BMW X1 M35i xDrive（4WD/7AT）【試乗しじょう記き】 これまでのMとはちがう

実じつはあのクルマの兄弟きょうだい車しゃ

「M35i xDrive」のように、“M＋2～3ケタ数字すうじ”のモデル名めいを冠かんするBMWは、“M＋1ケタ数字すうじ”もしくは車種しゃしゅ名めいに単純たんじゅんに“M”だけが追加ついかされる「Mハイパフォーマンスモデル」のちょい下したの、ハイのつかない「Mパフォーマンスモデル」と位置いちづけられる。常設じょうせつサーキット走行そうこうを正面しょうめんから想定そうていしているわけではなく、日常にちじょう的てきな快適かいてき性せいは犠牲ぎせいにしないが、市販しはんカタログモデルとしてはライバルのトップエンドに匹敵ひってきする……というのが、このMパフォーマンスモデルのココロだろう。

BMWは今いまのところ、X1を含ふくむFF系けいレイアウトの車種しゃしゅにMハイパフォーマンスモデルは用意よういしていない。また、Mパフォーマンスモデルが初はじめて用意よういされたFF系けいレイアウトの車種しゃしゅは先代せんだい「X2」で、その後ごに「1シリーズ」や「2シリーズ グランクーペ」にも用意よういされてきたが、X1では今回こんかいが初はつである。

X1は、基本きほん骨格こっかくやその他たの基本きほんハードウエアを、先さきごろ日本にっぽんでも発売はつばいされた「MINIカントリーマン」と共有きょうゆうしている。となると、M35i xDrive（以下いか、M35i）はお察さっしのとおり、カントリーマンの最速さいそくモデル「ジョンクーパーワークスALL4」との共通きょうつう点てんが多おおい。

全長ぜんちょうはジョンクーパーワークスよりM35iのほうが55mm長ながく、全ぜん高こうは逆ぎゃくに15mm低ひくいが、全幅ぜんぷくは同どう寸すん。2690mmというホイールベースも共通きょうつうなので、体格たいかくはほぼ同おなじ。また最高さいこう出力しゅつりょく317PS、最大さいだいトルク400N・mという2リッター4気筒きとう直ちょく噴ターボのチューニングも共通きょうつうで、7段だんデュアルクラッチトランスミッションや電子でんし制御せいぎょ油圧ゆあつ多た板いたクラッチによる4WDシステムも、基本きほん構造こうぞうはもちろん同おなじだ。

いっぽうで、サスペンションなどの味あじつけは専用せんようだという。標準ひょうじゅん装備そうびのタイヤサイズの設定せっていにしても、ジョンクーパーワークスの245/40R20に対たいして、M35iはタイヤ幅はばはそのままだが、ホイール径みちは小ちいさい245/45R19となる。

BMWのSUVラインナップのなかでも、もっともコンパクトなモデルである「X1」。「X1 M35i xDrive」は同車どうしゃのハイパフォーマンスバージョンであり、日本にっぽんでは2023年ねん9月がつに発表はっぴょうされた。

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インテリアカラーはブラック（ブルーステッチ入いり）と、レッド／ブラックのツートンから選択せんたく可能かのう。他たのグレードではオプションあつかいとなるharman/kardonのオーディオを標準ひょうじゅんで備そなえるなど、装備そうびは充実じゅうじつしている。

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タイヤサイズは前後ぜんごともに245/45R19。試乗しじょう車しゃはハンコックのプレミアムカー／ハイパフォーマンスカー向むけタイヤ「ヴェンタスS1エボ3」を装着そうちゃくしていた。

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テールゲートに貼はられた「M35i」のバッジ。3世代せだい・15年ねんの歴史れきしを持もつ「X1」だが、Mモデルが設定せっていされるのはこれが初はつとなる。

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外装がいそう・内装ないそう・走はしりに宿やどるMの調律ちょうりつ

