば、対外たいがい証券しょうけん投資とうしはペイオフ解禁かいきんの2002年ねん4月がつ頃ごろにかけて増ふえたものの、解禁かいきん後ごは伸のび悩なやんだ。ペイオフ解禁かいきんに伴ともなう海外かいがいへの資本しほん流出りゅうしゅつと円えん安やす効果こうかがあるとすれば、それは解禁かいきん後ごよりも解禁かいきん前まえに発生はっせいしやすいのかもしれない。

今回こんかい、ペイオフの対象たいしょうとなる「利息りそくのつく普通ふつう預金よきん」は、決済けっさい手段しゅだん（支払しはらい手段しゅだん）としての性格せいかくが強つよく、流動りゅうどう性せいが高たかい反面はんめん、相対そうたい的てきに利子りし率りつの低ひくい資金しきんである。したがって、高たかい収益しゅうえき性せいを求もとめて価格かかく変動へんどうリスクの大おおきい商品しょうひんに資金しきんがシフトする割合わりあいは、定期ていき性せい預金よきんのペイオフ解禁かいきん時じに比くらべて小ちいさいだろう。ペイオフのリスクを回避かいひしようとするなら、(1)金融きんゆう機関きかんを分散ぶんさんして1つの金融きんゆう機関きかんに預あづける預金よきんを元本がんぽん1000万まん円えん以下いかにするか、比較的ひかくてき信用度しんようどの高たかい金融きんゆう機関きかんに預あづけ替かえる、(2)普通ふつう預金よきんから決済けっさい用よう預金よきん（利息りそくのつかない普通ふつう預金よきん等とう）へ口座こうざを振ふり替かえる、(3)個人こじん向むけ国債こくさいや国内こくない公社債こうしゃさい投信とうしんなどの低ていリスク商品しょうひんへ資金しきんをシフトする、といった方法ほうほうが考かんがえられる。

収益しゅうえき性せい重視じゅうしで外債がいさいや外国がいこく公社債こうしゃさい投信とうしん、株式かぶしき投信とうしんなどで運用うんようしようとする資金しきんもあろうが、その多おおくは2005年ねん4月がつのペイオフ解禁かいきん拡大かくだいを待またずにすでにシフトしているか、今後こんごの投資とうし機会きかいをうかがっている可能かのう性せいが高たかい。近年きんねんの個人こじんや企業きぎょうによる対外たいがい証券しょうけん投資とうしの拡大かくだいは低てい金利きんりを背景はいけいとした資産しさん運用うんようのトレンドであり、必かならずしもペイオフ解禁かいきんを意識いしきしたものではない。ペイオフ解禁かいきん拡大かくだいは預金よきん保有ほゆう者しゃの資産しさん運用うんようを見直みなおす好機こうきにはなるものの、解禁かいきん直後ちょくごに対外たいがい証券しょうけん投資とうしを増ふやす必然ひつぜん性せいはないはずだ。つまるところ、ペイオフ解禁かいきん拡大かくだいを契機けいきに本格ほんかく的てきな円えん安やすが始はじまるととらえるべきではないように思おもえる。