ニシン単語たんご

ニシン

2.8千せん文字もじの記事きじ

ニシン（鰊にしん、鯡にしん）とは、北半球きたはんきゅうで主あるじに保存ほぞん食しょくとして食しょくされる海うみ水みず魚さかなである。3月がつから5月に北海道ほっかいどう西にし岸きしに大挙たいきょして訪おとずれることから、、春はる告つげ魚さかな（はるつげうお）とも呼よばれる。方言ほうげんで「かど」ともよばれる。大西おおにし洋ようで水みず揚あげされるのはタイセイヨウニシンという魚さかなであるが、本ほん項こうでも触ふれる。

卵たまごはカズノコ（数かずの子こ、鯑かずのこ）と呼よばれ、お正月しょうがつのおせち料理りょうりの一ひとつとして数かぞえられる。

また、「かずのこ」と言いう名なは上記じょうき方言ほうげん名称めいしょうの「かどの子こ」が訛なまって「かずのこ」となった、との説せつがある。

概要がいよう

ニシン目めニシン科か。体長たいちょうおよそ30cm。タイセイヨウニシンはおよそ45cm。背せ側がわは青あお黒くろく、腹はら側がわは白銀はくぎん。腹はらびれはスズキと比ひべ、後うしろにつく。背せ骨ほねは尾おびれまで通かよっていない。

俳句はいくで、春はるの季語きごとされる。ニシンを茹ゆでて油あぶらをしぼった締しめ粕かすは近世きんせいまで農産物のうさんぶつの重要じゅうような肥料ひりょうとされた。

漁業ぎょぎょう

定置網ていちあみ、刺さし網もう漁りょうで漁獲ぎょかくされる。日本にっぽんでは江戸えど時代じだいから北海道ほっかいどうの主あるじに日本海にほんかい側がわでニシン漁りょうが盛さかんだった。北海道ほっかいどうで多おおく水みず揚あげされ、最盛さいせい期き（1897年ねん）には年間ねんかん100万まんトン近ちかくの漁獲ぎょかく高だかを誇ほこった。北海道ほっかいどうの漁師りょうしたちは財ざいを為なし、浜はま辺あたりの漁りょう村むらには立だて派はな木造もくぞうの屋敷やしき、「鰊にしん御お殿しんがり」が立たち並ならぶほどだった。その様子ようすは民謡みんよう「ソーラン節ぶし」にも歌うたわれているほどである。

ところが

ところがだ。乱獲らんかくがたたったか、それとも海うみ流りゅうが変かわったか、はたまた森林しんりん破壊はかい（肥料ひりょうとして用もちいられるニシンの締しめ粕かすの製造せいぞうに薪たきぎが必要ひつようだったため、森林しんりんが多おおく伐採ばっさいされた）が問題もんだいなのか昭和しょうわに入はいってからニシンの漁獲ぎょかく量りょうは減少げんしょうし続つづけた。もともと豊漁ほうりょう凶きょう漁りょうの差さが激げきしい魚さかなではあったが、ここまで急きゅう激げきに減少げんしょうしたことは無むく、漁師りょうしたちにとって大おおきな痛手いたでとなった。

1940年ねん代だいに少すこし持もち直なおしたが、やはり減少げんしょうする一途いっとを辿たどり、1955年ねんから漁獲ぎょかく高だか10万まんトンを越こえることはほぼ無むくなってしまった。平成へいせいになると、1万まんトンを切きるのが当あたり前まえになってしまい、もはやかつてのニシン漁りょうの活気かっきは見みられなくなってしまった。現在げんざい店頭てんとうに並ならぶのは、輸入ゆにゅうもののタイセイヨウニシンのほうが多おおい。

かつては3月がつ頃ころに、産卵さんらんのためにニシンが大群たいぐんで浅瀬あさせにやってきてニシンの精子せいしや剥はがれた鱗うろこで海うみが真まっ白しろに染そまる「鰊にしん群ぐん来らい（にしんくき）」が毎年まいとし見みられたが、それもあまり見みられなくなってしまった。

しかし、最近さいきんまた北海道ほっかいどう沿岸きしで群来くきが起おこり、漁業ぎょぎょう関係かんけい者しゃを喜よろこばせている。また北海道ほっかいどうの海うみにニシンが帰かえってくるかもね。

食たべ方かた

痛いたみやすいため日本にっぽんでも欧おう米べいでも、主あるじに燻製くんせい、干物ひもの、糠漬ぬかづけなどの保存ほぞん食しょくとして食しょくされる。ニシンの干物ひものを「身欠みかきニシン」といい、江戸えど時代じだいより、北前きたまえ船ふねで本州ほんしゅうへと運はこばれていた。山間さんかん部ぶでは貴とうと重おもなタンパク源みなもととして重宝ちょうほうされた。足あしが早はやいので、新鮮しんせんでなければ刺身さしみにできないが、お刺身さしみも油あぶらが乗のってて美味おいしい。

