5分ふんで分わかる『山月やまつき記き』解説かいせつ！意識いしき高たかい系けいこじらせ男子だんしが虎とらになった理由りゆうとは？

まずは、『山月やまつき記き』の簡単かんたんなあらすじ、登場とうじょう人物じんぶつ、時代じだい背景はいけいをご紹介しょうかい！

『山月やまつき記き』の主おもな登場とうじょう人物じんぶつは2人ふたりだけ。虎とらになってしまう李り徴ちょうと、その友人ゆうじんの袁傪です。

物語ものがたりの舞台ぶたいとなるのは唐から王朝おうちょう時代じだいの中国ちゅうごくで、当時とうじはシルクロードを通つうじて周辺しゅうへん諸国しょこくとの交易こうえきも盛さかんにおこなわれていました。

詩しや絵画かいがなどの文化ぶんかが大おおきく発展はってんし、難関なんかん試験しけんである科挙かきょに合格ごうかくした役人やくにんが支ささえることで国くにとしても繁栄はんえい。そんな唐とうの優すぐれた文化ぶんかを学まなぶために、日本にっぽんからも遣唐使けんとうしが派遣はけんされていました。

このような時代じだいの中国ちゅうごくで、難関なんかん試験しけんに若わかくして合格ごうかくした李り徴ちょうと袁傪でしたが、李り徴ちょうはそのプライドの高たかさから周囲しゅういになじめず、あっさりと役人やくにんを辞やめて詩人しじんを目指めざします。

理由りゆうは自分じぶんの詩家しかとしての名前なまえを後世こうせいに残のこすため。しかし、思おもったとおりにはいかず彼かれの生活せいかつは困窮こんきゅうします。

泣なく泣なく下級かきゅう役人やくにんとなりますが、そんな自分じぶんを許ゆるせない彼かれはある日ひ、発狂はっきょうして虎とらになってしまうのです。

李り陵りょう・山月やまつき記き (新潮しんちょう文庫ぶんこ)

著者ちょしゃ

中島なかじま 敦あつし

出版しゅっぱん日び

登場とうじょう人物じんぶつそれぞれの設定せっていをおさらい！

続つづいて、『山月やまつき記き』の登場とうじょう人物じんぶつについて整理せいりしてみましょう。本ほん作さくに登場とうじょうする人物じんぶつは、李り徴ちょうと袁傪の2人ふたり。それぞれ、どのような人柄ひとがらなのでしょうか？

李り徴ちょうは、小ちいさい頃ころから天才てんさいと謳うたわれ、自分じぶんでもその事ことを自覚じかくし、高たかい理想りそうを描えがいていました。しかし難関なんかん試験しけんに合格ごうかくするも、周まわりとうまく打うち解とけられません。さらに、どのような仕事しごとにもある下積したづみ期間きかんが我慢がまんできず、遂ついには役人やくにんを辞やめてしまいます。

優秀ゆうしゅうな学生がくせいが就職しゅうしょく先さきに馴染なじめず辞やめてしまうというケースは現代げんだいでも多々たたあり、唐とうの時代じだいの話はなしでありながら共感きょうかんする人ひとは多おおいでしょう。

そして、李り徴ちょうが役人やくにんを辞やめて何なにをするかと思おもえば、なんと今度こんどは詩人しじんを目指めざすといいます。

彼かれは自みずからの理想りそうの実現じつげん方法ほうほうとして、歴史れきしに名なを遺のこすような詩しを作つくろうとしたのでしょうか？このような「プライドと自己じこ顕示けんじ欲よくの塊かたまり」ともいえるのが、彼かれの人柄ひとがらです。

一方いっぽう、袁傪は彼かれの数少かずすくない友人ゆうじんで、李り徴ちょうと同おなじく難関なんかん試験しけんに合格ごうかくし、穏おだやかで柔やわらかい人柄ひとがらから、性格せいかくに難なんがある彼かれともぶつからずに友人ゆうじん関係かんけいを続つづけられました。