M35iの内うち外装がいそうには、お約束やくそくのアイテムがそろう。バンパーは前後ぜんごとも立体りったい的てきな大だい開口かいこうデザインとなり、キドニーを全面ぜんめんブラック化かして左右さゆう一体いったいの巨大きょだいグリルに見みせるのも、最近さいきんのM系けいモデルに共通きょうつうする手法しゅほうである。インテリアもダッシュボードが豪華ごうかな合ごう皮がわ張はりとなり、さらにステアリングホイールの“12時じ”を示しめす赤あかいアクセント、大型おおがたのカーボン製せいシフトパドルなどがスポーツ風味ふうみをかもす。

とくに感心かんしんしたのはバケット風ふうの専用せんよう「Mスポーツシート」だ。本国ほんごくではオプションあつかいらしいが、日本にっぽん仕様しようは標準ひょうじゅん装備そうびとなる。なにはともあれ、体からだを包つつみ込こむような座すわり心地ごこちとホールド性せいが素晴すばらしい。スライドやリクライニングのほか、サイドサポートの幅はばも電動でんどう調整ちょうせい可能かのう。個人こじん的てきには、電動でんどう調整ちょうせいサイドサポートをありがたいと思おもったことはほとんどなかったが、今回こんかいはサイドサポートを微ほろ調整ちょうせいするとさらに具合ぐあいがよかった。それはシートそのもののフィット感かんがすこぶる高たかいからだろう。

乗のり心地ごこちは、素直すなおにハードだ。最近さいきんは本格ほんかく的てきなスポーツモデルでも、じわりと自然しぜんに荷重におも移動いどうさせてしなやかさを感かんじさせるタイプが主流しゅりゅうだが、M35iはよくも悪わるくもビシッと引ひき締しまったフットワークで、水平すいへい姿勢しせいを強固きょうこにくずさない。コイルとスタビライザー、タイヤのすべてがハードに締しまった印象いんしょうで、高速こうそくでも、路面ろめんが荒あれると素直すなおに強つよめの上下動じょうげどうが出でがちだ。

そういえば、別べつの機会きかいに乗のったMINIカントリーマンのジョンクーパーワークスも、細こまかなチューニングはX1とちがっていたが、基本きほん的てきには同おなじ傾向けいこうにあった。となると、この味あじわいは、プラットフォームそのものの素性すじょうによるところも大おおきいのかもしれない。

内うち外装がいそうの各所かくしょがMモデルならではの意匠いしょうでコーディネートされた「X1 M35i xDrive」。上側うわがわに清流せいりゅう板ばんが張はり出でた「Mリアスポイラー」も、同車どうしゃ専用せんようの装備そうびとなる。

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制動せいどう性能せいのうを高たかめるべく「Mスポーツブレーキ」を採用さいよう。オプションで、より強力きょうりょくな「Mコンパウンドブレーキ」も用意よういされる。

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「M35i xDrive」の専用せんよう装備そうびとなる「Mスポーツシート」。表皮ひょうひにはパンチング加工かこうが施ほどこされた人工じんこう皮革ひかくのヴェガンザ（ヴィーガンレザー）が用もちいられる。

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6：4分割ぶんかつのスライド／リクライニング機構きこうや、4：2：4の3分割ぶんかつ可か倒たおせ機構きこうを備そなえたリアシート。後こう席せき用ようにも、空調くうちょうの吹ふき出だし口くちやUSB Type-Cポートが備そなわっている。

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クルマと一緒いっしょにドライバーの気分きぶんも変かえる

ところで、このクルマのベースであるX1は、“BMW iスタイルの電動でんどうモビリティー”の入門にゅうもん機種きしゅと定義ていぎされる一いち台だいでもある。

そんなX1は、同おなじくBMWの最さい新鋭しんえいモデルである「7シリーズ」や「5シリーズ」、そしてX2などと同様どうように、エンジン車しゃと電気でんき自動車じどうしゃ（BEV）がごく普通ふつうに共存きょうぞんするラインナップが構築こうちくされる。さらに、ツマミ型がたシフトセレクターや、従来じゅうらいのドライブモードにかわる「My Modes（マイモーズ）」ボタンが配はいされたアイランド型がたセンターコンソールも、最さい新鋭しんえいBMWに共通きょうつうするお約束やくそくである。

