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孫崎まごさきとおる世界せかい日本にっぽん正体しょうたい

公式こうしき文書ぶんしょすらないにちかん合意ごうい韓国かんこく見直みなおしを非難ひなんする安倍あべ首相しゅしょうのほうが異常いじょう非常識ひじょうしき

ぶん孫崎まごさきとおる評論ひょうろんもと外務省がいむしょう国際こくさい情報じょうほう局長きょくちょう
公式文書すらない日韓合意、韓国の見直しを非難する安倍首相のほうが異常で非常識の画像1安倍あべ首相しゅしょう(Natsuki Sakai/アフロ)

 安倍晋三あべしんぞう首相しゅしょうは12にち午前ごぜん記者きしゃだんたいし、従軍じゅうぐん慰安いあん問題もんだいをめぐる2015ねん12月じゅうにがつにちかん合意ごうい韓国かんこく政府せいふあらたな措置そち日本にっぽん政府せいふ要求ようきゅうする方針ほうしん発表はっぴょうしたことについて、「合意ごういくにくにとの約束やくそくで、これをまもることは国際こくさいてきかつ普遍ふへんてき原則げんそくだ。韓国かんこくがわ一方いっぽうてきにさらなる措置そちもとめることは、まったくれることはできない」と明言めいげんした。

 ここで韓国かんこくしめしたしん方針ほうしんてみよう。韓国かんこくかんきょうかず外相がいしょうが9にち発表はっぴょうしたにちかん合意ごういかんするしん方針ほうしんつぎとおり。

 外交がいこうしょう女性じょせい家族かぞくしょう中心ちゅうしんに、被害ひがいしゃ関係かんけい団体だんたいこえみみかたむける一方いっぽう隣国りんごくである日本にっぽんとの関係かんけい正常せいじょう発展はってんさせていく方法ほうほう真剣しんけん検討けんとうしてきた。その過程かていで、なにより被害ひがいしゃ尊厳そんげん名誉めいよ回復かいふくしなければならないときもめいじた。また、両国りょうこく関係かんけいえて、普遍ふへんてき人権じんけん問題もんだいである慰安いあん問題もんだい人類じんるい歴史れきし教訓きょうくんであり、女性じょせい人権じんけん拡大かくだいする運動うんどう国際こくさいてきみちしるべとして位置いちづけられるべきだとのてん重視じゅうしした。あわせて北東ほくとうアジアの平和へいわ繁栄はんえいけ、両国りょうこく正常せいじょう外交がいこう関係かんけい回復かいふくしなければならないことも念頭ねんとういて、政府せいふ立場たちば慎重しんちょう検討けんとうした。

(1)韓国かんこく政府せいふ慰安いあん被害ひがいしゃ方々かたがた名誉めいよ尊厳そんげん回復かいふくしんきずやしにけてあらゆる努力どりょくくす。

(2)この過程かていで、被害ひがいしゃ関係かんけい団体だんたい国民こくみん意見いけん幅広はばひろ反映はんえいしながら、被害ひがいしゃ中心ちゅうしん措置そち模索もさくする。日本にっぽん政府せいふ拠出きょしゅつした「和解わかいやし財団ざいだん」への基金ききん10おくえんについては韓国かんこく政府せいふ予算よさん充当じゅうとうし、この基金ききん今後こんご処理しょり方法ほうほう日本にっぽん政府せいふ協議きょうぎする。財団ざいだん今後こんご運営うんえいかんしては、当該とうがい省庁しょうちょう被害ひがいしゃ関連かんれん団体だんたい国民こくみん意見いけん幅広はばひろ反映はんえいしながら、後続こうぞく措置そち用意よういする。

(3)被害ひがい当事とうじしゃたちの意思いしをきちんと反映はんえいしていない15ねん合意ごういでは、慰安いあん問題もんだい本当ほんとう解決かいけつすることはできない。

(4)15ねん合意ごうい両国りょうこくあいだ公式こうしき合意ごういだったという事実じじつ否定ひていできない。韓国かんこく政府せいふ合意ごういかんして日本にっぽん政府せいふさい交渉こうしょうもとめない。ただ、日本にっぽんがわみずから、国際こくさいてき普遍ふへん基準きじゅんによって真実しんじつをありのままみとめ、被害ひがいしゃ名誉めいよ尊厳そんげん回復かいふくしんきずやしにけた努力どりょくつづけてくれることを期待きたいする。被害ひがいしゃ女性じょせい一様いちようねがうのは、自発じはつてきしんがこもった謝罪しゃざいである。