その人柄ひとがらは、虎とらになった李り徴ちょうすら受うけ入いれるほどでした。

このような対照たいしょう的てきな2人ふたりが、時ときを経へて、偶然ぐうぜん再会さいかいします。虎とらとなってしまった李り徴しるしも、袁傪の前まえでは弱音よわねを吐はき、人ひととしての心しんを持もって接せっすることができます。

袁傪は李り徴ちょうにとって、かつて自分じぶんが人ひとであったことの「証あかし」のような存在そんざいだったのかもしれません。

『山月やまつき記き』の主人公しゅじんこうが虎とらになった理由りゆうとは？作品さくひんのテーマ、意味いみを大胆だいたん解説かいせつ！

なぜ李り徴ちょうは虎とらになってしまったのでしょうか？

もちろん、現実げんじつでは人ひとが虎とらになってしまうことはあり得えませんが、この理由りゆうを考かんがえるのが山月やまつき記きを読よむうえで面白おもしろいポイントでもあります。

そもそも、李り徴ちょうはプライドが高たかい人物じんぶつで、歴史れきしに名なを残のこすような偉人いじんになることを望のぞんでいました。そんな彼かれが、下級かきゅう役人やくにんとして使つかいっ走はしりをさせられるのは耐たえ難がたかったことでしょう。

現実げんじつと理想りそうのギャップを受うけ入いれられず、「こんな姿すがたは自分じぶんではない」いう思おもいを抱だいたかもしれません。

では、李り徴ちょうはどんな自分じぶんになることを望のぞんだのでしょう。おそらく、無意識むいしきのうちに強つよい姿すがた、強つよい動物どうぶつを思おもい浮うかべたはずです。これこそ、彼かれが虎とらになってしまった原因げんいんではないでしょうか？

虎とらといえば、中国ちゅうごくでは百獣ひゃくじゅうの王おうと呼よばれる動物どうぶつです。中国ちゅうごくの文化ぶんかにおいては権力けんりょくや威厳いげんの象徴しょうちょうでもあり、龍りゅうと同格どうかくの霊獣れいじゅうと捉とらえられています。

自己じこ顕示けんじ欲よくの強つよい李り徴ちょうは、そんな強つよさの象徴しょうちょうともいえる虎とらに憧あこがれを抱だいたのかもしれません。

こんなはずではない。自分じぶんは強つよい。皆みなから注目ちゅうもくされる存在そんざいなのだ、と。

そう願ねがい続つづけた彼かれは、自分じぶんが望のぞんではいなかった方法ほうほうで周囲しゅういから注目ちゅうもくされる虎とらとなってしまったのでしょう。

自意識じいしきこじらせ男子だんしは、最後さいごどうなる？

虎とらとなった李り徴ちょうは、袁傪との再会さいかいを喜よろこびます。袁傪の出世しゅっせを祝福しゅくふくしながらも、同時どうじに自みずからの人ひととしての意識いしきを保たもてる時間じかんが日ひに日ひに短みじかくなっていることを告つげ、悲かなしみにくれます。

袁傪と話はなしをするなかで自みずからが虎とらとなってしまった理由りゆうを考察こうさつし、自嘲じちょうする李り徴ちょう。そして虎とらになった理由りゆうは、自分じぶんのプライドの高たかさだという考かんがえに至いたったのです。そのうえで、それでも捨すてきれないプライドから、自みずからの詩人しじんとしての名なを残のこそうと袁傪に自分じぶんの詩しを託たくしました。

見方みかたによっては、自分じぶんの事ことしか考かんがえていないようにも思おもえますが、そんな彼かれにも家族かぞくがいます。袁傪と再会さいかいしたことで、人ひととしての自分じぶんに残のこされたものを振ふり返かえった彼かれは、最後さいごに家族かぞくへの伝言でんごんを託たくしました。さらに、「虎とらとなった自分じぶんの姿すがたを去さり際さいに遠とおくから見みてほしい」と袁傪に頼たのみます。

この時ときの彼かれの心しんには自尊心じそんしんや自己じこ顕示けんじ欲よくというより、人ひととしての自分じぶんがいなくなってしまうことが誰だれからも顧かえりみられない、寂さびしさが溢あふれていたのではないでしょうか。このような彼かれの心情しんじょうを、背景はいけいの月つきが演出えんしゅつします。

