三井住友銀行みついすみともぎんこう、年功序列ねんこうじょれつ型がた賃金ちんぎんを廃止はいしの衝撃しょうげき…能力のうりょく重視じゅうしで年収ねんしゅう5千せん万まん円えんも

　三井住友銀行みついすみともぎんこうが年功序列ねんこうじょれつ制度せいどを廃止はいしする。18日にち付づけ「日本経済新聞にほんけいざいしんぶん」記事きじによれば、入社にゅうしゃ年次ねんじなどによって給与きゅうよが決きまる年功序列ねんこうじょれつ型がた賃金ちんぎん制度せいどを廃止はいしし、役割やくわりと能力のうりょくに応おうじて給与きゅうよが決きまる制度せいどに変更へんこう。20代だいでも年収ねんしゅう2000万まん円えんになることが可能かのうとなり、高度こうどなスキルを持もつ人材じんざいには5000万まん円えん程度ていどを支払しはらうこともあるという。同行どうこうがこのような人事じんじ・賃金ちんぎん制度せいどを導入どうにゅうする背景はいけいは何なにか、また、他たのメガバンクでも同様どうようの動うごきは広ひろがるのか。業界ぎょうかい関係かんけい者しゃの見解けんかいを交まじえて追おってみたい。

　2001年ねんに、さくら銀行ぎんこうと住友銀行すみともぎんこうが合併がっぺいし発足ほっそくした三井住友銀行みついすみともぎんこう。02年ねんには完全かんぜん親会社おやがいしゃである三井みつい住友すみともフィナンシャルグループ（FG）を設立せつりつし、商業しょうぎょう銀行ぎんこう、信託しんたく銀行ぎんこう、証券しょうけん会社かいしゃ、カード会社かいしゃ、消費しょうひ者しゃ金融きんゆう会社かいしゃ、資産しさん運用うんよう会社かいしゃなどを傘下さんかに持もつ総合そうごう金融きんゆうグループを形成けいせい。24年ねん3月がつ期きの連結れんけつ純じゅん利益りえきは9629億おく円えんで、国内こくない金融きんゆうグループとしては三菱みつびし東京とうきょうFGに次つぐ2位い。中核ちゅうかくの三井住友銀行みついすみともぎんこうの預金よきん残高ざんだかは約やく153兆ちょう円えんと日本にっぽんを代表だいひょうするメガバンクとなっている。

　その三井住友銀行みついすみともぎんこうが入社にゅうしゃ年次ねんじを給与きゅうよに反映はんえいさせない能力のうりょく重視じゅうしの賃金ちんぎん制度せいどを導入どうにゅうする。多おおくの大手おおて日本にっぽん企業きぎょうと同様どうようにメガバンクは年功序列ねんこうじょれつが色濃いろこいことで知しられている。

「かつては大量たいりょうの新卒しんそつ者しゃを採用さいようして全国ぜんこく各地かくちの支店してんに配属はいぞくし、とりあえず融資ゆうしの営業えいぎょうをやらせて銀行ぎんこうの基本きほん業務ぎょうむを覚おぼえさせ、その後ごは2～4年ねんごとに配置はいち転換てんかんさせていくというのが一般いっぱん的てきだった。現在げんざいではどこのメガバンクも融資ゆうしビジネスの比重ひじゅうは下さがり、資産しさん運用うんようやプロジェクトファイナンス、ディーリング、投資とうし銀行ぎんこう的てきなビジネスなど収益しゅうえき源げんが多様たよう化かかつ専門せんもん化かしてきており、支店してんの数かずも削減さくげんしている。従来じゅうらいのように大量たいりょうに新卒しんそつ一括いっかつ採用さいようをしてあちこちの支店してんを回まわらせるなかで支店してん長ちょうポストを競きそわせたり、ゼネラリストを育成いくせいするという人事じんじ制度せいどには無理むりがあり、各行かくこうは見直みなおしを進すすめている。20代だいのうちは支店してんを回まわるなかで上司じょうしから仕事しごとを教おそわり、それまでとはまったく違ちがう業務ぎょうむの部署ぶしょに配属はいぞくされるということも珍めずらしくなく、年功序列ねんこうじょれつ制度せいどは絶対ぜったい的てきなものだったが、今回こんかいの三井住友銀行みついすみともぎんこうの改革かいかくはかなりインパクトが大おおきい」（大手おおて銀行ぎんこう員いん）

