長期ちょうき金利きんりの低下ていかは語かたる

長短ちょうたん金利きんり差さは景気けいきの先行さきゆきを予想よそうする重要じゅうような情報じょうほうを含ふくんでいると考かんがえられており、それを裏付うらづける実証じっしょう研究けんきゅうは多おおい。そのため景気動向指数けいきどうこうしすうの先行せんこう系列けいれつの一ひとつとして、長短ちょうたん金利きんり差さを用もちいるのが一般いっぱん的てきである。日本にっぽん、米国べいこく、OECDの景気けいき先行せんこう指数しすうなど、いずれも長短ちょうたん金利きんり差さを採用さいようしている。

このところグローバルな共通きょうつう現象げんしょうとして観察かんさつされているのが、長期ちょうき金利きんりの低下ていかである。インフレを抑制よくせいするために短期たんきの政策せいさく金利きんりが引ひき上あげられる過程かていで長期ちょうき金利きんりが低下ていかし、長短ちょうたん金利きんり差さが縮小しゅくしょうする状況じょうきょうは、債券さいけん市場いちばが景気けいき後退こうたいのシグナルを送おくっていると通常つうじょうは解ほぐされる。

今年ことし2月がつの議会ぎかい報告ほうこくでFRBのグリーンスパン議長ぎちょうは、世界せかい的てきな長期ちょうき金利きんりの低下ていかを「謎なぞ」(conundrum)であると発言はつげんした。FRBは、昨年さくねん6月がつ以降いこう、8回かいにわたりFFレートを引ひき上あげてきたが、その間あいだ、雇用こよう拡大かくだいが軌道きどうに乗のり、ようやくソフトパッチ傾向けいこうを脱却だっきゃくしたと考かんがえられた。そして景気けいき回復かいふくを持続じぞく的てきなものとするためには、利上りあげを継続けいぞくして実質じっしつ金利きんりの正常せいじょう化かを計はかり、インフレの芽めを摘つまむことが必要ひつようと判断はんだんされた。しかし、長期ちょうき金利きんりの低下ていかは続つづき、長短ちょうたん金利きんり差さはさらに縮小しゅくしょうした。5月、グリーンスパンは、利上りあげにも関かかわらず勢いきおいの衰おとろえない不動産ふどうさん価格かかくの上昇じょうしょうを「泡あわ」（froth）と形容けいようした。それに対たいする債券さいけん市場いちばの反応はんのうは、もう一段いちだんの長期ちょうき金利きんりの低下ていかであった。

長期ちょうき金利きんりの低下ていかは、FRBの考かんがえとは裏腹うらはらに利上りあげ継続けいぞくがもたらす景気けいき後退こうたいリスクに対たいして警鐘けいしょうを鳴ならしているともとれる。長短ちょうたん金利きんり差さの縮小しゅくしょうは、過去かこ数すうヶ月かげつ、日にち･米まいの景気けいき先行せんこう指数しすうを低下ていかさせることにも繋つながっている。ただし、このような市場いちばの動うごきはいつも合理ごうり的てきで正ただしいとは限かぎらない。だから、時ときに「謎なぞ」となるのだが、グリーンスパンの謎なぞ解ときは、早期そうきの利上りあげ打うち止どめをもたらすのかどうか。今いまはまだ年末ねんまつにかけて利上りあげが継続けいぞくされる可能かのう性せいの方ほうが高たかいように思おもわれる。