BMWのマイモーズには、従来じゅうらいのノーマルあるいはコンフォートにあたる「パーソナル」に加くわえて、「スポーツ」「エフィシエント」「エクスプレッション」「リラックス」といったモードが用意よういされる。それらは単たんに走行そうこうメカの設定せっていが変かわるだけでなく、ディスプレイやアンビエントライト（もっと上級じょうきゅう車種しゃしゅではパノラマルーフの開閉かいへいやフレグランス）まで含ふくめて、乗のり手てが感かんじるオーラというか概念がいねん（笑）というか、トータルで世界せかい観かんが切きり替かわる。

BMWスポーツモデルの頂点ちょうてんとなるMハイパフォーマンスモデルでは、この種たねのモードシステムも専用せんようになるが、今回こんかいのM35iのようなハイのつかないMパフォーマンスモデルでは、マイモーズも標準ひょうじゅんのX1とほぼ同おなじまま残のこされる。

マイモーズでスポーツモードを選択せんたくすれば、エンジンはレスポンシブになり、パワステは重おもくなる。さらにこのモードでは、エンジンやパワステ、さらには横滑よこすべり防止ぼうし装置そうちのセッティングも好このみで変かえられるのだが、専用せんよう装備そうびされている「電子でんし制御せいぎょアダプティブMダンパー」のセッティングを変かえるページだけは、なぜか用意よういされない。資料しりょうには「スポーツモードではダンピングも変かわる」とあるが、実際じっさいにはモードを変かえても、フットワークの味あじわいそのものに大おおきな変化へんかは感かんじられなかった。

ドライブトレインでは、フロントに機械きかい式しきLSDが装備そうびされる点てんもトピック。トラクションの抜ぬけを抑おさえ、コーナーからの力強ちからづよい脱出だっしゅつを可能かのうにする。

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「マイモーズ」の操作そうさ画面がめん。モードに応おうじて、車両しゃりょうの走行そうこう特性とくせいとともにインテリアの演出えんしゅつも切きり替かわる。

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「マイモーズ」には「インディビジュアル」のようなカスタマイズモードはないが、「スポーツ」モードの設定せっていを細こまかく調整ちょうせいすることができる。

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左右さゆう4本ほん出だしの「Mスポーツエキゾーストシステム」。ハイパフォーマンスモデルながら、そのサウンドは存外ぞんがいにジェントルで、時代じだいの変化へんかを感かんじさせる。

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なんとなくBEVを思おもわせる

2リッター屈指くっしの高性能こうせいのうエンジンの出力しゅつりょくやトルクに不足ふそくがあろうはずもなく、4WDのおかげもあって、それをあますところなく路面ろめんにたたきつけることも容易よういだ。シャシーもフラット感かんには欠かけるが、グリップ性能せいのうそのものは高たかい。つまり、M35iはお世辞せじぬきに高性能こうせいのうで速はやく、そして安心あんしん感かんにあふれるクルマなのだが、いっぽうで、筆者ひっしゃのような中高年ちゅうこうねんがイメージする古典こてん的てきなスポーツテイストとは趣おもむきを異ことにするところもいくつかある。

たとえば、エンジンはパワフルだが、サウンドや吹ふけ上あがりは軽かろやかで、威圧いあつ感かんはまるでない。中ちゅう低てい回転かいてんトルクは強力きょうりょくだが、高こう回転かいてん域いきではさほどさく裂れつはしない。ディスプレイで「アイコニックサウンド」をオンにすると、とくにスポーツモードではスピーカーで加か音おんされた派手はでなエンジン音おんが響ひびきわたる。スピーカー加か音おんは今いまやめずらしいものではないが、その音質おんしつは内燃ないねん機関きかんらしい咆哮ほうこうというより、電気でんき的てきな反響はんきょう音おんが目立めだつチューニングである。

また、シフトパドルではマニュアル変速へんそくのほかに、長引ながびきで作動さどうする「ブーストモード」も追加ついかされる。これを作動さどうさせるとパワートレインその他たすべてが10秒間びょうかんだけ、過激かげきなセッティングになる。ブーストモードはBMW製せいBEVのお約束やくそくアイテムでもある。いっぽうで、スポーツモードでマニュアル変速へんそくを駆使くししても、かつてのようにダウンシフトで盛大せいだいにブリッピングしたりはしてくれない。