　別べつの大手おおて銀行ぎんこう員いんはいう。

「銀行ぎんこうでは上司じょうしによる評価ひょうかが持もつ重要じゅうよう性せいが非常ひじょうに重おもく、1度どでも評価ひょうかでバツがつくと挽回ばんかいするのは極きわめて困難こんなんで、数すう年ねんごとに必かならず行おこなわれる異動いどうで大おおきな支店してんや花形はながたの部署ぶしょへ配属はいぞくされなかったり、延々えんえんと昇進しょうしんできないということが普通ふつうにある。肩書かたがきやポストが大おおきな意味いみを持もつ銀行ぎんこうでは、人事じんじが全すべてとまではいわないが“ほぼ全すべて”というのが実情じつじょうであり、昇進しょうしんできないままだと不人気ふにんきの関連かんれん会社かいしゃやグループ会社かいしゃに出向しゅっこうとなり、その時点じてんで銀行ぎんこう員いん人生じんせいはほぼ終おわる。なので、みんな上司じょうしの評価ひょうかを異常いじょうに気きにしながら働はたらいている。それが世間せけんの銀行ぎんこう員いんへの『内うち向むき』『顧客こきゃく軽視けいし』といったイメージにつながっており、あながち外はずれていない。銀行ぎんこう以外いがいの大だい企業きぎょうには、どこでも似にたような風潮ふうちょうはあるが、他た業界ぎょうかいの人間にんげんの話はなしを聞きく限かぎり、銀行ぎんこうの人事じんじ至上しじょう主義しゅぎは突出とっしゅつしている」（5月がつ3日にち付づけ当とうサイト記事きじより）

人材じんざいの採用さいようでは他た業種ぎょうしゅの企業きぎょうと競きそう

　かつてはメガバンク3行ぎょうで計けい5000人にん規模きぼの新卒しんそつ者しゃを採用さいようしていたが、24年度ねんどの採用さいよう計画けいかくでは計けい約やく1500人にんほど。その一方いっぽう、中途ちゅうと採用さいようの人数にんずうは新卒しんそつと同どう程度ていどにまで増ふえている。また、職種しょくしゅを限定げんていした採用さいようコースを設もうける動うごきも出でており、三菱みつびしUFJ銀行ぎんこうは22年度ねんどから高度こうどなIT知識ちしきを持もつ大学だいがく新卒しんそつに対たいしては年とし給与きゅうよ1000万まん円えんとなる可能かのう性せいもある給与きゅうよ体系たいけいを導入どうにゅうすると発表はっぴょう。前出ぜんしゅつ・日経新聞にっけいしんぶん記事きじによれば、三井住友銀行みついすみともぎんこうは新卒しんそつ採用さいようにおいて「IT・デジタルコース」の採用さいよう数すうを全体ぜんたいの約やく1割わりまで高たかめるという。24年度ねんどの中途ちゅうと採用さいようは約やく200人にんを予定よていしており、新卒しんそつ（465人にん）と合あわせた採用さいよう人数にんずう全体ぜんたいの約やく30％に上のぼる。ちなみに大手おおて3銀行ぎんこうの大卒だいそつ初任しょにん給きゅうは25～26万まん円えんとなっている。

「外資がいし系けいIT企業きぎょうではAIやデータサイエンスなどの分野ぶんやで高度こうどなスキルを持もつ新卒しんそつ社員しゃいんに年収ねんしゅう1000万まん円えんほどを提示ていじすることは珍めずらしくない。外資がいし系けい投資とうし銀行ぎんこうでも1年ねん目めの報酬ほうしゅうはそれくらいいき、7～8年ねんいれば2000～3000万まん円えんくらいになる。5000万まん円えんという人ひとは多おおくはないものの、その年としの個人こじんの成果せいかと会社かいしゃの業績ぎょうせきが良よければいくことはあるだろう。ITや専門せんもん的てきな金融きんゆう知識ちしきを必要ひつようとする人材じんざいの採用さいようでは、こうした他た業種ぎょうしゅの企業きぎょうと競きそうことになるので、それを念頭ねんとうに置おく給与きゅうよ体系たいけいにするということだろう」（外資がいし系けい金融きんゆう機関きかん社員しゃいん）

優秀ゆうしゅうな人材じんざいに「選えらばれる企業きぎょう」に

　三井住友銀行みついすみともぎんこうの動うごきの背景はいけいには、優秀ゆうしゅうな人材じんざいに「選えらばれる企業きぎょう」にならなければならないという危機きき感かんや、既存きそんの社員しゃいんつなぎ止どめの意図いともあるのではないかと大手おおて銀行ぎんこう員いんはいう。

「かつてメガバンクは各種かくしゅ就職しゅうしょく人気にんきランキングの上位じょういに入はいっていたが、近年きんねんでは下落げらくしており、仕事しごとの内容ないようや労働ろうどう環境かんきょう・条件じょうけん、待遇たいぐう面めんで魅力みりょくがあると学生がくせいから思おもわれなくなったことが大おおきい。SNSなどで、いくらでも情報じょうほうを収集しゅうしゅうして実態じったいが把握はあくできるようになり、『仕事しごととして面白おもしろみに欠かける』『将来しょうらいのキャリアアップにつながる専門せんもん性せいが身みにつきにくい』と判断はんだんされている。50歳さいを超こえると役職やくしょく定年ていねんや出向しゅっこうなどで大おおきく年収ねんしゅうが下さがるという現実げんじつも広ひろく知しれ渡わたってしまった。また、メガバンク行員こういんといえば比較的ひかくてき高こう収入しゅうにゅうで福利ふくり厚生こうせいもしっかりしており、社会しゃかい的てきステータスも高たかいとして辞やめる人ひとは少すくなかったが、今いまではあっさりと転職てんしょくする若手わかても増ふえている。こうした実態じったいにメガバンクも徐々じょじょに危機きき感かんを抱いだき始はじめているということだろう」

（文ぶん＝Business Journal編集へんしゅう部ぶ）