欧おう米べいでは、マリネにしていただいたりもする。世界一せかいいち臭くさい食たべ物ものとされる「シュールストレミング」の缶詰かんづめ（ニシンの塩しお漬づけを発酵はっこうさせた物もの）は、元もとはスウェーデンの保存ほぞん食しょくであった。また、ニシンの燻製くんせいの「キッパー」は、イギリスの代表だいひょう的てきな朝食ちょうしょくの一ひとつである。

骨ほねが多おおく一見いっけん食たべづらそうに見みえるが、骨ほねは取とれやすいので、慣なれれば楽らくに食たべることができる。

ニシン料理りょうり

鰊にしんの昆布こぶ巻まき: 身欠みかきニシンに昆布こぶを巻まいて干瓢かんぴょうで結むすび、甘辛あまからく炊たいた物もの。おせち料理りょうりでは数かずの子こと一緒いっしょに親おや子こともどもいただきましょう。
にしん蕎麦そば: 言いわずと知しれた京都きょうと名物めいぶつ。あつあつのお蕎麦そばに身欠みかきニシンの甘露煮かんろにを乗のせて頂いただきましょう。京都きょうとのおばんざい（お惣菜そうざい）、鰊にしんの昆布こぶ巻まきをヒントにして生うまれたという。油あぶらの乗のったニシンの甘露煮かんろにがお蕎麦そばのつゆとからまってとても美味おいしい。
にしん漬づけ: 生なまのニシンを米べい麹こうじで漬つけ込こんだもの。大根だいこん、キャベツなどの野菜やさいと一緒いっしょに漬つけ込こむ。独特どくとくの酸さん味あじが美味おいしい。
ハーリング: 若わかいニシンを生なまのままでマリネにした料理りょうり。ピクルスを乗のせて、パンに挟はさんでいただく。マリネのつけ汁じるは酢す、ワイン、ハーブ、スパイスなどから出来できている。オランダ発祥はっしょう。
ロールモップ: イギリスなどで食しょくされる、ハーリングを丸まるめた物もの。ピクルスや、玉たまねぎなどをニシンに挟はさんで、串くしを刺さしている。
ザクースカ: ロシアで食しょくされる前菜ぜんさい。イクラ、キャビア、サケの燻製くんせいに混まじってニシンの燻製くんせいがある。食前しょくぜん酒さけのつまみだが、黒くろパンの上うえに乗のせて食たべたりもするらしい。
かぼちゃとニシンのパイ: おばあちゃんが孫まごに持もって行いってあげると、「あたしこのパイ嫌きらいなのよね」と言いわれてしまう。だが、かぼちゃの甘味あまみと油あぶらの乗のったニシンは多分たぶん相あいまって美味おいしいんじゃないかな？

ニシンに関かんする色々いろいろな話はなし

英語えいごの慣用かんよう句くで、「Red herring」というものがある。意味いみは「人ひとの注意ちゅういをそらすもの」、「偽にせの手てがかり」。テストの引ひっ掛かけ問題もんだいや、扇動せんどう者しゃ、小説しょうせつでの所謂いわゆる「ミスリード」などがこれに当あたる。「Red herring」は直訳ちょくやくすると「ニシンの燻製くんせい」で、燻製くんせいが強つよい臭においを発はっして、猟りょう犬いぬが獲物えものの通とおり道みちを間違まちがえたり、見失みうしなってしまうことからこの慣用かんよう句くが生うまれたとされる。アガサ・クリスティーの小説しょうせつ、「そして誰だれもいなくなった」では鍵かぎとなる言葉ことばとして使つかわれる。
チェコでは@（アットマーク）のことを「ニシンを巻まいた物もの」という。
100年とし戦争せんそう中なかの1429年ねん、イングランド軍ぐんが包囲ほういするフランス・オルレアンで「ニシンの戦たたかい（Battle of the Herrings）」が勃発ぼっぱつした。戦たたかいのさなか、積荷つみにが崩くずれイングランド軍ぐんが調達ちょうたつした大量たいりょうのニシンの塩しお漬づけが街まち中なかにばらまかれたためこう呼よばれるようになったという。この戦たたかいはフランス軍ぐんの敗北はいぼくに終おわった。
「きかんしゃトーマス」に登場とうじょうする特別とくべつ貨物かもつ列車れっしゃ「フライング・キッパー」は、直訳ちょくやくすると「空そら飛とぶ燻製くんせいニシン」となる。ニシンの燻製くんせいを食たべるときは是非ぜひココアと一緒いっしょにいただくといいだろう。
格闘かくとうゲーム「アカツキ電光でんこう戦記せんき（及およびエヌアイン完全かんぜん世界せかい）」のキャラクター「塞ふさが」が使用しようする技わざ「邪よこしま視し」は相手あいてに一いち定時ていじ間あいだ状態じょうたい異常いじょうを付加ふかするコマンド投なげであるが、その状態じょうたい異常いじょうの一ひとつである「跳躍ちょうやく妨さまたげ害がい」はジャンプもしくは空そら中ちゅう判定はんていになる技わざを使用しようした相手あいての頭上ずじょうにニシンを落おとす。その大おおきさゆえマグロに見みえないこともないがニシンである。　何故なぜニシンなんだ・・・。