(5)韓国かんこく政府せいふは、真実しんじつ原則げんそく立脚りっきゃくして歴史れきし問題もんだいあつかっていく。歴史れきし問題もんだい賢明けんめい解決かいけつするための努力どりょくかたむけると同時どうじに、両国りょうこくあいだ未来みらい志向しこうてき協力きょうりょくのために努力どりょくしていく。

 ここで15ねんにちかん合意ごういてみたい。同年どうねん12がつ28にち日本にっぽん岸田きしだ文雄ふみお外務がいむ大臣だいじん韓国かんこくいん炳世外交がいこう長官ちょうかんによる外相がいしょう会談かいだんおこなわれ、従軍じゅうぐん慰安いあん問題もんだいについて合意ごういたれた

 合意ごうい内容ないようについては、にちかん公式こうしき文書ぶんしょわすことはおこなわず、にちかんりょう外務がいむ大臣だいじん共同きょうどう記者きしゃ会見かいけんひらいて発表はっぴょうするという形式けいしきおこなった。

【1.岸田きしだ外務がいむ大臣だいじん声明せいめい

(1)慰安いあん問題もんだいは、当時とうじぐん関与かんよしたに、多数たすう女性じょせい名誉めいよ尊厳そんげんふかきずつけた問題もんだいであり、かかる観点かんてんから、日本にっぽん政府せいふ責任せきにん痛感つうかんしている。安倍あべ内閣ないかく総理そうり大臣だいじんは、日本にっぽんこく内閣ないかく総理そうり大臣だいじんとしてあらためて、慰安いあんとして数多すうた苦痛くつう経験けいけんされ、心身しんしんにわたりいやしがたいきずわれたすべての方々かたがたたいし、しんからおわびと反省はんせい気持きもちを表明ひょうめいする。

(2)日本にっぽん政府せいふは、これまでもほん問題もんだい真摯しんしんできたところ、その経験けいけんって、今般こんぱん日本にっぽん政府せいふ予算よさんにより、すべてのもと慰安いあん方々かたがたしんきずやす措置そちこうじる。具体ぐたいてきには、韓国かんこく政府せいふが、もと慰安いあん方々かたがた支援しえん目的もくてきとした財団ざいだん設立せつりつし、これに日本にっぽん政府せいふ予算よさん資金しきん一括いっかつ拠出きょしゅつし、にちかんりょう政府せいふ協力きょうりょくし、すべてのもと慰安いあん方々かたがた名誉めいよ尊厳そんげん回復かいふくしんきずやしのための事業じぎょうおこなうこととする。

(3)日本にっぽん政府せいふ上記じょうき表明ひょうめいするとともに、上記じょうき(2)の措置そち着実ちゃくじつ実施じっしするとの前提ぜんていで、今回こんかい発表はっぴょうにより、この問題もんだい最終さいしゅうてきかつ可逆かぎゃくてき解決かいけつされることを確認かくにんする。あわせて、日本にっぽん政府せいふは、韓国かんこく政府せいふともに、今後こんご国連こくれんとう国際こくさい社会しゃかいにおいて、ほん問題もんだいについてたがいに非難ひなん批判ひはんすることはひかえる。

【2.いん外交がいこう長官ちょうかん声明せいめい

(1)韓国かんこく政府せいふは、日本にっぽん政府せいふ表明ひょうめい今回こんかい発表はっぴょういたるまでの取組とりくみ評価ひょうかし、日本にっぽん政府せいふ上記じょうき 1.(2)で表明ひょうめいした措置そち着実ちゃくじつ実施じっしされるとの前提ぜんていで、今回こんかい発表はっぴょうにより、日本にっぽん政府せいふともに、この問題もんだい最終さいしゅうてきかつ可逆かぎゃくてき解決かいけつされることを確認かくにんする。韓国かんこく政府せいふは、日本にっぽん政府せいふ実施じっしする措置そち協力きょうりょくする。

(2)韓国かんこく政府せいふは、日本にっぽん政府せいふざい韓国かんこく日本にっぽん大使館たいしかんまえ少女しょうじょぞうたいし、公館こうかん安寧あんねい威厳いげん維持いじ観点かんてんから懸念けねんしていることを認知にんちし、韓国かんこく政府せいふとしても、可能かのう対応たいおう方向ほうこうについて関連かんれん団体だんたいとの協議きょうぎおこなひとしつうじて、適切てきせつ解決かいけつされるよう努力どりょくする。