このように、最新さいしんのM35iは純粋じゅんすいな内燃ないねん機関きかんのモデルでありつつも、その味あじつけはどこかBEVっぽさを目指めざしているように感かんじられなくもない。そういえば、しなやかさより水平すいへい姿勢しせい重視じゅうしのフットワークも、プラットフォーム自体じたいのクセもあろうが、同時どうじに低てい重心じゅうしんのBEVっぽい動うごきといえなくもない。

エンジン車しゃとBEVを平等びょうどうにあつかう二刀流にとうりゅうを目指めざすBMWは、M印しるしのスポーツモデルでも、エンジン車しゃとBEVに共通きょうつうする新あたらしい味あじわいを模索もさくしているのかもしれない。いずれにしても、X1初はつのMパフォーマンスモデルは、これまでのMとはちょっとちがう。

（文ぶん＝佐野さの弘ひろし宗むね／写真しゃしん＝向後こうご一宏かずひろ／編集へんしゅう＝堀田ほった剛つよし資し）

317PSの最高さいこう出力しゅつりょくと400N・mの最大さいだいトルクを発生はっせいする2リッター直じき4ガソリンターボエンジン。燃費ねんぴはWLTCモードで12.4km/リッターとアナウンスされている。

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ステアリングホイールに備そなわるカーボン製せいのシフトパドル。左ひだりのパドルを1秒間びょうかん引ひき続つづけると、パワートレインとシャシーの全ぜん制御せいぎょを、もっともスポーティな設定せっていに切きり替かえる「Mスポーツ・ブースト機能きのう」が備そなわる。

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ラゲッジスペースの仕様しようは他たのガソリン車しゃと共通きょうつう。容量ようりょうは540リッターで、後こう席せきをたたむと1600リッターまで拡張かくちょうできる。床ゆか面めんはほぼ全体ぜんたいがフタ（取とり外はずし不可ふか）となっていて、その下したには立派りっぱな床下ゆかした収納しゅうのうが備そなわる。

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純じゅんガソリンエンジンのハイパフォーマンスモデルでありながら、どこかBEVっぽい雰囲気ふんいきを漂ただよわせていた「X1 M35i xDrive」。BEVも豊富ほうふに取とりそろえるBMWは、この方向ほうこうでＭモデルのドライブフィールも統一とういつしていくのかもしれない。

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BMW X1 M35i xDrive

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テスト車しゃのデータ

BMW X1 M35i xDrive

ボディーサイズ：全長ぜんちょう×全幅ぜんぷく×全高ぜんこう＝4500×1845×1625mm
ホイールベース：2690mm
車くるま重じゅう：1680kg
駆動くどう方式ほうしき：4WD
エンジン：2リッター直じき4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション：7段だんAT
最高さいこう出力しゅつりょく：317PS（233kW）/5750rpm
最大さいだいトルク：400N・m（40.8kgf・m）/2000-4500rpm
タイヤ：（前まえ）245/45R19 102Y XL／（後ご）245/45R19 102Y XL（ハンコック・ヴェンタスS1エボ3）
燃費ねんぴ：12.4km/リッター（WLTCモード）
価格かかく：786万まん円えん／テスト車しゃ＝811万まん7000円えん
オプション装備そうび：ボディーカラー＜フローズン・ピュア・グレー＞（25万まん7000円えん）

テスト車しゃの年とし式しき：2024年ねん型がた
テスト開始かいし時じの走行そうこう距離きょり：3562km
テスト形態けいたい：ロードインプレッション
走行そうこう状態じょうたい：市街地しがいち（3）／高速こうそく道路どうろ（5）／山岳さんがく路ろ（2）
テスト距離きょり：355.1km
使用しよう燃料ねんりょう：29.1リッター（レギュラーガソリン）
参考さんこう燃費ねんぴ：12.2km/リッター（満まんタン法ほう）／11.5km/リッター（車載しゃさい燃費ねんぴ計けい計測けいそく値ち）

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