ウクライナがEU加盟かめいだけを希求ききゅうしていたら、プーチン大統領だいとうりょうは手てを出ださなかったか？

6月23日にち、EU首脳しゅのう会議かいぎは、ウクライナに加盟かめい候補こうほ国こくの地位ちいを付与ふよすることで合意ごういした。ウクライナのNATO加盟かめいを求もとめる態度たいどに憤いきどおり、それを阻止そしせんがために侵略しんりゃくを開始かいしし、世界せかいを巻まき込こむ一連いちれんの危機ききを引ひき起おこしているロシアのプーチン大統領だいとうりょうだから、今回こんかいのEUの決定けっていにさぞかし怒いかり心頭しんとうかと思おもったら、報道ほうどうによると、EU加盟かめいには反対はんたいしていないとし、ウクライナの勝手かってと我わが関かんせずの立場たちばを表明ひょうめいしたという。EUは経済けいざい的てき・政治せいじ的てきな集あつまりであり、ロシアにとって軍事ぐんじ的てき脅威きょういではないというのが理由りゆうの一ひとつのようだ。また、たとえ加盟かめい候補こうほ国こくになっても、正式せいしきに加盟かめいできるまでにはまだ相当そうとうなプロセス・時間じかんがかかる、最終さいしゅう的てきには全ぜん加盟かめい国こくの承認しょうにんが必要ひつようでどこかが渋しぶるであろう、それ故こ慌あわてていないとも考かんがえられる。そもそも、プーチン大統領だいとうりょうは目的もくてきを達たっするまでウクライナへの“特別とくべつ軍事ぐんじ作戦さくせん”をやめない姿勢しせいであり、それが成功せいこうすれば、EU加盟かめい申請しんせいなんて無意味むいみになる、ご破算はさんにすればいいと高こうをくくっているのかもしれない。

ただ、EUはNATOのような軍事ぐんじ的てきな組織そしきではないにしても、純粋じゅんすいな「経済けいざい的てき仲良なかよしクラブ」でないことも明白めいはくだろう。実際じっさい、ウクライナを支援しえんし、ロシアに対たいしては経済けいざい制裁せいさいを実施じっししている。経済けいざい的てきな力ちからを持もち（人口じんこう：4.5億おく人にん、名目めいもくGDP：世界せかいの2割わり弱じゃく）、環境かんきょう問題もんだい等とうの国際こくさいルール作づくりに影響えいきょう力りょくを及およぼし、経済けいざい安全あんぜん保障ほしょうの分野ぶんやを含ふくめて政治せいじ的てき意思いし決定けっていを行おこなう地域ちいき連合れんごうであると解釈かいしゃくできる。また、スウェーデンとフィンランドがNATOに加盟かめいすれば、EU加盟かめい国こくのうち、オーストリアとアイルランド、キプロス、マルタの4ヵ国かこくを除のぞく23ヵ国かこくがNATOメンバーと重複じゅうふくする。

確たしかに、先さきに加盟かめい候補こうほ国こくとなっているトルコやバルカン諸国しょこくは何なん年ねんも待またされている。特とくに、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟かめいに難色なんしょくを示しめしてきたトルコは、交渉こうしょう開始かいしから現在げんざいまで17年ねん近ちかく経過けいかしているが（加盟かめい申請しんせいから約やく35年ねん、加盟かめい候補こうほ国こくになってから約やく23年ねんが経過けいか）、EU加盟かめいの目途もくとは立たっていない。原げん加盟かめい国こく（6ヵ国かこく）を除のぞく、現在げんざいのEU加盟かめい国こくで見みると、加盟かめい交渉こうしょう開始かいしから実際じっさいに加盟かめいするまでに要ようした期間きかんは平均へいきんで5年ねん、最長さいちょうはクロアチアの8年ねん弱じゃくである（但ただし、クロアチアの場合ばあい、EU内ないの構造こうぞう改革かいかくに時間じかんを要ようした）。また、2000年代ねんだい以降いこうに加盟かめいした13ヵ国かこくに限かぎると、加盟かめい申請しんせいから加盟かめいまで平均へいきんで約やく10年ねんかかった。従したがって、プーチン大統領だいとうりょうが悠長ゆうちょうに構かまえていても問題もんだいないのかもしれない。

ただ、プーチン大統領だいとうりょうがウクライナに対たいして始はじめた「博打ばくち」の結果けっか、フィンランドやスウェーデンのNATO加盟かめい、そしてウクライナやモルドバ、ジョージアといった旧きゅうソ連それん諸国しょこくのEU加盟かめい候補こうほ国こく入いりを招まねいたとしたら、あれほど西側にしがわ諸国しょこくの東方とうほう拡大かくだいに神経しんけいをとがらせていたプーチン大統領だいとうりょうは勝負しょうぶに勝かったといえるのだろうか。

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