(3)韓国かんこく政府せいふは、今般こんぱん日本にっぽん政府せいふ表明ひょうめいした措置そち着実ちゃくじつ実施じっしされるとの前提ぜんていで、日本にっぽん政府せいふともに、今後こんご国連こくれんとう国際こくさい社会しゃかいにおいて、ほん問題もんだいについてたがいに非難ひなん批判ひはんすることはひかえる。

 このにちかん外相がいしょう会談かいだん一番いちばん重要じゅうようなポイントは「最終さいしゅうてきかつ可逆かぎゃくてき解決かいけつされた」とするてんである。したがってあたらしい大統領だいとうりょう登場とうじょうをもって、韓国かんこくが「最終さいしゅうてきかつ可逆かぎゃくてき解決かいけつされた」はずの従軍じゅうぐん慰安いあん問題もんだいあたらしい方針ほうしんしたのは約束やくそく違反いはんだとするのが日本にっぽん政府せいふ立場たちばであり、「合意ごういくにくにとの約束やくそくで、これをまもることは国際こくさいてきかつ普遍ふへんてき原則げんそくだ。韓国かんこくがわ一方いっぽうてきにさらなる措置そちもとめることは、まったれることはできない」との安倍あべ首相しゅしょう発言はつげんにつながる。

署名しょめいなしの合意ごうい

 ここで国際こくさい約束やくそく形式けいしきについてかんがえてみたい。

(1)条約じょうやく
このさい国会こっかい批准ひじゅん必要ひつようとする、つまり、国会こっかいという意思いし決定けってい機関きかん承認しょうにんている。

(2)行政ぎょうせいレベルでの合意ごういしょ
外務がいむ大臣だいじんとう署名しょめいおこなう。行政ぎょうせい機関きかん同士どうし合意ごういはあるが、国家こっか承認しょうにんていないため、国家こっか同士どうし合意ごういとまではいえない。

(3)署名しょめいなしの合意ごうい
西側にしがわ社会しゃかいにおいては口頭こうとう約束やくそくと、署名しょめいりの約束やくそくあいだ法的ほうてき効力こうりょくにはおおきながある。

 これらの差異さい当然とうぜん合意ごうい効力こうりょく有効ゆうこうにも関係かんけいする。(2)や(3)の拘束こうそく基本きほんてき行政ぎょうせい機関きかん存続そんぞく期間きかんかぎられる。もしあらたな政権せいけん順守じゅんしゅもとめるなら、あらたな政権せいけんあらたな約束やくそくけるより方法ほうほうはない。たとえば日米にちべい安全あんぜん保障ほしょう関係かんけいには「日米にちべい同盟どうめい未来みらいのための変革へんかく再編さいへん」(通称つうしょう2プラス2合意ごうい)というきわめて重要じゅうよう文書ぶんしょが05ねん10がつ29にち、ライス国務こくむ長官ちょうかん、ラムズフェルド国防こくぼう長官ちょうかん町村ちょうそん外務がいむ大臣だいじん大野おおの防衛庁ぼうえいちょう長官ちょうかんあいだ署名しょめいされているが、日本にっぽんがわ政権せいけん交代こうたいするたびに日米にちべいあいだ順守じゅんしゅ確認かくにんしてきている。

 今日きょう西側にしがわ諸国しょこく体制たいせい民主みんしゅ主義しゅぎである。つまり国民こくみん主権しゅけんである。ここにおいては、主要しゅよう政策せいさく選挙せんきょ変更へんこうされることは十分じゅうぶん想定そうていされる。とく政権せいけん交代こうたいがあったときはそうである。

 たとえば米国べいこくのトランプ大統領だいとうりょうてみよう。トランプ大統領だいとうりょう政権せいけん発足ほっそくだいにちにTPP(環太平洋かんたいへいよう経済けいざい連携れんけい協定きょうてい)からの離脱りだつ表明ひょうめいした。これにたいして、TPP関係かんけいこくから「これまで米国べいこくはTPPにコミットしてきたから、離脱りだつはけしからん」というこえはない。1がつ10にちロイタろいた通信つうしんは「複数ふくすうのカナダ政府せいふ関係かんけいしゃはなしとして、米国べいこくちかくNAFTAからの離脱りだつ発表はっぴょうするとの見通みとおしをべた」とほうじた。カナダがわに「離脱りだつ賢明けんめいさくではない」という議論ぎろんはあっても、「米国べいこく条約じょうやく署名しょめいしたのだ。その条約じょうやくから離脱りだつするのはけしからん」という議論ぎろんはない。