さて、袁傪と別わかれた後のち、李り徴ちょうはどうなってしまったのでしょうか？完全かんぜんに虎とらとなってしまうのか、それとも袁傪と再会さいかいしたことで何なんらかの変化へんかが起おこるのでしょうか？

『山月やまつき記き』に難むずかしいイメージがある理由りゆうとは？簡単かんたんにわかる、とっつきづらい理由りゆう

山月やまつき記きに対たいして「取とっつきづらい」というイメージがある人ひとも多おおいようです。

これは、『山月やまつき記き』を読よみ解とくには、作品さくひん内ないでは語かたられていなかったり、解決かいけつしていなかったりする内容ないようが大切たいせつになるためです。

本ほん作さくでは、李り徴ちょうの身みに起おきた出来事できごとを通とおして、人ひとの変かえられない性分しょうぶんについて取とり上あげています。

仮かりに、「李り徴ちょうが自尊心じそんしんの高たかさや自己じこ顕示けんじ欲よくをこじらせ、虎とらとなってしまった」という表面ひょうめん的てきな見方みかただけをすれば、『山月やまつき記き』はそれほど印象深いんしょうぶかい話はなしではないでしょう。

しかし、本ほん作さくを読よみ解とくには、もっと多角たかく的てきな視点してんが必要ひつようとなるのです。

たとえば、李り徴ちょうはどうして虎とらとなってしまったのでしょうか？彼かれなりの理由りゆうは作品さくひん中ちゅうで語かたられてはいますが、それが本当ほんとうの理由りゆうだったのかはわかりません。

また『山月やまつき記き』には基もととなったお話はなしがあるので、そのお話はなしも読よんでみなければ詳くわしくわからない部分ぶぶんもあります。

このように、人ひとによって解釈かいしゃくが違ちがったり、1つの作品さくひんで問題もんだいが解決かいけつしなかったりするため、山月やまつき記きは難むずかしいという印象いんしょうがあるのかもしれません。

簡単かんたんに解説かいせつしましたが、それでも難むずかしい場合ばあいは漫画まんがもあります！

このように読者どくしゃによってさまざまな解釈かいしゃくが可能かのうであり、それゆえに読よみ解ときにくくもある『山月やまつき記き』。いきなり文庫ぶんこなどで読よむのはハードルが高たかいという人ひとにおすすめしたいのが、漫画まんが版ばんです。

有名ゆうめいすぎる文学ぶんがく作品さくひんをだいたい10ページくらいの漫画まんがで読よむ。 (torch comics)

著者ちょしゃ

ドリヤス工場こうじょう

出版しゅっぱん日び

2015-09-11

『有名ゆうめいすぎる文学ぶんがく作品さくひんをだいたい10ページくらいの漫画まんがで読よむ。』では、『山月やまつき記き』を含ふくむ有名ゆうめい文学ぶんがく作品さくひんのあらすじが、10ページに満みたないページ数すうで描えがかれています。

絵えの力ちからを借かりれば文章ぶんしょうのみではイメージしずらい場面ばめんも読よみやすくなるため、入門にゅうもん書しょに最適さいてきです。また、一度いちど漫画まんがで読よめば、後ごから文庫ぶんこなどで読よみ直なおして自分じぶんなりの解釈かいしゃくをするときの手助てだすけにもなるでしょう。

また、イラストによって恐おそろしい虎とらのイメージが少すこし変かわるのも漫画まんが版ばんの魅力みりょくです。 

小説しょうせつはハードルが高たかいけど、興味きょうみがある！という方ほうは、ぜひ読よんでみてください。

以上いじょうのように『山月やまつき記き』について解説かいせつしてきましたが、いかがでしたか？お話はなし自体じたいは短みじかく、電車でんしゃの移動いどう中ちゅうでも読よめてしまう文章ぶんしょう量りょうですが、読よみ手てによって解釈かいしゃくに幅はばが出でる面白おもしろい作品さくひんです。

ぜひ1度ど、手てに取とって読よんでみてください！