 同様どうよう英国えいこくはEUから離脱りだつする方針ほうしん国民こくみん投票とうひょうのち決定けっていした。「英国えいこくがEUから離脱りだつするのは賢明けんめいでない」という議論ぎろんがあっても、EUが「いったんむすんだ条約じょうやくから離脱りだつするのはけしからん」と英国えいこく非難ひなんすることはない。

 こうした民主みんしゅ主義しゅぎ国家こっかあいだ合意ごうい順守じゅんしゅさまると、あたらしい政権せいけん誕生たんじょう国民こくみん関心かんしんたか問題もんだいで、しん政権せいけん方針ほうしんえることは異常いじょうではなくて、むしろ十分じゅうぶん存在そんざいするものである。とくにちかん合意ごうい条約じょうやくでもなく、外相がいしょうあいだ文書ぶんしょ署名しょめいたものでもない。しん政権せいけんがこの合意ごういからはなれるのは十分じゅうぶんにありることである。

 こうしたろんたいして、韓国かんこくいん外交がいこう長官ちょうかんは15ねん合意ごうい発表はっぴょうさいに「この問題もんだい最終さいしゅうてきかつ可逆かぎゃくてき解決かいけつされることを確認かくにんする」とべたではないかとのろんがあろう。「この問題もんだい最終さいしゅうてきかつ可逆かぎゃくてき解決かいけつされる」と実現じつげん不可能ふかのうなことをべたいん外交がいこう長官ちょうかん責任せきにんはある。しかし、そのことはしん方針ほうしんしん政権せいけんとがめる口実こうじつにはならない。「この問題もんだい最終さいしゅうてきかつ可逆かぎゃくてき解決かいけつされる」というできないことを、あたかもできるふりをした両国りょうこく政府せいふ責任せきにんである。

 ちなみに韓国かんこくしん方針ほうしん各国かっこく外務がいむ大臣だいじん外交がいこう関係かんけいしゃ国際こくさいほう関係かんけいしゃ国際こくさい関係かんけい学者がくしゃせて、「韓国かんこくって異常いじょうですよね」といてまわったとして、「そのとおり」と同意どういするひとはほとんどいない。ぎゃくに、「合意ごういくにくにとの約束やくそくで、これをまもることは国際こくさいてきかつ普遍ふへんてき原則げんそくだ。韓国かんこくがわ一方いっぽうてきにさらなる措置そちもとめることは、まったくれることはできない」と息巻いきま安倍あべ首相しゅしょう異常いじょうなのである。そしてさらに、この異常いじょうさを指摘してきするこえがほとんどかれない日本にっぽんという社会しゃかいも、相当そうとう深刻しんこく異常いじょう段階だんかいはいっていることを認識にんしきすべきだ。
ぶん孫崎まごさきとおる評論ひょうろんもと外務省がいむしょう国際こくさい情報じょうほう局長きょくちょう

孫崎享/評論家、元外務省国際情報局長

孫崎まごさきとおる評論ひょうろんもと外務省がいむしょう国際こくさい情報じょうほう局長きょくちょう

東京大学とうきょうだいがく法学部ほうがくぶ在学ざいがくちゅう外務がいむ公務員こうむいん上級じょうきゅうしょく甲種こうしゅ試験しけん外交がいこうかん採用さいよう試験しけん)に合格ごうかく。1966ねん外務省がいむしょう入省にゅうしょう。イギリス陸軍りくぐん語学ごがく学校がっこう、ロンドン大学だいがく、モスクワ大学だいがくにてロシア習得しゅうとくし、ざいソビエト連邦れんぽう大使館たいしかんて、1985ねんざいアメリカ大使館あめりかたいしかん参事官さんじかん(ハーバード大学だいがく国際こくさい問題もんだい研究所けんきゅうじょ研究けんきゅういん)、1986ねんざいイラク大使館たいしかん公使こうし、1989ねんざいカナダ大使館たいしかん公使こうし歴任れきにん。1991ねんから1993ねんまで総合そうごう研究けんきゅう開発かいはつ機構きこう出向しゅっこうちゅうウズベキスタン大使たいし国際こくさい情報じょうほう局長きょくちょうちゅうイラン大使たいし歴任れきにん国際こくさい情報じょうほう局長きょくちょう時代じだい各国かっこく情報じょうほう機関きかん積極せっきょくてき交流こうりゅう。2002ねんより防衛大学校ぼうえいだいがくこう教授きょうじゅ。このあいだ公共こうきょう政策せいさく学科がっかちょう人文じんぶん社会しゃかいがくぐんちょう歴任れきにん。2009ねん3がつ退官たいかん

Twitter:@magosaki_ukeru

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